アイルランド生活ブログ - 生活・料理・留学の情報満載 -

アイルランド在住者(精通者)によるアイルランド生活の情報を発信中!!

松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー「ノーラおばさん/チェルトナムの戦い」

2006-03-20 06:12:49 | 松井ゆみ子のキッチン・ダイアリー
★ノーラおばさん

 北アイルランドのカウンティ・タイローンに、料理の腕前でエリザベス女王からメダルを授与したミセス・ノーラ・ブラウンが、その腕をふるってくれるゲストハウスつきのレストランがあります。97年に出版された、中濱潤子ちゃんとの共著「アイルランドB&B紀行」で紹介したのですが、その取材以来9年ぶりにノーラおばさんに会いました。暮しの手帖 2月/3月号に掲載するオートミールの取材で、彼女の特製ポリッジを撮影するためです。

グレンジ・ロッジの主たち。ノーラ&ラルフ・ブラウン夫妻。
グレンジ・ロッジの朝食。
 マークと私が、彼女の宿”グレンジ・ロッジ”を再訪したのは、去年の10月末。
遅めのヴァカンスから帰ってきたばかりのノーラおばさんと、ご主人のラルフは、小麦色に日焼けして、とっても若々しく元気そう。「まぁ、いったい何年ぶり? 今でも「B&B紀行」を手に日本から泊りに来てくれる方たちがいるのよ!」と聞いて、嬉しくなりました。翌日、待望の朝食。ノーラおばさんのポリッジは超特製です。一晩かけてオーブンで低温調理したポリッジに、ラルフがうやうやしくブラウンシュガーをかけ、その上にアイリッシュ・ウイスキーを注ぎ、ぽっと火をともします。これこれ。生クリームをとろーりとかけたポリッジは、9年前に初めて食べたときの衝撃をよみがえらせました。オートミールの記事を書くことになったとき、絶対ノーラおばさんのポリッジを食べに行こう、決めていました。

  面白かったのは、名物アルスター地方の朝食。ベーコン&エッグにソーセージ、トマトやマッシュルームのソテーまでは同じですが、アルスターの特色はこれに、ソーダファールのフライがつくことです。前にソーダ・ファールの項でも触れましたが、ベーコンの脂で焼いた、カリカリのソーダ・ファールです。場所によっては、生地にじゃがいもを加えたパンケーキで、もっちりしたポテトケーキがつくこともあります。しかし、おや?ノーラおばさんのとこの朝食にはどちらも見当たりません。後で、そっとマークに聞いてもったところ「ごめんなさいねー。休み明けで、生地を冷凍庫に入れたままで、解凍するのを忘れちゃったのー」とおおらかな返事。

 食卓に並ぶ、ノーラおばさんの自家製パンの数々が素晴らしい。カラフルなドライドフルーツたっぷりのソーダブレッドや、ざっくりしたブラウンブレッド、それと名物アップルパンケーキ。手のひらサイズのふっくらしたパンケーキの中に、細かく刻んだリンゴがまぜてあって、ほのかにいい香りが口に広がります。もう、お腹いっぱいと思っても、このアップルパンケーキは「あと1枚」と、つい手がのびてしまいます。

 このあたりはマッシュルームも特産と聞きました。そうか。前日、八百屋で見かけたマッシュルームが、あまりに真っ白でちょっとびっくり。オーガニック・マーケットで、けっこういいものを買っていると自負してたのですが、確かにデリケートな野菜なので、運ぶ距離が長いと、どうしても傷ついて茶色に変色してしまうのですね。真っ白なマッシュルームは、地場ものの証拠なんだ。

 ノーラおばさんは、料理レッスンもしているそうです。4、5人ほどの少人数制で、伝統料理のつくり方はもちろん、その歴史など料理の背景まで教えてくれるので、アイルランドの家庭料理を習うには理想的な教室です。

 「また来てちょうだい!9年後じゃなくてね」明るく送り出してくれたノーラおばさんとラルフ。今度は完璧なアルスター式朝食と、しっかりディナーもいただかなくちゃ。

■GRANGE LODGE
grangelodge@nireland.com


★番外編「チェルトナムの戦い」

 セント・パトリックスデーの日、パレード以外にアイルランド人を熱狂させるイベントがあります。ジャンプレースのシーズンをしめくくる大きな大会がチェルトナムで開催され、そこにアイルランドの競走馬たちが大挙して参戦します。それはイングランド対アイルランドの対戦でもあり、ふだんは競馬に興味のない人たちも、この大会だけは熱心に観戦します。今年は実に見ごたえがありました。

 3月14日から17日まで4日間の連続開催で、ハイライトの重賞レース「ゴールド・カップ」はおりしもセント・パディズデー。3マイル以上の長い距離をジャンプレースとは思えないほどの速いスピードで競うタフなレースの、一番人気はアイルランドのチャンピオン馬ビーフ・オア・サーモン。しかし馬場状態が合わなかったのか、古傷が痛むのか後方から抜けることはできず、ベテランジョッキー、コナー・オドワイヤーを鞍上にしたウォー・オブ・アトリションが優勝。2着、3着もアイルランド勢で、もう興奮のるつぼ。

 コナーは、毎年そろそろ引退かとささやかれていたけれど、続けた甲斐があったと誰もが自分のことのように喜んだ瞬間です。

 もうひとつのハイライトは16日、3マイル・ハードルの重賞レースに愛・英ダービーの覇者、チャンピオン・フラットジョッキーのジョニー・マータが騎乗したこと。

 たとえば武豊騎手が障害レースに出るようなもので、日本では考えられません。こちらでも珍しいことで大きな注目を集めました。私も大好きなジョッキーですが、いきなりチェルトナムで勝つのは無理だろーと思っていたら、なんと2着に入賞。それでも本人は、ものすごくがっかりしたのだそうで、彼の勝負に賭ける貪欲さにあらためて感心してしまいました。

 アイルランドは10勝し、イングランドとほぼタイ。おまけにイングランドの勝ち馬の大半にアイルランド出身のジョッキーが騎乗していたことを含めて、今年のチェルトナムは実に印象深いものでした。

 4月には世界一過酷なレースといわれるグランドナショナルが行われます。ジャンプレースのシーズンもまもなくクライマックス。季節は春から夏へと向かい、今度はフラットレースのシーズンが始まろうとしています。


★松井ゆみ子さんのプロフィールはコチラから★
☆「松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー」投稿一覧はコチラから☆

⇒「松井ゆみ子さんの著書はコチラから購入できます!」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。