忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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数少ないハリウッドリメイクの成功例「Shall we Dance?」

2005年04月20日 | 作品紹介(映画・ドラマ)

■DVD:「Shall we Dance?」


アジアの映画が続々とハリウッドに買われる時代になってきたが、
ハリウッドリメイクされた作品はどうも今ひとつな物が多い。
日本から大量に「輸出」されているホラー映画も、
興行的な成功とは裏腹に、
原作そのままの面白さを再現している物は少ないような気がする。
「リング」のように別物になってしまっても悲しいし、
「JUON」のようにそのままというのも物足らない。
「原産国」に住む者の意見は贅沢なものだ。

今回紹介する「Shall we Dance?」は、
原作のどの部分が日本的(日本人特有の感覚)で、
どの部分が世界共通の面白さであるかを
きちんと見極めた上でリメイクされた数少ない成功例だと思う。
「日本産の映画なんだから監督も日本人に任せよう」という
最近の流行に一石を投じる価値ある一作だ。

まず、日本版では役所広司が演じていた主人公を
リチャード・ギアが演じているのだが、
性格や考え方、置かれた状況が似ているようでかなり異なる。
役所が掴み所のない物足りなさからダンス教室で働く草刈民代に
ほのかな恋心を寄せ、やがてダンスにも没頭していくのに対し、
ギアの場合は今の生活にさほど不満があるわけではなく、
ジェニファー・ロペスに対する下心も草刈に対する役所ほども持っていない。
役所が「あわよくば・・・」なら、
ギアは「話だけでも・・・」という感じだ。
そしてその微妙な温度差が、エンディングで決定的な差を生むことになる。
家族の最小単位がどこにあるのか、ということに関しては、
アメリカ人の答えはいつも明快だ。

「憧れの君」を演じる二人もかなり違う。
周防監督が草刈を指名したのは、控えめな色気と清楚な雰囲気、
凛としたダンスに惚れ込んでのことと思うが、
ジェニファー・ロペスには
「控えめな色気」も「清楚な雰囲気」も無理である。
ダンスに関しても、「美しさ」を優先した草刈より遥かに動物的な
「色気最優先」の踊りを見せているが、
これがダメかというとそうでもない。
むしろ、ギアとのコントラストとしても、
スーザン・サランドン(ギアの妻役)の敵役としても正解だ。
日本版では登場していた草刈の昔の恋人や父親が出て来ないのは
物語の比重をギアとロペスの恋物語ではなく、
ギアの家庭に持っていくためであろう。
もちろん、周防監督の贔屓も多少はあったと思うが。
(監督はこの作品がきっかけで草刈と結婚した)

脇役のキャラクターに関しても日本版とほぼ同じだが、
日本版の竹中直人や渡辺えり子ほど「やり過ぎ」ないため
観ていてとても軽く、全体のまとまりも良くなっている。
竹中直人のポジションを演じたスタンリー・トゥッチは
つい最近「ターミナル」でトム・ハンクスを追い出そうと画策する
嫌味なフランクを演じていたのを見たばかりだったので
あまりの違いに驚いた。
「ターミナル」を観た方で本作も鑑賞予定の方は
その辺も気にしながら観るとより楽しめるはずだ。

尺が日本版に比べ20分ほど短くなっているが、
練習シーンなどを端折っているだけで重要な部分は
全て残してあるため、どこを切ったのかも分かりにくい。
2時間に収めたことでテンポもぐっと良くなった。

日本版特有の小ぢんまりとした作りがお好みの方も多いであろうし、
あまりにも出来過ぎなラストはファンタジーではないかという
突っ込みも予想されるが、私はファンタジーで良いと思う。
キレイキレイな夢もたまには見たい。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:Shall we Dance?
    配給:ギャガ・コミュニケーションズ
   公開日:2005年4月23日
    監督:ピーター・チェルソム(「セレンディピティ」)
    出演:リチャード・ギア、ジェニファー・ロペス、他
 公式サイト:http://www.shallwedance-movie.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
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14 コメント

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輸出形態 (Mojo)
2005-04-20 09:28:04
国を跨ぐ際のリメイクモノとしてニキータなどが思い浮かびますね。

それ故原作のほうをローカライズしたものを見ておけばいいかな程度に

思っていましたが、その差異を見るのもなかなか面白そうです。
返信する
時間があったら・・・ (koto)
2005-04-20 10:18:35


私の周りのお姉さん達もチェックしている今作、時間があったらぜひ観賞したいものです。

去年の今ごろも「スクールオブロック」を見逃すと言う具合に・・・_| ̄|○

今年こそは・・・と意気込んでも、去年より過密スケジュールな現状、

劇場に足を運んだら2時間船を漕いでそうでちょっと怖い。

リチャード・ギアから「大人の男の色気」を勉強しないと・・(笑)。
返信する
ハリウッドでは ()
2005-04-20 14:32:38
あの竹中直人のキャラクターはどのようになっているのか気になりますね。
返信する
リメイク (しんぼう)
2005-04-20 18:01:26
リメイクってのは難しいですね。ゲームのリメイクも似た部分があるんじゃないかと思いますよ。変わりすぎると旧来のファンの怒り、変わらないと新規のファンの期待を裏切る……。

>「原産国」に住む者の意見は贅沢なものだ。

この一言に尽きると思います。とは言いつつも、変化を楽しむのもいいんですけどね(苦笑)。

P.S

映画の紹介が増えて、ボクとしては密かに(ゲームの話題以上に)楽しみにしています。これからも(良作・駄作を問わず)映画紹介お願いします。
返信する
竹中ナオト役の外人さん! (かぶ)
2005-04-20 18:26:36
むっちゃいい味出してて

違和感ないどころか、

雰囲気バッチシでしたよ。



リチャードギア、もうちょっと

身長あれば、カッコ良すぎかも。
返信する
ちょっと泣けた (ずーすか。)
2005-04-20 21:34:20
初めて忍さんのブログでワタシが見たばかりの映画が紹介されて嬉しい限り。



試写会で見てきました。

上手にアメリカナイズされていて、忍さんの言うとおりのリメイク成功作と思います。



ジェニファーロペスが実は情熱的なラテン系だったり、ダンスのおばあちゃん先生が酒好きだったりなんてところがアメリカ舞台によくあってたと思う。



ラストのリチャードギアはカッコよすぎ!

ホロリとさせてくれました。
返信する
リメイクは (ほくほく)
2005-04-20 21:48:24
映画のリメイクはオリジナルのシナリオに力があるとうまくいく場合が多いと思う。

黒沢のリメイクなんかはやっぱり面白いし。

ホラーはシナリオというより、感性(演出の分野だね)がものをいうのでリメイクしたときの違和感が大きいのでは。

「Shall we dance」はシナリオがいいのでリメイクで料理しやすいのだと思う。
返信する
Unknown ()
2005-04-21 00:47:51
Shall we danceをリメイクするなら幸せの黄色いハンカチでも海外リメイクやってみてくれんかなぁなんて考えてみたりします。





いえ、単にShall we danceは個人的にあまり肌に合わなかったので。
返信する
うむ (三つ子)
2005-04-21 00:59:13
リチャード・ギアがシリアスなサスペンスなどに

でていると、ちょっと違和感を感じてしまうので

この映画なら、すんなりと見れそうです。



日本版を見直してから、見てみよう。
返信する
む、 ()
2005-04-21 01:28:39
>Mojo殿



うむ、今回の場合は

ストーリーはほぼ同じで

どうしてこれだけ違う印象に仕上がるのかという点を

比べながら観るのが楽しい。



>koto殿



確かkoto殿は「カンフーハッスル」も観に行かれたはず。

「スクール・オブ・ロック」は私もDVDを持っている。

「スクール」がお好みなら

もうじき公開される「ドッヂボール」がお勧めだ。



>昭殿



私個人としては竹中のコミカル演技には

もう辟易としている故、

ハリウッド版の方が抑えが利いていて良かった。

まぁこの辺は好みであろう。



>しんぼう殿



映画の支持者がいてくれると私も嬉しい。



鑑賞した映画全てをここで紹介すると

月10日以上は映画紹介になってしまうので

適当にセレクトしてお届けしているのだ。

今後ともよろしく。



>かぶ殿



私は小泉がギアと並んでにっこりと微笑み

「似てると言われるんだよ」と宣った時

「何言ってんだと思った」



>ずーすか殿



私もラストのギアは良かった。

あの年であれだけの演出に耐えうる年の取り方をしたい。



>ほくほく殿



なるほど、確かにホラーはシナリオをなぞっただけでは

怖さは再現出来ないように思う。



>ニンニク殿



実を言うと私も日本版はさほど好みではなかったのだ。

だからこそハリウッド版がしっくりきたのかも知れぬ。



>三つ子殿



日本版はちょうど最近DVD化されたばかりだ。

レンタル店にも入荷しているはずなので

どうせならDVDで再鑑賞されてはいかがか。
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