ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。






ポニーキャニオン
寝ずの番 特別番

タイトルを見て「ぎょっ」とした方も多いことと思う。
(特に京都方面にお住まいの方)
河島英五のファンには申し訳ないが、
今回紹介する「寝ずの番」は、
まさにタイトルそのものの映画なのだ。

大酒飲みの噺家とその一門を描いた本作の原作者は
これまた大酒飲みの中島らも。
氏の亡くなった原因も、やはり酒であった。
監督は、祖父のマキノ省三、伯父のマキノ雅広と、
邦画界にその名を残すマキノ性を継ぎ、
マキノ雅彦として映画監督デビューを果たした俳優の津川雅彦。
第1話の主人公でもある噺家、橋鶴師匠役に
実兄の長門裕之を配する等、ファミリー色も匂わせている。

幼い頃、私は父方の親族の通夜に強い抵抗感を持っていた。
父方の通夜は、夜を徹して大酒を飲み交わし、
騒ぎまくるというスタイルである。
人の死は悼むものなのに、何故そんなに楽しそうなのかと、
年端もいかないガキの分際で
赤ら顔でどんちゃん騒ぎをする大人達に本気で腹を立てていた。

あれから数十年、
この映画で大笑い出来た私はすっかりジジィの仲間入りだ。
今なら、当時の親戚の笑顔を理解出来るし、
自分の身にもしもの事があった時も、
やはり皆には笑っていて欲しい。
涙を流して泣くことだけが
亡くなった者への追悼を意味するわけではないと、
そんな簡単なことに気付くまでに随分と時間がかかってしまった。

映画の登場人物達も、実によく笑い、酒を飲む。
亡くなった者との想い出を肴にした宴は
時に下ネタ全開の大暴走へと発展するが、
決して亡くなった者をひとりぼっちにはしない。
「案外、今もあの辺から覗いてんのとちゃうか」と
部屋の隅を指さして皆で笑うシーンがあるように、
彼等の「寝ずの番」は、
亡くなった者も「メンバーのひとり」としてカウントしているのだ。

マキノ監督については、
まんべんなく見所を用意してあげようという気遣いが出過ぎて
登場人物の役割がぼやけてしまった感がある。
主役は主役、脇役は脇役、という風に割り切ってしまうだけの
思い切りがあれば、もっと良くなったはずなのだが。
堂々と妻を主役に据え、妻を引き立てるための本を書く
伊丹十三監督ぐらいの図太さが欲しい。

ちなみに、マキノ監督は伊丹作品の常連でもあったせいか、
伊丹監督の演出法にかなり影響を受けていると思われる
シーンがけっこうあった。
決定的な違いは、
「下品な物をとことん下品に見せる」(伊丹)か
「下品な物を少しオブラートに包む」(マキノ)か、であろうか。
伊丹は「淫靡」、マキノは「助兵衛」なのだ。

映画完成を祝した著名人の色紙の中で、
渡辺淳一氏が「死後硬直が気になった」と、
とても作家とは思えない、無粋なことを書いていたが、
そんな些末なことに突っ込みを入れず、
「洒落」の利いたファンタジーだと思って観て欲しい。
テレビでは絶対に放送出来ない台詞がバンバン出てくるので、
木村佳乃が「おそそ」と口にする様を、
中井貴一が「ちんぽ」を連発する様を、
是非スクリーンでご覧いただきたい。

ちなみに、公式サイトは訪れた途端に予告編が始まるので要注意。
予告編がまるで受け付けない方は、素直に避けた方が賢明だ。



中島 らも
寝ずの番

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:寝ずの番
    配給:角川ヘラルドピクチャーズ
   公開日:2006年4月8日
    監督:マキノ雅彦
   出演者:中井貴一、木村佳乃、長門裕之、富司純子、岸部一徳、他
 公式サイト:http://nezunoban.cocolog-nifty.com/main/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


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