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ワクチンのニュース2つ その5 リスコミのメモ  

2011-03-06 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
「リスクコミュニケーション」は比較的新しい領域です。
新型インフル関連で感染症関係者も関心をもちはじめています。

まず、基本的なことですが・・・

【よくないメッセージ】
1)危険や事象だけをいう (対応策とセットでいうのがベター)
「●人死亡した」

2)抽象的なメッセージをながす(具体的に誰が何をどれくらいやるのかわからない→かえって不安)
「がんばってください」「注意してください」「適切に対応してくださ」「しっかりやりましょう」

3)対立するメッセージの混在 mixed message, confusing message
「エイズは誰でも感染する可能性がありますが日常生活では感染しません」

4)誰が誰に向けて言っているかわからない(発信者・責任者が不明→不信、協力してもらえない)

5)古いメッセージのだしっぱなし(管理の悪いホームページなど。ネット情報には記載日・改訂日を入れて、情報利用者の責任で活用するように一筆入れるとよいです【免責事項】)

6)情報の重み付けのわからない、更新順のわからないメッセージ
新型インフルの時も「FAXで情報乱発されて、いったいどれが今Activeな情報なのか、どこまで拘束されるのか<義務なのか、依頼なのか、スローガンなのか>がわからなかった」

7)複数の主たる情報筋(例えば、異なる複数の公的な情報源)から異なるメッセージが出る
Manageの悪さ、チグハグ感は不信や思考停止、無視につながり危険。統一窓口が必要。

8)情報のタイムラグ
医師が情報を知るのが患者経由、その手前にマスメディアがセンセーショナルに報じるというのは避けたい状況です。
医師会や行政からの連絡よりも、今やネット情報の方が早いですが。同時に患者さん達も知るわけです。このラグを縮める努力は今後重要だとおもいます。

特に急ぐ必要がない案件について、リスク情報だけを拙速にメディアに情報を流さないことも今後の課題かもしれません。

9)伝える人(顔)の選択
信頼されていない評判のヨクナイ人がいうと胡散臭い(あったりまえか)。
そのような人が「ほら、安全ですよ、私もこのよーにむしゃむしゃ食べている!」とパフォーマンスしてもどん引きされて不信がつのるだけ。

普段から信頼される情報源になるにはどうしたらいいでしょうか?

例えば、現在問題になっている、ポリオの生ワクチンのリスク。
放置しないで早くポリオの不活化ワクチンを緊急輸入するなり、国の予防接種の枠組みやプログラムを刷新しないといけないのではないでしょうか。


【初期に必要な対応】
1)ホットライン(電話)やメールでの問い合わせ先をつくる

相談先がある、ということだけで不安緩和になります。
また、医療機関などへの問い合わせ集中が回避でき、現場の負荷を軽減することができる。

2)FAQs(よくある質問の公開) ←3月5日に公開されました

他の人も同じようなことを疑問に思っている、という納得。
不安や質問に対応がすすめられている、という確認。


3)短期的なスケジュールをアナウンスする

「●月●日に検討会議を行い、その結果を公開いたします」


4)具体的なアクションの提示
より具体的に対象と行動パターンを提示する

①接種をしたばかりのお子さんのいる親御さんへ
②近日中に接種を予定していた親御さんへ
③接種を今後計画しようとしていた親御さんへ  などなど。

小児科の先生がたがいち早く不安のケアに動かれていますね。

今日は近日中に接種予定だった方の保護者への連絡など、関係の皆さんはとても大変だったと思います。
お疲れ様でした。

平時にもどるまでがんばりましょう。
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