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どうして海外でHIVワクチンの臨床試験をやるのか?の巻

2011-03-07 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
先日、日本の会社が開発に関わっているエイズワクチンについて、2012年に臨床試験を米国で行うというニュースが流れました。

「夢の新薬 完成間近」

いち早くこの情報を知りウォ~!ってなったのは株をやっている友人たちでした。

友人「ねっねっ、うまくいくと思う????」

―いやまったく

友人「またまたー。夢の新薬ってあるよ。」

―だから「夢」なんじゃない? 絶望的っていわれている案件だけど。

友人「・・・」

―(あ、夢を壊してはいけない) い、いや、もしかしたらうまくいくかもねえ。科学は進歩しているからねえ。

友人「そうか!完成したら売れるかな?」

―さあ。

友人「げっ。完成しても売れないのか?」


さて。皆さんならどのように答えますか?

学生さんからきた質問は「せっかく日本で開発したのに、なんで海外で臨床試験をやるんですか?」でした。

予防ワクチンの効果をみる場合、「接種した群」と「プラセボ群」を比較することになります。
ワクチン以外の因子の影響はなるべく同じにするために、一定の数のサンプル数を確保し、別途必要なガイダンスを行います。

実際問題、「感染予防効果」とは、その病原体に曝露したときに「感染しなかった」というアウトカムが重要なわけです。

日本でHIVワクチンの感染予防効果を検証できないそもそもの理由は、「もともとほとんど流行しておらず、接種してもしなくても、HIVに感染しそうにない」ということです。
(その他倫理員会的な限界もあるかもしれませんが)

現在、日本ではHIVは男性と性交をする男性の間で限局流行していますので、例えば、「私は男性と性交をする男性」という認知をしている人たちが、ワクチンの効果を検証するためにトライアルに参加すれば可能になります。

判定の問題として、接種した人は非感染でも抗体検査で陽性が出るということも指摘されました。

開発は絶望的といわれながら、チャレンジが続くHIVワクチンの研究ですが、これが仮に開発に成功したらどうなるか。


■コストの問題
これまでにかかった費用を回収するとなるとHPVワクチンよりも高額になるのでは?という話。途上国で広く接種可能でないと、全体の疾病負荷をさげるまでにいたりません。

■優先接種対象の設定
万人向けのワクチンではないので、ハイリスク層に接種することになると思います。「私はハイリスクなので接種して下さい」と自らどのようにどこにアプローチをすればいいのか。接種サイトをどこに設営すべきか。

■安定供給の問題
全員に接種するのではなく、また無症候期の長い感染症のため、制圧や排除は難しそうです。誰に何歳のときに何回接種をすればいいのか?(ワクチンのタイプにもよりますが)

ワクチンうったからダイジョウブダ~とコンドームを使わない&パートナー数Upとなっていくと別のSTDになるリスクが生じます。

日本でも開発に関わっている会社や研究者がありますね。

ニュースレターが2007年でとまっているようですが、特定非営利活動法人エイズワクチン開発協会(AVDA)という団体が開発を支援しているようです。

ワクチン開発ってたいへんですよね。
今ある安全性や有効性が確認されているワクチンは大事にしなくちゃ。
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