感染症診療の原則

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メディアが専門家に言わせたいこと

2015-06-05 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
昨年のエボラ騒動のときから、エボラは日本に入ってくると思うか? と何度も質問を受けました。

入ってきてもおかしくはないけど、出国時検疫含めた外国に入らないための対策をギリギリまでやってるので、直行便もない日本にはいる確率的にはゼロに近く、入ってくるならMERSでしょ、と話してたときはMERSはスルーされていました。

今週はMERSのといあわせばかりです。

MERSはどんな病気か感染経路から語ってくれ、という記者には、まずは"ずいぶん前から"公開されている厚生労働省のQ&Aを読んで、さらに質問があったら連絡ください、と伝えてあります。

なんとか語らせたい内容は、韓国の関係者に落ち度があった、医療機関が失敗をした、日本でも起きかねない、厚労省の対応が十分でない、などの批判記事で、個人や社会を守る視点ではないことが残念です。
2012年からのとりくみをまずざっとレビューするところから始めればいいと思いますし、6/3のLancetに親切な記事があるので、説明をしないといけない人にはおすすめです。


http://www.thelancet.com/pb/assets/raw/Lancet/pdfs/S0140673615604548.pdf


昨年なかばヒステリー気味に出血熱対応をしたわりには、やることとしてはぼインフルエンザ対策と同じこの病気の対応がはなにをすればいいかわからなくなっているICT、水際でとめないと!といってる保健所の人を見て、MERS以上の別の不安を感じます。

誰かのせいにしたり、患者さんやご家族をおいこんだりするのはやめましょう。

わかりにくい指示の文書も混乱のもと。
スタッフに厚労省の資料そのままをpdf回覧するのはコミュニケーションとして、適切ではない対象もいます。
アクションレベルで数行で、何をすべきかしてはいけないかを伝えないと期待する行動はとれません。


広げないための対策は完璧にはできません。エボラのようにシンプルな対策ではありません。
2次感染予防は平時からやってないとできません。

検査で○○だったとわかるのはかなり後です。

マレーシアで死亡した高齢男性の輸入例は、糖尿病などの基礎疾患があり、肺炎と受診したときの発熱は36度代でした。

イスラムの巡礼から帰国したばかりなので高度流行地への渡航歴がすぐ把握されました。

日本の医療機関で、糖尿病の情報があっても平熱は平熱と思われるかもしれませんし、マレーシア人、ということからイスラム教への配慮のいる患者さんからかもしれないと考えられる医療者はどれくらいいるか。

MERSのが1000例以上報告されているサウジアラビアの人の診療はできても、発熱の韓国からの旅行者の受診は断るとか、感染症は感染症それだけでなく、それ以上に個人や社会にリスクを生じさせることを再び学んでいるところです。私たちは。

あおり系が多い中、
以下の二つの記事は参考になりました。

http://jp.reuters.com/article/jp_korea/idJPKBN0OK0B420150604

http://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2015/06/03/411728520/mers-in-s-korea-is-bad-news-but-its-not-yet-time-to-panic

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