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性感染症予防指針とワクチン

2011-07-24 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
日本では、エイズ対策と、他の性感染症対策が別軸になっています。

厚労省ではエイズは疾病対策課の管轄で、その他が結核感染症課です。

予防は厚労省もかかわりますが、学校教育での中身は文部科学省です。

子どもたちが必要としている情報、市民が必要としているサービスがこのはざまで質の悪いものにならないかを監視していく必要があります。

「予防指針」は国がどう取り組んでいくかについてのおおもとの方向性を示すものです。

ざっくりという「エネルギー政策」のようなもので、そこに細かいことはないのですが、予算をどこにどれくらいつけていくのか、そもそも国として何を目指しているのか。5年間を決めるものですから責任は重大です。

日本には性感染症を専門に扱う機関(センターなど)、専門家を訓練する機関もありません。
関係する委員を集めて、事務局(厚労省)との話し合いが続けられています。

途中までの経過は議事録で知ることができます。
こちらのページにあります

この夏のカナダで開かれている国際会議関連ニュースとして、数年前日本で報告されたセフトリアキソン低感受性の淋菌の話が一般メディアでも扱われ、一般の人の間でも関心が寄せられています。

今までは、日本の性感染症対策は「気合」と「コンドーム」でした。

気合というのは、正しい知識を身に着けて正しい行動をとればならないでしょう、という科学的に正確でない立ち位置のことです。

もちろん世界ではそのような言い方はしません。
そもそもコンドームで予防しきれない性感染症(ヘルペス、梅毒、HPVなど)があるのですから。

5年前と今回の比較ですが、今回は当然のことながらワクチンが文言に入るだろうと想像します。

尖圭コンジローマを予防する4価のHPVワクチン「ガーダシル」が認可されていますし、B型肝炎に至っては、訴訟で国の対策が不十分だったために国民に肝炎ウイルスがひろがったじゃないか的結論になりました。

世界では赤ちゃんのときにB型肝炎のワクチンをルチンで接種するとっころがほとんどであり、日本は流行国の一つに数えられているのに丸腰状態のため、保育園や家庭内で感染するリスクを子どもたちが抱えています。
原因不明のB急性肝炎の症例が報告され続けているのも公衆衛生的にも問題です。

今後、性感染症としてのB型肝炎の拡大は、そのウイルスのタイプがキャリア化しやすいものといわれていますので、ワクチンはますます重要ですし、本来ならB型肝炎ワクチンは定期接種に位置付けられるべきものです。

HPVワクチンの完全公費化は優先順位的には微妙ですが、情報提供としてまず、性感染症予防指針に位置付けるべきことは当然のことだとおもいます。

検査はどこまで無料でやるのか。
HIV検査は保健所で匿名・無料ですが、クラミジア等も保健所で無料で抗原検査までやるべきなのか。やれるのか。

来週また会議があるので注目です。
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