感染症診療の原則

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分娩時のB群レンサ球菌(GBS)感染予防

2010-08-01 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
編集部です。もうひとつお産と感染症の話。

「自然」なお産を調べていくと、医療介入がない=自然というとらえ方がベースであることがわかります。
お産での最たる医療介入は、帝王切開、部分的ということでは会陰切開、ルチンなこととしては、仰向け分娩台にのること、ルートをとること(予防的抗菌薬投与)があげられています。

片腕に点滴がはいって、もうひとつに血圧計を巻かれる状態は、希望する「自然」から遠くなる・・・ということです。この点滴ヤダワ、なのかもしれませんが、GBS陽性となった場合にどうするか?ということがあります。

米国では分娩前のスクリーニングで直腸または膣でGBS陽性の場合(日本は直腸の培養はしないそうですが)、前児がGBS感染症だった、今回の妊娠中にGBS細菌尿が確認された、GBS感染について不明の場合、抗菌薬投与が推奨されています。
分娩時に38℃以上の発熱、妊娠37週未満の早産、破水後18時間以上の場合にも投与されます(これらの症状があるとリスクが高くなる)。

日本の詳細なデータではありませんが、マンデルには、GBSは無症候性キャリアとして、女性の陰部や直腸から10~40%分離される、とあります。
性行為による感染拡大がわかっていますので、やはり妊娠中にもコンドーム継続使用の指導は正しい・・・。

米国のデータでは、抗菌薬を投与しないと赤ちゃんがGBS感染症になる確率は200分の1。
投与しても感染を防げない確率は4000分の1。
アレルギー反応の確率は10分の1、アナフィラキシーショックの確率は10万分の1の確率。

この感染症のリスクをホメオパシーではどうとらえているか。

量子場調整とホメオパシー関連のBlogにホメオパシーの大会での発表の内容が紹介されていました。

説明の枠組みとしては、常在菌であるGBSやカンジタが問題になるのは、「その土壌」のためで、食べ物の影響として「パンや乳製品、甘いもの」を問題と考えています。

ホメオパスはどのように対応をしてくれるかというと、「Bac.(バシライナム/結核菌)と、Med.(メドライナム/淋病)」というレメディの併用、「食事を菜食中心にすること、生活を整える」さらに「民間療法の大根ヒバ湯、枇杷エキス、よもぎ風呂なども併用」

これらは仮にやったらマズイということではないとしても(プラセボ)、本来受けるべきケアを否定されてしまうと怖いです。

抗菌薬の投与をどう考えるか。

日本人妊婦の15~25%が保菌、発症1%、新生児の垂直感染1%、100万件の出産があったら2.5人の赤ちゃんにリスクで、その2.5人を助けるために、25000人の母子に『半ば強制的に抗生物質の投与』とあります。

抗菌薬使用によって腸内細菌等が死滅、常在菌のバランスが崩れてカンジダが問題になる→抗生物質を使うと身体の免疫は落ちるということが心配されています。

一般の人は抗菌薬をこのように説明され、理解しているということです。

そして、GBSに感染して発症する赤ちゃんがいるとしても、それは妊娠した時の両親の体の毒のたまり具合、先祖からの遺伝、妊娠中の胎教(母親の食事や心境など)などが影響している、と考えます。

・・・(--;)ここでキレてはいけません。どうしたら、抗菌薬投与を検討できるか?です。

これまできいている範囲だと、ご主人(赤ちゃんのお父さん)が先に怒って説得に入る、何かあったときのために一筆書いてもらう、ということがあるそうです。

早発型のGBS感染は生後7日以内(多くは出生当日)に発症し、肺炎による呼吸窮迫症候群に似た呼吸困難、その後全身感染を起こして敗血症となり、低体温、無呼吸発作、出血斑などが出現して、20%が死亡・30%に後遺症・・・というリスクです。

抗菌薬の予防的な使用や予防接種にしても、本来できる対処をせずに発生した生命たリスクを「しかたがないわね」と受け入れる覚悟が親にあるのか? あるとしても、子どもの命はそのように決められてしまってよいのだろうか?という倫理的な問題が残るように思います。

日本での研究 分娩まで、余裕をもって保健指導・抗菌薬投与したほうがよい、という結論になっています。

Intrapartum antibiotics for known maternal Group B streptococcal colonization
Ohlsson A, Shah VS(2009年4月30日更新)

The New GBS Cochrane Review: A Hot Mess!
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1 コメント

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Unknown (ふぃっしゅ)
2010-08-02 13:52:21
はじめまして。参考になるエントリーありがとうございます。
助産院で出産ができるかどうかの判断の基準になるガイドラインでは、GBS陽性は医療施設での分娩になります。
ところがホメオパシーを使用している助産院では、「GBS陽性になると助産院では産めなくなるから」(「病院送りになる」とか表現する人たちもいるようです)と、GBSのレメディを妊娠中に渡しているところもあるようです。適切な医療を受ける必要に対して、心理的な壁を作り出すことが問題点のひとつと思います。
もうひとつは、36週前後の培養で陽性になる人は記事にもあるように10~40%ですから、陰性だった人は「レメディのおかげで陰性になった」と間違った理解と、ホメオパシーへの信頼を強める機会になってしまう可能性があると思います。

ケイツーシロップの件だけではなく、ホメオパシーが出産の場で使用されることにはたくさんの問題を作り出す可能性があると思います。
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