感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

Little evidence that quarantine helps

2009-05-07 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
検疫で過労死しそうになっている関係者や、便乗商売でぼろもうけのマスク業者が聞いたら・・・・になるようなQ&Aがカナダのモントリオールのメディアにありました。よく聞かれる項目なので参考になります。

※印は文中にない補足です。
-------------------------------------------

"Little evidence that quarantine helps:What you should know"
(The GazetteMay 3, 2009、Q&AシリーズのPart 2)

「H1N1に感染した人は検疫下におかれるべきでしょうか?」

現時点ではカナダ政府は警察権を使っての検疫を行うことは検討していません。

(※お願いベースで協力してもらう)

検疫が有効であるというエビデンスはほとんどありません。

インフルエンザになる人の二人に一人は症状が出る1日前~2日前は元気な状態です。(※感染力は発症1日前から)


病院では現時点でA/H1N1の疑い患者・確定患者を他の患者から隔離をしています。
マイルドな症状のため自宅で回復する人もいます。この人たちは回復するまで自宅にいるように説明を受けています。

自宅隔離の期間は7日間です。感染した人は発症の24時間前から発症後6日、他の人に感染させうるのでそれを防ぐのが実際のところの目的です。


「市民はマスクをするべきでしょうか?メキシコの人たちがしているように。」

カナダの公衆衛生当局は健康な人が日常生活や地域においてにマスクをするように推奨はしていません。

(※日本も別にしろとはいわれていないはず)

一般人に対してマスクをすることで感染予防ができると提言可能なエビデンスは存在しません。


「どれくらいのはやさでA/H1N1はひろがっているのですか?」

誰にもわかりません。しかし、当初予想されていたよりもゆっくりのようです。

Epidemiologistsは「R zero」、または 「reproduction rate」という表現をしています。これは感染の広がりを示すものです。

通常は、インフルエンザのR率は12といわれています。これは感染した人から接触や咳で何人に感染が広がるかを意味します。

初期の情報ではこのウイルスのRはたった2でした(McGill大学ヘルスセンターBrian Ward)。
Ward医師は“他のインフルエンザウイルスと比較して、感染しにくいようである”
と指摘していますj。

他のすべてのインフルエンザウイルスのように、このウイルスも変異を続け、もっと感染力が強くなるかもしれません。モントリオールでもヒトヒト感染が続き死亡例が劇的に増えれば、、メキシコのように社会活動の制限も検討されるかもしれません。


「名前がブタインフルエンザですよね?ブタを食べたら感染したりしませんか?」

いいえ感染しません。リステリア症とは異なり、ブタのインフルエンザは食べ物経由の病気ではありません。WHOはもうブタインフルエンザという言い方をしていません。

「カナダの症例はすべてマイルドな症状のようですが、死亡者が出るようなパンデミックになるのでしょうか?」

必ずしもそうとはいえません。
1918-1919年のスペイン風邪の大流行のとき(4千万人が死亡)も第三波までありました。第1波は第2波ほど致死的ではありませんでした。

専門家は現在も注意深くありつつも楽観視しています。なぜならばウイルスの広がりはゆっくりでメキシコ以外の症例の症状はマイルドだからです。

"次の2-3週間でウイルスを世界レベルでコントロールできれば、うまく対応できるのではないか」(Maisonneuve-Rosemont Hospital微生物学者Karl Weiss)と指摘する専門家もいます。

カナダおよび他の国は1918年のときよりはよい準備ができています。
1918年当時はWHOさえありませんでした。
今日現在、WHOは病原体をリアルタイムで追い、引き続いての警告を発信することができます。

製薬会社は数百万ドーズのワクチンを数ヶ月でつくることができます。病気になった人にはタミフルのような抗ウイルス薬で治療が行われます。

もし肺炎のような合併症になったらば、抗菌薬で治療されます。
これは1918年のときにはなかったものです。

最後になりますが、カナダと他の国々にはパンデミック対策計画があり、すでにそれは実施されています。
http://www.montrealgazette.com/Health/Little+evidence+that+quarantine+helps/1558766/story.html

---------------------------------------------------------

上記の「R](1症例からどれくらい感染するか):Wikipedia(リファレンスあり)
航空機内の麻疹感染 12-18
飛沫による百日咳感染12-17
ジフテリア症の唾液による感染 6-7
ポリオ Fecal-oral 感染 5-7
風疹 空中の飛沫感染 5-7
ムンプス 同上 4-7
HIV/AIDS 性的接触 2-5
SARS 空中の飛沫感染 2-5
インフルエンザ(1918 pandemic strain) 空中の飛沫感染 2-3
http://en.wikipedia.org/wiki/Basic_reproduction_number

■タミフルの偽造品にご注意!
http://www.montrealgazette.com/health/swine-flu/Beware+fake+medications+Health+Canada/1561715/story.html

■体調不良もないのにカナダ人大学生が検疫下におかれたことについてカナダのはーパー首相は中国政府に説明を求める
http://www.montrealgazette.com/health/swine-flu/Canada+seeks+explanation+Chinese+quarantine/1565474/story.html
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大曲先生の美声で目覚める朝♪ | トップ | 事務連絡;沢山の質問&コメ... »
最新の画像もっと見る

毎日いんふぇくしょん(編集部)」カテゴリの最新記事