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(想定外だった)被ばくした人の診療

2011-06-14 | Aoki Office
東京電力福島第一原子力発電所(最近は第二もニュースになってますが)事故の対応は長期化しており、そこで働く人の確保、働く人の安全や健康の確保が大きな課題となっています。

被ばく量の上限があるので、いずれにしてもある時点で「これ以上働けない」状況にになる人たちがいます。
新たに集められる「協力企業」=下請けや日雇い労働の人は、熟練ではなく、防護の知識や事故予防上不利になっていくことが懸念されています。

保健医療に関わると、様々なハイリスク因子のある人たちのケアに関わりますが、「原子力発電所で働いて被ばくした人」の診療を自分がするかもしれないという意識はこれまでありませんでした。
被ばく医療の研修会に参加したこともありません。

現在、誰がこの労働衛生や健康を守っているのか。

東京電力の記者会見で知ったのですが、ある時期まで福島第一原発の医務室には、医師のみ1名、10~16時勤務でした。この時間帯以外は「医療班」なる係が対応。

ある日、60代の男性作業員が作業開始50分後に意識不明となり、Jビレッジに車で搬送。
そこから初期被ばく医療機関であるいわき市の病院に搬送。そこで死亡確認となりました。原因については警察が検死を行い、心筋梗塞という情報になっていました。

現在、お昼の12時時点で福島第一原発で働いている人は第二で作業をしている人を含め2-3千人(宿泊は200名)になっています。現場作業で怪我をしたり、これからの季節は熱中症などでケアニーズが高まります。※佐藤議員Twitter情報

直近の情報では、厚労省から依頼をうけた労災病院が医師を派遣。福島第一原発は24時間体制になっているということです。

派遣される医師らが十分な研修や補償を受ける仕組みがあるのかわかりませんが、長期化するなかで、自分たちの仲間や知り合いが一定の被ばくリスクをおいながら診療していくことになります(そして交替要員も必要)。

この24時間体制も、現在1名しか医師がいないので、誰かが具合が悪くなり搬送につきそうと、医師が不在になります。看護師は今もゼロ。

10km離れた第二原発には医師1名、と看護師2名がいます。
20km離れたJビレッジにも東電病院の医師、DMATの支援医師、自衛隊の医師と看護師がいます。
そこからはヘリコプターで磐城共立病院などに搬送されています。

本来簡単な診療は周囲の初期対応医療機関がするのですが、避難区域になっているため離れた医療機関にいく必要があります。

最近、ER系の先生たちにうかがったのですが、被ばく医療・緊急被ばく医療について必ずしも皆が知識を持っているわけではないそうです。

内部被ばくがどのような健康影響をもたらすのか。
いろいろ情報はとびかっていますが、自分の目の前に「原発内で作業をしたことがあります」「線量の高い地域ですごしていたことがあります」というようなことがリスク情報や、不安要因として把握されるときがくるだろうと思い、現況についての勉強を続けています。
内科、産婦人科、小児科でそれぞれ関心は違うかもしれません。

将来的に因果関係を説明する、、となると診断した医師の意見なども重視されるわけですが、現状を把握する仕組みがまだ整備されていない状況です。

政府はホールボディカウンターを緊急で5台輸入するそうです(合計1億8千万円)。
(国内にも100台近くあるようですが、メンテナンス含めてどれくらいがすぐに稼動するのかは不明の状況とのこと)
最終的にどれくらいの人がどれくらいの被ばくの影響を受けるのかまだわかりませんが、実際、労災を認めてもらえる人はとても少ない。

(参考)
■「健康管理手帳」
労働安全衛生法の67条には「健康管理手帳」として、離職後がんその他重度の健康障害を発症するおそれのある業務従事者には、離職の際健康管理手帳を交付し、健康診断と治療を受ける権利を保障。

■「放射線管理手帳」
これは国の制度ではなく、「放射線従事者中央登録センター」が発行管理。
(東京電力など原子力事業者と東芝やIHIなど、建設・保守事業者が資金を出しあって管理運営する放射線影響協会による)
企業は登録センターから手帳を購入し、労働者に交付し、在籍中は労働者の紛失を避けるためということで、企業の関係部署が保管し、退職時に本人に返却するという仕組
CNIC 原子力資料情報室
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