感染症診療の原則

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The way we frame an issue

2011-06-14 | 青木語録

旨い事を言うものです。「The way we frame an issue」

ある現象をどのような言葉で表現するか・・という事でしょうか?

長期間、漫然とした不定愁訴、微熱、倦怠感、これを「カゼ」とFrameするか不明熱的病態と捉えるか?

発熱・悪心・嘔吐・下痢を「胃腸炎」とFrameするか、何か免疫系を激しく揺さぶる何かが起きていると捉えるか?

先日お会いしたスタイン先生が見せて下さった論文。「市中肺炎」とFrameされたものが、実は典型的な肺結核であったというものでした。なぜ典型的な肺結核が「市中肺炎」とFrameされたのか? それは体重減少・寝汗・慢性咳・血痰が二ヶ月も続いていた患者が初めてERに来た・・という病歴が見逃されたから、そしてそれを「市中肺炎」とFrameしてしまったからでした。

因みに「市中肺炎」という言葉は1970年代後半に出てきた概念らしいです。(編集長が研修を始めた頃)。それまでは細菌性肺炎といった原因を比較的限定した名前を使っていたのです。それが主に二つの理由で「市中肺炎」という言葉に置き換わっていった。第一は細菌性、ウイルス性、非感染性などを臨床像で分ける事が難しいと分かってきた。第二は原因微生物を細かく詮索せずともFQのような広域抗菌薬でたたけるようになった。更にthe Clinical Laboratory Improvement Amendments (CLIA) のお陰で"研修医によるグラム染色"といった風景が消えてしまい顕微鏡所見による原因微生物の検討といった事が消滅。さらに追い打ちをかけるように培養は時間がかかり感度・特異度に問題が多い。

どこで生じたかという軸ならば「市中肺炎」とFrame, 微生物を特定しようというドライブが見えるグラム染色や抗酸菌染色の軸ならば「肺炎球菌性肺炎」「肺結核」とFrame・・

「The way we frame an issue」  味わい深い事です・・
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