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感染症診療の原則

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ワクチン関連問題の報じられ方  HPVワクチン

2011-03-09 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
ちょうど日本は予防接種制度の大きな転換期にあるので、地味な感染症ブログといたしましては、ひきつづき情報をフォローしていきたいとかんがえております。


2価のHPVワクチン(サーバリックス)の在庫の問題についてメディアによって異なる報道がありました。

○ 「子宮頸がんワクチン品薄 公費助成開始で調達追いつかず」
朝日 3月5日
× 「子宮頸がんワクチン不足 無料接種で需要急増、生産追いつかず 」
産経 3月7日

朝日新聞はちゃんと広報部に問い合わせて記事を書いています。ベルギーの工場からの輸送が間に合わないということです。
産経のほうは(推測ですが)巷にあった情報だけで書いちゃったのかなという印象。

世界で接種されているHPVワクチンの約8-9割はガーダシル(4価)ですし、サーバリックス製造が追いついていないよなんて情報はどこにも流れていませんので。

次。

この毎日新聞の記事のタイトルは「希望者殺到」なんですが、本文にその根拠となるような情報はありません。

ワクチン関係ではこのような人の不安を煽るような報道はヨクナイですね。

今回の公費助成は、補正予算の議論が国で先にあり、地方の議会での予算確保→医師会説明→学校や地域連携のもとに広報→予約、という手続き期間(時間)もありました。

公費枠以外での年齢での接種もあるのですから、もう少し確実なソースに当たって書くべきでしょう。

今回は単なるメーカーの需給見通しの甘さが第一の問題ではないでしょうか。

東京都をはじめ、大都市部のように子どもが多くて準備を慎重にしていたところでは、そもそも公費化は4月からということになっていましたし、そのことは誰でも知りえた情報です。
東京で公費が始まったらどうなるか?と考えただけでそれなりの在庫がいるじゃんか、って考えないのか・・?

こういうことがあると、ネットで「メーカーが煽るために自作自演してるんじゃねーの?」とか書かれ、予防接種や製薬会社全体が悪くいわれて不信の原因につながるリスクがあります。今後のための学びにつなげましょう。


比較のための参考になるのは下野新聞。

「子宮頸がん接種、出足低調 宇都宮市の全額公費ワクチン」
下野新聞 3月2日
取材をしています(あたりまえだけど・・)。

「1月11日から始まった全額公費負担による市の子宮頸がん予防ワクチンを同月中に接種した人は、少なくとも257人だったことが市保健予防課への取材で分かった」
記事を読むとわかりますが、ちゃんと分母情報まで入れて数字を評価しています。

記者の推測だけでなく、担当者の発言も紹介されています。また、Hibと肺炎球菌についての数値も評価とともに書かれています。

記者が足を使い、人々に何を伝えようとするのか。意思が感じられます。
こういった記事を読みたいですね。

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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すごい情報収集能力! (関根 奉允)
2011-03-09 16:21:55
前回(3/8)の「サスペンド、というサスペンス(あと2週間)」といい、これまでの<感染症診療の原則>の情報収集・分析能力はすごい。厚労省、感染研、各種委員会は、研究・リサーチを、いつもの例の調査屋に発注するのでなく、ここに依頼したらよいと何時も思うのだが..。断られるだろうがw。
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