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どこに消えたのMMRワクチン

2013-07-01 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
昔は日本にもMMRワクチンがあったのですが、ムンプスでの髄膜炎が問題となって、MMR-M=MRとなりました。

現在、世界には水痘ワクチンを加えた4種混合のMMRVワクチンもあります。

ムンプスが定期ワクチンからはずれたため、ムンプスは日本ではエンデミックであり、これほど補聴器が売れるのはこのためじゃないかという話まできこえてきます。

MMRワクチンのことを考えるためにはまずこの資料を読む必要があります。

「おたふくかぜワクチンに関するファクトシート (平成22年7月7日版)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bybc.pdf

(7ページン記載)
"2009 年時点、世界 118 ヵ国で麻疹・風疹・おたふくかぜ混合(MMR)生ワクチンなどの定期接種が行なわれる様になり、ほとんどの国で 2 回接種が行われている。それにともない世界的におたふくかぜの発生件数は激減しており、おたふくかぜの流行を繰り返しているのはエジプト、リビア以外のアフリカ諸国と日本を含む東アジア地域の一部の国だけに限られてきつつある "

という自己評価。で、その次のアクションは?ですが、今年度中にどうにかすることになっています(昨年度にそのようにきまりました)。
どうにか、って何かが問題なんですが。どうなるんでしょうね。


もう永遠に日本でMMRワクチンは接種できないのか?というと、そうともいえません。途中まで検討されたものはあります、です。
上記資料の8ページの表には武田薬品工業 北里研究所  阪大微生物病研究会  化学及血清療法研究所のMMRワクチンの一覧表があります。何

ムンプスの株はJery-Lynn  RIT-4385  Rubini Urabe-AM9  Torii Hoshino-L32  Miyahara NK M-46  Leningrad-3  L-Zagreb  Sofia-6  S-12  BBM-18 がありますが、一番右側、化血研のJeryl-Lynn株のM-M-R Ⅱの臨床試験が行われたんですね。

そしてファクトシートには"化血研は Merck Sharp & Dohme 社の MMR ワクチン(M-M-RTM Ⅱ)の輸入販 売を申請中である"とあります。

たしかに、2013年5月の時点の申請/臨床試験の一覧の中に、「KM-248(乾燥弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン)、注射剤」が入っています。

調べてみると、2003年に阿部知子議員が質問をして、厚労省審査管理課は下記のような回答をしています。

"MMR-Ⅱエムエスディ」については、平成15年2月17日に財団法人化学及血清療法研究所より承認申請されたところである.本薬は現在審査中.新医薬品の標準的な事務処理期間(厚生労働省が審査に要する期間)は1年"

だそうです。
どこにいっちゃったんでしょう。M-M-R Ⅱ。


現在輸入をしようとなったら、GSKのPriorixか、世界72カ国以上で使われているMerckのM-M-R Ⅱのどちらかになるんですが。他のメーカ―もありました・・・。
日本でせっかく臨床試験までしたのにもったいない。


余談ですが。Jeryl Lynnというのはワクチンを開発した方の娘さんの名前です。

Hilleman博士がご存命のときに語ったムンプスワクチンの話が動画で残っています。Mumps: Jeryl Lynn Story

A Forgotten Pioneer of Vaccines

BBC Number one enemy of child infections
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