hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

米澤穂信『可燃物』を読む

2024年05月03日 | 読書2

 

米澤穂信著『可燃物』(2023年7月25日文藝春秋発行)を読んだ。

 

「文藝春秋BOOKS」

米澤穂積、初の警察ミステリー。

2023年ミステリーランキング3冠達成!
(「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」)

5編の連作短篇集。

 

「崖の下」 雪山での遭難×見つからない凶器

群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、崖下に頸動脈を刺され失血死した後東の遺体があった。5人グループのうち、犯人は一緒に遭難していた水野とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。深夜の山中の崖の下、二人の周りの雪は踏み荒らされておらず、凶器を処分することは不可能だった。病院に運び込まれた水野は両手など複数個所を骨折し、右前腕は開放骨折していて、合併症の危険があった。彼は何を使って〝刺殺〟したのか?

 

「ねむけ」 交通事故×不自然に一致する目撃情報

ワゴン車が、軽自動車と交通事故を起こした。事件現場は、深夜の交差点。聞き込みの結果、ワゴン車の運転手が信号無視をしたという目撃情報が。ワゴン車の運転手は強盗殺人の容疑濃厚者の田熊。危険運転致傷罪で逮捕して強盗容疑の取り調べをする絶好のチャンスだ。ワゴン車の方が信号無視だという4名証言が不自然に一致しているが、4名に共通点はない。

 

「命の恩」 バラバラ遺体×ずさんな犯行

榛名山麓の湿地帯にかけられた木道〈きすげ回廊〉で右上腕が発見され、すぐに各所でばらばらな遺体が発見された。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。また、なぜ犯人は死体を切り刻んだのか? 

 

「可燃物」 連続放火事件×読めない動機

太田市の住宅街のゴミ集積所で連続火災が発生した。放火事件として県警の葛班が捜査に当たったが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。なぜ収集日の前日に出された可燃ゴミだけを狙ったのか? 犯行の動機は? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが、……。

 

「本物か」 立てこもり事件×かみ合わない証言

郊外のファミリーレストランで、立てこもり事件が発生。立てこもり犯は傷害前科一犯の志多らしい。店内から避難した客と店員に事情聴取するが、証言がどこかかみ合わない……。

 

 

主人公は葛(かつら)警部。群馬県警本部捜査第一課。余計なことはもちろん、確信が持てない段階の情報も喋らない。単独行動しがちで、上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査実績はすばらしい。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

手慣れた筆致でわかりやすく、安心して楽しましてくれるベテランの味。

 

丁寧に記述を重ねる長編と違って、短篇なので、仕掛け、意外性に多少強引なところがある。

 

鋭い推理力はもちろん、ズバズバ言って反感を買い、常に捜査優先で冷静、手柄にこだわらない葛刑事が魅力的。

 

 

米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)の略歴と既読本リスト

 

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