hiyamizu's blog

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東野圭吾『時生』を読む

2018年01月19日 | 読書2

 

 東野圭吾著『時生(トキオ)』(講談社文庫 ひ17-25、2005年8月15日講談社発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った――。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。

 

 

 宮本拓実は勤めてはすぐに喧嘩して辞めてしまう根性なしの若者だった。花やしきで「トキオ」と名乗る少年と出会い、自分の住むアパートにトキオを居候させる。 拓実にはスナックで働く千鶴という恋人がいて、金に困っては金をたかっていた。

 千鶴が、とりあえずの金を渡して紹介した面接を、拓実はパチンコで金を使ってしまい、おまけに面接前に喧嘩してしまう。帰宅すると千鶴は突然姿を消し、置き手紙には別れの言葉があった。拓実には未練が残るある日、イシハラという名の危なそうな男が千鶴を探していると知る。拓実は、トキオとともに、何か大きな事件に巻き込まれているらしい彼女を探し始める。

 

 本書は2002年7月に講談社より単行本された『トキオ』を改題。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 未来から過去へ舞い戻るという話で、そのまま信じられない話ではあるが、ダメ人間の親の拓実と、将来を知ってしまっていて心配な少年トキオとの、一見逆のやりとりが面白く、読み進められる。

 

 拓実の実母への恨みはガキそのもので、少しも同情できない。このあたりを軸とした展開が続くが、少々うんざりぎみだ。

 

 話の流れは面白く興味を持てるのだが、結局分かった謎の疑惑自体は、1979年に発覚したKDD事件がモデルで深味はない。

(1979年10月モスクワを訪問したKDD板野学社長に同行した社員2人がネックレスやブローチなど数千万円相当を持ち込んだのを税関が発見した。やがて、板野社長のでたらめな公私混同が世論から叩かれたが、郵政省への過剰接待、政治家への巨額献金は徹底究明されずに終結した。)

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

登場人物

 

宮本拓実:23歳の拓実は、ギャンブル好きで、仕事が長続きしない。自分を捨てた母を恨み、性格が屈折。

宮本麗子:拓実の妻。男性にだけ現れる先天的な病気・グレゴリウス症候群の遺伝子を持つ。

宮本時生(トキオ):拓実の息子。先天的な病気・グレゴリウス症候群で3年寝たきりなっている。

 

早瀬千鶴:拓実の恋人。スナックで働く。拓実を信じてはいつも裏切られる。ある日突然・・・。

宮本邦夫:拓実の養父。

宮本達子:拓実の養母。

東條須美子:拓実の実母。旧姓麻丘。貧困の中、病気になり、拓実を里子に出す。後、老舗の和菓子屋に後妻として嫁いだ。

 

坂田竹美:千鶴の友人。気が強く、しっかり者。イシハラに捕まった千鶴救出に協力。不幸な生い立ちにめげずに、前向きに生きる。

ジェシー:2m近い大男の黒人。竹美の恋人。元ボクサー。

坂田清美:竹美の母。夫の暴力から娘を守るために、夫を殺した過去をもつ。

 

岡部竜夫:千鶴と共に失踪した謎の男。

イシハラ・ユウジロウ:闇の世界のヤクザのような謎の男。秘密を持ち出した岡部を追い、一緒の千鶴を捜す依頼を受けた。

日吉譲:イシハラの子分。戦闘のプロ。

 

麻岡たつ:須美子の母

高倉昌文(まさふみ)国際通信会社勤務の謎の男。

柿沢巧(爪塚夢作男):拓実の父。幻の漫画家。病気の後遺症で歩けなくなった。

 

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