hiyamizu's blog

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東野圭吾『眠りの森』を読む

2017年09月11日 | 読書2

 

 東野圭吾著『眠りの森』(講談社文庫、ひ17-7、1992年4月15日講談社発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

名門バレエ団で男が殺された。被疑者は居合わせたバレリーナ。正当防衛を主張するが、その証拠は見つからない。事件が混迷をきわめる中、「眠りの森の美女」を模した殺人事件が起こる。捜査にあたる加賀恭一郎は、被疑者の親友のダンサーと出会う。気丈に稽古に励む彼女に惹かれながらも、辛い決断の時が迫る。

 

 

 加賀恭一郎がまだ大学生だった1作目の『卒業』に続く、シリーズ第2作で、加賀恭一郎は刑事になっている。しかし、この頃加賀は警視庁捜査一課に所属していた。
 新春スペシャルドラマとしてTBSで阿部寛主演でドラマ化されている。

 

 有名な高柳バレエ団の事務所で、風間利之が殺された。加害者のバレエ団のバレリーナ・斎藤葉瑠子は正当防衛を主張する。疑問点は、金目の物がないバレエ団の事務所になぜ侵入したのか、風間とバレエ団との関わりが見えないことだった。

 捜査が停滞する中、バレエ団のバレエ・マスター、振付師で、演出家でもある梶田が演技指導中に毒物で殺害される。なぜ梶田が殺されたか、第一の強盗殺害事件との関係など、謎は深まる。

 

 

「刑事ドラマなんて見るんですか」

「見るよ、時々。なかなか面白いんだ。一時間でカタをつけなきゃならんから、どんどん手掛かりが出てくるしな」

 

 

 本書は、1989年5月に“推理特別書下ろし”作品として講談社より刊行。

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

 1989年当時から東野さんの文章は読みやすく、スイスイ抵抗なく読み進められる。グイグイ引きつけられるというわけではないが、いくつか気になる点があって、ついつい読んでしまう。

 

 東野作品はいつもながら、大きな破綻、つっかかりもなく、物語の展開は素直に進んでいくが、最後の謎解きで、意外な展開に強引に持っていくために、少々無理が感じられる。

 

 シリーズの初期ということで、加賀はまだ若く、純粋なのが微笑ましい。加賀の内面が十分に描かれるわけではないので、物足りない読者もいると思うが、シリーズの多くを読んでいれば、言葉や行動の背景が分かり、シリーズ愛好家だけが微笑むという仕組みになっている。

 

 加賀がシリーズ第1作の『卒業』のときの恋人と別れたことが明らかにされる。

「古い話です。大学卒業と同時に別れた恋人がいたんです」と加賀は白状した。・・・「茶道をやっている女の子で、俺も少し茶道をしていたので、その関係で親しくなったんです。高校の時でした。今彼女は出版社に勤めています。・・・」「でももう彼女とは何年も会っていないので、よくはわからないな」

 

加賀はズボンのポケットに手をつっこむと、くしゃくしゃになった千円札を一枚出した。そして受け取った小銭を、そのままポケットに戻した。現金を財布ではなく、ズボンのポケットから直接出し入れしている人間というのを、未緒は初めて見た。

 私も財布は持たず、ズボンのポケットに金を入れている。そういう男性は多いのでは?

 私は紙幣は畳んで重ねている。小銭もバラで入れていたが、ズボンのポケットに穴が開きがちなので、鞄持参のときは小銭入れに入れ、鞄を持参しないときは、小銭を持ちださないし、おつりはチップとして差し上げる。これはウソで、しかたなくそのままポケットに入れる。

 

 

以下、メモ

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

 

登場人物

 

加賀恭一郎:警視庁捜査一課。その後、日本橋署に移る。剣道の元日本チャンピオン。

太田:警視庁捜査一課の刑事

富井:警視庁捜査一課の警部。太田、加賀の上司。

小林:石神井署の警部補。捜査主任。

内村:渋谷署の警部補。

加賀隆正:恭一郎の父。元刑事。

 

浅岡未緒:高柳バレエ団の団員。葉瑠子の幼なじみ。

斎藤葉瑠子:高柳バレエ団の団員。22歳。侵入者を正当防衛(?)で殺害。未緒の幼なじみ。

森井靖子:高柳バレエ団の団員。未緒たちの3年先輩。

柳生講介:高柳バレエ団のダンサー。葉瑠子の恋人。

紺野健彦:高柳バレエ団のトップダンサー。

梶田康成:高柳バレエ団のバレエ・マスター、振付師、演出家

中野妙子:高柳バレエ団のミストレス

高柳静子:高柳バレエ団の経営者

高柳亜希子:高柳バレエ団の国際的にも通用するトップダンサー。静子の養女。

坂木:高柳バレエ団の事務局長

 

風間利之:25歳。絵の勉強のためニューヨークに行き、帰国後も再渡航予定。事務所に侵入し殺害される。

宮本清美:風間の恋人。

青木一弘:絵の留学生としてニューヨーク滞在中に殺されかけた。後に自殺。

 

斎藤政夫:葉瑠子の父親

斎藤広江:葉瑠子の母親

 

コメント
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