東野圭吾著『カッコウの卵は誰のもの』(光文社文庫ひ613、2013年2月20日光文社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
往年のトップスキーヤー緋田宏昌は、妻の死を機に驚くべきことを知る。一人娘の風美は彼の実の娘ではなかったのだ。苦悩しつつも愛情を注いだ娘は、彼をも凌ぐスキーヤーに成長した。そんな二人の前に才能と遺伝子の関係を研究する科学者が現れる。彼への協力を拒みつつ、娘の出生の秘密を探ろうとする緋田。そんな中、風美の大会出場を妨害する脅迫者が現れる―。
緋田風美の遺伝子からはスポーツ選手としてバランスなどに優れた才能に直結するFパターンが見つかった。新世開発スポーツ科学研究所の柚木は、研究のため父の宏昌の遺伝子も調べさせてほしいと頼むが、宏昌は何故か強く拒否する。
一方、耐久性に優れるBパターンの遺伝子を持つ登山家・鳥越克哉の息子、中学生の伸吾が同じ遺伝子を持つことがわかり、新世開発スポーツ科学研究所は伸吾をスキー部のクロスカントリーの訓練に参加させる。
遺伝子レベルでスポーツに才能のある若者はオリンピックで活躍して、会社の宣伝媒体になり得るか?
初出は、スポーツ月刊誌「VS.」(バーサス)に2004年から連載(タイトルは「フェイク」)。だたし、途中の2006年8月号で同誌が廃刊となり、月刊誌「小説宝石」に連載を移行。その後、2010年1月光文社刊。2016年春にWOWOWでドラマ化。
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
相変わらず読みやすいし、面白く読める。犯人探しの筋書が二転三転して面白い。
しかし、最後の謎解きには、意外性を無理して生み出すために、強引すぎて、すっきりせず、疑問が残る。大団円での説明では、主犯や実行犯の動機がいま一つ納得できないし、母親が自殺する理由もはっきりしない。
柚木という男、最初は冷たい理系人間で、上司の顔を伺うつまらない人間として登場する。しかし、後半では主人公なみに探偵として活躍し、おまけに急にいい人になっているのは、ちょっとした違和感があるが、笑える。
登場人物
緋田宏昌(ひだ・ひろまさ):スキーの元オリンピック日本代表。緋田風美の父。
緋田風美(ひだ・かざみ):緋田宏昌と智代の娘。新世開発スキー部所属。Fパターンの遺伝子の持ち主。
緋田智代(ひだ・ともよ):緋田風美の母。風美が2歳になる前に自殺した。旧姓は早川。
畑中弘恵(はたなか・ひろえ):智代の中学の親友。
柚木洋輔(ゆずき・ようすけ):新世開発スポーツ科学研究所副所長。スポーツ選手の才能と遺伝子の関係を研究し、才能ある若者の発掘を目指す。
高倉:緋田風美のコーチ
鳥越伸吾(とりごえ・しんご):新世開発スキー部ジュニアクラブ所属でクロスカントリーの訓練に参加する中学生。Bパターン遺伝子の持ち主。
鳥越克哉(とりごえ・かつや):鳥越伸吾の父。実績ある登山家だが、定職に就かず。Bパターン遺伝子の持ち主。
貝塚:鳥越伸吾のコーチ
上条伸行(かみじょう・のぶゆき):新潟長岡のケーエム建設社長。緋田風美のファンだと称する。新生児誘拐事件の被害者。
上条世津子(かみじょう・せつこ):上条伸行の妻。新生児誘拐事件の被害者。
上条文也(かみじょう・ふみや):上条伸行の息子で、ケーエム建設常務。骨髄性白血病で入院している。
小田切竜彦(おだぎり・たつひこ):ケーエム建設の社長秘書
西島:道警本部捜査一課の巡査部長