hiyamizu's blog

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東野圭吾『聖女の救済』を読む

2017年09月07日 | 読書2

 東野圭吾著『聖女の救済』(文春文庫ひ13-9、2012年4月10日、文藝春秋発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

資産家の男が自宅で毒殺された。毒物混入方法は不明、男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に魅かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが・・・。驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作!

 

 ガリレオシリーズ第5弾。2013年6月TVドラマ「ガリレオ」第2シリーズで映像化。

 

 

 真柴義孝は、子供ができないことを理由に綾音(あやね)を離婚すると告げた。結婚時にその話はあったものの、「愛情は変わっていないのだが」という義孝の嘘っぽい話に綾音は決心する。

・・・その目を化粧台に向けた。右側の一番下の引き出しに隠してある白い粉のことを思い浮かべた。ビニール袋に入っていて、その口はしっかりと閉じられている。

 9ページの時点で、犯人は誰かが暗示というより、明示される。あと400ページ余りは、完全犯罪を解明しようとする読者への著者の挑戦だ。

 

 ホームパーティーが行われた数日後、北海道の実家に帰った綾音の留守に、義孝を訪ねてきたパッチワーク教室の講師・若山宏美が義孝の死体を発見する。コーヒーからは猛毒・亜ヒ酸が見つかる。

 しかし、捜査に当たった草薙は一目で綾音に惹かれて呆然とする。一方、内海薫は、女の直感で綾音に疑いを持つ。綾音のアリバイは完璧で崩せず、毒物の混入経路も不明のまま、捜査は謎の周辺を少しずつ巡っていく。

 

 

 綾音が若山宏美に抱きついて泣いたのを見て、草薙は、綾音は夫と宏美の不倫に気づいていないと思った。しかし、内海薫は、そうではないのでは、と示唆した。

「・・・もしかしたらこの人は、人前で堂々と泣けるところを見せつけたがってるんじゃないか、と。人前で堂々と泣くわけにはいかない人に」

 

 捜査に協力しようとしない湯川に内海薫はわざと言った。

「草薙さんは」彼女は湯川の目を見つめて続けた。「恋をしています」

「えっ?」

湯川の目から、冷徹そうな光が消えた。迷子になった少年のように、焦点が曖昧になっている。

 

 こんな記述も。

薫は再びiPodをバッグから取り出した。福山雅治の歌を聞きながら、・・・

 

 

 初出は、「オール讀物」2006年11月号~2008年4月号。その後、2008年10月文藝春秋刊。

 

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 いつもの東野作品のように、読みやすくスイスイ読んでしまうが、謎解きには「う~ん」と言いたくなる。

 

 きっと心変わりしてくれると信じて、尽しに尽くす綾音の聖女ぶりをもっと描いていたら、逆に美しく献身的な聖女の裏にちらつく悪だくみが浮き上がったと思う。そして、女性心理を描くもっと深く面白い作品になったと思う。

 とはいうものの、内海薫の(ということは東野圭吾のということだが)女性の心理分析はすばらしいと、疎い私は思ったのだが。

 

 

 以下、数行はネタバレにつながるので、白字。

 使った人が死んでしまう毒を仕込んで、一年間一度も使わないように監視して、いざという時にだけ使うなんていうことが、実行できるのか、私には大いに疑問が残る。

 

 以下が、題名「聖女の救済」の由縁だろう。(以下、数行白字)

綾音は使えば死んでしまうので、使わないように監視し、救済し続ける毎日だったが、ついに・・・。

「かまわないよ。俺は一人で大丈夫だから」

そう、と綾音は頷いた、夫への救済が終わった瞬間だった。

 というか、いつでも殺せるとほくそ笑む毎日だったとも言えるのでは。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

登場人物

 

湯川学帝都大学物理学科第十三研究室、准教授。捜査一課では「ガリレオ先生」と呼ばれる。好きなものはインスタントコーヒーで、苦手なものは論理的でないので子供。

草薙俊平警視庁捜査一課刑事・警部補。湯川とは帝都大学バドミントン部での同期。

内海薫警視庁捜査一課刑事・草薙の後輩。女性。愛車は臙脂色のパジェロ。

間宮:草薙の上司。捜査一課所属係長。

岸谷:草薙の後輩刑事。

 

真柴綾音:パッチワーク教室主宰。夫に尽くす良き妻で美人。旧姓三田。

真柴義孝:綾音の夫。会社社長で金持ち。「子供を産んでこそ妻」との考えを持つ。自宅で毒殺される。

若山宏美:綾音主催のパッチワーク教室の講師。3か月前から義孝と不倫。

猪飼達彦:義孝の会社の顧問弁護士で経営にも参加。42歳。

猪飼由希子:猪飼達彦の妻。35歳。

津久井潤子:絵本作家。綾音の前の義孝の交際相手。事件の2年前に自殺。

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