hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

宮下奈都『スコーレNo.4』を読む

2013年03月10日 | 読書2

宮下奈都著『スコーレNo.4』(光文社文庫み30-1、2009年11月発行)を読んだ。

骨董店の長女、麻子が自信を持てないまま、中学生から社会人へと成長していく4話。
可愛い妹と常に比べられて育ち、妹のように激しく何かを求める気持がなく、自分には何かが欠けていると感じながら成長していく麻子。

No.1
母、祖母、18ヶ月違いの妹七葉(なのは)と、76ヶ月下の紗英、父と、家族がすべてだった中学生の麻子が一瞬の恋をする。

N0.2
地元の共学の公立高校に通う麻子。唯一の身近な男性、8歳上の従兄弟の慎と映画館や骨董店に通う。しかし、大胆な七葉が・・・。

No.3
七葉と離れるために家から通えない大学に入り、そしてなんとなしに輸入貿易会社に入社。しかし配属先は、靴屋。同僚や先輩と違い、靴が好きという気持ちになれないために引け目を感じる麻子。自分勝手な恋人とは、距離ができる。しかし、骨董店で身についたのだろう靴の値段がわかってしまうことに気づき、店でも認められるようになる。

No.4
本社に戻り事務仕事する麻子はミスの連続。イタリアでの靴買い付けの出張で行ったイタリアの靴会社で靴にかける思いに共感し、積極的に商談をまとめるようになる。気持ちがよりそう男性も現れ・・・。

巻末で北上次郎が書いている解説もなかなか良い。

2007年1月光文社刊(書下ろし)



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

もう少しだけ貪欲ならと、少しずつ成長していく女性の姿が丁寧に描かれている。

最初の2章では、青い恋、年上の従兄弟への想い、激しい妹七葉の行動に打ちのめされると、少女マンガのようで、お爺さんにとってはキツかった。
3,4章で、就職してから、人並みの能力はあるのに、中途半端だと自信を持てず、地に足が付いていないと感じる麻子。不安の中から、骨董で培った美意識を生かして成果を上げ、周りの人に認めてもらえるようになる過程はよく書けている。



宮下奈都(みやした・なつ)
1967年福井県生れ。 上智大学文学部哲学科卒。
2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。
2007年『スコーレNo.4』がメディアで絶賛され、ヒット。
その他、『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』『太陽のパスタ、豆のスープ』『田舎の紳士服店のモデルの妻』『メロディ・フェア』。
参考「作家の読書道




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