hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

浅田次郎『かわいい自分には旅をさせよ』を読む

2013年03月25日 | 読書2

浅田次郎著『かわいい自分には旅をさせよ』(2013年1月文藝春秋発行)を読んだ。

取材や講演の旅や、司馬遼太郎、三島由紀夫についてのエッセイなどが並ぶ。後半には「男の人生とは」、「父とは」など、「まあ座れ、おまえな……」とオヤジの説教が。
矜持を持つ浅田さんの未刊行エッセイ集。街道での出会いを描いた短篇「かっぱぎ権左」も収録。

初めていただいた原稿料は一枚あたり千円。月15枚書いて、月1万5千円、年収18万円。その後5年はほぼ同じ。単行本が出ても、1400円の本が1万部。税抜きで年収100万円。さらに数年間悲惨な生活が続き、競争率100倍で突然年収数千万円になる。

文学新人賞は、年間二百数十件あり、中には応募が千編以上のものもある。受賞しても、200人の5年後生存率は1か2人だろう。

ラスベガスに通い始めて10年。1時間で億の金が動くハイリミット・エリアの常連の浅田さんは、宿泊代も飲み食いもタダで、空港からリムジンの送迎がつく。(カモネギ)

昔、自分を軍人だと信じて死んでしまった小説家がいたけれど、もしかしたら僕は、自分を小説家だと信じて死んでいく軍人なのではないか、とね。





私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

挿入された短篇小説「かっぱぎ権左」が良い。御家人としては、薩長に抵抗し上野の山に向かうべきだが、逆賊になれば家族まで科を被る。自宅の門を出るか、引き返すか。引き返した武士は、食うに困って街道でかっぱぎになり、門を出て家族を失った男は天下のかっぱぎにならんとする。

それにしても、浅田さんの文は硬い。とくにエッセイでは何事も断定するので、余計厳しく感じる。これらのエッセイを読む限り、小説での「泣かせの浅田」と同じ人とは思えない。
浅田さんの文章の里は、鴎外、谷崎、荷風であり、思春期に三島の洗礼を受けたからという。

司馬遼太郎のペンネームの由来は「司馬遷に遼(はる)かに及ばす」。



浅田次郎の略歴と既読本リスト


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする