hiyamizu's blog

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林真理子『アスクレピオスの愛人』を読む

2013年02月19日 | 読書2

林真理子著『アスクレピオスの愛人』(2012年9月新潮社発行)を読んだ。

WHO本部のエリート佐伯志帆子は、メディカル・オフィサーとして世界の危険地帯や紛争地域に入り、ウイルスと戦い、国際的組織を動かす。バツイチで、一人娘は元夫と暮らしていて、彼女は、勤務後、複数の男性と奔放な関係を楽しむ。
医師としてはひたむきで純粋、組織人としては合理的、男女関係では奔放、冷酷、母親としては冷静。

題名の「アスクレピオス」はギリシャ神話の医術を司る神で、ヘビの巻き付いたアスクレピオス杖がWHOのシンボル。

なお、私生活以外のモデル、というか、WHOで著者が取材したのは、WHOメディカル・オフィサー進藤奈邦子さんで、「プロフェッショナル 仕事の流儀」にいかにも仕事ができそうな写真がある。

初出:「週刊新潮」2011年7月7日号~2012年4月26日号



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

面白く読めるが、話の流れと主人公の行動に、一貫性がなく、乱れがある。

主人公のかっこ良い仕事ぶりは爽快だが、私生活の姿勢は中途半端で、共感できない。
結婚して子供を産んで育てているときは、夫の参加がないと非難するごく普通の女性だったのに、離婚して子供を手放すと、子供にはほぼ無関心。男あさりをするが、相手はいつも仕事関係の医師。完全に遊びで、日本人は相手にしないと思ったのに、進也へは??

医療畑出身者の独壇場だった医療小説に、林真理子さんが挑戦し、よく取材していう点は評価するが、結果は今ひとつ。
医者にも、実家の職業や経済状況、出身大学、専門分野、勤務先などにより厳然たるヒエラルキーが存在する点は実感できた。その点での、医師同士の感情のやりとりはよく書けている。しかし、後半にある死産から医療裁判になる部分は、医師出身の作家にまかせるべきで、無理がある。


林真理子の略歴と既読本リスト



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