hiyamizu's blog

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林真理子他「売れる小説の書き方。」を読む

2010年02月03日 | 読書2


林真理子、大沢在昌、山本一力、中園ミホ「売れる小説の書き方。」エンジン01(セロワン)選書、2009年10月、ぴあ発行を読んだ。

流行作家3人と人気脚本家の4人がパネルディスカッションというか、公衆の前で公開の座談会を行った記録だ。テーマ名は題名の「売れる小説の書き方。」よりも、表紙に副題的に書いてある「作家は本当に儲かるのか?」が適切。

収入について
文筆家の3分の2以上が年収300万円以下。ごく一部の人、10名程度だけが派手に暮らしている。作家には印税として、本の売価の1割入る。1000円の本で源泉徴収10円引かれて90円入る。

デビューについて
28冊目までは全部初版で終わりだった。本屋さんへ行くと、赤川次郎の新刊の台になっていた(大沢)。

仕事でえらい借金をつくり、元手いらずで借金が返せると思って新人賞に応募した。でも「そんな話は聞いたことがない。本出して借金つくった奴はいっぱいいるけど」と言われた。ゴールは見えたがまだ返していない。オール読物の新人賞をいただいて受賞後第一作が出るまで2年かかり、12作くらい編集者に赤を入れて突き返された。それが良かった(山本)。

小説は書きたくないのに作家になりたい人が多い(林)。

「脚本家って呼ばれて、書いて行くと、みんなにものすごいこと言われるのですよ。・・・まずそこに耐えられない人はなれないんですけど、中にはとても誇り高い人がいて、『そんなに言うなら小説書いてやる』って泣きながら飛び出していったりする人がいるんですよ。それで本当に作家になった人というのはひとりもいないので、・・・」(中園)



その他
現代ものは数年経つといかにも古くなる。高齢者社会だし、時が立っても絶対に古くならない時代小説はこれから強い。

3人とも、文庫本なら20万部以上でるが、佐伯泰英などはそれを毎月続けている。

「・・・彼(石田衣良)は、あの中身のなさがすごいじゃないですか。」「本当に、素でもああだけど。しゃべってることにまったく心がこもってないでしょう。あれ、素でもそうですからね。あれは、素を出さないから飽きられないんだと思う。」(大沢)「私もそこまでは言えませんね」(林)





私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

小説を書いてみたいと言う人、作家に憧れる人は、是非読んで欲しい。
「小説は門戸が広い。大量にデビューして、大量に消えていく。あり続けるのは大変だ。」という発言があった。一方で、次も書きましょうと言われたときに、これだけあれば1年食べられますからいいですと断ったり、編集者からこの部分を直したらもっと良くなりますから」と言われて、「じゃあいいです」と自分の嫌なことはまったくしない若い人が多いという。一冊でも本を出せば、もう満足で、身を粉にして、苦労して小説を書き続けるなどゴメンだという気持ちは私にもわかる。



初出はエンジン01文化戦略会議オープンカレッジin名古屋、講座「文学と言う夢で食えるか」、2008年11月8日、会場:名古屋国際会議場

林真理子の略歴と既読本リスト



大沢在昌
1956年名古屋市出身。慶応大学中退。1979年『感傷の街角』で小説推理新人賞、1986年『深夜曲馬団』で日本冒険小説大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編部門、1994年『無間人形 新宿鮫Ⅳ』で直木賞、2004年『バンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞を受賞。

山本一力
1948年高知県生まれ。中学3年の春、上京して新聞の住込み配達員に。都立世田谷工業高等学校電子科を卒業後、10年間、近畿日本ツーリストに勤務。その後、様々な職業を経て、1997年『蒼龍』で第77回オール讀物新人賞受賞、作家としてデビュー。2002年『あかね空』で直木賞受賞。著書に『ワシントンハイツの旋風』『欅しぐれ』『梅咲きぬ』『だいこん』など。
バブルのときの妻の実家の億単位の借金を抱え込み、その返済のために小説を書き始めた。

中園ミホ
1959年生れ。日本大学藝術学部卒。1988年『ニュータウン仮分署』の脚本でデビュー。主な作品は、連続ドラマ『FOR YOU』『不機嫌な果実』『ハケンの品格』、映画『東京タワー』、ドラマ『あの日、僕らの命はトイレットペーパーよりも軽かった』など。2007年放送文化基金賞、2008年放送ウーマン賞受賞。


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