北大路機関

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【防衛情報】EBRCジャガー装甲偵察車とL-85A3小銃,CLRV指揮連絡偵察車に将来火砲用ラムジェット砲弾

2022-12-20 20:22:47 | インポート
週報:世界の防衛,最新12論点
 防衛装備の日本における行進は中々ゆったりとした速度ではあるのですが各国の趨勢を見極めて調達を進めねばなりません。

 フランス陸軍第1外人騎兵連隊はEBRCジャガー装甲偵察車とAMX-10RC装甲偵察車の複合運用を開始した。第1外人騎兵連隊は第6軽装甲旅団隷下の軽戦車部隊であり、本部管理中隊と装甲偵察中隊など7個中隊を基幹としている。ジャガー装甲偵察車は40mmCTA機関砲を搭載した六輪式装輪装甲車でVBMRグリフォン装甲車と車体が共通だ。

 EBRCジャガー装甲偵察車はERC-90空挺機動砲やAMX-10RC装甲偵察車の後継と位置づけられている。ただ、第1外人騎兵連隊はAMX-10RCの5個中隊を基幹としていた、AMX-10RCは105mm低圧砲を搭載しており軽戦車的な運用にも充当、後継のEBRCジャガー装甲偵察車は機関砲を搭載し火力に不安が在り、部隊は混成運用で対応を試みている。
■L-85A3小銃試験
 L-85A3小銃試験ということで評判はべつとしましてL-85の改良はまだまだ続きます。

 イギリス国防科学技術研究所DSTLはL-85A3小銃試験を進めていますこれはSA-80/L85A2小銃との比較試験も兼ねており、同時に将来歩兵用個人装具として開発進むSWEATとの適合性なども試験、具体的には射撃精度と歩兵移動速度や俊敏性と機動性等に関する比較試験を6名の歩兵により実施、1987年から運用の続くL-85の改良を継続する。

 L-85A3小銃試験はイギリスのソールズベリー平原において実施されていて、25mから最長400mまでの標的へ14か所の射撃地点から36の障害物を越えて試験を実施している。L-85A3小銃そのものは2018年に試作銃が完成し2025年から部隊配備を目指す。この評価試験はSTO北大西洋条約機構科学技術機構のSAS-145研究として進められています。

 L-85小銃は外見が先進的なブルパップ式小銃として開発、イギリスは1951年にエンフィールド造兵廠がEM-2小銃というブルパップ式小銃を試作していますが、NATO弾としてアメリカが制式化した7.62mm弾を用いるには小さすぎ量産を見送っている。1987年に制式化されたL-85は先進的外見であるが装填不良と排莢不良に悩まされ、改良が続いている。
■スキャンイーグル無人機
 スキャンイーグル無人偵察機を駆使するならば観測ヘリコプターの代替に位はなるのでしょう。

 アメリカ軍はウクライナ軍へ提供したスキャンイーグル無人偵察機により新時代の対砲兵戦を展開しています。これは8月19日に発表された7億7500万ドルのウクライナ軍事援助にスキャンイーグル無人機や105mm榴弾砲及び105mm砲弾1000発等が含まれていた事と関連、既に運用されている15機のスキャンイーグル無人機を補完する事となります。

 対砲兵戦は対砲レーダーなどによる標定が従来用いられてきましたが、スキャンイーグル無人機を多数滞空させ砲兵部隊や砲弾集積所などをコンピュータなどを駆使し標定する手法が用いられているとの事で、大火力を誇るロシア軍に対して、逆に活発過ぎる砲兵部隊の動静から火砲や弾薬の位置を標定するというもの、無人機を観測から索敵に転用した。
■CLRV指揮連絡偵察車
 小国なりに防衛努力という。

 ルクセンブルク軍はCLRV指揮連絡偵察車80両を取得します。これはルクセンブルクのフランソワバウシュ国防相が9月15日に明らかにしたもので、現在ルクセンブルク軍が装備しているハンヴィー高機動車の後継に位置付けられています、M-1114装甲ハンヴィーは比較的高い防御力を有しますが、現代戦場において第一線装甲車としては限界があります。

 CLRV指揮連絡偵察車の車種は今後選定されるものとなっていますが、車体の電子通信装備等はフランスのスコーピオン計画において開発された装甲車用の器材が搭載されるほか、ルクセンブルク軍が選定したRWS遠隔操作銃搭を搭載するといい、また基本的に耐爆車両ほど不整地突破能力は低くないが四輪駆動方式の装甲車両を想定しているとのことです。
■レオパルド2A4バーター
 バーター供与という一種の迂回供与方式が欧州で盛ん。

 ドイツ政府はスロバキアへ中古レオパルド2A4戦車15両を無償譲渡します、これはロシア軍のウクライナ侵攻に際しウクライナ軍はNATO各国へウクライナ軍と運用共通性のある旧ソ連製主力戦車の提供を要請しており、これに対してスロバキア政府は戦車を供与、この際にスロバキア軍の戦車を補填する為にドイツ政府が供与を約束していたものという。

 レオパルド2A4戦車は基本設計型のレオパルド2でありA5型以降は特徴的な楔形装甲を採用しています。スロバキア政府はドイツ政府と8月23日に提供協定を結びましたが今後もウクライナ支援を継続する方針でBVP-1装甲戦闘車30両をウクライナへ提供する方針です。なお、レオパルド2A4戦車は2022年後半にも予備部品等と共に到着する予定です。
■ラムジェット砲弾試験
 ラムジェット砲弾試験というのは単純に言えば砲弾をとおくまで飛ばすためにエンジンを仕込むということ。

 アメリカ陸軍の将来火砲用ラムジェット砲弾試験が6月28日にノルウェーのアンドン兵器試験場において実施されました。開発にはノルウェーの弾薬企業ナムモも参加、ラムジェット砲弾は砲弾の先端部から空気を吸入しラムジェット燃焼機構を通じて後部から噴出、従来のRAPロケット補助推進弾よりも加速させることで長射程を実現させるこが狙い。

 ラムジェット砲弾は39口径砲とアメリカ陸軍はXM-1155計画として進める58口径155mm榴弾砲から投射されるものです。野砲では従来の常識で、射程を延伸させるには初速を高めれば良いのですが、これは同時に猛烈な腔圧が砲身を痛めライフリングと寿命を削る点が難点です、しかし、発射後に加速する方式ならば砲身を痛める心配はありません。

 ラムジェットは構造が単純ではあるのですが、これはエンジンとしての構造であり火砲から射撃される際の強烈なG加圧に対応させる技術の確認も試験の目的でした。ラムジェット推進装置の開発にはノースロップグラマン社やレイセオンテクノロジーズ社などが参加しているとのこと。陸軍では2024年までに実用装備まで開発を進めたいとしています。
■ボクサー装甲車
 ボクサー装甲車も含めて現代の防衛装備品は導入する先の装備体系や整備体系に適合させるというのが一つの特色ですね。

 イギリス軍が導入するボクサー装甲車はエンジンをロールスロイス社が供給する、特定目的会社WFELとRBSLラインメタルBAEシステムズランド社が決定しました。ボクサー装輪装甲車はFV-432装甲車等イギリス軍が1960年代から導入した多種多様な装甲車を置換えるべく532両の調達計画が立てられ、その後の増強で632両へ上方修正されました。

 ボクサー装甲車はMTU社製MTU-8v199-TS21ディーゼルエンジンを搭載していますが、今回の決定は主要コンポーネントとライセンス生産部品をウェストサセックス州イースト グリンステッドにあるロールスロイスエンジン工場において完成させるとのこと。RBSL社ではボクサー装甲車について現地生産や現地予備部品製造の姿勢を強調しています。
■猛士182軽装甲車
 猛士GEN-III-CSK-182軽装甲車も含めて猛士シリーズの発展は凄いと率直に思うのですが懸架装置等の冗長性は大丈夫なのかとも思うのです。

 パキスタン軍は中国より猛士GEN-III-CSK-182軽装甲車を導入します。パキスタンはアメリカとの関係が良好であった時代にアメリカよりM-1114装甲ハンヴィーなどを導入していますが、過去の核実験、核実験後は9.11以降アフガニスタンでの米軍作戦がパキスタンに影響が及び、逆に911首謀者パキスタン潜伏確認などにより関係が悪化していました。

 猛士GEN-III-CSK-182軽装甲車は重量8tで乗員2名と兵員6名を輸送し、車体には機関銃などを搭載、東風汽車がアメリカのハンヴィーに影響を受け開発した高機動車輛猛士の軽装甲型で、中国人民解放軍では車体延長型や軽装甲型にウェポンキャリアや自走榴弾砲等を開発し、猛士各型により軽型合成旅団という機械化軽歩兵部隊を編成しています。
■M-108自走榴弾砲譲渡
 自衛隊で云えば75式自走榴弾砲のひとつ前の装備の世代という。

 ウルグアイ国防省はブラジルより中古のM-108自走榴弾砲譲渡を受ける事となりました。これはブラジル軍余剰兵器供与に関するブラジル下院決議を受けて実現したもので、M-108自走榴弾砲10門、そしてEE-11装甲車11両も譲渡されます。M-108は今日では珍しい105mm自走榴弾砲で、155mm自走榴弾砲の時代にあってはある意味特殊な装備でしょう。

 M-108自走榴弾砲M103榴弾砲を搭載し、これは22.5口径105mmで1962年に制式化されました。最大射程は11.5kmでRAP弾を使用した場合には15kmに延伸しますがブラジル陸軍では運用していません。南米地域では2010年代までM-4シャーマン戦車が現役で、2020年代もM-3スチュアート軽戦車が現役であるなど、旧式装備が今も現役なのです。
■M-2榴弾砲ウクライナへ
 M-2榴弾砲といいますと自衛隊ではFH-70に置換えられ射程としては120mm迫撃砲よりも若干短い。

 リトアニア国防省はウクライナ支援へ第二次世界大戦前に設計されたM-2榴弾砲を供与したと発表しました。今回供与されたのは陸上自衛隊でもM-2榴弾砲として長らく直掩火力と位置づけられた105mm榴弾砲で、当時としては先進的ですが射程は11kmに留まり、また操砲にも12名を要するという、現代の自動化された火砲と比較しますと古風なもの。

 M-2榴弾砲は設計が頑丈であり、アメリカ陸軍ではヴェトナム戦争まで北ヴェトナム軍などが多用した迫撃砲を制圧する為に重宝しています。今回リトアニアが乏しい装備の中から105mm砲を供与した背景には、最新型のヴィルカス装甲車等は供与できないが、精一杯出来る範囲でウクライナ軍をロシア軍に対抗出来る装備を供与する決意ともいえましょう。
■NH-90ヘリコプター
 NH-90ヘリコプターは非常に高価な多用途ヘリコプターなのですが機体そのものはNBC防護能力もあり航続距離なども理想的な水準の装備です。

 ニュージーランド国防省はNH-90ヘリコプターの長期エンジン契約をサフラン社との間で締結しました。NH-90は欧州共通ヘリコプターをめざし開発されたもので、この契約では予備を含むRTM-332エンジン21基の定期整備及びオーバーホールが契約に含まれます。契約はオーストラリアにあるサフランヘリコプターズオーストラリアで結ばれました。

 NH-90ヘリコプターは特命合弁会社であるNHインダストリアルにて生産され、ニュージーランド軍は8機を導入しました。この機体は隣国オーストラリアにも採用されていますが運用実績は芳しくなくUH-60への置き換えが始まる、サフランヘリコプターズオーストラリアは数は減るものの太平洋地域でのNH-90のエンジン整備を担う唯一の企業です。
■MUM-T用無人機
 MUM-T有人無人チームという新しいm神亀運用の模索が各国で加速しており自衛隊も乗り遅れないよう各国技術の同好と必要ならば装備導入へ動かねばなりません。

 イスラエル国防軍はMUM-T有人無人チーム用に音声管制無人機研究を進めています。この目指すところは、歩兵部隊を支援する無人機に対して現在の無人機は基本的にタブレット端末か専用操作端末により管制するか完全自律飛行を行うしか選択肢が無く、歩兵部隊と協同行動を執るには近接戦闘の特性上、敵前でタブレットを見る事は危険となります。

 MUM-T有人無人チームでは、タブレット端末を覗きこんだすぐ手前の曲がり角に敵歩兵が射撃を加えてくる可能性は当然考えねばならず、ここで音声により、前方を偵察させる、若しくは屋内の敵を視てくる、などの操作を行えるならば事情は異なります。なお現時点でも、高度を高く上げる、または前進、などの音声指示に対応する無人機は配備中です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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F-2後継機とテンペスト!戦闘機日英伊共同開発,この国際共同開発が成功する可能性を示す幾つかの視点

2022-12-20 07:00:00 | 先端軍事テクノロジー
■戦闘機日英伊共同開発
 国際共同開発は各国軍の同床異夢と各国毎技術者人事異動があり成功しにくいとの視点はあるようですが。

 F-2戦闘機のイギリスと日本の共同開発方針、ここにイタリアが加わりまして欧州と日本の戦闘機開発という、日本の防衛用航空機開発としては過去にないあたらしい一歩を進む事となりました。従来はFSX支援戦闘機,F-2戦闘機日米共同開発、しかし完成した装備はアメリカが生産に関与するがアメリカ軍は採用しない、という方式が執られてきました。

 イギリスと共同開発で大丈夫なのか、こう思われる方が思いのほかいるようですが、幾つかの事情を踏まえてみますと、むしろ日米共同開発の方がリスクがある、という事に気付かされます。先ずイギリスですが、国防費のGDP比は2%を越えており、これ以上支出できない為に各国と共同開発を進めるという必然性があるのです、一国で開発費を出せない。

 センチネルR1地上監視航空機、アメリカは将来発展性を見込み様々な性能を盛り込む、結果高くなる。イギリスは米英共同開発によりセンチネルR1という航空機を開発しました、しかし、常識的な性能に対してアメリカは将来発展性から満足できず不採用、イギリスのみ調達する事となり運用費用が高騰、僅か14年で退役させています。この点は重要だ。

 テンペスト戦闘機、イギリスが今回の共同開発戦闘機のたたき台となる第六世代戦闘機計画を開始した際、取得性を重視する、としました。要するにF-35よりも安価にしたいという国防予算の切迫性、そして掛け声倒れになりますとイギリス自身が買えないという、ハイローミックスではなく揃えられる事こそが次世代機、と認識している点も重要でしょう。

 日米共同開発を行うにも適当な機体が無い、アメリカはF-22にF-35のセンサーを搭載した機体を提示しましたが、F-35ライセンス生産さえ認めない現状では技術移転に現実味がない、とはいえアメリカに次期戦闘機計画はF-22後継機位しか無く技術移転の目処は無い、F/A-18E後継機については着手さえされていない、アメリカに提示できる物が無いのです。

 F-2戦闘機の後継である、この点も重要です、もしF-15後継機であれば難航したでしょうが、防空自衛隊というべき制空戦闘至上主義の航空自衛隊に在って多機能戦闘機であり、航空自衛隊の任務かとの内部での議論もある対艦攻撃を担うF-2後継機ですので、元々“支援”戦闘機とされた区分、つまり性能などに譲歩余地がある、F-2開発の際の様に、ね。

 イタリアが開発に参加しましたが、こちらで興味深い点が生まれます、日本は2024年からF-35Bを導入しますが、イギリスとイタリアは導入しており、日本とイタリアはF-35Aを運用している、つまり第五世代戦闘機を切迫して導入なければならない状況にありません、そしてF-35を補完する機体を必要としている、この点で共通している点は注目に値します。

 ユーロファイター戦闘機、国際共同開発が空中分解する懸念も無いには無いのですが、イギリスとイタリアは思いのほか短かったユーロファイター戦闘機の構造寿命を前に、それほど悠長に開発を待てないという背景はあります、一方で手元にF-35が配備済みという余裕はある。この国際共同開発は、実は非常に各国の時機が良いプロジェクトとなるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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