北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛費GDP2%-増加抑制の提言:自治体消防救急能力強化と予備自衛官制度による災害派遣体制の移管

2022-12-01 20:22:55 | 国際・政治
MOOTWとしての災害派遣
 防衛費GDP2%というものは政治決定ではあるのですが、防衛への国民の納税負担を回避する選択肢として消防団水防団はじめ自主防災能力を強化し自衛隊への災害派遣要請依存度を低め人員を削減する選択肢はあります。

 防衛費増額が問題となっていますが、今自衛隊の任務で唯一削ることが出来るのは代替性のある災害派遣任務です。そしてこの任務を平成初期と同程度まで自治体の消防制度を戻すことが出来れば、もちろん初動などで自衛隊の災害派遣を制約するものではないと前置きした上で、陸上自衛隊の地域配備見直しによる人件費抑制はありえるかもしれない。

 予備自衛官制度を災害派遣に活用する公募制予備自衛官制度の拡充、方法論として考えられるのは、陸上自衛隊の中で地域配備師団を大胆に予備自衛官によるコア化部隊に置き換え、人員を即応機動部隊に集約、しかしそのぶん即応機動部隊をいまの実質偵察部隊の延長線上という規模から純粋な機械化歩兵部隊へ転換する方式です。人件費を抑えられる。

 消防団よりも予備自衛官の方がまだ楽、これは現役の消防団員の方から利きました実体で、予備自衛官の訓練日数は年間五日間、分割出頭も認められていますし、出頭できない場合に俸給は出されませんが罰則はありません、消防団は俸給はでますし出頭拒否でも罰則は、法律上無いのですが、俸給の運用など、地域ごとに不透明さはある。ここを置き換える。

 予備自衛官制度は年間30日間の訓練が組まれています即応予備自衛官と年間5日間だけの予備自衛官があり、予備自衛官は制度上有事における配属は臨時編成される駐屯地警備隊や弾薬輸送中隊、警備連隊などに割り振られるという運用で、即応予備自衛官は有事の際に所属する部隊が連隊と中隊と細部まで画定しており、このために高い練度が、という。

 兼任は消防法でも自衛隊法でもともに非常勤公務員であるために法的な制約はないのですが、災害派遣を予備自衛官と一部の即応部隊の所管とし、一方で自衛隊法を改正し、予備自衛官の特定職域における非常勤公務員任官制限を付与し、要するに予備自衛官に任官すると消防団員の任官を辞退できる制度を構築し、地域ごとに災害派遣に充てては、と。

 予備自衛官、召集には時間がそれほどかかりません、郵便で召集をおこないますと昨今、郵政民営化の弊害により京都から東京まで最大四日間郵便が時間を要する為に、災害派遣に間に合わない可能性がありますが、予備自衛官の場合は地方協力本部が直接召集するため、災害から24時間以内に出動準備を整えることも不可能ではありません。即応性はある。

 災害派遣、この手法を考えるのは昨今、災害派遣の手続きが簡素化されているのですが、果たしてMOOTW非戦争軍事作戦の領域なのか、という印象を幾つか受けたのです。このことを強く感じたのは、山林火災による災害派遣要請での一幕です、災害派遣要請が日曜日に出され、大変だとかなり多くの部隊がヘリコプターを準備、リエゾンも派遣します。

 山林火災ですが、しかし現場にリエゾンを派遣してみますと、既に鎮火していたとのことで要するに火災規模を調べる前に自治体が知事に要請し、都道府県単位での情報収集もせずに派遣要請を出した、という構図でした。もちろん災害派遣は過去大規模山林火災などの事例があり、怠るべきではないのですが、見切り要請はどうか、という印象がある。

 こういうことは少なくはないが確認はしてほしいよね、と。確認して大惨事となっては、と思われるかもしれませんがかつて、阪神大震災の前までは災害派遣要請について、まず消防と警察が可能な範囲で災害救助を実施するか、最初から相当規模の災害が見込まれる場合に、という慎重さがありました、ここで逆の視点として考えるのは敷居の低さです。

 消防や土木系公務員など自治体防災能力が、景気後退などを理由に削減しており、いわば便利屋として自衛隊を扱っているのではないか、ということです。災害派遣はMOOTW非戦争軍事作戦に区分されるものなのですが、MOOTWに民生支援も含まれる一方で、軍隊を便利屋とするものではありません、すると自治体努力を願う、という選択肢があります。

 自衛隊の本来任務への重点化、防衛費の増額へ無駄がある、と反論があるならば、いまのところ代替できる任務はMOOTWとしての災害派遣くらいです、海上保安庁は軍艦の領海接近に国内法と国際法で法的にも対応できませんし、警察航空部隊は国籍不明機に対応できません、自衛隊の任務は多くの場合で軍事機構ではない他機関では代替できないという。

 MOOTWとしての災害派遣は、自治体の防災能力強化と総務省消防庁の拡充により代替し得るものですし、それでも対応できない場合に備えて公募制予備自衛官制度を拡充するという選択肢はある、特に即応予備自衛官と予備自衛官の中間程度の訓練日数を確保し平時から配属部隊を決める部隊予備自衛官のような制度があれば、対応は出来ると考えます。

 国土防衛に対応できるのかと問われますと、即応機動連隊は定員850名です、即応機動連隊の機動戦闘車隊を戦車隊に置き換えるなど、事態に応じた編成も必要と考えるのですが、全国に45個即応機動連隊を配置したとして必要な人員規模は3万8250名規模、もちろんこの場合は機動戦闘車と戦車が900両必要となりますが、人件費は抑えられるのですね。

 地方自治体にそんな余裕はない、と反論があるのかもしれませんが、自衛隊にも余裕はありません。余裕が無いのだから予算を増やす事が今まで禁忌となってきたのであれば、もちろん必要ならば予算を増額する他ないのですが、防衛増税という国民負担を強いない為には、地上自治体に災害時、出来る能力を拡充してもらうほか、おもいつかないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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GDP10%,長期戦阻む来年度9兆4000億ルーブルの国防治安関連費-ロシア軍ウクライナ侵攻のロシア経済的負担

2022-12-01 07:00:55 | 国際・政治
■臨時情報:ロシア国内情勢
 ロシア軍は中国軍と日本周辺空域における爆撃機の共同飛行を実施、一見するとまだまだロシアに余裕があるように見えるのですが予算面を見ると、厳しい。

 ウクライナに侵攻したロシア軍はいよいよ厳しい冬を迎えます、そして誤解されている方がいるようですが、ロシアは長期戦に備えているとか、最終的にロシアが勝利すると考える方には、ロシアがGDPの10%を国防と治安予算に投じているという厳しい戦費の現実を見るべきでしょう。日本でいえば防衛費などに50兆円投じるもの、何年も続けられるか。

 ロシアGDPは2021年で1兆7760億ドルと、日本の4兆9370億ドルと比較しますと非常に限られた水準となっています。そしてそのロシアですが、来年の国防費と治安関連費用は1541億ドル、日本円に換算して21兆円を国防費につぎ込むという試算が、11月27日にロイター通信による専門家分析として示されました。これは非常に厳しい支出という。

 ロシアGDPは今年度、日欧米や豪州などからの経済制裁と徴兵制施行に伴う若年労働力の海外流出などを受け7%の景気後退が見込まれています、つまり国防費と治安関連予算にGDPのほぼ10%をつぎ込む事となる。国家予算の10%ではなくGDPの10%であり、国家予算では四割近い予算が国防費と治安関連予算に投じられるという、国民負担を強いる。

 日本だって防衛費をGDP1%から2%にしようとしているので耐え難い苦痛だ、こういう反論があるのかもしれませんが、2%と10%では根本から負担が異なります。そして当然の結論ですが、GDP比率10%の負担、ウクライナ軍が公式にはロシア本国を全く攻撃せず、純粋に侵攻による損耗の補填と遠征費用だけでこの負担となっている、何年も続けられない。

 国家予算の三分の一強を国防費と治安関連予算に振り分ける、この為に国家予算からは道路整備費用など公共事業予算や教育関連予算が削減され、削られた教育予算は愛国教育に充当され科学関連教育振興予算などは愛国教育へ転換されることとなります。また医療費についても一割程度削減の見通し、COVID-19の影響が残る中での削減となる構図です。

 世論の支持があれば、GDP比率10%の負担であっても、ロシア政府は耐えられるのかもしれません。しかし、軍への志願は滞り実施した30万名の予備役招集と徴兵の強化に対するロシア国内の反応は、少なくともプーチン大統領のウクライナ侵攻を国民が支持し負担に耐える覚悟の共有という構図には、ロシアTVなどプロパガンダ映像以外みられません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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