杜甫の絶句です。
杜 甫
江碧鳥愈白 江碧にして鳥愈白く 川は青緑色、鳥はいっそう白く見える。
山青花欲然 山青くして花然えんと欲す 山は青々と、花は燃えるように赤い。
今春看又過 今春看すみす又過ぐ 今年の春もみるみるまた過ぎてしまう
何日是帰年 何れの日にか是れ帰年ならん いつになったら故郷に帰ることができるのだろう。
美しい蜀の春です。蜀の川はエメラルド色に澄んでいると言います。
山の木々の緑、その間から見える真っ赤な花。
こんな美しい景色を見ながら詩人の心はここに落ち着くことができません。
杜甫の故郷は蜀ではなく北の洛陽。洛陽は黄河流域・河南省西部の都市、古代中国で何度も都になっています。長江流域の蜀と黄河流域の洛陽、風土・風景はかなり異なります。どんなに美しい景色でもよそ者には完全に溶け込めないものがあるのでしょう。親兄弟とともに暮らした故郷のなつかしさは何者にも代えがたいものがあるに違いありません。
人間、いくつになっても,生まれ故郷は忘れがたいものですね。