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「科学の社会的価値創造」がイノベーションを生む?

2014-02-02 22:39:10 | ビジネス

昨日、名古屋大学の豊田講堂で行われた野依良治博士の講演を聴きに出かけた。
ご存じの通り野依博士は、2008年にノーベル化学賞を受賞された、日本における「智の巨人」の様な方。
筋金入りの非理数系の私には、理解不能な用語が飛び交う講演だろな~~~と思いながら、講演会に出掛けたのだが、その内容は、全く違っていてとてもエキサイティングな内容だった。

その一つが「サイエンスは、社会的価値の創造」という視点が大切、と言うこと。
大学の研究室で、顕微鏡やシャーレ、はたまた数式などと格闘しているのが、理化学系の研究者で、ノーベル賞を受賞する様な博士クラスになると、「社会性のある研究」という視点など持ってはいないと思い込んでいた。
ところが、野依博士は「社会的価値を持たないサイエンスは、余り意味が無いのでは?」というのだ。
それどころか、「大学や様々な研究機関はもっと社会に対して興味・関心を持つべきだし、社会と関わる必要がある」とまで言い切っていらっしゃった。

この様な発言は、野依博士だからこそできるのだと思うのだが、大学や研究機関での研究が今日、明日に役立つ訳ではない。
役立つ訳ではないが、社会を知るコトで「自分達の研究の目的」となるコトが判る様になるはずだ、と言う趣旨のお話をされていた(と、私は理解した)。

とすれば、今日、明日役立つのかわからない研究に対して「価値を見いだす力」ということも、とても大切だと言うことになる。
その「価値を見いだす力」というのが、これまでは「戦争、軍事」という場合が多かった。
20世紀は「科学の時代」とも言われるが、一方では「戦争の時代」とも言われる。
「科学が社会的価値を見いだせたのが、戦争や軍事であった時代」と言い換えることもできるかも知れない。
しかし、その様な方向を野依博士は望んではない。
野依博士が望んでいるのは「科学(技術)は、世界の貧困からの脱却をするためにある」と、考えていらっしゃるようなのだ。

「科学の社会的価値を見いだす力」は、研究者よりもビジネスの一線で活躍している人達が持っているのかも知れない。
そう考えれば、ビジネスマンもまた「科学の社会的価値の創造」ができるような、力を身に付ける必要があるのではないだろうか?

「イノベーティブな社会」と言うのは、「科学が専門だけど、アートが趣味」だとか「経済を学んだが、サイエンスに興味がある」というような人達が、複眼的思考の中で生み出されていくモノなのかも知れない。