十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

未来☆

2019-02-28 | Weblog
ポインセチア未来にひらく自動ドア
凍星に超合金のひびきあり
乾坤の光あつめて冬の薔薇
前髪のあたり暮れゆく冬至かな

*「阿蘇」3月号、岩岡中正選

考えてみれば、伝統俳句でありながら、主宰から「じっくりと見なさい」という言葉をまだ聞いたことがないのは不思議。先日は、「ズバッと心に届く句」という提示を頂いた。「ズバッと」とは、一句一章の強さであると思われる。(Midori)

2019-02-24 | Weblog
菫咲く隙を許して武者返し     西村和子

西郷隆盛に、「官軍ではなく、清正公に負けたのだ」と言わしめた、熊本城。なかでも「武者返し」は、美しくも決して敵軍を寄せ付けない城壁であった。さて、その「武者返し」が、「菫咲く隙を許して」というのだ。武者返しの「隙」に焦点が絞られた愛情深い素敵な一句である。句集『ひとりの椅子』より抄出。(Midori)

麦青む

2019-02-22 | Weblog
「麦の芽」、「麦踏み」、「麦秋」は詠んでも、「麦青む」という季語をこれまで詠むことがなかったのは不思議。このほど、兼題で出されて、はじめて知ったという次第。都会では見ることの少ない風景だと思うが、幸い近くの麦畑が青々と畝を伸ばしている。穂を出すのはまだまだ先だが、歩く楽しみが一つ増えた。(Midori)

    民族の如くに雲や麦青む      *土曜例会、岩岡中正特選

青海苔

2019-02-20 | Weblog
南関句会の2月の兼題は、「青海苔」。焼きそばやたこ焼きにかかった青海苔は馴染みがあるが、海辺に自生する「青海苔」となると、なかなか想像しにくい。7句の「青海苔」を詠んでみたが、「青海苔」の季語が動いてしまい大変難しかった。(Midori)

    青海苔の岩間に色を深めたる  
    青海苔を掻きたる海女の皺深し
    青海苔の磯の匂ひの乾きゆく
    何にでも青海苔かけて長寿たり

久を忌

2019-02-17 | Weblog
大阿蘇の霞の端に遊びけり      藤崎久を

藤崎氏は、俳誌「阿蘇」の前主宰。平成11年2月24日、熊本市にて永眠。78歳、この日を「久を忌」として、2月の土曜例会で毎年詠まれるが、いかに先師が「阿蘇」の主宰として親しまれていたかが偲ばれる。句会会場の遺影には、梅の花が供えられ、「梅の花」を取り合わせた多くの佳句が出句された。掲句は、『ホトトギス』の巻頭となった句である。(Midori)

涅槃図

2019-02-15 | Weblog
2月15日は、釈尊のご命日。釈尊は80年のご生涯を閉じられるまで、灼熱のインドで伝道。最後は、故郷カピラ城へ向かう途中、クシナガラという地でお亡くなりになっている。(「禅の友」2月号参照) 昨日は、玉名市の廣福禅寺に掲げられている涅槃図を見に参拝。2年ぶりに訪れた本堂は、改修されていたが、この日の冴え返る寒さは、相変わらず。(Midori)

    いちまいの慟哭吊るす涅槃寺   

冬木立

2019-02-12 | Weblog
冬木立星なき夜はさびしさう     古荘浩子

この「冬木立」は、常緑の鬱蒼とした「冬木立」ではなく、落葉樹であると思われる。樹間から見える多くの星々の煌めきは、モノトーンの絵画のようだが、「星なき夜」となると、その美しさは一変する。「星なき夜は」と逆説的に詠まれて、「さびしさう」の口語体に、アニミズムの世界が広がって来た。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

冬近し

2019-02-09 | Weblog
碑の縷縷に合掌冬近し      谷 喜美

碑には、何かしら文字が刻まれていると思われるが、それらを一切言わずに、「縷縷」と表出。詳しい情報が縷縷刻まれていたに違いないが、「合掌」すべき内容であることは明白。「縷縷」と省略されていながら、「冬近し」と置かれて、作者の追悼の思いは深い。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

穴惑

2019-02-05 | Weblog
穴まどひ罪深ければ迷ふなり      二木恵子

蛇でなくても、「罪深ければ」となると、思わずドキリとさせられる。しかし、この句は、『創世記』の蛇を思わせて、なかなかの仕掛け。平明な句ながら、意味深な一句である。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

焚火

2019-02-03 | Weblog
会釈して焚火にあたらせてもらふ     岩岡中正

「焚火」の火は、決して誰かのものではなく、誰でも、その温もりを享受することができるということに、改めて気づかされる一句。「会釈して」から、「あたらせてもらふ」の素朴な言い回しに、言いようのない人と人との温もりを感じるのだ。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

黄落

2019-02-01 | Weblog
慟哭のごとく黄落つづきをり
大潮のひかりに熟るる蜜柑かな
枯蟷螂月のひかりを食んでをり
天高しふるさと行きの発車ベル

*「阿蘇」2月号、岩岡中正選

【選評】 あの怒濤のような黄落を「慟哭」と詠んで、的確。黄落の質感量感が圧倒的に迫ってくる。と同時に、作者の溢れるような内面もまた、この「黄落」にこめられているのである。(中正)

4句とも主宰選を頂いていた句だが、俳誌掲載の評価は、「黄落」の句が一番であった。ちょっと意外に感じられたが、自選がままならないのは句会の常。(Midori)