十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

稲架

2018-12-30 | Weblog
日の匂ひ月の匂ひや稲架襖
ひと粒に山河のひかり今年米
瓢の笛まなざし遠く吹きくれし
小鳥来る復興支援募金箱

*「阿蘇」1月号、岩岡中正選

【選評】 「稲架襖」に注がれた日月のあふれるような光と影、風と一切の風土の恵みが、ここに豊かにこめられている。匂い立つような風土とそのいのちが、ここにある。稲架襖を詠むのに大きく日月をもってきたところが、この句のポイント。作者と一体化した身体性の句である。(中正)

日本の暮しの中から、季語が次第に失われつつあることを実感するが、ここ熊本にはまだまだ残されている風土や自然があることを嬉しく思う。(Midori)

年の暮

2018-12-29 | Weblog
ともかくもあなたまかせの年の暮     一茶

「あなた」は、もしかしたら「この私~!?」と、思わずドキリとさせられる。さてさて、もう少し頑張りましょう♪ ホトトギス新歳時記より抄出。(Midori)

秋日傘

2018-12-26 | Weblog
見舞ひたるあとの切なさ秋日傘     杉本美惠

「見舞ひたる」のあとに続く感情は、人それぞれだと思うが、ここで選ばれた言葉は、「切なさ」である。「切なさ」は、作者のどうすることもできないことへの深い悲しみである。「秋日傘」に作者の思いが重なる。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

水澄む

2018-12-25 | Weblog
胸中に澄む水湛へ老いゆかむ     高橋満子

「水澄む」という季語が、このような形で詠まれていることにまず驚く。掲句が清記で回って来たときも圧倒的な存在感を放っていたことを覚えているが、「胸中に」という意外性が、「老い」という作者の心情に深く結びつくのだ。花鳥に遊べば、きっと心も澄んで行くものと信じたい。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

師走

2018-12-23 | Weblog
今年最後の本部例会。クリスマス、師走、年の瀬、そして22日はちょうど冬至。主宰の講評の中で、「人事句が多くなる時」という軽い指摘もあったが、確かにクリスマスムードに酔ってしまっていたと深く反省!その中で、ちゃんと花鳥諷詠を貫き、自然と向き合っている作品には感動を覚えた。(Midori)

   凍星に超合金のひびきあり    *岩岡中正特選 

冬至

2018-12-19 | Weblog
今日の南関句会の兼題は、「冬至」。一年で最も夜が長い日で、24節気の一つ。実際に出句された句は、冬至風呂、冬至粥など。ホトトギスの歳時記では「冬至」に含まれているが、角川では、これらは別掲載である。「冬至」で詠もうとしたので非常に難しかった。(Midori)

わが母を遠くに想ふ冬至かな    千恵美    *指導者特選

露けし

2018-12-17 | Weblog
露けさの齢重ねて赤秀の樹      本田久子

世界遺産に登録された三角西港での吟行句。ここに、開港当時からこの場所にあったとされる木が、「アコウの木」。明治、大正、昭和、平成と、「赤秀の樹」の歳月に、心を寄せている作者であるが、「露けさの」と置かれて、どこか無常観を覚える一句。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

熊本県民文芸賞☆

2018-12-15 | Weblog
うつくしき詩歌の国に端居して
月蝕の果てたる夜のほととぎす
天心は翳ることなし盆の月
夢の世に徒花咲かす糸瓜かな
露草や大地に藍のひとしづく

平成30年度第40回熊本県民文芸賞に、5年ぶりに応募。例年より遅い発表に、却下されたものと完全に諦めていたところ、句友よりの「おめでとう」の電話で知った2席!これらの5句が日の目を見た瞬間だった。審査委員は、岩岡中正、星永文夫、福永満幸の各氏。小説他全7部門での受賞式が先日13日、メルパルクで行われた。(Midori)

芋茎

2018-12-13 | Weblog
芋の茎吊るして長き老後かな      太田和代

掲句は、地元南関句会で出句された句。聞けば、作者の母のことらしいが、人生百年時代を迎えると、「長き老後かな」が実感として伝わってくる。「芋の茎を吊るす」ということも、この時はじめて知ったが、昔の暮しぶりを知る人だけが詠むことが出来る貴重な一句だと思う。会員相互に特選句を披露することになっているが、掲句は私のイチオシ特選句である。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

鰯雲

2018-12-11 | Weblog
病む人の眼よりあふれて鰯雲     加藤いろは

「病む人」の必然性は一体何だろう?どこへも行けないとしたら、「鰯雲」は一つの願望だろうか。シュールな構図が魅力的な一句。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori

仏桑花

2018-12-09 | Weblog
身のうちにふとひかり凪仏桑花     堀 伸子

穏やかな有明海を前にして、ふと「ひかり凪」を身の内に感じた作者。「ひかり凪」は、不知火海に生きる人々が、時折目にするという「凪」である。今年亡くなった、石牟礼道子さんは、不知火海をこよなく愛した作家であるが、「さくらさくらわが不知火はひかり凪」という一句を遺している。掲句は、そんな彼女へのオマージュであり、「仏桑花」は彼女の生き方への供華のようにも思われる。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

第54回滔天忌俳句大会 Ⅱ

2018-12-07 | Weblog
12月6日の「滔天忌」俳句大会当日は、午前10時に席題が発表。54回目となる今年の席題は、「笹鳴」。12時出句締切まで、1句投句。午後からの句会は、参加者40名による3句の互選のみだが、席題だけの句会という形式はとても楽しい。高得点順に大会賞が決定し、それぞれ賞状並びに副賞が贈られた。荒尾市俳句協会の方々には大変お世話になりました。深謝。(Midori)

滔天賞        笹鳴のまぎれて風の音となる     境 博之 
孫文賞        七十路の我にも未来笹鳴ける    馬渕富士子  
熊本県俳句協会長賞  笹鳴や昭和の子等の秘密基地   太田清美
熊本日日新聞社賞   昨日より今日が幸せ笹子鳴く    大野敬子
荒尾市俳句協会長賞  西方へ傾ぐ香煙笹子鳴く       堀 伸子

第54回滔天忌俳句大会 Ⅰ

2018-12-07 | Weblog
12月6日は、滔天忌。宮崎滔天は、アジアの未来のため孫文の辛亥革命を支えた革命家である。滔天の生家が熊本県荒尾市にあるため、荒尾市では毎年、滔天を顕彰した俳句大会を開催。我が家から車で20分という御縁で、ここ数年応募。「滔天忌」を冬の季語とするという応募要項だが、正直言って滔天について全くの不勉強。自分なりに滔天をイメージして投句。今年の選者は、福岡市の俳誌「光円」の主宰、服部たか子氏。受賞者には、副賞に国指定の工芸品、小岱焼がそれぞれに贈られた。深謝。(Midori)


天賞  滔天のやうな男と炉を囲む      平川みどり (南関町)
地賞  滔天よ出ませまたあの冬となる   中川屺城子 (北九州市)
人賞  天高し滔天生家の赤い靴       﨑坂當子 (荒尾市)
 〃   田仕事の終えし青空滔天忌     山角和代 (玉名市)
   朝一の用は投函文化の日      荒尾かのこ (荒尾市)

【選評】 目の前の男性の熱い語り草。まるで宮崎滔天のようだと聞き入る。滔天のような男性はどんな夢を語られたのだろうか。色々と想像が膨らむ。囲炉裏の火は彼らの頬を照らす。(服部たか子)

秋潮

2018-12-05 | Weblog
港町古ぶ秋潮寄する間も     山下しげ人

三角西港での吟行句。「秋潮寄する間も」の「も」に一句の感動が凝縮されていると思われる。つまり、いつの時も刻々と港は古くなっていく、という気づきである。過去に作られた「港町」が「古ぶ」というのは当たり前のことを詠まれて、余韻の深い一句である。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

枯芒

2018-12-03 | Weblog
戦国の色して枯れてゐる芒      岩岡中正

枯れ切って呆けている芒を、「戦国の色して」という飛躍表現。具体的な色ではなく、「戦国の色」という一種の比喩は、殺伐とした戦国の世をイメージする。湖北等の前書のある吟行句だが、独立した作品として十分に鑑賞できる一句。「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)