A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

工藤冬里+Reiko.A/陰猟腐厭/水野寝地@渋谷Last Waltz 2014.12.2(tue)

2014年12月04日 00時23分24秒 | 素晴らしき変態音楽


鳥のぶらんこもしくはギロチン vol.4

【出演】
工藤冬里(くどうとうり)+Reiko.A(れいこえー)
陰猟腐厭(増田直行 guitar + 原田 淳 drums)+万城目 純(dance)
水野寝地(みずのねじ)



今年突然30年ぶりの新作と過去音源の集大成をリリースし、寂しかった地下音楽愛好家の庭に衝撃の花を咲かせた横浜前衛ロックの雄・陰猟腐厭が、リリース後はじめて人前に姿を現した。その場をアレンジしたのはReiko.Aこと東玲子。かつてメルツバウと行動を共にしてエレクトロニクス&ヴォイスパフォーマーとして異彩を放った女性ノイジシャンの先駆者である。彼女の企画イベント『鳥のぶらんこもしくはギロチン』に陰猟腐厭を招聘した経緯は判らないが、東京と横浜の地下水脈が30年経っても枯れていないことの証と言えるだろう。
【考察】即興演奏の意志と時間~橋本孝之『サウンド・ドロップ』/陰猟腐厭『抱握』
【至福の地下音楽】時代からはみ出し続けるネームレス即興ロック~陰猟腐厭『初期作品集1980-1982』

●水野寝地

(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

一番手はReikoが「傷を負ったがゆえの自然主義文学」と評するSSW水野寝地(みずのねじ)。店長がSSWでもあるラストワルツは弾語りアーティストの出演が多く、音響設備もアコギ向けなのかもしれない。飾り気のない普段着シンガーの最大の武器である「声」の魅力が発揮される。ダミ声混じりの水野の歌は、何処にでもいるちょっと冴えない男子の日常を、リアルな言葉で吐露した正直さが魅力。まさに「自然主義文学」であり「無頼派」とも言える。特に「吐き出したゲロを睨んでまたゲロを吐く」日々の繰り返しを歌った「音楽」という曲の、実生活者の心情を視覚言語化した迫真手法に心撃たれた。


水野寝地 公式サイト


●陰猟腐厭+万城目純


本来ならトリオだが、大山正道(key)が体調を崩し欠席し増田直行(g)と原田淳(dr)のデュオ編成の陰猟腐厭と、ダンサーの万城目純(マキノメジュン)の共演。増田はE音だけを延々と鳴らし続ける。弾く角度や力の微妙な違いで、音の表情が大きく異なるのに惹き込まれる。原田の自由奔放・優柔不断なドラムに気を取られることも屡々。黒いタキシードに赤いスカーフで顔を覆った万城目が進み出て舞う。演奏の変化と共にダンスが狂気の度合いを深め、旗の様に振り回すスカーフの波動が演奏の脈動とシンクロし、見えない渦に心が巻き込まれる。派手さや大仰さは皆無なのに、信じがたいダイナミズムに圧倒された。30年以上地下の迷宮に身を浸す筋金入りのアウトローの神髄を見た。

●工藤冬里+Reiko.A


「冬里さんの伴奏で歌う」とReikoの呟きにあったが、まさかこれほど「歌」をメインに据えたパフォーマンスは予想していなかった。冬里がピアノ、Reikoが歌の真っ当な歌曲リサイタル。演奏曲は「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「帰ってくれれば嬉しいわ」「クライ・ミー・ア・リヴァー」「この世の果てまで」といったスタンダードとドイツ語歌曲。冬里もピアノの弾語りで一曲(オンリー・ワンズのカヴァー?)歌う。Reikoは歌いながら腕を大きく広げて、巫女の様な舞いを披露。冬里は余計な遊びを排したストイックなピアノ演奏。後半、客席の真ん中で歌い踊るReikoを煽るようにピアノの波が押し寄せ、Reikoの魂の声が鳴り響いた時には、再びエモーションの海に溺れてしまった。

「鳥」「ぶらんこ」「ギロチン」という三つの言葉が象徴する微妙な均等と違和感は、三者三様の個性を表すのに相応しい。次回もユニークな組み合わせを期待すると共に、「完全版」の陰猟腐厭がいち早く復帰することを祈りたい。

鳥たちの
危ういバランス
まっぷたつ






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