私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

イサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進(3)

2022-10-24 19:15:51 | 日記・エッセイ・コラム

 長崎には数多くの原爆慰霊碑があります。爆心地公園の南端に人間の丈二倍を超える高さのアーチ型の赤煉瓦の碑『核廃絶人類不戦』が建っています。その正面には「核廃絶人類不戦」の文字が力強く刻まれ、その上に「外国人の戦争犠牲者追悼」の文字、その下には、英語で

A Memorial to All Foreign War Victims in Nagasaki

May It Be a Token of Men’s Prayer for the Abolition of

Nuclear Weapons and a Pledge Never to Take Arms Again

と刻まれています。

 下部の水平の石面には、次のような「碑文」が刻まれています。

核廃絶人類不戦の碑 建立の由来

 一九三一年九月十八日の柳条溝事件を契機とする日中戦争、一九四一年十二月八日の真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争など、この十五年にわたる戦争によって三二〇万の日本人、数千万のアジアと世界の民衆の尊い生命が奪われた。 この戦争の末期、長崎では数次にわたる米軍の空襲、潜水艦攻撃、そして八月九日の原爆によって、七万余の日本人、数千の朝鮮人、中国人労働者、華僑、留学生、連合国捕虜(イギリス・アメリカ・オーストラリア・オランダ・インドネシア等)が犠牲となった。

 とくに浦上刑務所のあった隣接する丘では、三十二名の中国人、十三名の朝鮮人が日本人受刑者と共に爆死し、また香焼や幸町の捕虜収容所では、被爆前に病気や事故によって数百名の連合国兵士が死亡した。

 私たちは長崎で亡くなったこれら全ての外国人戦争犠牲者、遠くアウシュヴィッツ強制収容所で殉職したコルベ神父らを追悼し、再びこのような惨劇をくり返さぬよう、核兵器廃絶・人類不戦の誓いをこめて、内外から広く浄財を募り、ここにこの碑を建立する。

     一九八一年十二月八日

        太平洋戦争開始四十周年の日に

        外国人戦争犠牲者追悼碑建立委員会

 

私(藤永茂)の願いは、この追悼碑のように遺骨を収容していない原爆慰霊碑も、実際に遺骨を納めてある大小の慰霊碑も、全てをイサム・ノグチが設計した慰霊碑の地下の部分に、何らかの形で再収容することです。出来ない事ではないと思います。

 今、私の手元には、長崎・外国人戦争犠牲者追悼碑建立委員会出版(一九八二年四月十七日)の、『核廃絶人類不戦』と題した182頁の冊子があります。その中の決算報告によると碑の建立費用3,244,416円はすべて寄付金(個人976、団体116)によって賄われました。この冊子の末尾には建立寄金者全ての芳名録が掲載されています。

 このブログシリーズの初回に、私は「核兵器の使用をあげつらう政治家の存在する現世の暗黒を憂いて、イサム・ノグチの魂魄は未だこの世に留まっているに違いありません。」と書きました。イサム・ノグチが上掲の碑文を読めば、心から賛意を表明し、私の建立勧進の志にも賛同してくれるのも、これまた、間違いありません。

 さらに私の夢を続ければ、核廃絶・人類不戦に続いて、地球共生の四文字を付け加えたいと思います。私の思いは、いわゆる、環境保護のスローガンから可成りはみ出ます。彫刻家イサム・ノグチは地球という大自然の一部としての石に極めて強い愛着を持って、生涯、仕事を続けました。地球と共に生きることを彼は望んでいたのです。私は『イサム・ノグチ:地球を彫刻した男』という日本の民放制作のドキュメンタリーを私が個人的にダビングしたビデオとDVDを持っています。なかなか立派な内容で、木村拓哉と仲代達矢がナレーターとして出演していて、彫刻家としてのイサム・ノグチの偉大さがよく描かれています。その中には、イサム・ノグチが、文字通り、“地球を彫刻して”出来た札幌のモレエ沼公園の工事の貴重な記録映像も含まれています。もしご希望の方があればコピーを作ってお送りしようと思っています。

 広島でも、長崎でも、イサム・ノグチの原爆慰霊碑の建立の夢が叶わぬとあれば、札幌市の力で、モレエ沼公園の一部として建立してもらいたいものです。その場合、核廃絶・人類不戦・地球共生と慰霊碑の何処かに刻印すれば、イサム・ノグチも喜んでくれるでしょう。

 

藤永茂(2022年10月24日)


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2 コメント

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お願い (寺島隆吉)
2022-11-12 13:54:49
藤永 茂 先生

 初めてお便りさせていただきます。
 岐阜大学を2010年に定年退職した寺島隆吉です。

 いつもブログ「私の闇の奥」を拝読し、勉強させていただいています。有難うございます。ご高齢にもかかわらず鋭い執筆を続けておられることに感銘しています。、
 
 さて、このたびは「イサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進(3)」という記事に次のように書いてありましたので、DVDの送付をお願いしたいと思いました。

>私は『イサム・ノグチ:地球を彫刻した男』という日本の民放制作のドキュメンタリーを私が個人的にダビングしたビデオとDVDを持っています。
 なかなか立派な内容で、木村拓哉と仲代達矢がナレーターとして出演していて、彫刻家としてのイサム・ノグチの偉大さがよく描かれています。
 その中には、イサム・ノグチが、文字通り、“地球を彫刻して”出来た札幌のモレエ沼公園の工事の貴重な記録映像も含まれています。もしご希望の方があればコピーを作ってお送りしようと思っています。

 私の自宅住所は下記のとおりです。
 〒502-0071 岐阜市長良2794-1
 自宅電話:058-297-1509

 お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。なお送付は着払いにしていだだければ有り難いと思います。

 取りいそぎ御願いのみにて失礼します。

寺島隆吉
イサム・ノグチのDVD (寺島隆吉)
2022-12-01 16:30:01
藤永茂先生

 元岐阜大学の寺島隆吉です。
 ブログ『私の闇の奥』が、「イサム・ノグチ原爆慰霊碑建立の勧進(3)」でストップしていましたので、ひょっとして入院でもされたのかと心配していました。

 イサム・ノグチのビデオが届きました。DVDが3枚も入って驚喜しました。有難うございました。
 しかし自宅のテレビのモニター画面が急に暗くなって見えなくなったので、まだ、いただいたビデオを見ていません。仕方なく新しいものに買い換えることにしました。

 というわけで、視聴したあとに改めて感想などを送らせていただきます。今日は御礼のみにて失礼させていただきます。

 なお、「着払いでお送りください」と書いておきましたが、郵送料もDVDもすべて藤永先生の負担になっていて恐縮しています。
 その御礼代わりになるかどうか分かりませんが、下記の拙著を別便でお送りします。御笑覧いただければ有り難いと思います。

 『コロナ騒ぎ謎解き物語』1・2・3(あすなろ社)
 『ウクライナ問題の正体』1・2・3(あすなろ社)

寺島隆吉

<追伸1>
 拙著『ウクライナ問題の正体1』第7章の扉(103頁)に藤永先生の顔写真を入れさせていただきました。
 私としては名著『アメリカインディアン悲史』(朝日選書、1991)に出会って以来、ずっと敬愛し続けてきた大先輩なので、ぜひとも紹介したいと思いました。無断借用をお許しいただければ有り難いと思います。

<追伸2>
 今このメールを書くにあたって調べてみたら、『ウクライナ問題の正体1』第7章の扉に載せた写真の説明が次のようになっていることに気づきました。
 * 専門書の他に、名著『アメリカインディアン悲史』(朝日選書1991年)がある
 しかし、これは次のようにすべきだったと今になって後悔しています。
 * 専門書の他に、名著『アメリカインディアン悲史』、名訳『闇の奥』など著書多数
 このような舌足らずな紹介になってしまい申し訳なく思っています。この点についても、改めてお詫び申し上げます。どうかお許しください。

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