私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

リビア洪水死者2万は人災である

2023-09-16 14:45:58 | 日記・エッセイ・コラム

リビアの洪水で2万人を超える死者が出ています。これは人災です。事の始まりは、メディケーンと呼ばれる、我が国の台風の様な暴風雨現象の発生で、地中海で起こるハリケーンというのでこの名前で呼ばれているのだそうです。我々が普通に考える異常気象予報、防災避難アラームが該当地域に行き渡る様に発せられていれば、この様な大量の死者を出す筈はなかったのです。しかし、リビア東部にはその当然のことを行う行政機構が存在しません。何故か? アフリカ大陸で一番立派にやっていたリビアという国を、2011年春、オバマ大統領が率いる米国を先頭にした猛烈な軍事侵攻で壊滅させてしまったからです。

 2005年、名古屋で「愛・地球博」という正式愛称の国際博覧会が開催されました。その時のリビア館の案内文には次の様に書いてあります:

「グローバル・コモン3にあるリビア館が1日、オープンしました。入り口をくぐると、まず砂漠のポスターが目に入ります。国土の90%以上が砂漠であるリビアのテーマは“Yellow and Blue is Green”。砂漠の黄色と水の青。リビアを語るのに欠かせない砂漠と水の関係を、パビリオンで見ることができます。パビリオンの真ん中に大きく展示されているのは、大人工河川計画に使われたパイプの模型。このパイプは4000キロにも及ぶ大規模なもので、映像で工事の様子を見て、リビアの水事情に触れることができます。出口付近では、色鮮やかな刺しゅうや織物など、リビア土産が並んでいます。一通り見た後は、ターバン姿の若者がいれてくれるリビアティーを飲んで、アラビア音楽を聞きながら、一息つくこともできます。」

 名古屋万博の当時、このリビアの誇る治水事業について、リビア政府のもっと詳しい報告を読んだ記憶が私にはあります。4000キロにも及ぶ大規模治水計画は、ほんとに、リビアの国家的誇りであったのです。日本の治水政策の専門の方々もきっと記憶していられると思います。それに今度大雨で決壊した二つのダムについては現地でもその安全性が問題になっていました。そうした事を日本国内では誰も語ってくれませんでした。何故ですか?語られているのは、リビアの石油輸出が滞って、日本のガソリン価格がさらに高騰する心配だけです。その間にも無数の死体が地中海の波間に消えていきます。

<付随文献>

 リビアの洪水については日本語の記事が幾らも見つかります。例を三つ:

https://www.bbc.com/japanese/66805352

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1452Y0U3A910C2000000/

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230913/k10014194291000.html

次のCNNの記事は、普通の災害予報システムが作動していれば、死者は殆ど出ずに済んだだろうと言っています。残念です:

https://edition.cnn.com/2023/09/14/world/libya-floods-un-deaths-intl/index.html

“If there would have been a normally operating meteorological service, they would have issued the warnings and also the emergency management of this would have been able to carry out evacuations of the people and we would have avoided most of the human casualties,” Petteri Taalas, the UN’s World Meteorological Organization (WMO) secretary-general, told reporters in a news conference in Geneva on Thursday.

米国政府の正式言及は次の通り、何という白々しい冷酷さ!

https://www.state.gov/flooding-in-libya/

前回のこのブログで、ウィキペディアの偏向のことを述べましたが、2011年の米欧による猛烈なリビア壊滅軍事侵攻についての次のウィキペディアの記事は偏向とプロパガンダの典型です:

https://ja.wikipedia.org/wiki/2011年リビア内戦

次の記事の後半には、名古屋万博のリビア館の展示の目玉だったに違いない巨大な治水計画のことが説明されています。これこそが、日本の皆さんに、今、是非、思い起こしていただきたいと願うカダフィのリビアのありし日の姿です。この中に「アフリカ合衆国」という文字が、既に、出ています!:

佐山与太郎のどですかでん

https://ameblo.jp/sayamayotarou/entry-11473831693.html

今回の大災害の遠因をなす政治的背景については次の記事が良い参考になります:

https://www.wsws.org/en/articles/2023/09/14/zlnn-s14.html

同じウェブサイトの次の記事もお勧めです:

https://www.wsws.org/en/articles/2023/09/15/glxz-s15.html

<以上>

藤永茂(2023年9月16日)


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1 コメント

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優生学の親玉アメリカ問題 (檜原転石)
2023-09-20 08:03:51
私は世界の災厄の元凶は優生学の親玉アメリカ問題だと認識しています。
分かりやすく書くと、「ナチスは悪、だからナチスの親玉アメリカは最悪」となります。
「人間は平等」という真理とは正反対の優生学は、人種主義や白人至上主義、及び市場原理主義とも密接に絡み合いながら、世界の超富裕層特権、白人特権を形成します。
優生学の親玉アメリカが医療費ゼロ・教育費ゼロの国を標的にするのはキューバが好例ですが、同様の国のイラク・リビアが欧米によって完全破壊されました。
かような侵略戦争は間接的にも(高福祉が破壊される)超富裕層の人口削減計画に大いに寄与します。
新型コロナ大騒動問題はオバマ政権の国防総省が発動(「ワクチン」死による人口削減計画)させたようですが、そういえば偽パンデミック時(2009年)に「良い会」会合がニューヨークでありました。世この「良い会」会員には、以下の優生思想家が名を連ねます──デービッド・ロックフェラー、ジョージ・ソロス、ビル・ゲイツ、ポール・ナース、ウォレン・バフェット、テッド・ターナー、マイケル・ブルーバーグ、ピーター・G・ピーターソン、ジュリアン・H・ロバートソン・ジュニア、パティー・ストーンサイファー(ゲイツ財団の元最高経営責任者)、ジョン・モーグリッジ(シスコシステム社)、オプラ・ウィンフリー、エリ・ブロード。

私たちは世界の簡単な構造を難しく理解して、迷路に迷いこんでいます。結果、臣民として間引きの対象中です。

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