褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 暗殺の森(1970) 巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の傑作

2019年03月27日 | 映画(あ行)
 もう昨年のことになるが巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が亡くなった。日本人には坂本龍一が音楽を担当し、彼も出演していたラストエンペラーが馴染み深いか。しかし、巨匠と呼ばれるだけあって他にも傑作、問題作を連発。そんな中でも比較的お勧めしやすい作品となると今回紹介する暗殺の森ということになる。なんだか物騒な邦題がつけられているが、原題はイタリア語でIl conformista。日本語に訳すと『同調者』という意味になる。確かに本作を観ると邦題をつけた人の気持ちが、わからないでもない。しかし、根幹をなすテーマとしては原題の『同調者』がより相応しい。
 よく映画を観る時の心得として知ったからしい人が、『映画というのは何の予備知識もなく観るのが正しい見方だ』なんて上から目線で語る人がいる。しかしながら予備知識なしで本作を観ると多くの人が難解に感じ、退屈する可能性が高い。せめて本作を観る前に第二次世界大戦前後のイタリアという国家を知っておいて方が良いだろう。戦前から戦中にかけてイタリアはベニート・ムッソリーニ独裁の全体主義、軍国主義であるファシズムが台頭する。しかしながら、戦争で負け続け、ファシズムに勢いが無くなると戦争末期から戦後にかけてイタリアに大きな波が吹き寄せてきたのは共産主義。イタリアの政治的イデオロギーの変化を予備知識として持っておけば、本作のジャン=ルイ・トランティニャン演じる主人公の男性の露骨すぎる卑怯な振舞いの変化に納得するはずだ。
 
 一人の男を通して、歪んだ思想、恋愛が描かれているストーリーの紹介を。
 第二次世界大戦前のイタリアにおいて。すっかり大人になった青年マルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)だったが、彼は幼いころに大人の男性から性的虐待を受けそうになり、相手を射殺してしまったことに、ずっとトラウマを抱えていた。そんな悩みを払拭するためにファシズムにのめり込んでしまい、組織の一員となる。
 そんなマルチェロにファシズムの幹部から命令が降りる。それは、今はパリに亡命している大学での恩師であるクアドリ教授(エンツォ・タラシオ)を見張ること。クアドリ教授は反ファシズム運動の活動家として動きを活発化させていた。マルチェロはちょうど若くて可愛いジュリア(ステファニア・サンドレッリ)と結婚したところであり、新婚旅行を口実に彼女と一緒にパリへ向かう。マルチェロは久しぶりにクアドリ教授と出会い、会話も交わす。しかし、マルチェロはクアドリ教授の妻で若くて、妖艶な美貌をしているアンナ(ドミニク・サンダ)の虜になってゆく。
 マルチェロはジュリアに内緒でこっそりとアンナと楽しんだりしていたが、マルチェロに上司からクアドリ教授を殺害しろとの命令がくだり・・・

  政治、サスペンス、人間ドラマがドロドロに描かれており重厚な雰囲気が漂う映画であるが、何気にそんなシーン居る?見たいな場面も随所に見られる。唐突に同性愛、幼児性愛、不倫といった歪んだ性描写が出てくるが、そういうシーンを何の恥ずかし気もなく描くところが、ベルトルッチ監督らしいところ。本作が公開された1970年は、まだベルトルッチ監督の年齢が29歳の若さだったことを考えると、天才は常人にはない発想があることを思い知らされる。
 出番はそれ程多くないのだがドミニク・サンダのエロい雰囲気のインパクトが強くて映画のテーマを忘れそうになってしまうが、あくまで本作の主人公はジャン=ルイ・トランティニャン演じる素っ頓狂な理由でファシズムに傾倒する男性。しかしながら、何かとこの男が優柔不断のダメ男。政治信条のブレっぷりは凄いし、女性関係もだらしないし、自ら責任を取らないどころか他人のせいにしてしまう卑怯者。こういうような奴は本当に何処でも居るんだということを思い知らされる。しかし、映画は観ている者に訴えかける。果たしてお前はこの男を非難する資格があるのか?と。
 ダメ男のストーリーを延々と見させられることに退屈さを感じる人もいるかもしれないが、重厚な映像は流石はベルトルッチ監督。タイトルの名前にもある暗殺場面のシーンは残酷でありながら美しさを感じさせるし、セットの美術的エッセンスはなかなかの見所で良い映画を観た気分にさせる。
 ヨーロッパの名作に興味がある人、ベルナルド・ベルトルッチ監督と聞いて心が躍る人、綺麗な女性を見たい人等に今回は暗殺の森を紹介しておこう。

暗殺の森 [DVD]
アルベルト・モラヴィア,ベルナルド・ベルトルッチ
紀伊國屋書店


 監督は前述した通りベルナルド・ベルトルッチ。5時間を超える長い映画だがイタリアの現代史が理解できた気分になれる1900年。当時は芸術か猥褻かで議論の的になったラストタンゴ・イン・パリ、すっかり冷めきったアメリカ人夫婦が愛の絆を確かめようとする姿が痛々しいシェルタリング・スカイがお勧めです。






 
 
 




 

 

 
 
 
 







 
 

 

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