褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 ミッシング(1982) だからアメリカは嫌われる

2013年01月25日 | 映画(ま行)
 他所の国の事なのに無理矢理介入して、色々と問題を引き起こすアメリカ。最近のイラクや、ちょっと前のベトナムに対しての軍事介入しかり、中南米に次々と誕生する社会主義政権の国家を裏で工作して転覆を謀ったり、その悪事の数々は今ではバレバレ。俺こそが正義だと声高々に叫ぶ傲慢さと、勝手に他所の国の事に首を突っ込んで問題を引き起こすイタズラ好きが、アメリカが世界中で嫌われている原因だろう。しかもテロ撲滅などと格好の良いことを言っている割に、よく考えたら世界中に対する貢献度はかなり低いことに気付く。だったら尚更嫌われるのも納得だ。
 世界中の国の政治、経済、文化、社会などをアメリカナイズしようとするアメリカと言う国に対して、きっと誰もがムカつくことになる映画が今回紹介するミッシングだ。

 1973年の軍事クーデター真っ最中の南米のチリに、アメリカ人夫婦のチャールズ(ジョン・シェア)とベス(シシー・スペイセク)が仲良く住んでいた。ある日のこと、チャールズ(シェア)が行方不明になってしまう。
 チャールズ(シェア)の行方不明の知らせを受けた、父親のエド(ジャック・レモン)はニューヨークからチリにやって来る。エド(レモン)とベス(スペイセク)の義理の父娘は協力してチャールズ(シェア)を探し出そうとするのだが、何故かアメリカ大使館は非協力的。それでも少しずつ情報を入手し、チャールズ(シェア)の足取りに近づいていくのだが、真相を知ったエド(レモン)は自らの信念が崩れ去ってしまうほどの衝撃を受けてしまう

 実はこの映画は登場人物の名前が一部変更されているが実話がベース。合法的に誕生したチリの社会主義政権に、例の如く裏工作をしたアメリカによって引き起こされるチリ・クーデターが背景。

 軍事クーデターの余韻が冷めないチリの町の様子がとにかく怖い。遠くでパンパーンっと乾いた銃声の音が響き渡り、道には血を流した死体が転がっている。そこら中で銃を持ち歩いている軍人がウヨウヨいるのだが、この様子が本当に怖い。行方不明の人探しのストーリーに大いなる緊迫感を与える。

 この映画は人物設定が非常に興味深い。ニューヨークから行方不明の息子を探しにチリにやって来たお父さんのエド(ジャック・レモン)だが、ビジネスで成功していて、チョッとしたお金持ち。資本主義のアメリカから恩恵を受けていることに感謝し、民主主義こそ正義だと信じ、自国であるアメリカ大好きのバリバリの保守的な思想を持っている。
 一方、息子のチャールズ(ジョン・シェア)とその嫁のベス(シシー・スペイセク)はアメリカだけを観るのではなく、世界の国々を旅してもっと他の国も観たいと思っている好奇心の旺盛な人間。チャールズ(シェア)は父親のように仕事に打ち込むのとは違って、チリにおいても非営利団体で友人の手伝いをしているように稼ぎは少ないが、己の理想を一生を掛けてでも見つけようとするタイプの人間だ。ちなみに俺にはどちらの思想、生き方が正しいかは判断できない。

 そんな訳でエド(レモン)は自分と異なる生き方、考え方をしている息子夫婦に対して、良い感情を持っていない。当初エド(レモン)はチャールズ(シェア)の行方不明は『どうせ色々な事がしたいから、連絡を告げずにまた何処かへ放浪したのだろう』ぐらいに考えて、直ぐにでも解決するだろうと思っていた。しかも、息子の失踪をベス(シシー・スペイクス)のせいにしているぐらいだ。そんなわけで行方不明の人間を探すという目的は同じだがエド(レモン)とベス(スペイセク)の義理の父娘は最初から仲がボロボロで衝突を繰り返す。義理の親娘の対立及び変化していく様子の描き方が上手い。

 そして、チリ駐在のアメリカ人の領事や大佐の言動が多少の脚色があると思うが、多くの人はビックリするだろう。アメリカってマジかよ!っと思ったり、日本だってそうなのか!っと考え込んだり。アルジェリアにおける日本人が巻き込まれた悲惨な事件も合わせて考えると、国際社会の難しさを大いに痛感する。
 
 果たして行方不明になってしまったチャールズ(シェア)の結末は?エド(レモン)が信じていたアメリカの本当の姿とは?、緊迫感は最初から最後まで持続され、アメリカの策略が読み取れ、国家と人間の関係について考えさせられ、実は親子関係の修復が一番のメインだったのかと思えるミッシングは、真相究明のサスペンス映画という枠に収まらない奥の深さがあります

ミッシング [DVD]
ジャック・レモン,シシー・スペイセク,ジョン・シーア
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


 監督はギリシャ人のコスタ=ガブラス。とにかくポリティカル・サスペンス(政治サスペンス)に名作が多い。ギリシャ時代の作品におけるイヴ・モンタン、ジャン・ルイ・トランティニャン競演のZがお勧め。ハリウッドでは本作のミッシング、ジェシカ・ラング主演のミュージック・ボックスが良いです。

 実はこの映画はキャストが素晴らしい演技を見せます。
 行方不明の息子の父親エドを演じるのが名優ジャック・レモン。本作品では非常にシリアスな役を演じていますが、個人的にはコメディの方が印象的。名匠ビリー・ワイルダー監督のお熱いのがお好きアパートの鍵貸しますがお勧め。他にジョン・フォード監督のミスタア・ロバーツも良いです。

 エドと一緒に旦那を探そうとするベスをシシー・スペイセクが演じています。この人のお勧めはブライアン・デ・パルマ監督のキャリー。あの映画の印象が非常に強烈。他にデヴィッド・リンチ監督の真面目?な映画ストレイト・ストーリーが良いです。

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ
     
 人気ブログランキングに参加しております。クリックお願いします



  
 
 
 
 
 
 


 

 

 



 

 
 
 

 
 

 

 
 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画 白い恐怖(1945) 記... | トップ | 映画 ジュニア・ボナー 華... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(ま行)」カテゴリの最新記事