褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 水の中のナイフ(1962) ロマン・ポランスキーの長編映画デビュー作

2018年10月25日 | 映画(ま行)
今や巨匠中の巨匠であるポーランド人であるロマン・ポランスキー監督。彼のデビュー作品である祖国ポーランドで撮った唯一の映画になるだろう映画が今回紹介する水の中のナイフ。登場人物がたったの3人しかいないし、舞台は殆どがヨットの中か上。極めて閉塞感を感じさせる映画だ。
 タイトルだけから内容を想像すると怖いシーンがあるのかと思ってしまいそうだが、そんなシーンは俺が見たところ全く無いように思えた。むしろ本作が描いているのは格差及び差別社会を描いたストーリー。経済格差、男女の差、世代間の差などが、たったの3人の登場人物しか出てこない中で描いている。
 
 週末になるとヨットで船出するぐらいの裕福な夫婦、そしてお金を持っておらずヒッチハイクをしている若者。そんな3人の中で最も欺瞞に満ちた人間をあぶり出すストーリーとは如何なるものか。
 年齢差はあるが裕福な夫婦である夫のアンドジェイ(レオン・ニェムチック)と美しい妻クリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)は週末の休日を利用して、ヨットでクルージングするために車を走らせていた。
 運転中に若者(ジグムント・マラノウッツ)が飛び出してくる。この若者はヒッチハイクしており、アンドジェイ(レオン・ニェムチック)は少々気分を害しながらも若者を乗せ、しかもヨットにも乗せて3人でクルージングをすることになる。
 しかしながら次第にアンドジェイ(レオン・ニェムチック)と若者の間には溝が生じてくる。そして、クリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)と若者の仲を疑い出したアンドジェイ(レオン・ニェムチック)は、若者の唯一の所有物であるナイフを海の中へ捨て、若者もナイフに気を取られて海へ落ちてしまい・・・

 最初は社会的地位もあり、ヨットを扱うことに長けており、偉そうにしていたアンドジェイ(レオン・ニェムチック)だが、若者が海へ落ちて姿が見えなくなってから、ダメっぷりを見せる。実はこの映画は前半は大して面白いようにも思えないのだが、ナイフが海の中へ落ちてからが面白い。
 特に説明はなかったのだが、この夫婦の結婚生活が夫が必要以上に自分を偉そうにしていたことがわかる。しかし、ダメっぷりがバレてから完全に主導権は妻の方に移る。最後の車の中での夫婦の会話において完全に立場が逆転してしまったことがわかるエンディングが非常に巧みだ。
 この映画の製作当時のポーランドは共産党の一党独裁国家。このような格差を描いた映画は自国では受けなかったが西側諸国においては受けた。むしろ何かと格差社会の問題を言われる現代の方が受け入れやすい内容。ポランスキー監督が本作を最後に西側諸国へ飛び出して映画を撮り続けているのも当然の成り行きだろう。
 タイトルから想像できるようにナイフが扱われるシーンが多いが、まさに若者を象徴していることが理解できる。当時弱冠30歳に届くか届かないかの年齢だったポランスキー監督自身を象徴しているのかもしれない。
 陰影のあるモノクロの画像は非常に印象的であるし、狭い空間でのブレのないカメラワークもポランスキー監督らしさが既に感じられる。また女優のヨランタ・ウメッカが美人なだけでなく、メガネフェチを喜ばせる。
 ロマン・ポランスキー監督のデビュー作品と聞いて心が躍った人、一度見たことがあるが何が言いたいのか意味がわからなかった人、何だかハッキリしない抽象的な映画を好む人・・・等に今回は映画水の中のナイフをお勧め映画として挙げておこう

水の中のナイフ [DVD]
レオン・ニェムチク,ヨランタ・ウメツカ,ジグムント・マラノヴィチ
角川書店


 監督は前述したようにロマン・ポランスキー監督。一番有名なのは戦場のピアニストだが、それ以外にもホラー、サスペンス、文芸作品と多くの分野において傑作が多数。お勧めはホラー映画のローズマリーの赤ちゃん、ジャック・ニコルソン主演のハードボイルド映画チャイナ・タウン、ジョニー・デップ主演の知的ミステリーの雰囲気を感じさせるナインスゲートが良いです。




 

 
 
 
 


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