日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 正確にいえば、台湾の新情勢に対して「中共の反発は必至だ」がまずあって、そのあと「中共上層部の混乱は必至だ」になるかも知れないということです。「なるかも知れない」とは我ながら弱気ですが(笑)、この新情勢、実は米中間で示し合わせての出来レースの可能性も否定できないからです。

 ともあれその「新情勢」なるものにふれておきましょう。日本でも比較的大きく取り上げられているニュースですから、皆さん御存知でしょう。

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 ●統一委を事実上廃止 陳総統、基本方針変更(共同通信 2006/02/27/22:06)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=YNS&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006022701003313

 【台北27日共同】台湾の陳水扁総統は27日、国家安全会議を招集、中台統一を前提とした対中関係の諮問機関、国家統一委員会と、同委が採択した国家統一綱領について「運用を終える」と述べ、事実上の廃止を決定した。陳総統は2000年5月の就任演説で「5つのノー」として統一委などを廃止しないと公約しており、約5年9カ月ぶりの対中基本方針の変更。中国は「独立への動き」と非難しており、中台関係の一段の悪化は必至だ。
(後略)

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 ●台湾総統、「一つの中国」目標指針の廃止を発表(読売新聞 2006/02/27/20:21)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060227i112.htm

 (前略)
同綱領は、1991年、李登輝・国民党政権が策定したもので、中台を対等な政治実体として、「交流」や「敵対状態終結」など、統一に向けた段階的道筋を明記している。独立志向が強い陳政権が2000年に発足してからは、実質的に機能停止状態にあった。(後略)

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 ●陳総統、中台統一委と綱領を事実上廃止(Sankei Web 2007/02/27/22:21)
 http://www.sankei.co.jp/news/060227/kok096.htm

 (前略)
廃止決定は、陳政権との対話を拒否したまま台湾の最大野党、国民党との連携を強めてきた中国側に揺さぶりをかけるのが狙い。内政面では、昨年12月の統一地方選で与党、民主進歩党(民進党)が大敗したのを受け、政権死守に向けて対中強硬姿勢を鮮明にし、「統一志向」の国民党との路線対決に出た形だ。
 陳総統は一方で、「台湾海峡(中台関係)の現状を変える考えはない」と強調し、独立宣言などは考えていないことを示唆。中国に対し「関係改善に向けた政府間対話」を呼び掛けた。
(中略)
 また、台湾の実情に合わせた憲法改正を推進するが「主権問題は扱わない」と述べ、「中華民国」の名称変更などは行わない考えも示唆した。
(後略)

 ――――

 台湾の総統である陳水扁は「独立」(台独)を本義とする民進党。ところがその民進党が与党であるにもかかわらず議会では最大勢力ではなく、一応「統一」を掲げている中共お気に入りの国民党やそれに近い諸派など野党の方が議席を持っています。いわゆる「ねじれ現象」です。当然のことながら、国民党などは今回の動きに大反発しています。

 中共お決まりの派手な恫喝に代表される強硬姿勢、まあ武力侵攻による台湾併呑という選択肢を放棄していませんから口だけとは言い切れませんが、そうした大袈裟なパフォーマンスに加えて、この「ねじれ現象」が騒ぎを大きくしているように思います。

 陳水扁のとった措置自体はチンケなものです。前掲報道でふれられているように、対中関係の諮問機関である「国家統一委員会」と同委が採択した「国家統一綱領」について、「運用を終える」としたもので、元々言っていた「廃止する」から一歩譲った形です。まあ事実上の廃止ではありますけど。

 しかもこの国家統一委は国民党政権時代に李登輝・前総統が中共との統一対話先延ばしのために設立した性質のもので、民進党政権になってからは文字通り開店休業状態。『産経新聞』(2006/02/28)によるとその年間予算は約3600円、1カ月当たり約300円ですから文庫本も買えません(笑)。

 ただ形骸化しているとはいえ、政権に「中国との統一を最終的目標とする」という建前を持たせていたという政治的な意味はあります。今回それを捨ててしまったことで、「統一」以外の選択肢も可能、ということになった意義は小さくありません。選択肢が増えたというのは、台湾人の将来は台湾人によって決定されるのだ、という意思表示でもあります。

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 さて、台湾側のこの動きに対して中国側は「人民網」(『人民日報』電子版)と国営通信社・新華社が論評抜きで速報。

 ●「人民網」(2006/02/27/16:59)
 http://tw.people.com.cn/GB/14810/4147198.html

 ●新華網(2006/02/27/17:40)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/27/content_4235147.htm

 『解放軍報』はそれを即転載し、上陸作戦に関する演習に海軍が力を入れている、とか戦略ミサイル部隊の専門要員の若返りや実力の向上が進んでいるといった署名論評をさり気なく滑り込ませています。「恫喝度」を高めているつもりなのでしょう。

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417893.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417974.htm

 注目の論評は前日(2月26日)に台湾事務弁公室が出した「そんなことしたらただじゃおかねえぞ」的恫喝声明を再掲載するなどして急場をしのぎました。

 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/26/content_4229511.htm

 前日に出した声明を改めて持ち出したことで、中共にとって陳水扁による措置が想定の範囲内であったことがわかります。

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 で、今日(2月28日)になって中共から改めて声明が発表されています。陳水扁がとった措置を、

「台湾独立に向けて一歩踏み出したもの」

 と決めつけ、恫喝声明同様、
「中台間の現状を一方的に変化させるものだ」という趣旨の文言を交えて激しく非難しています。ただそれだけだと「武力侵攻か?」などという憶測を呼びかねないので、

「両岸(中台)の平和的統一は中華民族の偉大なる復興を促進し、台湾同胞を含めた内外の中華子女の共同責任であり、我々が一貫して堅持している奮闘目標である」

 と付け加え、経済・文化交流の拡大によって結びつきを強めよう、というフォローを入れています。ただし最後は、

「だが、我々は『台独』には断固反対し、『台独』分裂勢力が如何なる名目、如何なる方式によって台湾を祖国から分割せしめることを絶対に許さない」

 という一文で締めています。

 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/28/content_4237886.htm

 台湾が中共政権に実効支配された時期は1分1秒すらないというのに「独立断固反対」とは不思議なことを言うものです。ちなみに日本政府は1972年の「日中共同声明」が示す通り、台湾が中国の領土の一部であるということを正式に承認していません。

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 論評といえば外交部まで声明を出しているのが面白いですね。28日の定例会見で劉建超・報道官が記者の質問に答えたもので、

「陳水扁が『国統会』の運用と『国統綱領』の適用停止を強行したのは、台湾海峡の平和への挑発、両岸関係の緊張化、『法理的台独』を企図するものである。陳水扁による逆行したこの措置は両岸の同胞および国際社会からの強い非難を浴びている」

 というのですが、台湾が内政問題なら外交部が回答する範疇じゃないでしょう。以前にも台湾に関する問題で「それは台湾事務弁公室に聞いてくれ」とスルーしていたというのに。……するとここで米国が登場するのです。

「我々は、米国が一つの中国政策を堅持し、台湾『独立』を支持しないと米国政府報道官が改めてコメントしたことに注目している。一方で、我々は米国が陳水扁の『台独』分裂活動の深刻さと危険性をよく認識し、『台独』分裂勢力に対して如何なる誤ったシグナルを与えることなく、我々とともに共同して中米関係と台湾海峡の平和・安定という大局を維持・擁護することを米国に促すものである」

 ……なんてことを言っています。昨年秋にブッシュ米大統領がダライラマ14世と会見したことに反発し、12月の香港における民主化問題で、支持を訴えるべく訪米した民主派の香港議員に政府要人が会見したことには「内政干渉だ」などと言っていたその口が、やはり内政問題である筈の台湾に関しては米国の関与(協力)を求めている。中国お得意の「雙重標準」(ダブルスタンダード)の典型ですね。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/28/content_4239272.htm

 もしかすると、本当は米国だけじゃなくて、台湾との縁が深い日本にも協力を要請したいのかも知れません。それをやらないのは、靖国参拝問題や歴史認識の問題で日本に対し散々内政干渉を繰り返してきた中共としては言い出しにくいのと、日本に公然と頭を下げてお願いするというのは中華たる面子が許さないといったところでしょうか(笑)。

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 今回の問題について、中共はとりあえず反発姿勢を示しつつも、しばらくは模様眺めに徹するのではないかと思います。前述した台湾政治の「ねじれ現象」で、陳水扁の措置に台湾内での反発が強いであろうことを見越して、状況を眺めつつ時機が至れば国民党との関係強化や経済面での協力強化というようなアメを持ち出して来るのではないでしょうか。

 陳水扁が今回の措置を打ち出せたのは、米国の了承があったからというのも中共は織り込み済みでしょう。あるいは事前に米国からの通告があったかも知れません。これについては4月に訪米予定の胡錦涛・総書記が米中首脳会談を通じて何らかのアクションを起こすでしょう。冒頭で「出来レースの可能性も」としたのはそのためです。

 ただ、議会選挙などで国民党が大勝したりしていることを以て「台湾の世論は統一に傾いている」という判断をしているなら中共は痛い目に遭うことになるでしょう。浮動票ともいうべき現状維持派の多くが、実は潜在的独立派(トラブルなく独立できるなら独立派に一票)かも知れないということです。

 一方で、中台関係は時間が経つにつれて、人員往来などが深まるにつれて、「統一」よりも台湾人意識を強化させることになる、という見方を中共が持っているかどうか。

 ……これは香港のケースで実証済みですが、民度や政治制度が余りにかけ離れているため、観光やビジネスなどで中国本土住民との接触が密接になればなるほど、「こいつらはおれたち台湾人とは違う。別物だ」という意識が育ち、強化されることになります。日本の対中感情悪化の大きな原因のひとつも中国本土住民と生活レベルで接触するようになったからでしょう。

 要するに、現状維持の期間が長引くほど、中共にとっては選択肢が狭まり、軍事侵攻による併呑というオプションが台頭してくることになります。

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 ともあれ今回の件によって、中共上層部に混乱が生じる可能性は否定できません。いかに想定の範囲内とはいえ、「中台関係の現状を一方的に変化させる」「台独への第一歩」という点については我慢できない向きも多いことでしょう。その筆頭は言うまでもなく制服組です。

 胡錦涛と手を組んでいるとみられる軍主流派は劉亜洲中将、朱成虎少将といった電波型対外強硬派に比べれば現実に柔軟に対応できるとはいえ、所詮は軍人です。陳水扁からの一撃に対して胡錦涛に何らかの反撃を迫るとか、訪米に関して色々注文をつけるといった可能性は否定できません。

 軍人でなくても、アンチ胡錦涛諸派連合の中にはこの機を利用して胡錦涛イジメに乗り出す政治勢力もあるでしょう。前回にもふれましたが、例えばこの20年余りの改革・開放政策での既得権益層が、胡錦涛にとっての「抵抗勢力」なのです。時期もうまいことに一年の計を定める全人代(全国人民代表大会=立法機関)の直前。ここはひとつ前座ともいえるイベントに期待したいところです。

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 最後になりましたが、「中台間の現状を一方的に変化させるものだ」という物言いはそのままそっくり中共に返してやりましょう。昨年の全人代で
「反国家分裂法」を制定したことで中台間の現状を一方的に変化させ、国際社会でも非難を浴びたことを、連中は都合よくすっかり忘れているようですね。

 ●性犯罪ですよこれは。(2005/03/13)
 ●「三二六大遊行」雑感。(2005/03/28)




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 この一週間、更新が滞りがちで申し訳ありませんでした。仕事も忙しかったのですが、ここ数日はPCの方が機嫌を損ねて、それをなだめたりするのに時間を浪費して、記事集めをするのが精一杯でした。……ああ、またまた泣き言ですね(笑)。

 そんな訳で普段も中国観察の真似事(チナヲチ)しかできないのに、この一週間は注目すべき動きがいくつも出てきたにもかかわらず、いよいよ底の浅い眺め方しかできませんでした。岡目八目という言葉もありますが、それはやはり相当な眼力を持つ人にこそ当てはまるもので、私などにはとてもとても。

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 この数週間の中国というのは大ニュースというほどのものはなかったのですが、小ネタ中ネタには恵まれて、それらがひとつの流れを形成していったという印象があります。カリスマとはかけ離れたキャラな上に集団指導体制の中でも十分な指導力を持ち得ていないようにみえる胡錦涛・総書記にとって、この数週間は相当キツかったのではないでしょうか(笑)。

 簡単にいえば、様々な理由から胡錦涛政権は多方面作戦、つまり複数の敵対正面が存在する困難な状況に陥り、いまなおその対応に追われ、あたふたしている観があります。内憂もあれば外患もあります。胡錦涛の苦闘はまだまだこれからが本番、なのかも知れません。

 これから一週間はそうした小ネタ中ネタをひとつひとつ紹介しつつ、全体の流れに目を配っていくつもりです。……ただし前述したように岡目八目にもならない皮相な内容になってしまうのは諒として下さい。

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 とりあえず前回の続報からいきますか()。くどくなるのは承知していますが、新たな展開を迎えているので無視する訳にもいきません。

 例の民間による対日戦時賠償請求を中国国内で、しかも在中日系企業を相手にやろうという動きです。いままで日本国内での訴訟に挑んで当然ながら連戦連敗してきた民間団体「中国民間対日索賠聯合会」及びそれを支援する劉安元・弁護士が、自称強制労働被害者から訴訟に関する委任状を正式に受け取りました。「新華網」(国営通信社・新華社電子版)が北京紙『京華時報』の記事を転載しています。

 ●民間による対日買収請求、国内での訴訟に初めて道が開けるか(新華網 2006/02/23)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2006-02/23/content_4215839.htm

 これを主導しているのが様々な反日活動で有名な「珍獣」たる
童増であることは以前紹介しています。糞青(自称愛国者の反日教徒)どものアイドルであるプロ化した糞青ですが、私はその空気の読めなさ加減に可愛気を感じ、また馬鹿は馬鹿なりにリスクのある活動に長年汗を流してきたことに一目置いています。ネットで反日言論、というか日本・日本人への無邪気な罵倒を繰り返すしか能のない糞青とはさすがに違う訳です。

 ただしこれも前回指摘したかと思いますがこの「中国民間対日索賠聯合会」という民間団体、「民間」とはいえ一党独裁制の下でこういう活動ができるのは、もちろん政治的後ろ盾、つまり某政治勢力という飼い主がいるからです。やはり童増が代表を務める「中日民間保釣聯合会」(保釣=尖閣諸島防衛運動)などもそうですね。

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 昨年春の反日騒動、その実質は「反日」を掲げたアンチ胡錦涛諸派聯合がこうした「民間団体」という飼い犬を尖兵として使い、胡錦涛イジメひいては倒閣といった性質を持つ政争を仕掛けたものと私は考えています。ところが反日デモに代表される運動が国内各地に拡大する一方、「民間団体」に一般市民が合流してプチ暴動まで起きてしまい、政争を仕掛けた方も仕掛けられた方も驚いて、両者慌てて手打ちをして事態を鎮静化させたという経緯があります。

 これで懲りたのか、昨年10月の小泉首相による靖国神社参拝に対する民間の抗議行動は徹底的に抑え込まれました。当局が許可したのは参加者十数人限定の日本大使館に対する「なんちゃってデモ」1回だけで、しかもそれを中国国内には報道させませんでした。他の自発的な抗議行動は治安当局が対処して片っ端から潰しています。

 懲りたからです。中国社会はもはや「民間」に勝手に「反日」をさせられるほどの体力が残っていないためで、勝手にやらせたら事態がどう拡大してどう乱れて、鉾先がどこに転じるかわかったものではない。しかも「反日」をしなくても農民暴動や都市暴動、労働争議といった官民衝突が毎日のように起きています。「民間」による「反日」はもちろん、当局主導での「反日」も注意してやらないと社会のどこかで火の手が上がりかねない。

 ……この点が「反日」を掲げてお茶を濁せた江沢民時代との大きな違いです。それに関して胡錦涛は江沢民が引退して実質的な政権発足となった2004年9月の時点でかなり正確な現実認識を持っており、それが当初の対日路線に反映されていたと思います。

 強調しておくとすれば、昨春の反日騒動で政争を仕掛けたアンチ胡錦涛諸派聯合も胡錦涛側も、ともに「中国人」である以前に
「中共人」であるということです。政策や利害での対立はあっても、中共政権があるから自分が立場相応の権力を持ち、旨い汁を吸えるという認識では両者ともピタリと一致しているのです。

 当然のことながら「中国」の未来よりも「中共政権」という現行秩序の延命を第一とすることになります。中共政権が潰れてしまっては困る訳です。その好例のひとつとして、1989年の天安門事件を挙げておきます。当時最後まで軍隊による武力弾圧に反対し続け、そのために失脚し軟禁状態になりながら、死去するまでその信念を曲げなかった趙紫陽・元総書記は、国家指導者レベルでは数少ない「中国人」のひとりだったと思います。

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 とはいえ、対日路線や台湾問題、対米関係などのテーマではやはり色合いの違いが出てきます。強硬派と穏健派、あるいは観念派と現実派といってもいいのですが、例えば日中関係でいうと、日本側のアクションに対するデッドラインが違うのです。強硬派も穏健派も中共がイニシアチブをとった形での関係構築(宗主国・中国と朝貢国・日本という上下関係)を前提としていることは共通しているものの、「これ以上は許さない」というキレる線、一種の沸点に差があるといったところでしょうか。

 さらに、胡錦涛政権、あるいは胡錦涛政権の政策に対する是非があります。いままでの改革・開放で潤った既得権益層が存在する一方で、貧富の格差・地域間格差・業種間格差といった不公平・不平等の拡大という問題が深刻になっています。これを是正しようと「科学的発展観」を掲げて構造改革に挑まんとする胡錦涛政権に対し、既得権益層は当然ながら反発します。抵抗勢力といってもいいでしょう。

 この一年半はそういった内外の問題をめぐって胡錦涛政権が揺さぶられたりそれを抑えたりすることの繰り返しでした。そして今度は「民間による対日賠償請求訴訟を、中国国内で」というテーマです。「民間団体」に飼い主がいることは上で述べた通りですから、これももちろん純粋な部分のある活動ながら、より濃厚に政争の具という色彩を帯びています。

 その傍証といえるかも知れないのは、「新華網」から全国各地のニュースサイトにかなり広範に報じられたこのニュースに対し、胡錦涛の拠点である『中国青年報』、そして胡錦涛と手を組んだとみられる軍主流派が掌握する『解放軍報』は一顧だにせず、全く報じていないことです。だからといって潰しにかからないのは、あるいはこれを対日カードとして使えるかも知れない、という判断が胡錦涛側にもあるからかも知れません。

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 ただ、政争ネタの気配濃厚であることから、胡錦涛としてはこのテーマに対し受け身ではなく、主導権を握っておかなくてはなりません。そこでアンチ胡錦涛諸派連合が持ち出したと思われるこの動きに対し、反転攻勢に出ることになります。これは日本でも報道されましたね。もちろん純粋に「対日賠償請求の動き」としての捉え方ですけど。

 ●対日民間賠償の活動強化 中国、基金に3700万円(共同通信 2006/02/25)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006022501003174

 この報道の中で
「中国司法省のホームページによると、会見したのは中華全国弁護士協会など。会見場は人民大会堂で政府系機関の代表らも参加しており、中国政府の暗黙の支持があるもようだ」というのは好指摘です。

 また記事文末に
「中国政府は1972年の「日中共同声明」で対日賠償請求を放棄している」とあるのも共同通信らしからぬ(笑)……といっては何ですが、正にその通り。

 過去2回この話題を取り上げたときに当ブログも指摘した通り、この動きは日中関係の原点であり、中国側が常々強調してやまない「日中間で取り交わされた3つの政治文書」に違反する行為です。それを違反としないためには、中国側が屁理屈をこねて対日賠償権の放棄に関してねじ曲げた解釈をひねり出す必要があります。

 無理をして強行突破しなければならない、ということです。対米関係なども考えれば、対日カードを増やすために日中間の新たな摩擦となりかねないそんなリスクを冒すこともなかろうに、と思うのですが、現在、日中関係において中国側が主導権を握っている訳ではないこと(日本側がイニシアチブをとっているかどうかは別として)、そして胡錦涛の指導力が十分でないため無理をせざるを得ないものと思われます。

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 ところで前掲の共同電ですが、中国国内ではこれについてより詳細に報道されています。正式には「中国民間対日索賠法律援助行動」というイベントを開いて義援金を募ったようです。

 ●公的機関が対日訴訟に支持表明、民間の募金額は256万元に(新華網 2006/02/26)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-02/26/content_4227873.htm

 ●民間による対日賠償請求訴訟募金256万元に、各界から支持集まる(新華網 2006/02/26)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-02/26/content_4227917.htm

 上は『京華時報』、下は『晨報』からの転載です。タイトルをみると、童増らの活動がいよいよ盛り上がってきた模様。……と読んでしまうところですが、実はこれが違うのです。童増支持ではなく正反対。いや正反対というより横取りというべきでしょうか。アンチ胡錦涛諸派連合が童増ら「民間団体」を使って仕掛けた政争?に対する胡錦涛側の反撃なのです。

 というのは、記事を読めば明白です。まずこの活動の主導的役割を果たしているのが日中の弁護士グループと一部政府関係者。共同電では
「中華全国弁護士協会など」となっていますね。ここには童増の名前も出てこなければ、童増率いる「中国民間対日索賠聯合会」、そして委任状取り付けに立ち合った劉安元弁護士も登場しません。そして最大の違いはあくまでも「日本での訴訟」が前提となっており、そのための資金集めだということです。童増らが連呼している「中国国内での訴訟実現」という言葉はどこにも出てきません。

 要するに、アンチ胡錦涛諸派連合が「民間団体」「中国での訴訟実現」を掲げて胡錦涛を揺さぶったのに対し、揺さぶられた胡錦涛は「半官半民的色彩」「日本での訴訟」という全く違う流れのイベントを開催して耳目を集め、主役の座を奪いにかかったということです。

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 胡錦涛にしてみれば、本来なら対日訴訟に「官」の色彩を加えるべきではないというところでしょうが、話題を横取りするためにちょっとリスクを冒してでもよりパワフルに、兵力の集中を図ったのだと思います。「中国での訴訟実現」は日本企業の対中投資や国際的イメージにも影響しますから、胡錦涛は避けたいところでしょう。そこでこうして役者を入れ替え、舞台を改め、芝居の主題も別物にするというパワープレイに出たのではないかと。

 中国上層部の動きを追うと、2月21日に北京で党中央政治局集団学習会が開かれています。

 ●胡錦涛総書記、政治局集団学習会で経済成長モデル転換を加速せよと強調(新華網 2006/02/22)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-02/22/content_4213628.htm

 この「経済成長モデル転換」というのも抵抗勢力たる既得権益層に対する一撃なのですが、たぶん胡錦涛はこの場で童増ら「民間団体」の動きにクギを刺すことに成功したのではないかと思います。

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 この手の「一見すると……だけど実は……」というネタが最近多くて、野次馬にとっては実にこたえられない面白さです(笑)。ともあれ今回の胡錦涛、やや無理をしてしまいましたがお見事でした。……あ、まだ完全に決着した訳ではありませんけど。



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 今回も泣き言から入らせて下さい(笑)。いや笑っている場合じゃなくて、泣き言も何も中国発の記事が多くて大変なんです。

 季節柄といってもいいのですが、普段のニュースに加えて昨年の統計が色々出てきたり、全人代(全国人民代表大会=立法機関)に向けた時事評論が増えたり、その全人代を前にして各地方の人民代表大会で人事異動や新たな決定がなされたり。対日関連の報道にも目立った規制はかかっていない様子なので分量は減っていません。

 ……ということで、仕事をしながら集める記事の量がA4に9ptsで詰め込んでも50頁前後あります(涙)。もちろんその全てを熟読する訳ではありません(というより、できませんよそんなこと)。統計だからとりあえずとっておこうとか、後で使えるかも知れないから保存しようとか、当ブログのネタとしては小さいけど面白いし、姉妹サイト「楽しい中国にユース」で使えるからピックアップするとか。

 後々に起こる何事かの伏線かも知れないからこれは外せないな。……とゾクゾクしながら取り上げる記事もあります。

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 そういう中で、件の「氷点事件」以外にも注目している現在進行形の出来事がいくつかあります。そのなかで、ここ数日の間に関連記事が出てきたものがあって二者択一を迫られたのですが、続報であることを優先して今回の主題と相成ります。

 既報したエントリーは以下の通りです。

 ●中国国内での対日民間賠償訴訟、初めて実現か。(2006/02/17)

 あと「中国民間対日索賠聯合会」会長で糞青ども(自称愛国者の反日教徒)が崇拝してやまない「珍獣」(プロ化した糞青)の代表格・童増に対するインタビュー記事も参考になります。新華社系国際誌『環球』によるものです。

 ●対日賠償要求訴訟――中国での実施を(新華網 2004/12/31)
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/31/content_2402406.htm

「民間による対日賠償要求には3つの段階がある。第一段階は民間による対日賠償要求という理論を打ち出し、被害者が自分の権益を要求するという意識を高めることだ。第二段階は理論の実践で、中国人被害者が日本へ赴いて実際に訴訟を起こすこと。そして第三段階は言うまでもなく中国国内での訴訟を実現させることだ」

 とこの記事で童増は語っています。いよいよ第三段階、という訳ですが、そこまでに約20年を費やしているそうですから、ネット上で騒ぐだけの糞青と違い、「珍獣」童増は基地外ながらもさすがに苦労人だな、と思わず感心してしまいます(笑)。

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 で、今回出てきた記事がこれです。

 ●一部日系企業に照準、対日民間賠償要求は国内訴訟で勝算高まる(新華網 2006/02/21)
 http://news.xinhuanet.com/overseas/2006-02/21/content_4207731.htm

 既報した記事同様、国営通信社・新華社電で童増にインタビューする形式の記事です。「獨家專訪」(独占インタビュー)とわざわざ銘打っていますから価値ある記事と新華社は認めているのでしょう。

 ただしその内容自体は既報記事と重複する部分が多く、目新しさには乏しいです。最初のケースとなるのは三井三池鉱業所所属の炭鉱で強制労働をさせられたと主張する河北省の農民・田春生氏(76)。
「訴える相手は中国に進出している日本企業だ」と童増が語っていますから、詳しい方なら大体の見当はつくかと思います。

 問題は、中共当局がそれを許すか、ということ。建前を崩すことになるからです。日中関係の原点ともいうべき「日中間で取り交わされた3つの政治文書」において、中共政権は戦争に関する対日賠償請求権の放棄を明記しています。国内訴訟が実現すれば、対日批判で中共が常々持ち出してくるこの「3つの政治文書」を自ら踏みにじることになります。

「政府としての賠償権は放棄したが、民間組織や個人に関する賠償権はこの範囲内ではない」

 というねじ曲げた解釈で強行突破する訳です。

「正気か?」
「いまそれをやってどんなメリットがあるんだ?」

 ということを私は考えてしまうのですけど。

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 「民間組織や個人に関する賠償権はある」ことを保証した法律は中国国内にありません。そのことは『環球』のインタビューで童増自身が認めており、国内訴訟の実現を阻んでいる要因は何かと記者に問われて、

「第一に、立法がなされていないことだ。私は1992年に全人代に民間による対日賠償請求のため関係法規の制定が必要だと訴え、『中国民間対日賠償請求法』を起草して全人代に提出したのだが、これまでずっと議事日程にのぼることがなかった。法律の制定は必須事項だ。それがなければ法的根拠がないことになってしまう」

 と、明確に答えています。その後現在に至るまでの一年有余においても関連法規は成立していません。今回のインタビューでも、

「もし裁判に勝ったら、中国の法律に基づいて裁判所が強制執行を実施することになる。だが執行が行われなくても、勝訴さえすれば、16年にわたって悪戦苦闘を重ねてきた民間による対日賠償請求にとっては重大な勝利であり、重要な意義を持つことになる」

 と童増の語り口は歯切れが悪くなってしまいます。でも国内訴訟での勝算を問われると、

「実のところ、公正公平の原則において、中国であろうと日本であろうと、勝算の確率は同じである筈だ。だが日本軍国主義主義思潮と右翼勢力の影響により、日本政府は第二次大戦において犯した戦争の罪について正確な認識を有していない」

 とお約束の対日批判。このあたりは「珍獣」童増の面目躍如といったところです。

 この記事の文末で童増は、「中国民間対日索賠聯合会」が今後
「中国国内で理性的に対日賠償要求活動を展開していく」とし、また「訴訟は近く行われることになるだろう」とひそやかに囁くが如く、記者に語っています。

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 現在の日中関係に照らせば、このタイミングで国内訴訟の実施は正気の沙汰とは思えませんし、それで中共政権が得することも何もないように思えます。内政面においても、統治者にしてみればデメリットの方が多いようにみえます。

 例えばですよ。いかに糞青とはいえ、ここまで悪化した社会状況(貧富の格差、地域間格差、失業問題、党幹部の汚職蔓延など)について、

「日本における右翼勢力や軍国主義の台頭のせいだ」

 と断ずる馬鹿はさすがにいないでしょう。胡錦涛政権にとっては、逆に国内訴訟の実施というイベントを名目に昨年4月の反日騒動のような乱痴気騒ぎが起きるのが怖い。もし再び暴発となれば、今度は鉾先がどこに向くかわからないからです。外資とりわけ日本企業の対中投資にも少なからず影響が出るでしょう。

 昨年10月の小泉首相による靖国神社参拝に際して、胡錦涛政権が民間による抗議活動を徹底的に抑え込んだのもそのためです()。「SAYURI」を上映禁止にしたのも姑息ながら同じ理由によるものでしょう()。要するに「起爆剤」が出現しては困るのです。あの空気が読めない点に可愛気のあった童増が、今後の関連活動を
「理性的に」展開していく、とオトナぶってわざわざ強調してみせたのも、そうした懸念を振り払うためかと思います。

 逆にいえば、童増らの活動は胡錦涛政権からゴーサインをまだもらっていない、と読んでいいのかも知れません。……ということで、例によって政争の気配を感じることになります(笑)。

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 だって内政面や対日関係、ひいては対米関係などに与える影響を考えても、このタイミングで国内訴訟を強行するというのは「空気読めボケ」と言われる行為じゃないかと思うのです。そういう「空気を読まない」行動をあえてやろうとする硬質な、あるいは動脈硬化的な動きに、尋常でないものを感じざるを得ません。

 当ブログでも以前紹介したように、昨年末から今年初めにかけて、外交部報道官による対日批判が従来の運動律から大きく外れて、ある種常軌を逸したものになった時期がありました。問答無用のゴリ押しともいうべきものです()。それについて私自身は、指導力に難のある胡錦涛が軍主流派と取引して、胡錦涛の提唱する「科学的発展観」を大々的に礼讃し胡錦涛擁護を打ち出してもらい(=統制力の向上)、その見返りとして軍主流派が政治に口出しすることを黙認するようになったのではないか、と以前から勘繰っています()。

 今回も一見それと同質なようではありますが、童増に代表される民間団体を前面に立てていることから、形としては「反日」を掲げて胡錦涛に政争を仕掛けた昨年春の騒動にむしろ似ています()。今回の「新華網」の記事は大手ポータルのニュースサイトをはじめ相当広範に転載されていますから、もし本当に政治的な示威活動なのだとすれば、なかなかのパワーを有した政治勢力、ということになるでしょう。

 他でもないアンチ胡錦涛諸派連合、ということになる訳ですが、以前紹介した先月下旬の「江八点」記念活動、胡錦涛の思惑とは裏腹に地味に流すつもりが新華社や『人民日報』などによって大々的に報道されてしまったあの不自然な動きを思い出します()。たぶん今回の事件もそうした挙動不審や「氷点」事件といった一連の流れの中で捉えるべきなのかも知れません。

 もちろん「国内訴訟の実現」という動きそのものにも注目する必要があることは言うまでもありませんけど、「そっちがそう来るならこっちもこうやっちゃうよ」ということについては前掲のエントリーで語り尽していますので今回は措きます。ともあれ童増らのリーチが通るのかどうか、市民レベルに如何なる影響を及ぼすかについて眺めていきたいですね。思わぬところから火の手が上がったな、というのが現時点での率直な感想です。

 今年も賑やかになりそうですね(笑)。



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 最近ちょっと多忙で更新が滞ってしまい申し訳ありません。

 「台湾チーム」や「香港チーム」が締め切りより早く仕事を完了させるといった嬉しい誤算の一方で、うまく進む筈だった案件がトラブルに見舞われたりして、日程的に上手く振り分けておいた仕事が期せずして集中豪雨的に押し寄せてくることがあります。最近はその重度な状態でして、「なんちゃって年末進行」になっています。

 そのために、従前通りの夜型生活なので無理することなくトリノ五輪を観ながら働いているかと思えば、本来爆睡している筈の昼下がりにも仕事をしていたり、地下鉄を乗り継ぎ乗り継ぎして打ち合わせに東奔西走していたりします。中国語を書く楽しさに浸って油を売っていなかったか?……という向きもあるかも知れませんが、それは気のせいです(笑)。

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 トリノ五輪といえば。

 これを書いている時点でまだメダルがひとつもとれない体たらくの日本選手団ですが、スピードスケート男子500mで4位に入った及川佑選手、彼がレース後のインタビュー途中で感極まって涙を流していたのが印象的でした。

 予想外の好結果ということもあるのでしょうが、何によりも背負っていたものに応えられた嬉しさと喜びが涙という形であふれ出してしまったのではないかと思うのです。及川選手自身もそういう趣旨のコメントを残していたかと記憶しています。

 五輪に出場するために猛練習と研鑽を重ねる、というのは世界レベルで戦うアスリートにとっては当然のことであって、自慢にもなりません。支えてくれた指導者や周囲の存在を意識して頑張ろうと思うのも自然なことです。ただそれだけでなく、自分が日の丸を背負っているということを忘れないでいてほしいと思います。

 ベルリン五輪の女子水泳で金メダルをとった前畑選手、アナウンサーの「前畑頑張れ」の連呼で有名ですが、前回の五輪では銀メダルを取ったのにもかかわらず、帰郷してみると「郷里の恥だ」などとこき下ろされ、ベルリンで金を取れなかったら自害しようとまで思い詰めていたそうです。

 そこまで極端な覚悟が必要な時代は過去のものとなりましたが、トリノ五輪の選手たちも、自分が「日本代表」であることは心に刻み込んでおいてほしいと思います。たとえその重みがプレッシャーになってしまうとしても、です。

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 ……こういう考え方はもはや古いのでしょうか。中港台と回って「自分だけ日本人」状態の仕事を続けてきたせいか、

「思うような結果が出ませんでしたけど、楽しめました」
「今回はダメでしたけど、次につなげることができると思います」

 なんてコメントする選手を観ると、ふざけるな、と私は怒髪天になってしまいます。例えばサッカー日本代表に比べると、日の丸を背負っているんだ、という意識が希薄なように感じられてなりません。せめて、

「わざわざ会場にまで応援に来てくれたり、夜遅い時間なのにテレビを通じて応援して下さった日本の皆さんの期待に応えることができず、本当に申し訳ありませんでした」

 という一言は礼儀として欠かしてはならないと思うのです。……と、以上は愚痴です。

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 さて、『中国青年報』の週末版付録である「氷点」の停刊・復刊事件にそろそろ取り組まないといけないのですが、冒頭に書いたような状況で、じっくり腰を据えることができないままです。

 明日になれば別の考えに変わってしまうかも知れませんが、この事件に関する現時点での私の見方、まあ骨子のようなものを某巨大掲示板の某スレッドに書き込みました。臆面もなくそれをここに引き写しておきます。

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 「氷点」の件は複雑ですが政争ではないように思います。政争にするつもりなら反言論統制派に即応するメディアが出ていた筈ですが、今回はその形跡がみられませんでした。

 反言論統制派というのも所詮は泡沫連合で、しかも連携がとれていませんでしたね。キレた記者、勘違いした学者、動機がやや不純な長老グループと、動いたのは主に亜流の連中。しかも動いたタイミングはそれぞれバラバラで、「連合」というには足並みがまるで揃っていませんでした。

 ただ昨年1月の趙紫陽・元総書記死去で疎遠になったとみられる長老グループと胡錦涛の関係が十分修復されていないことがわかったのは収穫といえるでしょう。胡錦涛には頭の痛い問題です。

 「氷点」が潰されることなく復刊するというのはサプライズでしたが、これも復刊後の様子をみてみないと何ともいえません。

 復刊も譲歩なのかどうか。

 譲歩なら胡錦涛訪米を控えた時期であることと国際世論を配慮したのか、記者たちの反発が予想外に強かったので手綱を緩めたのか。それともやはり長老連の異議申し立てがある程度奏功したのか。

 復刊することで「氷点」を骨抜きにしたのですから、逆に報道統制の手綱を締めたという見方もできます。

 ともあれ、「氷点」当事者は党規約に則って復刊を求めましたが、結局は密室作業で決められてしまいました。

 記者たちにすれば手続きを踏んだ抗議という点に最大の意義があったのでしょうが、結局はそれがあやふやになってしまった。このストレスは禍根を残すことになるでしょう。

 そのストレスが今後記者たちの有機的連携につながるかどうか、ですね。

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 ……とまあ、こんなところです。次の機会にこれにつきもう少し色々と具体的に書くことができれば、と考えています。

 そういえば業務連絡でした。

 中国からはアクセスできなくなっている姉妹サイト「楽しい中国ニュース」、こちらも最近は更新が滞りがちで心苦しいのですが、一応大陸向けミラーサイトを設置しました。内容は本家と全く同じです。

 ●楽しい中国ニュース(大陸版)

 http://d.hatena.ne.jp/Izumigawa/

 「まかぼろ」さんはじめ皆さんからアドバイスを頂いたのですが、リトマス試験紙的な意味も考えて、敢えて「はてなダイアリー」を選びました。

 この「楽しい中国ニュース(大陸版)」のおかげで「はてなダイアリー」が全て閲覧できなくなるとは思いませんが、万一そうなったらそのときは即撤収して、「まかぼろ」さんの御助言に沿って地味なところに拠点を移すつもりです。

 それから折角マークしてくれている中国国家安全部のために、中国国内で反中共を主題にしたブログを展開するとしますか。

 念のために申し上げておきますが、当ブログ「日々是チナヲチ」はあくまでも中国観察の真似事(チナヲチ)日記という個人の娯楽であって、たとえ観察にある種の傾きが出てしまうとしても、反中共の旗印を掲げてはいません。

 中共倒れよかし(ていうか立ち腐れるでしょうが)&倒れてどうなるかワクテカ。……と個人的には思っていますが(笑)、それが観察の真似事に反映されないよう自分では気をつけているつもりです。

 でも
「中共の嫌がることを真心を込めて念入りにやってあげること」という趣味も私にはあるので、中国語の練習を兼ねてその主題に沿ったブログを中国国内で立ち上げるのも悪くないなと。

 もちろん、当ブログ最優先のスタンスは変わりません。



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 ぶったまげました。パワープレイですよこれは。

 といっても「予想の斜め上」ではなく、「ハァ?」と言いつつも深刻なニュアンスです。……いや、「氷点」事件の急展開についてではありません。それも気になるところですが、後でゆっくり料理することにします。

 日本人としてはこちらを速報しておきたいです。新たな対日カードとして中共政権が講じた一策かも知れない、という点で重視すべき問題かと思います。

 ●戦時中の強制労働で被害者が日本企業に対し初の中国国内訴訟へ(新華網 2006/02/16/21:38)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-02/16/content_4189790.htm

 ――――

 標題の通りです。「中国民間対日索賠聯合会」という「民間組織」が中国にありまして、読んで字の如く、戦時中の強制労働などに関する対日民間賠償活動を手がけている団体です。

 会長を務めているのは「中国民間保釣聯合会」の会長でもある
童増。「糞青」(自称愛国者の反日教徒)に崇められている「珍獣」(プロ化した糞青)の代表格で、反日活動では空気が読めずに中国政府に睨まれたりもしていますが、なかなかの苦労人です。

 先に過去の関連エントリーを御一読頂ければ助かります。

 ●ちょっと気になる――わらわらと湧いて出た「歴史問題」(2005/01/10)
 ●強訴出現。――脅迫ですよこれは。(2005/11/05)

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 日中国交樹立時に中国政府は戦争に関する対日賠償権を放棄したということで、対日民間賠償訴訟はこれまで日本に乗り込んで行われてきましたが、結果は連戦連敗。

 それじゃ中国国内で日本企業(たぶん対中進出企業)を起訴すればいいじゃん、というところですが、上述したように政府が対日賠償権を放棄しているという建前があるために控えられてきました。……というより多分、

「やるんじゃねーぞ」
「やったら組織を潰すぞ」

 といった圧力が中共当局からかかっていたものと思われます。

 すると昨年秋(2005年)に「強訴」という手段が登場しました。進出している日本企業に対し「勧告書」なるものを手渡したのです。

 ●謝罪しろ。
 ●賠償金を払え。
 ●同じ過ちはもう繰り返しませんと誓え。

 という3点について1カ月以内に回答せよ、というもので、応じてしまう弱腰の日本企業が出てくるのではないかと先行きを案じていたのですが、幸いそういうことはなかったようです。

 ――――

 ところが、今度は中国国内で日本企業を訴えるというストレート勝負。「新華網」(国営通信社の電子版)が報じているので表立った動きなのでしょうが、だとすれば中国側の「建前」が変わったということになります。

「政府としての賠償権は放棄したが、民間組織や個人に関する賠償権はこの範囲内ではない」

 という理屈をこねることになります。中共政権が常々強調している日中関係の原点ともいうべき「日中間で取り交わされた3つの政治文書」をねじまげた解釈で強行突破しようというものです。

 中共政権がそのつもりなら日本側も対応を考えないといけません。ただ童増の致命的欠陥ともいえる「空気の読めなさ」で、勝手に先走ってしまった可能性もあります(笑)。だとすればこれから当局に圧力をかけられるのでしょうが、

「現実的にいって、民間による対日賠償訴訟を日本で起こしても勝算はないに等しい。然るに同じことを中国国内でやるというのは、司法理論においても司法の管轄の方面からみても、成立するものだ」

 と、童増は自信満々の様子です。中国側がここで「建前」をねじ曲げるのは中国にとって良策とはいえないように思うのですが、一向に折れてこない日本側の強硬姿勢に業を煮やした軍部(童増とは「保釣」つながり)、あるいはアンチ胡錦涛諸派聯合が童増を後押ししているのであれば、胡錦涛政権が押し切られる可能性もあるかも知れません。

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 前記「中国民間対日索賠聯合会」は三井三池鉱業所所属の炭鉱で強制労働をさせられたと主張する河北省の農民・田春生氏(76)の委託を受けて裁判を起こすということで、これが最初のケースとなります。訴訟が実現するのであれば、

「すでに国交樹立時に解決済みの問題」

 と日本政府は抗議すべきです。それでも中共がねじ曲げた解釈をするのであれば、こちらも台湾を中国領土の一部と正式に承認していないことを改めて強調して、関係法規の整備にかかりますか。

 あとは現在の「中華民国」が「台湾国」のように「中国」であることをやめてくれれば「一つの中国」を堅持したまま、台湾と攻守同盟なり何なりを結べるでしょう。

 それから日本も民間レベルで、ということで没収された資産に関する訴訟返しに出るという手もありではないかと。

 ……極端な話になりましたが、中共が「建前」を放棄してねじ曲げた解釈に転ずるというのは、そのくらい極端な訳で、「これも政冷の影響」なんて言葉で済ませられるものではありません。

 自称強制労働被害者が、対日賠償権を放棄した中国政府を相手取って裁判を起こす、というのなら筋が通っていますけどねえ(笑)。

 ともあれ今後の行方に要注目です。……て最近紋切型が多くてすみません。



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 またまた、といっても話自体は古くて2005年12月25日、つまり昨年のクリスマスに発生した事件です。首謀者として警察当局に追われていた「民」側の1人がこのほど海南島で自首して出たということで地元紙『南国都市報』が報じ、初めて事件の存在が明るみになったものです。

 要するに広東省は頬かむりして事件そのものを隠蔽していた、ということになります。

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 昨年夏の炭鉱事故以来、広東省といえば「不祥事続きの」という枕詞がつきもの。一応実例を並べておきますと、

 ●死者100名以上を出した炭鉱事故。
 ●ヤミ炭鉱をめぐる官民癒着。
 ●広州市・番禺区太石村の「農民による民主化運動」殲滅。
 ●仏山市で土地収用をめぐる官民衝突。
 ●汕尾市の土地収用をめぐる官民衝突において武装警察(準軍事組織)が農民たちを射殺。
 ●中山市で土地収用をめぐるで官民衝突、死者1名(騒ぎに巻き込まれた女子中学生)。
 ●広東省中央部を縦貫する北江でのカドミウム垂れ流し事件(河川汚染)。

 ……と、主だったものだけでもこんなにあります。しかもそのうちの多くの事件が当初は隠蔽され、香港メディアなど海外からの報道で明らかになるケースが少なくありませんでした。

 今回は海南島の新聞が素っぱ抜いたのを中国国内各地のメディアが転載。それによって広東省当局による隠蔽が中国全土にバレてしまったのですから、報道されたこと自体が事件だともいえなくもありません。

 中央が「大諸侯」のひとつである広東省に攻勢を発動したのか、『南方都市報』『新京報』そして『中国青年報』の「氷点」と続いたマスコミ弾圧で記者たちが決起寸前のキレかかった状態にあることを示したものか、あるいは海南省と広東省の仲が悪くて、何か含むところがあって報道にゴーサインを出したのか。……いくらでも勘繰りができるのですが目下のところ「中国国内で報道された」原因は不明です。

 いや、そもそも事件自体に謎な部分が多く、「4死6傷」と報じられていながら、全容は未だに明らかになっていないのです。

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 ともあれ報じられていることを手短かに紹介しておきましょう。

 今回の舞台は広東省・連南ヤオ族自治県の大麦山鎮。事件の発端は大麦山鎮の火龍沖村でクリスマスイブの夜、房志文・村民委員会主任(村長)など村民代表4名が「2度にわたる集団的事件を計画・組織した」との嫌疑で大麦山鎮の公安局に連行されたことによります。

 連行を不服とした村長の母親や妻、また今回海南島で自首した房志文村長の弟・房告一らは村民を煽ってその夜のうちに人数を駆り集め、数百名で押し出して大麦山鎮政府に大挙突入。同鎮党委員会書記(大麦山鎮のトップ)と治安担当の副鎮長を拘束し、意気揚々と村に連れ帰りました。これを人質として村民代表4名の釈放を求めたのですが、談判が行われたかどうかはともかく、事態は動きませんでした。

 そして翌12月25日の午前、業を煮やした村民たちは今度は同鎮の派出所(警察署)に押し寄せ、劉副所長を拘束。マイクロバスに押し込んで一同は村への帰途に就いたのですが、その道中で劉副所長は同乗していた村民たちに棍棒などで殴打されて負傷、身の危険を感じた劉副所長は携行していたピストルを抜いて車から飛び下り、脱出を図りました。

 運転していた房告一、そうはさせじと車を急停車させるなり刀器片手に飛び下りて劉副所長に突進。一気に間合いを詰めるや刀を一閃させてピストルを手にした劉副所長の腕にまず斬り付け、返す刀で真っ向から頭を斬撃。お小手・お面コンボという訳ですがこの房告一、なかなかの使い手のようですね。

 ともあれ劉副所長はこれが致命傷となり、「頭骨爆裂」(香港紙『蘋果日報』2006/02/14)で絶命。中国国内の報道では「開放性脳骨裂」となっていますが要するに頭をカチ割られて死亡した訳です。

 その後房告一は現場から逃亡。事件は広東省公安庁を驚倒させ、北京の公安部及び中央政府に報告し、公安部も事態を重くみて全力を挙げての追捕劇となりました。広東省当局は房告一の身辺関係から海南省に逃げた可能性が大きいと判断。ただし海南省の公安当局に事件関連の通知が届いたのは1月23日の午後4時と、事件発生から1カ月も経ってからです。してみると中央への報告についてもタイムラグ疑惑が浮上します。

 さて広東省から連絡を受けた海南省警察当局は捜査本部を設けて大捕物に着手。房告一の潜伏先を偵知して1月25日夜に急襲したのですが、屋外の便所に潜んでいた房告一は危うく難を逃れ、再び逃走。しかし警戒の厳重さに逃れる術のないことを悟り、翌1月26日夜に自首して出たという次第です。

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 以上、ツッコミどころ満載の報道なのですが、とりあえず少数民族が多数住む地域であることに留意しておきましょう。村民たちがヤオ族だったのかどうかは不明です。

 まず気になるのは「2度にわたる集団的事件を計画・組織した」という点です。官民衝突が以前にも2回起きている訳で、そういう前々からのよほどの因縁と憎悪・敵意が蓄積されていたからこそ、村民たちが脊髄反射するように鎮政府や警察署を襲撃したのだと思います。

 これについて『蘋果日報』は鎮政府や同地の警察関係者などに取材しているのですが、よほどの箝口令が敷かれているらしく全てノーコメント。村民たちの間でも見方は一致していません。

 以前、火龍沖村である村民が計画出産規定に違反して処罰されたとき、村民が団結してこれに反発したことがあるそうです。ここで舞台がヤオ族の多く住む地域である点が浮上します。少数民族に対する差別・迫害が根にあったとすればその線も考えられるでしょう。ただこれも諸説あるうちのひとつに過ぎないとのこと。

 政治的に敏感すぎる話題ということなのか、地元の事情に詳しい中国国内メディアの記者も「無理。いまは無理。とても話せたもんじゃない」といったような反応だったようです。

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 もう1点、これが最大の謎なのですが、「4死6傷」じゃないのかよオイ、ということです。死者のうち1名は劉副所長なのですが、それでは残りの「3死6傷」は?国内メディアがそれに関しては一切沈黙しているところが不気味であり、尋常ならぬ事態が発生したことを思わせます。

 村民たちによる警察署襲撃、この際に出た死傷者ではないかと私は勝手に憶測しています。劉副所長が拳銃を携行していたことから、警官隊による村民たちへの実弾射撃が行われた可能性があるのではないかと。捕えた副所長を棍棒で殴ったり、逃げようとしたところを斬殺するというのは、人質に対する扱いとしては常軌を逸しています。

 村民のひとりは『蘋果日報』の電話取材に対し、劉副所長を除く「3死6傷」はいずれも火龍沖村の住民で、死亡者には5歳前後の児童と17歳の少年各1名が含まれていると語っています。国内の報道には劉副所長を「壮烈なる殉職を遂げた」と扱っているものがありますので、残りの死者が警官隊側でないことは確かだと思います。

 ――――

 これから香港メディアや反体制系ニュースサイトによって色々と内幕暴露が始まるのかも知れませんが、「4死6傷」という文字をタイトルに躍らせながら、その詳細には沈黙している中国国内マスコミの報道に対し、恐らくネット上では憶測やらタレ込みやらが飛び交い、削除職人も仕事に忙しいことでしょう。

 『南国都市報』の記事があちこちに転載されていることから、その不可解で思わせぶりな報道内容には中央の意思を感じ取っていいのかも知れません。ともあれ1カ月半に及び事件を隠蔽していた(報道させなかった)広東省当局にとって、『南国都市報』の暴露記事は不名誉であり、不祥事続きであることを思えば恥の上塗りになることは確かです。

 大手ポータル「新浪網」(SINA)で検索してヒットした記事を以下に並べておきます。最後の1本以外は全て「新浪網」に掲載された記事ですが、転載元をみれば全国各地で報道されたことがうかがえます。

 http://news.sina.com.cn/o/2006-02-14/08168198749s.shtml
 http://news.sina.com.cn/c/2006-02-14/04228196449s.shtml
 http://news.sina.com.cn/c/2006-02-13/10008191224s.shtml
 http://news.sina.com.cn/s/2006-02-13/09228190368s.shtml
 http://www.cnhubei.com/200601/ca998763.htm

 「中国国内で報道された」こと自体が事件なら、その報道内容も怪しさ満点。どうも政治臭がしますね。とりあえず今後の展開に期待、といったところです。



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 別のネタを用意していたのですが、前回のコメント欄に寄せて頂いた「るる」さんのお話が心に沁みるものがありましたので、急遽差し替えということにさせて頂きます。

 「るる」さん、事前承諾なしで申し訳ありませんが、コメント欄からの引用は当ブログの常なので諒として頂ければ幸いです。

 ではまずそのコメントから。

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 Unknown (るる) 2006-02-08 23:07:05

 6日にジェイ・チョウのコンサート(東京国際フォーラム)へ行ってきました(^^)♪
 そこには、ジェイのお婆ちゃんも来ていました。
 ジェイのお婆ちゃんは日本語が話せるようで、正直言ってビックリしました。
 ジェイのお婆ちゃんの挨拶が終わると、私の周辺にいた中国人が”ジェイのお婆ちゃんは日本人なの?”と興味津々のようでした。
 私の方は、”本当に日本語教育を受けた台湾人がいるんだ~”となんだか不思議な感じでした。

 ――――

 ジェイ・チョウ(周杰倫)について私は詳しく知りませんが、台湾出身の男性アイドルというかミュージシャンというか俳優というか、とにかく多彩な才能の持ち主でもちろん眉目秀麗、日本でもファンが増えつつあるそうです。現地でドラマ化された「花より男子」(ドラマ名は「流星花園」)でブレイクした「F4」などと並ぶ「台流」の主軸、といったところでしょうか。

 F4には配偶者も一時ハマっていた時期があるのですが、その配偶者の知人でやはり「るる」さんと同じコンサートに出かけた方がいらっしゃいまして、コンサートを詳細にレポートなさっています。以下はその一部分とそれに対するコメントからの引用です。

 ――――

 アンコールの時、突然ステージを降りて「僕の大切な人を紹介します」と言って、客席の通路をモミクチャにながら進み、たどり着いたのは、なんと外婆の席!!
 外婆はとても流暢な日本語で、「私は杰倫のお婆ちゃんです。日本でコンサートを開けてとても嬉しいです。」というような事を言ってたと思います
 この外婆の言葉に感動して、思わず「お婆ちゃ~ん!」と叫んでしまいました(苦笑)
 杰倫も外婆の言葉を隣で聞いてたんですが、すごく嬉しそうな優しい笑顔を外婆に向けておりました
 ホントに外婆が大好きなんだな~って伝わってくる笑顔でした

 ――

 >おばあちゃんの挨拶

 あの時代の人らしく、すばらしい日本語でした。そして、控えめなんだけど笑顔が暖かい素敵なおばあちゃん。あんなおばあちゃんになりたいですね。そしてあんな孫がいたら言うこと無い...っていうか、最高!
 おばあちゃんは、「孫は小さい頃から歌が大好きでした。私が童謡を教えます。これからも応援して下さい」みたいなことも言ってましたよね。
 それで「ももたろう」へ。
 流暢な日本語だけど、時制だけはちょっとアヤシイところも、外婆、好Qでした!

 ――――

 「外婆」ですから母方のお祖母さんなんでしょう。いい話だなあ、と思った次第です。ステージにお祖母さんを連れて上がるというのはファンもびっくりの珍事でしょうけど、ジェイ・チョウはいいお祖母さん孝行をしましたね。

 このお祖母さん、孫に日本の童謡を教えたりするくらいですから、日本あるいは日本統治時代への思いはネガティブなものではないのでしょう。今回は日本見物ができて、孫が日本のファンから愛されているのを目の当たりにして、とても嬉しかったのではないかと思います。

 童謡といえばかつて、

「夕焼け小焼けの童謡にあるような人間と自然が溶け合う日本人の持つ情緒的ないい面は他国にないこと」

 と台湾前総統の李登輝氏が語っていたのを思い出します。

 ――――

 実は私も台湾在住時代、似たような体験をしたことがあります。物の弾みで当地の出版社で編集部長兼編集長を務めていたころの話ですが、休み時間のときに部下の女性編集者が私のところに来て、

「編集長、実は私には日本人の血が流れているんですよ」

 と言うのです。お祖父さんが日本人だったらしくて、早くに亡くなられたそうですが、お祖母さん(台湾人)は健在とのこと。日本語が達者だそうです(女性編集者自身は少しだけ日本語ができました)。

「今度、上司が日本人になったって話したらとても喜んでくれました。家が近いので、今度連れてきたら会ってもらえますか?」

 と言うので、そんな大袈裟なと思いつつ「いいよ」と私は返事をしました。

 それから2週間ぐらい後のことです。残業に入って他の部署の連中があらかた帰った時間、こちらは電話で「辯當」(弁当)の出前を頼んで、それを食べ終えて一服しているところでした。

 例の女性編集者は言の通り会社から徒歩3分のところに住んでいたので、一時帰宅して夕食を済ませて戻ってきたのですが、そのときにそのお祖母さんを連れてきたのです。私はその話をもう半ば忘れていたのでビックリしました。

 ――――

 編集部は乱雑かつ不衛生なので(笑)接客室に招じ入れて、30分もなかったでしょうが、女性編集者も交えて話をしました。といっても会話は日本語、しかもネイティブ同士によるものなので、女性編集者はお祖母さんの隣に座ってただニコニコしているだけです。

 お世辞でなく私が日本人であることを喜んでくれているようなので、こちらは恐縮するばかりでした。話題はとりとめもないものでしたが、お祖母さんは普段は使う機会のない日本語を話せることが嬉しいらしく、話すにつれて表情が生き生きしていったのを覚えています。

 私自身は、こういう日本語教育を受けた台湾人の老世代と言葉を交わすことが好きです。わざわざ日本語を使ってくれるくらいですからみな親日的というのもありますが、私にとってはその日本語を聞くのが一種の快感なのです。

 冷凍保存されていた60年前、70年前の日本語が目の前に飛び出てくる。……陳腐な物言いですが、昔の時代にタイムスリップしたようなものです。日本のお年寄りも若いころはそういう日本語を話していたのでしょうが、時間を経るにつれて現代風な言い回しや発音にどうしても染まってしまい、昔のままという訳にはいかないでしょう。

 小津安二郎の映画で使われる日本語でさえ現在からみれば化石同然。それよりもさらにひと昔かふた昔前の、日本ではもう聞く機会の少ないあの歯切れのいい日本語を耳にできる場所はもう台湾しかないかも知れません。その機会も今後どんどん減っていくのが淋しい限りです。

 ――――

 ……と、忘れていた記憶が「るる」さんのコメントで蘇った次第です。お祖母さんは、

「孫のことをよろしく頼みますね」
「よかったら是非うちに遊びにお出でなさい」

 と言って(記憶モード)帰っていきましたが、ジェイ・チョウ同様、この女性編集者もお祖母さん孝行をしたことになるのだろうと思います。私もその片棒を担がせてもらうという光栄に浴したこと、また耳に心地よい日本語を聞かせてもらったことは台湾時代のいい思い出です。

 こういう話をすると、中共政権では麻生外相の発言に脊髄反射したとき同様、

「植民統治を美化したもの」
「台湾独立派を支持するもの」

 といったレッテルを貼られるのでしょう(笑)。でも、「哈日族」に代表される若い世代の親日感情も含めて、台湾庶民のこうした感情を無視し、それを中共史観で排除し続ける限り、中共政権が平和的に台湾を併呑することは不可能だと思います。

 ――――

 台湾=親日的という図式は当然のように語られていますが、僅々約20年前までは国民党が戒厳令統治を行っていて日本関連のものはあらかたNGでしたし、日本の歌や映画、ドラマが解禁になったのも戒厳令解除(1987年)後のことだった筈です。

 「二・二八事件」に代表されるような国民党による台湾統治のマズさ、それに対する反発だったのかも知れませんが、その間、伏流水のように息をひそめつつもしっかりと残っていた親日的感情の根強さに驚かされます。それが解禁となって勢い良く噴き出したものが若い世代に継承されて「哈日族」などになる訳です。

 その意味で、ジェイ・チョウがお祖母さんを舞台に上げ、お祖母さんも嬉々として日本語でスピーチしたというのは実に象徴的な風景です。ジェイ・チョウの両親は戒厳令統治下で生まれ育ち、教育を受けている世代でしょうから、お祖母さんのような日本への思い入れは少ない筈です。

 要するに三世代のうち第二世代だけ親日度において遜色ある、ということになります。私がいまも尊敬している台湾在住当時の出版社の社長もこの第二世代ですが、

「若いころは国民党の教育を叩き込まれたから、日本が大嫌いだった。でもこの仕事を始めて日本人と付き合うようになって、考え方が180度変わった。国民党の教育がウソだとわかったんだ」

 とよく話してくれたものです(いまは李登輝大好きで台湾独立派)。

 台湾はいま、こうした第二世代が政治や経済の第一線で主役を務めている時代にあたります。台湾独立派である筈の陳水扁総統と与党である民進党にはどうも最近、スキャンダルやら仲間割れやらで、幻滅させられることが多くて嫌になります。

 でも、世代交代は着実に進みつつあるでしょう。今後、ごく自然に自分が台湾人である(=中国人とは違う)と認識し、親日的感情も比較的強い第三世代が台頭することで、台湾に新たな変化が起きることを祈りたいような気持ちです。



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 いやはや、全くもって恐れ入谷の鬼子母神てなもんです。……寒いですか、そうですか。東京は明け方から雪になる見通しだそうですから、きっとそのせいでしょう。

 そんなことより、他でもない我らが麻生外相です。いい意味で観客を裏切ってくれるあたり、さすがはファンタジスタといったところでしょう。……いや、確かに私は前々回の末尾で、

「ファンタジスタも芸術的なプレーで魅せてくれるでしょう(笑)」

 とは書きました。書きましたけど、かくも早く、しかも想像を超えたスーパープレーをみせてくれるとは思いませんでした。日本の外相が台湾を「国家」だとサラリと言ってのける。潰す気ですか中共を?潰す気でしょう?(笑)。

 ――――

 台湾の現在がある所以は日本の統治下で民度が向上していたため、という麻生外相による指摘は正にその通りです。

 清王朝から「化外の地」扱いされていた台湾が、日本統治の下で教育水準が向上し、インフラが整備され、産業が振興し、衛生面でも大きな改善をみた。……といったことは紛れもない事実。「鐵證如山」と、外交部・孔泉報道局長の好きな言葉を中共政権に贈ってあげましょう。

 もちろん、その一方で日本統治下における台湾人は二等国民扱いでしたし、当初は日本統治に反発する勢力を討伐したことで台湾住民に多数の死者が出ました。逆に霧社事件のような、日本人が殺される出来事もありました。

 しかし、50年にわたる日本の統治が終結してから60年も経っているというのに、
「日本精神」という単語がいまなお褒め言葉として使われているのはなぜでしょう。約40年に及ぶ国民党による戒厳令統治を経ても、オジサン(欧里桑)・オバサン(欧巴桑)・トーサン(多桑)などといった言葉は、現地に溶け込んでしっかりと根付いて残っています。

 中共が描いてみせるような「残虐無比で凄惨目を覆うばかりの植民地統治」であれば、また国民党による戒厳令統治下で行われた反日教育が台湾人に受け入れられていれば、こういう現象が起こり得る筈がありません。「哈日族」に代表されるような親日的な空気が広く浸透していることもないでしょう。

 ――――

 ところが中共としては自分が描いてみせた虚構を何としても守り通したい。そこでクマー!(AA略)とばかりに、麻生外相の垂らした釣り餌にどんどん食い付いてもう入れ食い状態。

 ――

 ●麻生発言に「強烈な憤慨」 中国外務省が非難(共同通信 2006/02/05)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MNP&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006020501003022

 【北京5日共同】中国外務省の孔泉報道局長は5日、麻生太郎外相が4日に福岡市内の講演で日本の植民地支配下で台湾の教育水準が向上したなどと述べたことについて「公然と侵略を美化する言論に驚くとともに強烈な憤慨を表明する」と非難した。

 孔局長は、日清戦争後に日本が台湾占領を強行し「台湾住民を奴隷のような目に遭わせ、中華民族に深刻な災難をもたらしたのは世界中が知っている事実」と強調。「加害国の外交当局最高責任者がこのような言論を発表することは、歴史を歪曲(わいきょく)し、中国人の感情を傷つけるものだ」と批判した。

 ――――

 という訳で、中国側から飛び出した脊髄反射3連発。

 ●(1)日本の外相が日本帝国主義による中国台湾での植民教育を美化
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/05/content_4137081.htm

 ●(2)中日関係の基礎を損なわしめる謬論だ
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/05/content_4139481.htm

 ●(3)中国、日本外相による侵略の歴史を美化する言論に激しい衝撃
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/05/content_4139901.htm

 (1)速報、(2)解説、(3)公式声明、といった内容です。前掲の共同電は(3)に相当するものかと思われます。そして、今日(2月6日)になって香港紙『明報』と親中紙『香港文匯報』からの転載記事が2本。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/06/content_4141565.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/06/content_4141522.htm

 「虚構」を崩されることと台湾を「国家」と扱われたことに反発しているのですが、公式声明である(3)の孔泉発言を読むと、

「日中間で取り交わした3つの政治文書」

 という強い抗議につきものの文言が出てきません。「激しい衝撃」と言いつつも、初動としては抑制されている印象です。「李登輝氏訪日正式決定」というカードが日本側に残っているので、出し惜しみしているのでしょうか(笑)。

 逆にいうと、今後ボルテージがどんどん高まる余地が十分に残っているということです。台湾問題に敏感で神経質になるのは人民解放軍。その機関紙である『解放軍報』は、脊髄反射記事3本を全て即座に転載しました。さすがです(笑)。

 私の邪推が万一間違っていなければ、今後、軍主流派は外交部への介入をいよいよ強めるでしょうし、「科学的発展観」を礼讃し祭り上げつつ、胡錦涛を掌握する方向へ動くことになるでしょう。

 ――――

 ところで上述したように今朝の香港紙(2006/02/06)から『明報』と『香港文匯報』の記事が中国国内メディアに転載されていますが、親中紙の『香港文匯報』はともかく、『明報』の記事が採用されることに時代の変化を感じます。以前ならまずあり得ないことでしょうが、香港の中国返還によって「転向」したことが功を奏したのでしょう。堕ちたものです。

 それはともかく、『明報』より更に派手な親中路線へと「転向」して香港人の顰蹙を買ったのが『東方日報』とその姉妹紙『太陽報』。その親中度も『明報』よりずっと高いのですが、今回は転載の栄誉に浴することができませんでした。そのうち『太陽報』(2006/02/06)の記事が面白いのです。

 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060206/20060206023632_0000.html

 記事の最後で台湾外交部の呂慶龍・報道官が『太陽報』台湾特派員の取材に答える場面が登場します。麻生外相発言について回答を求められた呂報道官は、

「麻生太郎氏のコメントについて台湾当局はすでに承知しているが、日本によって統治された時期は台湾の歴史の一部分で、事実でもあり、台湾政府は麻生太郎氏のコメントに理解を示すことができる。ただこの件に関してそれ以上言及することは差し控えたい」

 と語り、『太陽報』が期待したであろう内容とは正反対のコメントが飛び出してしまったのです。さすがにこれでは中共も転載できないでしょう(笑)。

 ――――

 そして、こうなります。

 ●台湾:「麻生発言」は問題視せず(毎日新聞 2006/02/06)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20060207k0000m030051000c.html

 【台北・庄司哲也】麻生太郎外相が台湾の教育水準の高さを日本の植民地支配と結びつける発言をしたことについて、台湾の黄志芳外交部長(外相)は6日、「日本は歴史問題で中国や韓国と争議を起こしているが、この問題で台湾とも争議を引き起こさないように望む」との認識を示した。

 台湾では、メディアが発言の内容を伝えるだけで大きな論議にはなっておらず、台湾政府も基本的には発言を問題視しない姿勢だ。台湾テレビ「TVBS」は麻生外相について「反中国、親台湾の立場とみられており、靖国神社参拝問題でも中国の不満を引き起こしている」と紹介した。

 また、麻生外相が発言で台湾を「国」としたことについて、台湾外交部の呂慶竜報道官は「台湾を指し示すために用いた言葉で、特に意識はしていない。台日関係は良好で、今後も継続させたい」と述べた。

 ――――

 と、台湾がスルーしてしまい、日本国内もまた静かです。結局中共が独りで騒ぎまくってキリキリ舞いの道化師と化している状況となってしまいました(笑)。滑稽です。でも、中共政権にとってはシャレにならないでしょう。別の意味で「激しい衝撃」を受けたのですから。

 対日外交カードであった筈の「反日」がいまや中共政権にとって内政面でのアキレス腱であり、それゆえに日本側の一挙手一投足ごとに政権内部がグラグラと動揺してしまう。そしてそれを修正し平常に復させるためにあれこれと手を打つ破目となり、その分だけ本来国内の構造改革に費やすべき時間や統治者としての余命を浪費している。……とは当ブログが常々指摘しているところですが、今回もその典型例といえるでしょう。

 中共による脊髄反射記事のうち(1)には「麻生太郎による最近の妄言一覧」みたいな小見出しで記事9本へのリンクが張られています。なるほど超攻撃型3トップ(小泉・麻生・安倍)にあって麻生外相は攻撃の起点を務めることが多いようです。つまり今回で10回目の妄言、ということになるのでしょう。

 前にも書きましたが、十年前であれば麻生外相は10回クビを飛ばされている勘定になります。十年ひと昔とはよくいったもので、まさに隔世の観があります。いまや多くの日本人は、ひと昔前に比べれば高い免疫力を身につけたということになるでしょう。

 もちろん麻生外相の「妄言」にではなく、中共の発する「毒電波」に対して、です。

 ――――

 という訳で、あとは「激しい衝撃」でグラリと揺れた中共の新たな政治劇を楽しく鑑賞するのみです。生暖かく見守ってあげようじゃありませんか。

 「李登輝氏」カードという最高の燃料がいつ投下されることになるのかも興味津々。事前発表のないまま5月10日に「やあ、やあ」と突如成田に現れる、という驚愕の展開も面白いかも知れませんね(笑)。まさに「好戯在後頭」(お楽しみはこれからだ)であります。



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 仁義なき戦いです。

 2006年は武装農民がトレンドになる、ということを以前書いたかと思いますが、旧正月の大型連休も明け切らぬうちにその「武装農民」が躍り出てきてしまいました。

 ただし今回は官民衝突ではなく村同士が打ち物を手にしての大喧嘩。中国語でいう「械闘」という伝統行事です。いや行事ではないのですが王朝時代以来の悠久の歴史が育んだ村落同士の闘争のカタチなのです。

 「械闘」は境界線争いとか水争いなどに起因することが多いのですが、今回は境界線を跨ぐ形で通っている道路の補修工事を巡るトラブルが発端になっており、やはり数千年の伝統を踏んだ形となっています(笑)。

 ああその前に場所でしたね。広東省は湛江の呉川市、その管轄下にある小牧陳村と大牧陳村の境界線付近が舞台となりました。面倒なので「小牧」「大牧」と呼ぶことにします。

 詳細はいまなお不明なのですが、原因は上述したように境界線を跨ぐ形で走る道路の補修工事。両村は以前からこの件で揉めており(具体的に何で揉めているのかが不明なのです)、上級部門である県政府や鎮政府が介入して調停を試みたこともあるのですが、「小牧」「大牧」とも自らの主張を押し立てて相譲らず、調停側も匙を投げたという経緯があります。

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 事件が起きたのは一昨日(2月3日)の午前9時ごろ。「小牧」側が道路工事にかかる準備に着手したという噂が「大牧」側に伝わり、「大牧」はこれを妨害せんと村民300余名を緊急召集。いずれも鍬や鉄パイプや刀を手にし、腕には同士打ちを避けるために目印の赤い布を巻き付けて戦闘準備完了です。

 合言葉まで準備されていたかどうかは不明ですが、打ち物にせよ赤い布にせよ、ショートレンジでの白兵戦を想定したものと思われます。ちなみ香港のチンピラグループ同士の抗争だと、味方の目印は赤い布ではなくストロー。ちょっと滑稽ですがストローを口にくわえて出撃するのです。

 さて、準備を整えた「大牧」勢は道路工事現場を奇襲せんものといざ出陣と相成ったのですが、何と現場にはすでに「小牧」勢200余名が待ち伏せていました。「大牧」側のただならぬ気配を察して機先を制し、先に陣を敷いて手ぐすねを引いていた模様。中国語だと「厳陣以待」という四文字でまとめてリズム感を出すところです。

 人数でいえば「大牧」勢が上回っているのですが、実は「小牧」勢、待ち伏せていただけでなくライフル銃や手製の手榴弾など充実した火力を用意していました。まさに「厳陣」だったのです。

 ――――

 かくして開戦。銃器を持たない「大牧」勢は衆を恃んで接近戦に持ち込むべく一斉に突撃を開始したのですが、「小牧」勢はこれにライフル銃で応戦。要するに実弾射撃を行ったのです。

 そのうち十数名は迷彩服に身を包み、顔をマスクで覆って頭には鉄兜、手にはライフルか防盾と完全装備。銃隊が前線で代わる代わる発砲し、弾丸を撃ち尽すと防盾隊に守られながら後方に下がり、銃弾を装填しては再び前線に出てくるという鮮やかな進退をみせたとのこと。

 さらに「小牧」勢は用意していた手榴弾を「大牧」勢に投げ付けるなどして寄せつけず、これには「大牧」勢も損害を出すばかりなので、数度の突撃を試みた後にとうとう退却を余儀なくされました。要するに「長篠の合戦」を双方2個中隊程度の小規模にしたようなもので、「大牧」勢は武田騎馬軍団、「小牧」勢は鉄砲足軽を三段備えにした織田・徳川連合軍とみておけば間違いないでしょう(笑)。

 ――――

 さすがに火力を使われるとかないません。「大牧」勢は30名ほどの負傷者を出したようですが、死亡した農民もいるという情報も流れています。……以上は香港紙『明報』の報道に拠ったものですが、親中紙『香港文匯報』だと負傷者は少なくとも19名。『成報』は負傷者29名でうち2名が重体、例の迷彩服部隊は40名前後と報じています。

 ●『明報』(2006/02/05)
 http://hk.news.yahoo.com/060204/12/1ky2k.html

 ●『香港文匯報』(2006/02/05)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0602050019&cat=002CH

 ●『成報』(2006/02/05)
 http://www.singpao.com/20060205/international/809279.html

 昨年以来、党幹部の汚職疑惑を正式な法手続きによって追及しようとした広州市番禺区・太石村の「農民による民主化運動」を叩き潰し、土地収用で騒ぐ農民を武警(武装警察=準軍事組織)が突撃銃で掃射、さらにこれも死者を出した中山市での官民衝突や北江でのカドミウム垂れ流し……と不祥事続きの広東省当局もこの事件にはびっくり仰天。数千名の武装警察を動員して両村を戒厳令状態にしたうえ、省当局からトップクラスの幹部が現地に入り、事後処理が始まっているということです。

 ――――

 えーと、これはもう「凄い」としかコメントのしようがありません(笑)。得物に赤布の目印という「大牧」勢は恐らく先祖代々伝えられている伝統的な「械闘」の形式をそのまま踏襲したものと思われますが、「小牧」勢が近代的装備で待ち受けていたために一敗地に塗れてしまいました。気分としては伝統のルールを無視した「小牧」勢に教育的指導を出したいところです。

 で、手製の手榴弾はともかく、ライフル銃や鉄兜や防盾といった近代的装備はどこから持ってきたのかと私は聞きたい。しかも迷彩服だし統制された進退だったようですし(笑)。思うのですが、恐らく「小牧」出身の武警や防暴警察(機動隊)が装備持参で呼び集められたのではないかと。カネで雇われた他郷出身の同僚武警などもいたかも知れません。

 以前、「諸侯」たる地方政府が武警を私兵化しているのではと書いたことがありますけど、それが現実になったケースではないかと思うのです。あるいは民兵でしょうか?村落同士の激突でこれほどの合戦になるのですから、こちらはただ驚くしかありません。「小牧」勢のように、一村落が「いざ鎌倉」で火力を有した一定レベルの戦闘力を即座に整えられる、という事実にも注目です。

 まあ今回も広東省ということで香港メディアのアンテナに捉えられた訳ですが、きっと報道されない可視範囲外でも類似の事件が発生しているのでしょう。ええ、たぶん全国各地で。武装農民は是非その鉾先を「官」に向けてほしいところです。

 それにしても、中共政権は初めて村落単位にまで精密な統治を及ぼすことに成功した「王朝」だった筈ですが、それもいまや昔話で、中国社会はその末端レベルで綻びや崩れが顕在化しつつあるといった印象です。



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「中」の続き)


 ただ、こうした熱烈に胡錦涛礼讃を繰り返す『解放軍報』は、中国国内メディアにおいてひどく突出しているようで奇異に映らなくもありません。別の言い方をすれば『人民日報』や新華社(国営通信社)など主要メディアとの温度差が相当あるように思います。『解放軍報』に掲載される胡錦涛礼讃記事の多くがこうした主要メディアに転載されないというのも興味深いところです。

 この1年来、何ラウンドかにわたり行われてきた政争において、胡錦涛はついに『人民日報』や新華社を掌握できないまま現在に至っているのではないでしょうか。その象徴的な事例として、最近当ブログでも取り上げた「江八点」礼讃報道があります。あの膨大な記事のうち『解放軍報』や『中国青年報』が転載したのはごく一部、数本だけ、というのも面白いところです。

 そういえば『解放軍報』は創刊50周年記念に胡錦涛(軍服姿)が視察したことを何回かに分けて大々的に報じてもいます。党中央軍事委主席ですから『解放軍報』50周年に顔を出すのは当然といえば当然なのですが、時期が時期だけに政治的効果を生むものです。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/03/content_4003750.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/04/content_376124.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/05/content_377157.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/05/content_377160.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/11/content_381984.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/13/content_384216.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/18/content_387536.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-01/19/content_388553.htm

 そうでなくても『解放軍報』の踊りっぷりを見れば軍主流派がしっかりと胡錦涛を擁護していることがわかりますから、政治面での胡錦涛カラーも以前より出しやすくなっているでしょう。……ということで「両輪」のもう片方たる『中国青年報』の登場となります。

 ――――

 この「両輪作戦」の特徴は、しっかりと役割分担が行われていることです。『解放軍報』に関しては上述した通り、新華社や『人民日報』が後ずさりするほどの「科学的発展観」礼讃報道で党上層部における胡錦涛の指導力強化を目的としているようにみえます。ただしこれは胡錦涛が軍部を掌握したのではなく、あくまでも胡錦涛と軍主流派が行った「取引」の結果に過ぎないのが胡錦涛にとって痛いところです。あるいは武装警察が農民3名(地元当局の発表)を突撃銃で射殺した広東省汕尾市の「12.6」事件、あれがいまなお全国ニュース扱いにならないのも、胡錦涛による軍部への配慮かも知れません。……それはともかく。

 『中国青年報』に任された役割はといえば、「中央vs地方」という対立軸においての「地方」叩き、すなわち最近台頭傾向著しい「諸侯」を大人しくさせるということです。顕著な例では江西省や湖南省の環境汚染に対する特集記事がありました。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/04/content_4004967.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/04/content_4005009.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/08/content_4023408.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/10/content_4031046.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/10/content_4031154.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/10/content_4031162.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/10/content_4031171.htm
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2006-01/13/content_120022.htm

 江西省や湖南省に胡錦涛の政敵がいるのかどうかはわかりませんが、松花江汚染事件でクローズアップされた環境汚染、それに伴う地元当局の隠蔽やら何やらというのは全国各地に存在する問題です。こうした特集記事も「地方政府は自分のことばかり考えて全国的視点を持たない」とか「貴重な税収源のために企業による環境汚染や周辺住民の健康被害に知らんぷりしている」といった、全ての「諸侯」に向けられた批判だと思われます。

 それから人民代表大会への批判。これは国(全人代)、省、自治区、市など各レベルごとに設けられている機関ですが、内実は地元官僚の思うままに運営されていて平民代表が無視されている、というものです。これまた「諸侯」批判といえます。

 http://zqb.cyol.com/content/2006-01/24/content_1306067.htm

 これは日本でも報道されましたね。

 ●中国紙、人民代表大会を痛烈批判 「まるで官僚大会」(Sankei Web 2006/01/24/22:16)
 http://www.sankei.co.jp/news/060124/kok099.htm

 ――――

 こうした「諸侯」叩き=中央の統制力強化という、胡錦涛が党上層部における指導力強化と同時に欲するもう一面のキャンペーンを『中国青年報』が展開しているように私には思えました。……と過去形で書くのは理由があります。胡錦涛による「両輪作戦」、ここまでは一応奏功しているように思うのですが、先行きが不透明になりつつあるからです。

 『解放軍報』=軍主流派との連携については台湾問題が影を落としています。まずは言うまでもなく李登輝氏による再来日問題があります。さらに陳水扁・総統が旧正月に打ち出した「国家統一委員会と国家統一綱領の廃止」という新方針、これについては米国が「一方的に現状を改変することに反対する」と脊髄反射している程ですから、軍部としては坐視できない動きでしょう。

 米国が脊髄反射するくらいですから問題は深刻化しないかも知れませんが、李登輝氏の一件と併せて、胡錦涛の対応次第では軍主流派との関係が疎遠になる可能性があります。なにせ軍人ですから。電波型将官ではないといっても、問答無用のゴリ押しが地金であることに変わりはありません。

 ――――

 『中国青年報』については、これも言うまでもないでしょう。週末版付録「氷点」の停刊処分です。

 http://hk.news.yahoo.com/060126/12/1krdk.html

 これには胡錦涛が迫られて余儀なく停刊にした一面と、胡錦涛自らの意思で「けしからん」と潰した一面があるように私は思います。

 中国の歴史教科書が偏向している、このままでは成熟した民族にはなれない、という趣旨の大学教授が書いた文章、「事実を直視しないという点では日本と同じではないか」など際どい文言満載で楽しめます。

 http://hk.news.yahoo.com/060126/12/1krdi.html

 で、これが停刊の理由だとされていますが、「氷点」編集責任者の李大同氏が発表した内情暴露手記によると、実は以前から「氷点」の掲載する文章は中央宣伝部によって何回も警告を受けていた模様です。つまり中央宣伝部は歴史教科書の文章で突然キレた訳ではなく、そのずっと前から「氷点」の際どさに目をつけていたようです。

 http://hk.news.yahoo.com/060126/12/1kr6a.html

 で、以下のことは李大同氏による内情暴露手記を読めばわかるのですが、「中央宣伝部」というのは「党中央宣伝部」のことではなく、「共青団中央宣伝部」なのです。そこで話が込み入ってくるのですが、要するに胡錦涛の御用新聞の週末版付録が際どい記事ばかり掲載することを、胡錦涛の支持母体である共青団の中央宣伝部が苦々しく思っていた、ということになります。

 潰したのが胡錦涛の身内なら潰されたのも身内、ということです。ただ、問題記事を掲載する「氷点」あるいは『中国青年報』に対し、軍部やアンチ胡錦涛諸派連合など外部から圧力がかかった可能性はあります。圧力がかかったか、かかる気配を察したか、とにかくそれによって胡錦涛に累が及ぶのを怖れた共青団中央宣伝部が「氷点」を停刊処分にした、という側面があるかも知れません。

 あるいは『中国青年報』自体が危ないので「氷点」を切り捨てることで難を避けた、という可能性もあるでしょう。いずれにせよ、これは「胡錦涛が余儀なく停刊にした」という一面です。

 ――――

 もう一面、胡錦涛が「これはけしからん」と思う記事を掲載したというのは、「氷点」ではなく本体の『中国青年報』です。

 胡錦涛が統制好きであることは当ブログで再三指摘しています。様々な報道統制に始まってテレビ・ラジオの番組や映画、広告などの内容に対する審査厳格化、インターネットの規制やネットカフェへの制限強化、さらにネットゲームの中身にも立ち入り、携帯電話の実名登録制に向けて動くなど、この点に関して胡錦涛は実に至れり尽せりです。あとはブログに対する規制強化で完璧ではないかと以前書いたことがありますが、実は『中国青年報』はその点について、つまりブログ規制強化に反発する特集を最近組んでいるのです。

 ――

 ◆ブログ管理強化の動きに『中国青年報』が反発。
 http://zqb.cyol.com/content/2006-01/20/content_1303652.htm
 http://zqb.cyol.com/content/2006-01/20/content_1303657.htm
 http://zqb.cyol.com/content/2006-01/20/content_1303642.htm
 http://zqb.cyol.com/content/2006-01/20/content_1303647.htm

 中共政権における私的メディアではブログだけが比較的自由な空間。つまりそれを統制してしまえば統治者にとって懸念はなくなる訳だが、胡錦涛の御用新聞たる『中国青年報』が異義申し立てを行ったことに注目。『南方都市報』や『新京報』への言論弾圧に危機感を強め、御用新聞というポジショニングより記者魂を優先させたのかも。波乱必至。

 ――

 ……と、これはとっておきのネタです。「楽しい中国ニュース」に載せようとしたのですが、いやこれは大ネタだからまず当ブログで取り組んでからにしよう、と思ううちに時が流れてしまいました。

 「波乱必至」と1月20日の私はコメントしていますが、この記事の出た5日後に「氷点」停刊となるのです。胡錦涛が「けしからん」と思ったとしても全く不思議ではない内容です。これが真の原因だとすれば、共青団中央宣伝部による再三の御注進もあって、「氷点」を潰して見せしめに晒し上げた(自分の立場を忘れるな、という『中国青年報』への警告)、ということになります。

 ――――

 ここでいう先行き不透明というのは、

「『南方都市報』や『新京報』への言論弾圧に危機感を強め、御用新聞というポジショニングより記者魂を優先させたのかも」

 という部分に集約されています。これも以前書いたことですが、記者や知識人は当初、成立したての胡錦涛政権を開明的なものと考えていたようで、実際には統制強化派であったことに失望することになりました(私みたいな素人にもみえることがなぜ連中にはみえないのか。馬鹿な奴らですねえ)。期待していた分、幻滅もまた大きかったのでしょう。それだけに、記者は取材者・報道者として強い閉塞感に苛まれているのではないかと思います。

 投獄された『南方都市報』関係者の釈放要求署名活動や『新京報』の編集幹部更迭に怒った記者たちのストライキは、中共政権という一党独裁社会においては非常なリスクを伴うものです。悪くすれば失職、最悪なら投獄。家庭を持つ勤労者にとっては相当な覚悟の必要な行為なのです。それを敢えて実行したところに、記者たちの危機感の強さがあり、追い詰められた者がついに立ち上がるというイメージを私は結びます。

「官逼民反」
(「官」の横暴に追い詰められ進退極まった「民」が、成否を問わずに蹶起する)

 という言葉は農村暴動や都市暴動で使ってきましたが、メディアの世界にも用いることになるとは思いませんでした。でも、実際にそういう状況が起こっているのです。

 そういう状況の反映が『中国青年報』の「ブログ規制強化反対」記事なのであれば、胡錦涛にとっては御用新聞である筈の『中国青年報』に異義申し立てを行われる、つまり飼い犬に手を噛まれるという由々しき事態です。

 ひいては中国社会にとって、火種がひとつ増えたともいえるでしょう。署名活動、ストライキまで来ましたから、冗談ではなく、今年は記者たちによるデモを見ることができるかも知れません。

 ――――

 随分長々と書いてしまいましたが、最後に改めて、胡錦涛が現在に至るまで未だに『人民日報』や新華社といった主要メディアを十分に掌握していないことを指摘しておきます。今後の動向について簡潔にまとめておきますと、

 ●胡錦涛による主要メディア掌握が不十分(アンチ胡錦涛諸派連合はいつでも動ける)
 ●台湾問題(対応次第では軍主流派による胡錦涛掌握=胡錦涛傀儡化&政界での軍部台頭が進む可能性も)
 ●報道規制に対する記者たちの予想以上に強い反発(メディアの叛旗が政権崩壊の序曲となることも)

 ……が注目点だと思います。あとは社会状況も悪化していますし、ファンタジスタも芸術的なプレーで魅せてくれるでしょう(笑)。武装警察も実弾射撃しちゃったことでひと皮むけたというかついに一線を超えたというか。てな訳で見所満載です。

 もう一献?……いや、だめです。もう舌が回りません。それにもうこんな時間じゃないですか。寝ます。





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「上」の続き)


 「激震」とは他でもない、2005年10月17日の小泉首相による靖国神社参拝です。江沢民時代には重宝した「反日」は、貧富の格差拡大、地域間格差拡大、就職難、党幹部の汚職蔓延といった社会状況の悪化した現在においては、反政府運動の起爆剤ともなりかねない中共政権のアキレス腱です(この社会状況も野方図なイケイケ路線で歪んだ経済成長にひた走った江沢民による負の遺産に数えていいでしょう)。

 現に2005年4月の反日騒動では「民間」主導による反日デモが全国各地に拡大して一部ではプチ暴動にまで発展。事態が予想外に展開したことで、「反日」を掲げて政争を仕掛けた当のアンチ胡錦涛諸派連合まで真っ青になって、慌てて胡錦涛派と手打ちを行い、党中央を挙げて状況収拾に躍起となりました。そこは胡錦涛派もその反対派も「中国人」である前に「中共人」。政策論争や利害対立はあれど、中共政権を維持するという一点においては意見が一致しているのです。

 そこにドカンときた靖国参拝。そうでなくても都市暴動や農村暴動が頻発し、官民衝突が日常茶飯事となっている状況ですから、「中共人」たちは日本に一応反発姿勢はとるものの、国内で「反日」の火の手が上がらないようにするという点ではぴったりとまとまった筈です。その証拠に「民間組織」による抗議活動は参加者十数人という日本大使館への寂寞とした「なんちゃってデモ」が1回行われたきりで、それを国内で報道させることも許しませんでした。自発的に行動しようとした有志は治安当局に拘束されてもいます。

 その一方で、中国国内メディアに対しても厳重な報道規制が敷かれました。反日報道は許容するけれども、靖国問題に関しては鎮静化させる方向で、というのが大筋です。ただ「中共人」の中にも「それじゃあまりに弱腰ではないか」と反発する向きがあったのか、民族的感情に訴えるような反日報道や江沢民の名前が唐突に登場する謎の記事などが散発的に出現したりしました。あるいはアンチ胡錦涛諸派連合による意図的な揺さぶりだったのかも知れません。

 ●江沢民の名前が唐突に登場する謎の記事(新華網 2005/10/18)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-10/18/content_3636472.htm

 ●民族的感情に訴えるような反日報道(新華網 2005/10/20)
 http://news.xinhuanet.com/overseas/2005-10/20/content_3653263.htm

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 いまにして思えば、それを散発的なものに何とか収め得たのは「中共人」としての合意の他に、軍主流派の擁護によって、「核心」ではないものの胡錦涛が一応主導権を手にしていたからでしょう。そして胡錦涛にしても、政権発足当初の対日路線は民間レベルでの反日気運を抑えるとともに、「歴史問題を殊更に騒ぎ立てず、未来志向で現実的に」(もちろんイニシアチブは常に中国側が握っているという大前提の下で)という方針でしたから、内政面でのリスクも高い「反日」を回避し、報道規制まで敷いたこの時期に対日外交の再構築を図る狙いがあったかも知れません。

 とはいえ、昔と違って一向に折れてくる気配のない日本側の姿勢に対し、宗主国気取りでいた中共内部にはフラストレーションが蓄積されていったことでしょう。軍主流派もまた然りです。さらには小泉内閣改造によって「靖国シフト」の超攻撃型3トップ(小泉首相・麻生外相・安倍官房長官)が成立。ファンタジスタ・麻生外相が釣り師の腕を振るったかと思えば、安倍官房長官がそれを巧みにフォローするといった有機的連携を示し、エースストライカー・小泉首相が健全な対中・対韓関係構築について「10年、20年、30年」(ぐらいかかる)との一撃を放ったりもしました。

 そしてアンチ胡錦涛諸派連合だけでなく、こうした一連の流れには軍主流派もたまらずに胡錦涛に詰め寄ったのではないでしょうか。電波型ほどではなくても制服組。軍人は往々にして対外強硬論に傾くものですし、「舐められているじゃないか」という気分もあったでしょう。さらにいえば、靖国問題だけでなく東シナ海ガス田紛争もあります。そして軍部の職域でもあり、最も神経質となる台湾問題。李登輝・前台湾総統が「奥の細道を訪ねたい」と2006年春に再来日する意向を示したのです。

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 ●李・前台湾総統が来春訪日の意向「奥の細道訪ねたい」(読売新聞 2005/11/02/03:10)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051102i501.htm

 【台北=石井利尚】台湾の李登輝・前総統(82)は1日、台北市内で読売新聞などと会見し、来年4月に東北地方など松尾芭蕉の「奥の細道」ゆかりの地を家族で訪問する意向であることを明らかにした。

 李氏は「4月ごろは桜が咲いているし、暖かくなる。必ず行きたい」と述べた。

 中国政府の強い反対は必至だが、李氏は「(台湾人の日本観光は)ノービザの時代になった。リタイアした総統は普通のピープルじゃないか」と日本語で語り、日本政府に入国を認めるよう期待を表明した。李氏は、10月にワシントン訪問が実現したことを挙げ、東京訪問への期待感も改めて示した。

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 かくして、事態が水面下で動き始めます。このあたりの内情になるとさすがにわかりませんが、リアルタイムで追いかけていた当時のエントリーからすると、胡錦涛はアンチ胡錦涛諸派連合に抵抗する一方で軍主流派をなだめるなど、あれこれと手を尽した形跡がうかがえます。ちょうどアジア太平洋経済協力会議(APEC)の時期です。

 外交部報道官は当時、APECでの日中首脳会談はないとしながらも、外相会談には最後まで含みを持たせた受け答えをしていました。胡錦涛派が踏ん張って、内部でも結論を出せない状態だったのでしょう。靖国参拝以来の報道規制も何とか維持されていました。……が、APEC出席直前の外遊による胡錦涛不在のスキを衝いてアンチ胡錦涛諸派連合が大きく動き、流れが変わることとなります。

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 ●ヒトラー例え小泉首相批判 靖国参拝で中国外相(Sankei Web 2005/11/15)
 http://www.sankei.co.jp/news/051115/kok077.htm

 中国の李肇星外相と韓国の潘基文外交通商相は15日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の会場である釜山で会談し、李外相は小泉純一郎首相の靖国神社参拝に反対する考えを強調、両外相は再度の参拝は許されないとの意見で一致した。先の小泉首相の靖国参拝について、中韓外相が協調して反対の意思を表明するのは初めて。

 また李外相は同日、釜山のホテルで「ドイツの指導者がヒトラーやナチス(の追悼施設)を参拝したら欧州の人々はどう思うだろうか」との表現で、靖国参拝を重ねて非難。参拝中止に向け「基本的な善悪の観念を持つべきだ」と訴えた。

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 留守部隊がこの動きに抵抗を示したものの、アンチ胡錦涛諸派連合による反撃の流れは食い止められません。胡錦涛がこのとき頽勢に回っていたことは、4月から密かに準備していた政治的攻勢ともいえるイベント「胡耀邦生誕90周年記念式典」(2006/11/18)が骨抜き同然にされたことからも明らかです。とはいえ、敵対するアンチ胡錦涛諸派連合の軍門に降ることを善しとしないのであれば、胡錦涛は青筋を立てて詰め寄ってきた軍主流派に押し切られ、妥協するしか選択肢が残されていなかったのではないかと思います。

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 そして、吉林の化学工場爆発事故を原因とする松花江汚染が発覚して大騒ぎとなる11月末あたりまでの約2週間、今まで抑えられていた反動ともいうべき凄まじい反日報道の洪水が連日、中国国内メディアを賑わせることになります。ただし、反日騒動(2005年4月)以来の「大洪水」とは言いながら、この時期の「反日」にはいくつかの特徴がみられました。

 第一に、今回の「反日」はあくまでもメディア限定だったことです。報道に触発されてこの時期に蠢動した「民間有志」がいたかも知れませんが、海外メディアにも報じられていなかったので、動きがあったとすれば事前に潰されたのでしょう。これは「中共人」の運動律から理解することができるかと思います。

 第二として、反日気運が高まると常に火消し役を務めていた胡錦涛の御用新聞『中国青年報』が、今回ばかりは率先するかのように反日報道の音頭取りをしたことです。火消し役不在の「反日」は危険この上ないものですが、幸い松花江汚染事件へとメディアの関心が移り、洪水のような反日報道は自然終息することになります。ただし、どこかでブレーキをかけるつもりだったのかも知れませんが、『中国青年報』が旗振り役まで務めた理由が当時は謎でした。

 ……いや、現時点でも謎のままではありますが、振り返って邪推することはできます。この洪水のような反日報道は実のところアンチ胡錦涛諸派連合が現出させたものではなく、軍主流派と軍主流派に押し切られた胡錦涛がプロデューサーとして主導的役割を果たしていたのではないか、ということです。

 その邪推と関連して挙げられるのが第三点、「反日」の焦点が変化していったことです。当初は「靖国参拝」を絡めた「小泉叩き」や日本の外交路線批判(アジア軽視だそうで)が主流でしたが、その後は「改憲=自衛軍創設」でメディアの足並みが揃い、このネタを柱にしたセンセーショナルな報道が続いた点は重要です。

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 「改憲=自衛軍創設」に軍主流派が敏感に反発した、というだけではありません。当時のエントリーでも指摘しましたが、中共政権にとってはより許せないネタが当時存在していたのです。麻生外相による靖国神社の遊就館を肯定する発言、これは歴史認識の問題において中共史観を頭から否定するようなもので、中共政権にしてみれば、日本が中共にとっての大前提を崩しにかかってきたと騒ぎに騒ぐべきところです。10年前なら麻生外相は引責辞任間違いなしだったでしょう(笑)。

 ところがこの「遊就館」問題は外交部報道官が激しく反発しただけで、中国国内メディアにはほとんどスルーされて見向きもされませんでした。逆にまだ国会にも提出されず、自民党が草案作成の方針を明らかにしただけの「改憲=自衛軍創設」に報道が集中したのです。「自衛軍創設」を騒ぎ立てて得をするのは誰か、ということになります。

 いまにして思うに、どうもこの「自衛軍創設」のあたりから胡錦涛の両輪作戦、つまり『中国青年報』と『解放軍報』を使った逆転攻勢が開始されたようにみえます。松花江汚染事件にメディアの関心が移り、反日報道の勢いが弱まって12月に入ると、『解放軍報』が憑かれたかのように胡錦涛礼讃報道を開始します。

 このあたりについては姉妹サイト「楽しい中国ニュース」で拾っていますが、礼讃といっても胡錦涛万歳ではなく、胡錦涛の提唱する「科学的発展観」、以前はトウ小平思想と江沢民の「三つの代表論」に隠れて控え目にそっと添えられていた観のあったこの「科学的発展観」を前面に押し出した論文がどんどん出てきたのです。軍総政治部は「胡錦涛精神」の徹底を目的に新兵には「兵士読本」、士官には「士官読本」を配付したりもしています。

 それからこれも12月以来の傾向ですが、反日報道や日本に批判的な報道はweb上で記事を漁る限りでは実に多彩で量的にも豊富です。ただその中で軍事・安全保障関連のネタは転載や複数のメディアによる当番制?などによって意図的に引っ張られている(繰り返し報道されている)ように感じます。最近では離島防衛をテーマにした日米合同演習や日米安保の強化、台湾問題に関する日米の介入姿勢、また陸域観測技術衛星「だいち」打ち上げなどがそれに当たります。どうも、剣呑なのです。

 ともあれ『解放軍報』の胡錦涛礼讃は秋口のそれを上回る熱烈さで、党上層部における胡錦涛の指導力向上を随分助けたのではないかと思います。この状況下で「胡耀邦生誕90周年記念式典」が開催されれば、かなり違う内容になっていた筈です。……要するに軍主流派が今まで以上の入れ込み方で胡錦涛擁護を始めた、ということになるのですが、当然それには見返りが求められたでしょう。

 そのひとつは軍高官人事における主流派への配慮であり、一例として前述した非主流派の電波型将官、熊光楷大将が退役させられています。また公式報道はないものの、同類で核戦争発言が物議を醸した朱成虎少将には1年間昇進停止という処分が下ったことを親中紙『香港文匯報』が報じています。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512230005&cat=002CH

 ――――

 もうひとつの見返りは、冒頭に書いた「禁じ手」、すなわち制服組による政治(特に外交面)への介入強化を容認したことだと思います。実戦経験がなく軍部から離れた場所で呼吸していた江沢民は、いざ総書記に抜擢されてからの軍部掌握においてはトウ小平のバックアップに大きく助けられたことでしょう。そういう後ろ盾を持たない胡錦涛は、結局のところ階級昇進やポスト昇格といったバラマキだけでは駄目で、より大きく踏み込まざるを得なかったのかも知れません。

 ……というのはもちろん根拠のない邪推です。ただ以前のエントリー()でふれたように、対日外交において在上海日本総領事館職員自殺事件や日本メディア批判といった点で、従来の外交部の運動律から大きくはみ出したようなリアクションが出るようになっています。

 それからこれも以前に紹介した秦剛による外交部報道官会見(2006/12/27)、日本人の対中感情悪化についての回答で、

「中日人民の感情が冷え込んでいる根本的原因は、日本が台湾、歴史問題などにおいて絶えず過った言行を繰り返しているからだ」

 と「台湾」を「歴史問題」の前に置いています。インドネシアでの日中首脳会談で胡錦涛が打ち出した日中関係改善に関する5項目提案では「歴史問題」「台湾」の順になっていますから、この外交部定例会見で「台湾」が先に来たというのは注目すべきところです。私はそこに制服組の気配が感じられるように思えます。「台湾>歴史問題」というのは軍部の優先順位とも一致するでしょう。「自衛軍>遊就館」と同じです。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/27/content_3976500.htm

 その台湾問題に関しても先ごろ中国の御用学者による強硬発言が飛び出したように、最近は「キツい言い方はこのぐらいまで」という制限が緩和されているように思えます。李登輝氏訪日計画に関する外交部報道官コメント、

「中国は日本が慎重に、適切に台湾に関わる問題を処理することを要求する」

 を『解放軍報』が2日連続で掲載したのも非常にわかりやすい反応でした(笑)。同紙はこれに加えて予備役の充実や戦時における交通機関や予備役などの動員態勢を論じる署名論文を次々と掲載し、「もしいま一戦あらば」という緊張感を強烈に醸し出しています。


「下」に続く)



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 標題通り、今回は邪推満開でいきます。いや世間は土曜日なようですし、たまには酒でも喰らって政争の話でもしたいじゃないですか。悪酔いして長くなるかも知れませんけど(笑)。

 政争は現在進行形です。例によって「胡錦涛派vsアンチ胡錦涛諸派連合」という組み合わせだと思うのですが、今回は「中央vs地方」という色合いが濃く出ているように感じられます。ただし、「諸侯」たる地方政府に向き合う「中央」は一枚岩ではなく、胡錦涛の威令は中央に限っても隅々にまで及んでいるようにはみえません。どうも危なっかしい。

 そこで胡錦涛は目をつぶって禁じ手を使ったようにみえます。軍部と手を握ることです。より正確にいえば、軍主流派が本来その本分ではない政治面、特に外交政策などに容喙することを許容したのではないかと。

 ――――

 「諸侯」の勝手な振る舞いを抑えるために、胡錦涛は「団派」と呼ばれる共青団系人脈、つまり自分の出身団体に連なるホープを省・自治区・直轄市のトップクラスに送り込むということを以前からやっています。しかしこれは即効性のある方法ではありません。

 普通の会社でもそうですが、外部から招聘された新任の上司に、地生えの部下がすぐ馴染むということはないでしょう。ある種の演出したり懐柔したり実力を示したり、あるいは有力な後ろ盾(上司の上司など)の存在を明示・暗示したりして、新任管理職は次第に統率力を高めていきます。むろん、そうしたケースの全てが支配力を確立できる訳ではなく、逆に部下たちからソッポを向かれたり、丸め込まれて操り人形にされるという失敗例も少なくありません。

 地方に送り込まれるホープたちも大変です。後ろ盾の胡錦涛は「党総書記+党中央軍事委員会主席+国家主席」という形式上の最高実力者ながら、その権力基盤は磐石ではなく、実に心許ない。その証拠に2004年9月の胡錦涛政権発足以来、対日路線の修正反日騒動呉儀ドタキャン事件といった党上層部におけるグラグラがありました。

 そのいずれもが日本関連なのは、江沢民の負の遺産によるものでしょう。米国との正面衝突を回避しているという側面もありますが、政治家や研究者にとっては「反日」が一種の踏み絵となり、30代以下の若い世代には「反日」風味満点・中華万々歳の「愛国主義教育」が「常識」として刷り込まれています。洗脳といってもいいでしょう。

 ――――

 ただ洗脳といっても人によって濃淡はありますし、自分あるいは家族の生活がある訳ですから、「洗脳」されていてもそれをストレートに現実社会での行動に反映したり、日本人に石を投げたりする訳ではないでしょう(だからネットが反日言論で賑わう訳でw)。また中共政権への批判などが封じられているなか、いくら悪し様に罵ってもいい唯一開かれた窓口が「反日」ですから、純粋な「反日」だけではなく、自分の属する社会に対する鬱憤晴らしの手段に使う、という側面もあります。

 いや、むしろ江沢民による「反日」は元々1989年の天安門事件で地に堕ちた中共政権の求心力回復の一策として、「鬱憤晴らし」や「社会問題から目を逸らさせる」ために持ち出されたものでしたね(笑)。そうした背景がある一方で、日本政府の対中外交が近年、本来あるべき姿へと大きく舵を切ったことも忘れてはなりません。

 それに対し、今までふんぞり返っていた中共が勝手に動揺し、脊髄反射し、ストレスを蓄積させた。それが上述したような党上層部のグラグラへとつながりました。

 ここで強調しておきたいのですが、よくテレビや新聞で「小泉首相の靖国神社参拝などによって悪化した日中関係は」などという言われ方をしていますが、これは全くの誤りです。
靖国神社や歴史教科書という日本の内政問題に中共政権が容喙するからこそ摩擦が起きている訳で、非は内政干渉という「日中間で取り交わされた3つの政治文書」に反する行為を繰り返す中共政権の側にあります。

 要するに他人の家に土足で踏み込むような無理無体をしていた中共政権が、それが通用しなくなったために動揺し、脊髄反射し、ストレスを蓄積させた挙げ句に内政面での仲間割れが顕在化した訳です。そのいずれも「倒閣運動」の色彩を秘めた主導権争い。

 もっとも、直接的なきっかけは「反日」を軸とする政策論争でしょうが、その看板を掲げつつ、実は「反日」に名を借りた「中央vs地方」のような利害対立が根になっている、という部分もあります。……その辺が複雑なので「アンチ胡錦涛諸派連合」と当ブログでは括っています。旗印は「反日」でも動機は十人十色、という訳です。

 ――――

 冒頭に「今回の政争は」というような書き方をしましたが、厳密にいえば、昨春の反日騒動以来の政争にはいずれも決着がついていません。反日騒動が第1ラウンドなら呉儀ドタキャン事件が第2ラウンド、というように、複数の政治勢力による対立という大きな流れの中で反目が突出したり顕在化したりした時期が政争扱いされているといったところでしょう。そしてそのいずれにも白黒がつかないままです。

 権力闘争といえばトウ小平が1992年、南方視察によって「改革・開放」に異論を唱える保守派を壊滅させ、「改革・開放」を大前提とすることで決着した一連の出来事を私は思い出します。ここ1年来の数ラウンドに及ぶ政争において、そういう明々白々とした決着が毎回つかずに痛み分けてしまうのは、対立する双方がともに小粒で「トウ小平」のような決定的なカードを持っていないからでしょう。

 どちらも相手をKOできないために、機会があればまた政争が起きる訳です。民意が政治に反映されず、一党独裁制で、それなのにカリスマ不在で小粒だらけの集団指導制、という効率の悪さ(笑)を反映しているようでもあります。

 ――――

 前にも書きましたが、中国における政争、権力闘争は往々にして双方が支配下に置くメディアを使っての代理戦争、という形をとります。例えば1992年の権力闘争においては
「『解放日報』(改革派)vs『人民日報』(保守派)」であり、昨春の反日騒動では「『中国青年報』(胡錦涛派)vs『新華社』(アンチ胡錦涛諸派連合)」でした。これは消息筋を全く持たず、報道のみを拾って中国観察の真似事(チナヲチ)をしている私には大変有り難いことです。

 今回の政争の起点をどこにおけばいいのかは迷うところです。とりあえず政争関連で反日騒動、呉儀ドタキャン事件に続く大きな出来事といえば、2005年9月3日の「反ファシズム何たら60周年記念式典」での胡錦涛演説でしょう。この重要講話で胡錦涛は対日戦争について、

「正面を国民党が担当し、後方を共産党が担当した」

 とはっきり言及しています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-09/03/content_3438800.htm

 そんなことは中国の歴史教科書のどこにも書かれていないでしょうし、その僅々2週間前の党中央機関紙『人民日報』が掲げた戦勝記念重要論文でも
「中国共産党が抗日戦争における唯一の中核であり、勝利を勝ち取る上での柱であった」というような趣旨になっていました。

 http://politics.people.com.cn/GB/1026/3614204.html

 この2週間の間に
中共によって恣意的に歴史が塗り替えられたのです。中共政権にあって歴史とは統治者に便利使いされる道具にすぎないものであることを、かくもはっきりと示したのは近年稀にみることでしょう(笑)。

 同時にこの2週間の間に、胡錦涛が「歴史を塗り替える」ことで最も反発するであろう軍部を説得することに成功したのだと思います。その手前である7月あたりに人民解放軍や武装警察(軍と公安部に両属する準軍事組織)の幹部に対する階級昇進・ポスト昇格を派手に行って御機嫌とりに努めていますし、軍高官に対しては「国民党の顔を立てれば台湾独立派には打撃になるし、台湾統一への動きも強まる」といった囁きをしきりに繰り返していたのでしょう。

 その結果、「歴史を塗り替えた」9月3日の重要講話前後から、人民解放軍の機関紙である『解放軍報』による胡錦涛礼讃が始まります。『解放軍報』が動いたことで、胡錦涛と軍主流派が手を組んだことがうかがえます。ことさらに「主流派」と書くのは『解放軍報』を掌握している筋、という意味で、例えば熊光楷大将、劉亜洲中将、朱成虎少将といった軍内部でも対外強硬派で鳴らす電波型将官たちはここには含まれません。

 ――――

 重要なのは、胡錦涛は軍主流派と合作しただけで、軍部を掌握した訳ではないということです。それでも協力を得られないよりはマシでしょう。呉儀ドタキャン事件の前後でかなり低下したとみられる胡錦涛の指導力は、これによってかなり回復したものと思われます。ただし、回復したといっても中央を仕切れるだけの統制力には至っていませんし、地方に対する睨みも十分ではない。その証拠に江沢民の全盛期に盛んに使われた「核心」という言葉、

「江沢民総書記を核心とする党中央」

 というような言い回しですが、胡錦涛はまだこの「核心」をつけてもらうことができず、

「胡錦涛同志を総書記とする党中央」

 と一段低い扱いになっています。それからこの時期、2005年の晩夏から初冬にかけて問題となったヤミ炭鉱や炭鉱をめぐる官民癒着の是正についても地方当局の抵抗があり、改善作業が順調に進んだとはいえませんでした。この炭鉱問題は「諸侯」に対する中央の統制力が不十分であることを示すとともに、胡錦涛が各地に送り込んだホープたちが未だに部下(地元のボス)をしっかりと掌握できていないことを物語っているかと思います。

 指導力はある程度回復したものの、胡錦涛が最高実力者として十分なレベルに達していないことは、10月上旬に開かれた党の重要会議「五中全会」(第16期中央委員会第5次全体会議)で何の人事異動も行われなかったことでも明らかです。

 中国共産党の党大会は5年に1度開催され(前回の第16回党大会は2002年、次の第17回党大会は2007年)、そこで今後5年間の基本路線や主要人事・大型人事が定められます。

 ただし次の党大会までの5年間に複数回開催される「×中全会」でも人事異動はあり、例えば一昨年の「四中全会」では江沢民が党中央軍事委員会主席職から引退し、その後を胡錦涛が襲うことで名実共にした胡錦涛政権がスタートしています。

 ――――

 さてこの「五中全会」ですが、過去の例に照らせば必ずといっていいほど人事が行われてきました。5年間に開かれる「×中全会」の数はそう多くありません。ホップ・ステップ・ジャンプの三段跳びでいえば、狙っていた人事を仕上げる「ジャンプ」が党大会。

 そこから逆算すると「五中全会」は「ホップ」または「ステップ」としては外せない機会で、例えば地方のトップに置いて経験を積ませていた腹心や後継者をここで党中央、具体的には政治局委員や政治局候補委員、あるいは中央書記処書記といったポストに呼び込んで中央における党務に習熟させ、「六中全会」でさらに一歩昇格させておいて、党大会で事実上の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会に滑り込ませる、といった青写真が描かれます。

 カリスマ不在の集団指導制ですからかつての江沢民や胡錦涛の大抜擢といったサプライズ人事が行われる可能性は低くなっています。それだけに三段跳びで順調に昇格させることが大事であり、「五中全会」で人事が行われなければ、党大会までにどこかで無理をしなければならなくなります。

 ……ところが上述したように、胡錦涛はその人事に一切手をつけることができなかったのです。実名でいえばポスト胡錦涛と目される李克強・遼寧省党委書記の中央入りが実現せず、一方で上海閥の現地大番頭で、上海市を中央に容易に屈しない「大諸侯」たらしめている陳良宇・上海市党委書記を異動させることもできませんでした。もちろんコミュニケなどの公式文書で胡錦涛が「核心」扱いされることもなし。「胡錦涛同志を総書記とする党中央」のままです。

 主導権争いでは形式上の最高実力者として一応優勢めいた状態を維持できたとはいえ、人事を全く動かせなかった胡錦涛、目論見が崩れたというところでしょう。……そして、この「五中全会」の直後に激震が走ることになります。


「中」に続く)



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 すみません。旧正月休暇という思わぬプレゼントをもらったのでつい堪能してしまいました。

 この機会に愚痴を言わせて頂くとすれば、私にとって、チナヲチ(中国観察の真似事)は娯楽に属する楽しい作業であり、それゆえ当ブログも書くこと自体は全く苦にならず、書こうと思えばいくらでも書けるかと思います。ただ、

「素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。」

 という旗印を掲げている性質上、まず記事集めをしなければなりません。実はこれがかなり大変な作業です。香港→台湾→中国本土の順でみていくのですが、これは娯楽ではありません。分量にすると1日平均でA4に9ptsで詰め込んでも40頁は超えます。それでもここで実際に使う資料は1割にも達しません。

 残る9割は私にとっては勉強になっていたり、いつか使うことになるだろうと思ってピックアップしているのですが、まあ捨てているも同然です。それでは余りに勿体ないということで始めたのが姉妹サイト「楽しい中国ニュース」です。

 ただ労力をかけたくないので「楽しい中国ニュース」での一言コメントは適当に書いていますから当てにすることなく、どうか必ず記事本文に直接あたって下さい。もっともコメントは適当なのですが、掲載する時点で一応記事に目を通しているので、私にとっては以前より情報が頭に入る、流れがみえやすくなるというメリットがあります。これは思いがけない副作用でした。

 そして旧正月なのですが、香港・台湾・中国本土とも、さすがに記事が少なくなるのです。分量でいうと半減以下。加えて仕事が休みになったので、ついブログを放ったらかしにして人がましい日々を送ってしまいました。申し訳ありません。m(__)m。

 ――――

 さて前々回・前回にお伝えした「突然ですがここで江沢民です」、具体的には対台湾政策において「胡四点」を前面に押し出し、従来の「江八点」を過去のものにしていく(否定ではない)という中央の狙いがあったのですが、意外なことに「江八点」大売り出しキャンペーンになってしまい、少なくとも中国国内メディアにおいては「胡四点」よりも遥かに高い露出度を示すことになってしまいました。

 その後どうなったかといえば、旧正月突入にも関わらず「江八点」発表11周年記念日(1月30日)までは関連記事が躍っていました。で、この記念日をすぎたら今度は「胡四点」になるのかどうか、これは微妙なところで要注目です。

 ところで、この「江八点」vs「胡四点」については前回のコメント欄で『毎日新聞』の記事を紹介して下さった方がいました。以下に引用します。

 ――

台湾方針11周年:胡主席、独自色を発揮 (Unknown)
2006-01-30 18:31:01
こういう見方も...

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060130k0000e030068000c.html

 【北京・飯田和郎】中国の江沢民前国家主席が在任中の95年、8項目の対台湾方針(江八点)を発表してから30日で、11年になった。ただ、今年の記念行事は低調で、代わりに胡錦涛主席が昨年3月に示した4項目意見(胡四点)がクローズアップされてきた。中国は台湾政策の主軸を江沢民時代の「早期統一」から「独立阻止」に修正、胡主席が台湾問題でも指導力を高め始めたことを反映している。

 中台筋によると、共産党はこれまで毎年、行ってきた党中央主催の江八点記念座談会を開かず、関係諸団体がそれぞれ行う決定を下した。
(後略)

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 ……引用終了。できれば『毎日新聞』の当該記事全文を御一読頂きたいのですが、この引用部に限っていえば「ハァ?」とか「ヴァカですか?」といったリアクションをするしかありません。だってこの部分、「突然ですがここで江沢民です。・上」(2006/01/27)で紹介した親中紙『香港文匯報』の記事(2006/01/19)や台湾・中央通信社の報道(2006/01/22)そのまんまじゃないですか。いずれも1週間以上も前の「旧聞」です。

 いや、「そのまんま」なのはいいのです。問題は『毎日新聞』のこの記事、1月30日付で出されていますが、記者はこの一週間、北京でこの問題については何も観察していなかったのかということです。

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「今年の記念行事は低調」、その通りです。「4項目意見(胡四点)がクローズアップされてきた」、これもその通り。「中台筋によると、共産党はこれまで毎年、行ってきた党中央主催の江八点記念座談会を開かず、関係諸団体がそれぞれ行う決定を下した」というのも「そのまんま」ですね。……ただ、これらは中央、それもたぶん中央の総意ではなく、胡錦涛派による事前の目論みにすぎなかった形跡が濃厚です。

 この北京特派員氏は、

「胡主席が台湾問題でも指導力を高め始めたことを反映している」

 と断を下している訳ですが、これは紋切型以上の愚妹さではないかと愚考する次第です。この1週間以上、正確には1月30日まで海外を含む各地で行われた「江八点」11周年キャンペーンがそうしたことを骨抜きにしている、少なくとも「胡四点」を脇に追いやり、メディアを動員して全く別のリズムで躍っていた。……これは中国政治における主導権争いの常道として注目すべきことなのですが、これを全く無視しているのはどうしたことでしょう。

 前回の「突然ですがここで江沢民です。・下」(2006/01/27)でふれたように、確かに党中央は「江八点」の記念座談会を開いていません。それでも「関係諸団体がそれぞれ行う」事例が相次ぎ、それを国営通信社・新華社が全国ニュースとして配信したり、党中央の機関紙である『人民日報』が報じたりしている。

 なるほど党中央は座談会こそ開いていませんが、その機関紙が関連ニュースをガンガン報道しているのです。それだけならともかく、『人民日報』はリレー形式の特集コラムまで連載していたではありませんか。……これはカナーリ重要な政治的シグナルだと思うのですが、全く無視しちゃっていいのでしょうか?

 前回書いた通り、どこでいくら派手に「江八点」記念座談会が行われようと、報道しなければ人目につきませんし、一種の示威活動としての政治的効果も小さい。ところが新華社や『人民日報』がどんどん報じていた。しかも胡錦涛が台湾海峡に面した福建省を視察(01/12-01/16)して一席ぶった直後なのに、これです。

 要するに、
胡錦涛は主要メディアすらまだ十分に把握できていない、ということです。だから「これからは『胡四点』で」という意向でいても、現実には「江八点」ばかりが強調されている。思うに任せない、というところでしょう。国営通信社と党中央の機関紙すらしっかり掌握できていないところをみると、党中央のレベルでも「胡錦涛が指導力を高め始めた」と表現するには難があると思うのですが、如何でしょう?

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 折角ですから前回以降の「『江八点』発表11周年記念活動」関連記事(2006/01/27-2006/01/30)を「新華網」(新華社電子版)限定で並べてみましょう。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/27/content_4105810.htm
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-01/27/content_4108749.htm
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-01/27/content_4107272.htm
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-01/27/content_4108976.htm
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-01/28/content_4112158.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/28/content_4111179.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/28/content_4111190.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/28/content_4111764.htm
 http://news.xinhuanet.com/overseas/2006-01/29/content_4114916.htm
 http://news.xinhuanet.com/overseas/2006-01/30/content_4119255.htm

 ……と、わずか4日間、しかも「新華網」限定でもこれだけあります。胡錦涛の権力基盤が磐石でないときに、江沢民、江沢民の文字が全国ニュースに躍る。政情安定の観点からいえば好ましいものとは考えにくいです。

 『人民日報』は社説まで掲げていますよ。これは上述の記事とは毛色が多少異なり、一応「江八点」を踏み台に「胡四点」を持ち上げる内容です。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/29/content_4116000.htm

「『江八点』発表11周年に際してこれを振り返り、『胡四点』をより真剣に学び貫徹しよう」

 という一節があります。でも今後「『胡四点』を学ぼう」運動でも始まるのでなければ、これは単なる修辞にすぎないかと思います。

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 今回のキャンペーンといえるほど派手な「江八点」発表11周年記念活動について、

「台湾問題に関する主導権争いが実際に存在するのか、それとも『江八点』をダシにした政争なのかはまだ見極めがつきません」

 と前回書きました。実際にはその両方の要素があるのだろうと思いますが、私自身は後者、すなわち「『江八点』をダシにした政争」がメインではないかと思うようになってきています。

 江沢民自身は第一線から引退していますし、引退しても院政を敷けるような甲斐性はありません。旧正月前にはすでに李鵬や万里、喬石、李瑞環そして朱鎔基同様の「老同志」扱いで現執行部の要人たちの慰問を受けた、とされています(さすがに「老同志」の中では序列1位ですけど)。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-01/27/content_4108567.htm

 要するに江沢民自身が巻き返してどうこうする(例えば第一線に復帰する)、ということはないでしょうが、江沢民の名前を掲げることで、具体的にいえば今回は「江八点」を大いに持ち上げて奉祝することで、胡錦涛派に対する異義申し立て&示威活動を行った政治勢力がいる、ということではないでしょうか。その実力が半端でないことは、新華社や『人民日報』まで使った「攻勢」を展開した、ということで明らかです。

 一応記念活動を実施したと「新華網」が報じた地区を挙げてみますと、台湾関連部門が集中している北京市をはじめ、上海市、天津市、広東省、江蘇省、山東省……となっています。沿海地区に偏っているのと同時に、肝心の福建省の名前がないのが興味深いところです。

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 それはともかく。改めて強調しておきますが、この「胡四点」vs「江八点」などは事態を攻城戦に例えれば外堀にすぎません。じゃあ『中国青年報』の週末版付録で先日取り潰された「氷点」が本丸なのかといえば、それも違います。

 ちょっと先走ったことを某巨大掲示板の某スレで書いたのですが、「氷点」廃刊は胡錦涛が押し切られて、トカゲの尻尾切りとして余儀なく潰すしかなかった、という一面と同時に、胡錦涛自身が「けしからん」として、自らの意思で潰した一面があると思います。

 その事態において、「氷点」は見せしめにすぎず、実際に狙われたのは『中国青年報』そのものだと思うのですが。……まあそれは次回以降の話題とします。胡錦涛政権発足後(2004年9月以降)の政争めいた動きは当ブログが常に取り上げてきたところですが、今回はちょっと事情が込み入っているので、ひとつひとつトーチカを潰しつつ、本丸へと匍匐前進していくしかありません。

 何やら新しい動きも出てきていますので、これから春にかけて中国上層部では主導権争いが激化しそうな雰囲気です。それが暗闘になるか表沙汰になるか。……これは、中共政権の痛点であり続ける台湾問題が俎上に乗せられる事態になるかどうかです。前にもちょっとふれましたが、外交部はすでに陥落している気配が濃厚です。もっとも今回「江八点」を掲げた政治勢力と外交部を掌握した向きは顔ぶれが異なるように思いますけど。

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 余談ですが、王毅・駐日大使が日本に戻ってきましたね。旧正月を過ごしてから来日すればいいのに、わざわざ旧正月前なんて……というのは結構単純な理由によるものかも知れません。

 昨年の「大年初一」(旧暦の元日)に日本政府は尖閣諸島の灯台国有化を発表しました。中共政権側にしてみれば1年で最もおめでたい日に奇襲攻撃を受けたようなものでしたね。今年も何か仕掛けてくるかも知れないぞ、ということで、一応旧正月に駐日大使を東京に貼り付かせて万一に備えたのではないでしょうか。

 例えば「李登輝氏来日正式決定」が発表されてもおかしくないタイミングでした。そこで抗議させたり講演や記者会見で反発を示すならやっぱり公使より大使。ただ王毅は、

「トラブルメーカー(李登輝氏)が戦争メーカーになる」

 といった、死に損ないの団塊どもが好みそうな脱力系コメント(オヤジギャグ?)が持ち味ですから、前回同様、余り役に立ちそうにはありませんけど。まあ格式の点で、大使不在よりはマシなのでしょう。

 肝心の城攻めが進んでいないようですが、そこはそれ、旧正月明けのリハビリということで御勘弁下さい。


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 【お願い】中国在住の方にお願いです。「楽しい中国ニュース」をはじめ「seesaa.net」のブログが閲覧できないとの御報告を「上海在住」さんや「dongze」さんから頂いておりますが、現在もその状態が続いているのでしょうか?とすれば、「goo」以外で現在閲覧可能のブログサービスにはどういったものがあるでしょうか?「hatena」あたりにミラーサイトを設置しようかと考えているのですが、御助言頂ければ幸いです。



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