日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)


 さてその記事の内容、

「私には一貫した自分の原則と立場がある。もし(李登輝氏襲撃を)やらなければ、今後自分自身に対して顔向けができなくなる」

 というサブタイトルにいきなり唸らされます。これはテロリストの理屈であり、法治の観念がすっぽり欠如したものでもあり、極端な言い方をすれば強姦魔の開き直りです。

 とはいえ、翻って考えればこの一言が見事に中共政権そのものを体現しているともいえます。

 薛義が自称愛国者の糞青とすれば、今回は「愛国」の中の「台湾独立を許さない」という部分が反応したものと考えていいでしょう。その台湾に対し、中国は理非も根拠もなく自国の領土であることを主張し、台湾がひとつの国家として国際社会に認知されることには断固反対し、武力による統一も選択肢から外していません。

 軍事力を用いて縁もゆかりもない台湾を併呑する、というのは強姦に他ならないでしょう。たとえ縁故関係が多少あるとしても、無理矢理であることには変わらず、許される行為ではありません。

 ところが人民解放軍などでは、台湾統一と領土保全(尖閣諸島を含む)を「われわれに課せられた神聖な使命」と常々強調しています。神聖ではなく真性でしょう(笑)。ともあれ中国とはそういう国です。

 ――――

「ある部屋に連れて行かれて、裁判長と通訳が判決文を読み上げた。薛義の行為は日本の法律の第何条第何項に違反したため、罰金20万円の刑に処す、とか何とかいった類いの、大体そういう内容だった。そのあと通訳に連れられて罰金を払い終えて、それで出てきたんだ」

 という薛義の回想から始まるこの記事は、すでにこの部分から薛義が日本の法律に対し遵法意識が全くないことと、ひいては法律なんて糞くらえ、といった不遜な態度がみてとれます。記事の性格上、胡錦涛政権の姿勢を反映しているといって差し支えないでしょう。なるほど首相の靖国神社参拝に臆面もなく容喙してくる訳です。

 続いて、拘留期間中に中国大使館の領事2名が面会に来て薛義の身を案じてくれたこと、中国国内のネット上で自分が賞讃されていると知ってとても感動したことを薛義は明らかにしています。また薛義は、自分のために中国大使館の人間が奔走し、日本側と何度も交渉の場を持ってくれたことにも言及。これは破格の扱いといえるでしょうが、

 ●中国政府が日本の国内事件に介入していること。
 ●中国政府が日本国内では違法とされる薛義の行為を肯定していること。
 ●中国国内のネット世論が薛義を英雄扱いしたことを中国政府が「誤った行為」と否定していないこと。

 ……といったことが、この一節からわかります。呆れて物が言えないといったところですけど、これは胡錦涛政権の対日路線とも符合するところです。というより、これはむしろ中国の伝統的な対日姿勢といってもいいでしょう。

 ――――

 罰金20万円について薛義は「妻が国内から持ってきた」としていますが、一方でネット上で募金活動が行われていたことがこの記事で明らかにされています。

 新華社電として配信された記事ですから、これでこの募金活動も公のものとなったことになります。しかも否定されていないので中国政府が認めた活動、といっていいでしょう。

 ちなみに薛義はその受け取りを辞退するとしていますが、この「インタビュー記事」の実質は胡錦涛政権の態度表明ですから、実際はどうであろうとどうでもいいのです。

 「辞退する」とした方が「民族英雄」らしい清々しさがイメージされるから薛義に「辞退する」と語らせているまでのこと。あるいはイメージ戦略のために、わざわざこの部分を加えているとも考えられます。

 そして、行為に及ぶにあたって葛藤はなかったのかという質問に対し薛義は、

「もちろん葛藤はあった。自分の前途や家族の生活にも大きな影響を及ぼすからね」

 と答え、ここで上述したサブタイトルの、

「私には一貫した自分の原則と立場がある……」

 につながります。

 ――――

 「他の方法で意思表示することは考えなかったのか?」という質問に対しては、

「それは考えた、口頭で抗議するとかね。でも当時は口頭での抗議だと(効果が)弱過ぎると思ったんだ」

 と回答。これまたテロリストの理屈です。犯行について、

「特に何も後悔していない」

 とも語っています。この記事の中でこれらの理屈を否定する文言が見当たらないことから、当局はこれらについても否定してはいないと読むことができます。仲間を募って横断幕でも掲げればいいだろ、と思うのですが、

「こういうことをすると個人的に失うものがあるし、他にもマイナス面があるかも知れない。だから誰かをこのことで巻き込みたくはなかった。あえて一人で戦うことにしたんだ」

 いやだから、別に「こういうこと」(ペットボトル投げ)をしなくても横断幕でもいいし、一人で戦うにしてもプラカードを掲げればいいと思うんですけどね。

 まあ、例えば薛義が日本での仕事に行き詰まっていて、だから逮捕されるリスクを冒しても「暴力」に訴え、それによって「民族英雄」として賞讃されることを狙った、という打算に基づいた賭けに出たのなら別ですけど。……てのは無茶苦茶な発想かも知れませんが、日本に来る前から現実世界で活動していたくらいですから、「民族英雄」=プロの活動家への飛躍を狙うのは割と容易なのかも、と思ったりします。

 「(事件を起こして)どういう結果になるのか考えなかったのか?」という質問にも、

「(犯行に及ぶ前は)最悪でもせいぜい何日か拘留されてから強制送還だろう、と思ったくらいで、そんなにあれこれ考えたりしなかった」

 と答えていますし。

 ――――

 この記事には犯行当時の回想も出てきますが、これは割愛。ただこれについても記事文中にその行為を否定する言葉が出て来ないことを記しておきます。

 興味深いのは、

「日本の警察はまあ友好的だった」

 という言葉が出て来ることです。

「君の気持ちはわかるが、ペットボトルを投げるのは間違いだ」

 と薛義に話した警官もいたそうです。このあたり、警官は
「意思表示をしたいという思いはわからなくもないが」というニュアンスなのに対し、薛義は「台湾独立に反対するという気持ちは理解できるが」に脳内妄想的翻訳が行われているように思います。

 ともあれ日本の警察が「友好的だった」ということで「反日」気運に水を差そうという意図がありありとみえます。ただ一方で「あーそうなんだ、それなら俺も」的な模倣犯を誘発しそうな気もします(笑)。

 ――――

 ここから記事は終盤に入ります。

 記者「『出国する者はたいてい非愛国的だ』という声がある。あなたの行為はそれにはあてはまらないが?」

 薛義「それはひどく偏った見方だ。私の友人たちの体験やネット上で目にする発言などから、(中国人は)誰もが赤心を持っていることがわかる。ただ中には生活のため、あるいは何らかの現実問題に対する失望のために(愛国の赤心が)麻痺してしまった人たちもいる。でも、そういう人たちもやはり中華への思いはあるんだ。私もそうした人たちの中の、これ以上ないほど平凡な一人にすぎない」

 なるほど国籍別在日外国人犯罪件数で「中国人」(中国本土)が18連覇中な訳です。ペットボトルを投げることが愛国の赤心の発露なら、「愛国」活動と称してピッキングに精を出したり、強盗に入って日本人を惨殺する連中もいるでしょう。ていうか実際に逮捕されてから「中国侵略への報復」などとうそぶく輩がいますね。

 記者「日本に来てからと国内にいたときを比べて、「愛国」に対する考え方に変化した部分はあるか?」

 薛義「愛国は色々な場面で具体化することができる。自分の言行ひとつひとつが全て中国人と中国のイメージを代表しているということを知るべきだ。愛国とは口先だけのものじゃない。相手に対して強く出るべきときは決して弱腰になるべきではない」

 ……なんだか質問と回答がすれ違っているような気もしますね(笑)。

「自分の言行ひとつひとつが全て中国人と中国のイメージを代表しているということを知るべきだ」

 には「おやおや」ですけど薛義は真性ですから(笑)。ただこれは胡錦涛政権の手が入った一節かも知れません。薛義は真性で片付けられるとしても、中国人観光客のマナーの悪さが海外各地で顰蹙を買っていますし、五輪開催を控えて北京市民のお行儀をよくすることに当局は血道を上げていますから。

 そういえば薛義の自分勝手な理屈と行動は、中国人観光客の傍若無人なマナーの悪さと一脈通じるところがありますね。

 ――――

 記者「もともと日本へ来て仕事をすることにしたのはなぜか?」

 薛義「私は遼寧省錦州市の出身で、大学を卒業してほどなく瀋陽で職に就いた。そのあと日本に来るのを選んだのは、主に収入面の要因によるものだ。さらにいうなら、日本と日本人をより深く理解するためだ」

 薛義の口から「日本と日本人をより深く理解するためだ」という言葉が出るとは考えにくいのですが、どうでしょう?ここで薛義の「日本観・日本人観」はどういうものか、それは来日後に変わったものかどうか突っ込んでほしいところですが、この記事では必要とされていないのか、ふれられていません。

 記者「あなたのことを心配している中国国内の人たちにメッセージを送るとしたら、何を一番言いたいか?」

 薛義「みなさんの私に対する支持と温かい励ましにとても感謝しています。皆さんが学業や仕事に努めて打ち込むことができるように。それもみな愛国を体現するものですから」

 「皆さんが学業や仕事に……」という模範回答は、薛義がすでに自分が「民族英雄」であることを意識している、ともみえます。一方でこの物言いは2005年春の反日騒動を終息させるために中国当局が再三使ったものでもあります。

 ――――

 読後感。ちょっと妥協している部分もあるけど、基本的には胡錦涛政権そのまんまではないかな、と思いました。真性・薛義の口から出た言葉なので呆れた物言いにはみえますけど、こと台湾問題に関する中国政府の姿勢が余すところなく表現されているように思います。

 日本や日本の法律を見くびった薛義のコメントが胡錦涛政権の現在の対日路線からすると場違いな観があるのは、たぶん胡錦涛が妥協を余儀なくされた部分だからでしょう。でも4月に温家宝・首相が来日したときの国会演説も随分と日本を舐めた内容でしたから、あながち場違いではないのかも知れません。

 ●【温家宝離日】まず塩をまく。それからちょっとだけ考える。(2007/04/14)

 薛義の言う、

 「相手に対して強く出るべきときは決して弱腰になるべきではない」

 というのは小泉政権時代の中国の対日強硬路線を思い出させますし(江沢民時代は「日本に対しては常に強く出るべし」)、現在も場面場面でそうした片鱗をみせることがあります。そもそも薛義のこの言葉は、胡錦涛が一時期よく使っていた、

「落伍就要挨打」(立ち後れたら喰い物にされる→今度はこっちがやる番だ)

 にも通じる部分があります。

 ――――

 ともあれ中国とはそういう国であります。中国人もそういう連中といえます。

「私もそうした人たちの中の、これ以上ないほど平凡な一人にすぎない」

 という薛義の述懐は意外と的を得ていて、中国国内の数々の驚くべき事例を引き合いに出せば、薛義は確かにやることも言うことも中国人のデフォなのかも知れないません。……ただ目立つ場所でやってしまっただけで。

 で、胡錦涛はこの記事を以て李登輝氏訪日に関するガス抜きを行い、最後にデザートとしてはまたとない米下院外交委員会イワノフ決議で糞青どもの毒気を処理することに成功したようにみえます。これで「薛義ショック」はほぼ消えましたから、胡錦涛もなかなか運に恵まれていますね。

 この種のイベントでいえば、お次は7月7日の盧溝橋事件70周年ですね。薛義の凱旋公演&馮錦華(靖国神社の狛犬にペンキで落書き犯)とのデュオに期待。




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 いやー昨日(2007/06/28)の中国国内メディアは「従軍イワノフ」問題で持ち切りでした。例の米下院外交委員会が対日非難決議案を可決したというアレです。

 今回の問題について日本政府が終始曖昧な姿勢だったことは禍根を残すでしょう。二度と繰り返してはならない過ちだと思います。……いやもちろん慰安婦問題への日本政府の対応のことですよ。主張するところはちゃんと声高に主張しないと。虚構を史実めかせてしまうことは、国際社会における日本のイメージにも関わりますから、断じてなりません。

 中国国内メディアによるイワノフ連発の鬼の首をとったような騒ぎっぷりからして、反日信者で自称愛国者の糞青どもはさぞや溜飲を下げていることでしょう。これを政争に発展させる動きがあれば別ですけど、胡錦涛はいいガス抜きができて、とりあえずホッとしていることと思います。

 セットメニューというかコース料理、これを苦心惨憺して調理して出したあとに、偶然ながら最高のデザートがついた。……李登輝・台湾前総統の訪日と靖国神社参拝、それに成田空港での糞青による李登輝氏襲撃事件を軸にして眺めると、そんなところではないかという気になります。

 ――――

 以下は、李登輝氏襲撃犯である薛義が単なるDQN系糞青であり、中国政府の工作員として犯行に及んだものでないことを前提に話を進めます。

 李登輝氏の訪日期間中における胡錦涛政権の姿勢は、前回(2004年末)とは異なり、終始抑制されたものでした。元々はそういう献立が設定されていたのでしょう。表面的ながらも日中友好ムードが持続していますし、変なリアクションを示すことで、秋の党大会を前に党上層部の足並みが乱れることを避けようという狙いもあったと思います。

 靖国神社参拝に関しても中国国内メディアに報道を許したものの、外交部報道官定例会見では靖国参拝に関する質問が飛んでも巧みにスルーして「靖国神社」という固有名詞すら出ずじまい。A日M日K同あたりは不完全燃焼という気分だったことでしょうが、胡錦涛政権にしてみれば「最悪こういうこともある」と、織り込み済みだったのかも知れません。

 中国国内メディアの報道も「反日」ではなく、あくまでも「台湾問題」という扱いです。

「台湾独立派の頭目があの軍国主義の伏魔殿の如き靖国神社に参拝までした。やはり憎むべき悪党だ」

 といったニュアンスになるかと思います。

 ――――

 ところが6月9日、帰国すべく成田空港に入った李登輝氏に対し糞青・薛義がペットボトルを投げて逮捕されるという事件が突発してしまいました。これも台湾問題で、「台湾独立派の頭目」に天誅を加えんといったものでしょう。

 だから、つまり「反日」ではなく「台湾問題」だから、中国国内メディアの速報にも待ったがかかりませんでした。糞青は快哉を叫び、ネット上で薛義は「民族英雄」扱い。

 ●基地外と基地外を賞賛する民度、これぞまさに中国。(2007/06/10)

 ただし、

「薛義の釈放要求署名活動をやろう」

 といった動きが出てくるとこれは日中関係の範疇となりますから問題です。2005年春の反日騒動のように、「反日」を掲げてアンチ胡錦涛諸派が政局に仕立てようとする可能性も出てきます。台湾問題としても訪日&靖国参拝で大憤慨した軍内部の非主流派,特に、

「米国が台湾問題に手を出したら核戦争やっちゃうよ」
「真の富国強兵を実現するにはクーデターも選択肢のひとつ」

 といった電波系対外強硬派が動き出さないとも限りません。「手術中に突然停電」とか、「あっしまった動脈切っちゃった先生血圧低下してます心電図ピー」というほどではないにせよ、胡錦涛政権にとっては早急な対応を迫られる事態ということになります。

 要するに「あっさり風味」で通す筈だった献立を大幅に変更しなければならなくなりました。油コテコテでなくても濃厚な味わいの料理へと改めることになったのです。

 ――――

 この李登輝氏襲撃事件(6月9日)から一週間ないし10日程度の間に中国指導部及び軍内部で何らかの綱引きが行われた可能性があります。傍証は、

 ●国営通信社・新華社系の国際時事紙『国際先駆導報』が薛義に関する記事を「薛義よくやった」的な色彩で掲載(6月15日)。
 ●糞青15名が日本大使館に「なんちゃってデモ」を仕掛けた(6月18日)。
 ●人民解放軍機関紙『解放軍報』が突然「軍の国軍化に断固反対」という論評記事を発表した(6月18日)。
 ●薛義の扱いについて外交部報道官が定例会見で「日本政府の善処を望む」と低いトーンながらも余計なお節介を焼いた(6月19日)。

 ……などです。

 ●お、ひょっとして非主流派の反胡錦涛ビーム?(2007/06/16)

 特に注目すべきは『解放軍報』の論評記事で、「軍の国軍化」とは文字通りの国軍化へのアクションではなく、「国軍化=党中央による指導の否定」ともいえるため、「党中央の指導に従わない」場合にも使える表現だからです。何らかの独断専行が一部で起こりかけた可能性を示唆しています。

 ●糞青のデモより軍内部。何かあったのでは?(2007/06/19)

 ――――

 とはいえこの綱引き、基本的に胡錦涛サイドがある程度妥協しつつも相手を封じ込め、マスコミ掌握に成功したといっていいでしょう。

 折から訪中していた日本の青年代表団についてのニュースを胡錦涛の御用新聞たる『中国青年報』が特集し(6月15日)、さらにその流れがすぐ新華社にも広がって、訪中団の行く先々での一挙手一投足をちまちまと報じるようになったからです。

 「反日」の芽を摘み、政治勢力・民間組織・軍内部の一派といった向きの蠢動を押さえ込んだということになります。

 そして、『国際先駆導報』が続報ともいえる記事を報じることになるのです。

 ●独占インタビュー・李登輝訪日に抗議した中国人エンジニア薛義(新華網 2007/06/25/10:43)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-06/25/content_6287232.htm

 ……というものですが、厳密には続報ではありません。「前回の報道」である、

 ●馮錦華から薛義まで…愛国激情の弁(新華網 2007/06/15/09:31)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-06/15/content_6245460.htm

 は薛義万歳色の強いルポでしたが、今回は、

「李登輝訪日に抗議した中国人エンジニア薛義」

 と、淡々としたタイトルになっています。コース料理とすればメインディッシュといったところですが、「愛国」の2文字もタイトルから消えて、扇情色を薄めたものとなっています。しかも今回は独占インタビュー。

 ……なんですけど、これをインタビュー記事として扱ってはいけません。続報でもありません。前回は恐らく『国際先駆導報』が比較的自由に筆を振るえたのでしょうけど、今回は胡錦涛政権が設けた制限の中で書かれ、胡錦涛政権による配慮が隅々にまで及んだ内容というべきです。

 ――――

 いわば、インタビューではなく胡錦涛政権の公式見解であり態度表明。「独占」というのも、「重大ニュースは新華社の配信記事をそのまま使うこと」という不文律そのままに、新華社系である同紙のみに許されたものでしょう。もちろんこれを新華社が転載して記事を配信しています。

 これと同じようなものです。

 ●中共お手製の首脳会談報道(2004/11/23)

 当然ながら、今回の記事で語っていることが薛義の肉声そのまんまと考えてはいけません。削るところは削り、修正すべき表現は手直しして、胡錦涛政権が「これならよかろう」という内容まで味を薄めているものと思われます。。

 ●中国国内で反日気運が高まること。
 ●日中関係に悪影響を及ぼす(日本に借りをつくる)こと。
 ●軍部を含めた党上層部内の足並みが乱れ、胡錦涛の統率力が低下すること。

 ……という3つの事態を回避するという意図が徹底しているといっていいでしょう。

 ただし、上述したように李登輝氏襲撃事件を契機に内部で何やら動きがあった気配がありました。その綱引きに勝利してマスコミを掌握したとはいえ、胡錦涛の指導力はいまなお万全という訳ではありません。

 要するにある程度の妥協を迫られた挙げ句「なんちゃってデモ」が実現したように、今回の記事にも胡錦涛サイドが譲った部分があり、はからずも胡錦涛路線の浸透度をはかる目安ともなっているということです。


「下」に続く)




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 もう現地では旧聞かも知れませんが、これから出張や旅行で立ち寄る方もいるでしょうから、一応警戒警報を発令しておきます。

 中国で物価上昇が目立ってきたことは当ブログにて再三ふれていますね。その主因が食品価格の高騰であり、食品価格の中でも特に卵と豚肉の急騰が著しいことも。

 こうなるとそれに便乗して悪さをする連中がわらわらと湧いてきます。……で、豚肉については、闇ルートで処理された病死した豚の肉が深セン市・東莞市の市場や屋台に出回り始めており、当局が調査に乗り出しました。

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 以下は香港紙『蘋果日報』(2007/06/27)が報じたところによるものですが、東莞市と深セン市ではさきごろ病死豚肉が大量に発見され、このうち東莞市の7鎮では8000kgを超える病豚肉を押収。ひどい悪臭を放ち、ハエが群れのようにたかっていたそうです。そうした問題の豚肉が市場や屋台などに出回っているとのこと。

 病豚肉については広州で今月初め、1日平均約500頭分が広州市の市場に出回ったことが明らかにされています。その舞台が深セン・東莞に移ったということです。

 広州の地元紙『広州日報』によると、東莞市常平鎮で6月24日、悪臭を放つ340kgの豚肉を当局が押収。色合いからみて明らかに病豚肉で、もちろん検疫などは受けていない闇商品。付近の工場の社員食堂に出荷されるところだったそうです。

 やはり広東省の『信息時報』によると、東莞市当局は謝崗鎮曹楽村の工業地区でも数十袋に詰まった豚肉を押収。これも検査の結果、病豚肉と判明しました。このほか塘廈鎮の市場でも違法経営の肉屋21店を発見し、その際には10万元相当の病豚肉を押収。平均すると1店当たり200kg以上もの病豚肉を販売していたことになります。

 東莞市では少し前にも清渓鎮で2300kgの問題豚肉が発見されたばかり。豚肉の価格上昇に加え、水害などによる供給量の減少がこうした病豚肉の跋扈を招いている、と市当局筋はみています。

 ――――

 深セン市の状況も深刻なようです。「深セン新聞網」は宝安区宝石公路そばのライチの林に囲まれた空き地に、7~8カ所の急造された簡素な養豚場が隠れており、これが不法経営のものだったと報道。

 記者が業者を装って内部に立ち入ると、豚の入った柵の中には病死したとおぼしき豚もいたそうです。経営者の妻は「ここで商売を始めて2年になる。豚肉は深セン市内に出している。検疫なんて全然受けたことがない」とのこと。

 東莞で500名が働く工場を経営している香港人は『蘋果日報』の取材に対し、

「外食するときは名の通った店で食事をするように気をつけないと」

 と語っています。現在進行形の問題のようです。

 香港の親中紙『大公報』(2007/06/27)もこの問題を報じています。これは東莞市の話になりますが、豚肉の供給量が少ないため、現在市内の数多くの小売店や屋台は闇ルートの流通に依存しているそうです。

 検疫を通らないため闇ルートは正に「病み」ルート。病頓肉が混入している可能性が高く、それらが市場や工場の食堂、またミンチなどに加工されて肉団子などを売る屋台へと供給されています。

 http://www.takungpao.com/news/07/06/27/ZM-757028.htm

 ――――

 豚肉の高騰は秋まで続く見通しですから、病豚肉の流入も当局の網をかいくぐって当分止むことはないでしょう。「五香粉」さんをはじめ現地在住の皆さん、また出張や旅行で深セン市・東莞市を訪れる方々はくれぐれも御注意下さい(そのうち香港にも飛び火しそうな悪寒)。




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 月曜ですから気楽にいきましょう。今回はまあ邪推というか下衆の勘繰りのようなものですから、気楽に読み流して頂ければ幸いです(それにしては長文ですけど)。

 中国・山西省のレンガ工場で誘拐・拉致された子供が強制労働に従事させられていたという事件、中国国内に一大センセーショナルを巻き起こし、いまなお続報が飛び交う状況。日本でも報道されているので御存知の方も多いと思います。「下衆の勘繰り」とは、この事件をちょっと斜に構えて眺めてみようという訳です。

 まずその事件の概要について、日本の報道から。詳細は下記各記事のURLに飛んで全文を参照して下さい。



 ●中国:レンガ工場、子供1000人誘拐して強制労働 経営者側120人拘束(毎日新聞東京朝刊 2007/06/16)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20070616ddm007030105000c.html

 【上海・大谷麻由美】中国山西省臨汾市の複数のレンガ工場で、誘拐された子供たち1000人以上が強制労働をさせられた上、虐待を受けていると、中国各紙が15日一斉に報じた。

 子供たちは国内各地で誘拐され、レンガ工場に500元(約8000円)で売られていた。両足をやけどしたり、手の指を鉄製の器具で縛られた子供たちもいた。粗末な身なりで荷車を引き、夜は脱走できないように監禁されていた。

 事件は子供が行方不明になった河南省の親400人が、レンガ工場から子供の救出を求める連名の声明をインターネットで発表し、同省の地元テレビ局が調査報道を行って明らかになった。

 山西省では4年前にも同様の事件が発覚した。背景には、地元政府、公安当局、企業の癒着が指摘されている。

 中国政府も事態を深刻に受け止め、胡錦濤国家主席の指示で15日には、警官約5000人が捜索に出動。これまでに、知的障害者を含む成年、未成年の労働者計約380人を保護し、工場経営側の約120人を拘束した。

 ――――

 ●拉致された子、強制労働 中国当局600人保護(asahi.com 2007/06/18/17:29)
 http://www.asahi.com/international/update/0618/TKY200706180186.html

 中国各地で拉致された子供たちがれんが工場などで過酷な労働を強いられていた実態が判明し、山西、河南両省の公安当局は省内にあるれんが工場など1万カ所以上の一斉捜索を開始した。18日までに子供や知的障害者を含む約600人を保護、工場経営者や拉致実行者ら約170人を拘束した。同様に拉致された被害者は1000人を超えるとみられており、公安当局はさらに捜索を進めている。

 国営新華社通信などによると、拉致グループは、鄭州市など大都市のターミナル駅周辺で未成年や職を探す労働者らに「仕事がある」などと誘い、拉致していた。被害者は400元(約6000円)~500元で工場に売り渡されていた。

 被害者はわずかな食事を与えられただけで、厳重な監視下で早朝から深夜まで15時間以上も無償で働かされていた。12歳の少年や70歳の高齢者も含まれていた。全身にやけどを負っている被害者も多い。
(後略)

 ――――

 ●中国:「虐待工場」経営者父は党村幹部 警官に口止め料払う(毎日新聞東京朝刊 2007/06/21)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20070621ddm007030058000c.html

 (前略)
人権侵害と汚職が重なる事件への国民の批判はインターネット上で大きくなっており、党指導部も危機感を強め、胡主席、温家宝首相が徹底解決を指示した。

 新華社通信は18日、今年に入って同様の事件が広東省恵州市、黒竜江省ハルビン市、同省伊春市でも発覚したが、地元公安が見逃していたと指摘。未解決の事件が多数あることをにおわせた。

 山西省の事件ではこれまでに、労働者1人の死亡が確認され、未成年者を含む約600人が救出された。労働者の一部には、地元政府から給料と賠償金計約2400元(約3万9000円)が支払われた。工場経営者の父親である党村支部書記に対しては、免職と党籍はく奪の処分が下された。経営者側は約120人が拘束され、約20人が現在も逃走中だ。

 事件は、河南省の親400人が子供の救出を求める声明をネット上で発表し、同省の地元テレビ局による調査報道で明らかになる完全な「民主導」だった。




 えーと、この事件報道に接しての、私の感想。

 ●何だいよくある話じゃねーか。
 ●ネット上で大反響とか言われてもねえ。
 ●完全な「民主導」?どーだか。

 ――――

 まずは「よくある話」ですが、この種の事件は上記引用記事がふれているように本当に全国各地で発生しています。実は山西省でも以前からたびたび類似例が起きており、今年5月にも出稼ぎ農民が騙されてレンガ工場で強制労働させられていた、という事件が報じられています。

 ●「大洋網」(2007/05/15/17:33)
 http://china.dayoo.com/gb/content/2007-05/15/content_2827663.htm

 ●「光明観察」(2007/06/07/12:45)
 http://guancha.gmw.cn/show.aspx?id=4663

 今回は子供が被害者ということがネット世論や民衆の同情を買った訳で、要するにマスコミ的には「画になるニュース」てなところです。

 で、ネット上での反響がものすごく大きかった、というのは事実ですし、いまもそれは続いています。ただし中国のネット人口は1億数千万人でちょうど日本の総人口と同じくらい。中国は13億人の人口大国ですからネットは全体のわずか1割のみが利用できる特別な媒体ということになります。

 要するに中国というのは一面に「農村」という黒々とした闇が広がっており、そのあちらこちらで豆電球のようにポツンポツンと光っているのが「都市」です。この都市とその周辺の近郊型農村が主としてネットの恩恵を受けられる地域。

 私たちが映像などで目にする「中国」もこの「都市&近郊型農村」が中心です。「ネット上で大反響」というのは事実ながら、そのネットそのものが非常に限定された媒体であることを覚えておいて損はないと思います。

 黒々と広がる闇の「農村」でこの事件について感想を求めたら、違ったニュアンスの反応が得られるかも知れません。

 ――――

 「完全な『民主導』」というのは、今回の事件は被害者である子供の父親たちがネット上で救済を訴える声明をある掲示板で発表し、このスレッドが立ってからわずか6日でヒット数が58万、ついたレスが3000余りに達したことによります。

 それを地元山西省のテレビ局が報道していよいよ反響が大きくなってから役人が動いた、ということで「民主導」と言いたいのでしょうけど、少なくともテレビ局は「党・政府の代弁者たること」という中国独特のマスコミの定義づけに照らせば「民」ではありません。

「中国各紙が15日一斉に報じた」

 というのも、「一斉に」ということから党中央からゴーサインすなわち報道解禁が出た、との背景があるのかも知れません。

 ちなみにネット上で検索したところによると、「子供の強制労働」が報じられたのは6月12日~13日からで、「15日」というのは誤りではないかと思います。

 ――――

 この6月12~13日から始まる中国国内メディアの大津波的報道でトクをしたと思われる人たちがいます。北京五輪関連グッズのライセンス生産を行っている企業4社です。

 4社はその記念グッズの製造において12歳を含む少年工多数を、最低基準の半額という激安賃金で苛酷な労働に従事させていました。……と、国際組織「The Playfair Alliance」(国際労組連盟?和名不詳)が告発・指弾しました。

 中国側にとっては痛い告発だったようで、北京五輪組織委員会が即時対処の姿勢を示しました。そのことが6月11日の香港紙『明報』電子版によって報じられています。

 ●『明報』電子版(2007/06/11/214:08)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20070611/ca11408w.htm

 ●『明報』電子版(2007/06/11/18:30)
 http://hk.news.yahoo.com/070611/12/298mz.html

 翌12日の『明報』がこれを詳報。告発した団体名が「国際労働組合総連合」(ITUC)に改まっていますが、このITUCのレポートによって4企業の実名が示され、「仕事は休みなしで毎日15時間、給与は基準の半額」という働いていた少女の証言もあります。北京五輪組織委はこれに対し、事実なら関連契約を打ち切るとの意向を表明。この反応の速さと内容の厳しさに、北京五輪組織委側の「ヤバい」感が伝わってきます。

 ●『明報』(2007/06/12)
 http://hk.news.yahoo.com/070611/12/2991r.html

 ●『明報』電子版(2007/06/12/20:44)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20070612/ca22044t.htm

 そして、前述の「山西省誘拐した子供をレンガ工場で強制労働」事件はこの6月12日から大々的な報道がスタートします。……いや、単なる偶然かも知れませんけど、下衆の勘繰りが今回の主題ですから(笑)。

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 中国国内のメディアが山西省の事件を報道してからの「官」の対応は比較的迅速だったといっていいでしょう。

 山西省当局が現場と地元当局に対する捜査に着手し、最高指導者である胡錦涛・国家主席と温家宝・首相が事件の全容解明を指示。中央政府からも特別調査チームが現地入りして関係者が続々と逮捕され、6月22日には中央政府と山西省政府による中間報告ともいえる共同記者会見が開かれています。

 この記者会見で山西省の于幼軍・省長が事件の被害者に謝罪までしています。それから山西省人民に向けて監督不行届を自己批判。さっさと謝ったもんですねえ。2005年春の反日騒動では中国政府が日本側に謝罪ひとつしなかったことを思い出します。

 下記関連記事のうち3本目は于幼軍の謝罪・自己批判を単体で扱った記事です。単体で扱うに足るインパクトを持った行為、ということになるでしょう。

 ●「新華網」(2007/06/22/20:08)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/22/content_6278428.htm

 ●「新華網」(2007/06/22/20:45)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/22/content_6279062.htm

 ●「新華網」(2007/06/22/19:48)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/22/content_6278847.htm

 ――――

 マスコミの一斉報道から始まってこの謝罪に至るまでの手際よさというか、段取りの良さがちょっと出来すぎているようにみえなくもありません。筋書きがあるかのような鮮やかさです。翌6月23日には事件の起きた臨汾市当局が、年内の幹部出国を禁止する措置まで打ち出しています。

 ●「新華網」(2007/06/23/20:08)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-06-23/200813296013.shtml

 これをひとつのモデルケースにしようという意図と、省・自治区・直轄市レベルが「小諸侯」たる末端当局のやりたい放題を見過ごしているようだと痛い目に遭うぞ、というメッセージ。……中央がそれを狙っているように思えてなりません。

 要するに一種の「見せしめ」ですが、晒しものというニュアンスとはちょっと違うように思います。于幼軍の謝罪報道にもその潔さを讃えるかのような気配を感じます。

 なぜかといえば、それは于幼軍が胡錦涛の出身母体である共青団(共産主義青年団)人脈に連なる人物だからからも知れません。胡錦涛直系の「団派」であり、将来を嘱望されているホープでもあります。

 もし台本があったとすれば、「団派」だからこそ上演できたともいえますし、「団派」だから胡錦涛の内意を受けて素早く謝罪して、みそぎは済んだから于幼軍の更迭はなし扱いで落着、という線で事態を収拾しようというのが胡錦涛の意図ではないかと。この事件でむしろ于幼軍の株を上げようという狙いすらあったかも知れません。

 于幼軍を「ケガの功名」扱いで収拾を急ぐのは、アンチ胡錦涛グループの「団派」潰しに発展させないためです。5年に1度の党大会を秋に控えた時期です。そういう暗闘はいくらでもあるでしょう。

 ということは、逆にアンチ胡錦涛グループが「団派」潰しを意図して騒ぎ立てたとする見方も成立しますが、それにしては事件後の対応がサクサクと進みすぎています。

 ……今回は「下衆の勘繰り」ですからこういうキナ臭い話へと落とすことになりますが、だとすれば今回の事件、どのあたりからが胡錦涛サイドのシナリオなのかも興味深いところです。被害者の父親たちのネットでのスレ立てから仕込まれていたとすれば、これはもう見事としかいうほかありません。

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 という訳で、今回は斜に構えてみましたけど、その全てが一種の冗談という訳ではありません。斜に構えてみたくなるようなニオイを感じたから「下衆の勘繰り」をしてみたまでです。私は天の邪鬼ですから日本メディアの報道のように、中国側の発表を全て鵜呑みにする気にはなれないのです。

 そういう、そこはかとない「いかがわしさ」を今回の事件にはちょっとだけ感じています。それを膨らませて書いてみた、ということにしておいて下さい。




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 土曜日なので短信を何本か御紹介します。まずはこのニュース。

 ●「六四」広告掲載依頼主、逮捕される(東方日報 2007/06/23)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_c07cnt.html

 以前、当ブログでも扱った事件ですが、おさらいをしておきましょう。



 ●「天安門犠牲者の母に敬意」中国紙に広告、当局が調査(読売新聞 2007/06/07/00:54)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070606id26.htm

 【香港=吉田健一】天安門事件から18年にあたる今月4日、中国四川省の夕刊紙・成都晩報の紙面に、事件の犠牲者の母親に敬意を表する内容の一文が掲載され、公安当局が同紙幹部ら関係者2人を拘束、調査に乗り出した。6日付の香港紙・蘋果日報が伝えた。

 掲載されたのは「六四(天安門事件)犠牲者の不屈の母親に敬意を表する」との中国語で13文字の文章。広告ページに1行広告として載った。天安門事件について、厳しい報道管制を敷く中国の新聞上で、こうした文章が公になるのは異例。香港メディアは、成都晩報が停刊処分となる可能性もあると指摘している。

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 ●NEWS25時:中国 天安門事件広告掲載で処分(毎日新聞東京朝刊 2007/06/09)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20070609ddm007030086000c.html

 中国四川省の夕刊紙・成都晩報で今月4日、民主化運動が武力鎮圧された89年の天安門事件の遺族に敬意を表する一行広告が掲載された。これを理由に、同紙の編集長と広告局責任者が更迭されたと、香港英字紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が8日、報じた。【上海支局】




 さて問題の「六四広告」の依頼主が逮捕されたとの新展開。捕まったのは「馮」さんという姓と「さきごろ成都市の警察に逮捕された」という情報のみで続報がほしいところです。ちなみにこの『東方日報』の記事は暴動などの際、現地レポートや現場写真などのタレ込みサイトとして重宝している「博訊網」などをソースとしています。

 この記事によると、事件後はメディアに対する成都市当局の政治的チェックが厳重になっているとのこと。目を引くのは馮さんの罪状です。

 「博訊網」や海外の反体制サイト「民主論壇」そして法輪功系ニュースサイト「大紀元」にデモのレポートを寄稿し転載されたりした中国国内在住のライターが逮捕されて「国家政権転覆煽動罪」とか何とかで懲役9年といった前例がいくつかありますけど、今回の記事が伝える馮さんの行為に対する当局の位置づけは、

「国内外の敵対勢力と互いに結びつき、計画的に行われたもの」

 と、ひどく毒々しいものになっています。チェックの甘さを衝かれた成都市当局が「面子を潰された」として、いきり立っている側面もあるでしょう。実際にどういう罪状になるかはわかりませんけど、「国内外の敵対勢力と結びつき」という一節からして「国家政権転覆煽動罪」より重い判決になるかも知れません。

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 ●国家信息中心:消費者物価指数の上昇率、今年は3%突破か(新華網 2007/06/20/07:15)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-06/20/content_6265128.htm

 おー不吉な予測が出て参りました(笑)。分析によると上昇率は通年で3.3%になる見通しで、今年3月の全人代(全国人民代表大会=立法機関)で温家宝・首相の「政府活動報告」は、

 ●GDP成長率は8%前後
 ●消費者物価指数(CPI)の上昇率は3%以内

 との目標を掲げていましたが、いずれも裏切られることになりそうです。まあGDP成長率が目標値を大きく上回るのは毎年のことでして、今年も第一四半期11.1%成長と飛ばしに飛ばしています(笑)。

 さて物価の件、これも以前当ブログで扱っていますが、トータルでは3%でも食品価格の上昇が突出しているのが問題です。具体的には穀物及び家禽類。要するに主食と肉と卵が高騰している訳で、文字通り庶民の台所を直撃する状況となっています。

 中でも値上がり著しい豚肉と卵は「秋口には落ち着く」と国家統計局は説明していたのですが、今回の予測によると高騰局面は第四四半期に入るあたりまで持続し、年末にようやく価格が安定するとの厳しい見方を示しています。秋口に落ち着くどころか、値上がりのピークは9~10月あたりになる見込みです。

 5月の上昇幅を季節要因やら何やらを勘案して通年計算すると4.4%ペース。しかも食品価格が引っ張る物価上昇です。その引っ張りぶりを数字でみてみましょう。以下は今年3月以降の食品価格類上昇率をCPI全体と非食品価格類とそれぞれ比較したものです。

 ●3月:7.7%(CPI全体値より4.4ポイント高、非食品価格類より6.6ポイント高)
 ●4月:7.1%(CPI全体値より4.1ポイント高、非食品価格類より6.1ポイント高)
 ●5月:8.3%(CPI全体値より4.9ポイント高、非食品価格類より7.3ポイント高)

 毎日三度の食事のコストが高騰しているのですから庶民はたまったものではないでしょう。しかもそれが落ち着くのは年末だというのですから不穏です。

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 それを別の調査が裏付けています。中国人民銀行による第二四半期の消費者アンケートです。

 ●中央銀行の第二四半期生活調査:物価に対する市民の満足度が低下(新華網 2007/06/20/16:36)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-06/20/content_6268510.htm

 この調査によると、都市部住民は物価上昇、特に低・中所得層は肉や卵の急騰にピリピリしており、第三四半期もこの状況が続くだろうという悲観的な回答が半数を占めました。

 正確には「都市部住民当四半期物価満足度指数」という指標になります。今年第一四半期に2ポイント下落したのに続き、今回の第二四半期はさらに5.2ポイント低下するという下降線。調査開始以来最悪の数字である-21.1%という新記録をたたき出してしまいました。

 やや具体的にみますと、「物価に満足している」は5四半期連続のマイナスで、2006年第一四半期の13.0%が今回は8.4%。これに対し「物価高すぎでやってらんない」は2006年第一四半期の22.1%から今回は29.5%へと上昇しています。それをならしてみると物価に対する庶民の満足度が過去最低、という訳です。

 ●中央銀行:月収2000元以下の家庭、4割が「物価高すぎ」(新華網 2007/06/21/07:02)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/21/content_6270191.htm

 同じ調査ながらこの部分、いわゆる低・中所得層の物価に対する厳しい見方が本体とは別に独立した記事になっているというのは、それだけインパクトがあるということでしょう。記事標題通り、月収2000元以下の世帯は「物価高すぎでやってらんない」が約40%に達し、富裕層との開きは20ポイントにも達しています。たぶんこうした状況が「狂乱株踊り」の一因になっているのでしょう。

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 最後にこのニュース。

 ●李登輝にペットボトル投げた中国国民薛義、20日に釈放(新華網 2007/06/22/20:48)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2007-06/22/content_6279069.htm

 薛義は略式起訴されて罰金20万円の判決。これを払ったのが薛義なのか中国大使館なのかは興味深いところです。

 とは、この記事によると大使館員は薛義が逮捕されるや成田警察署に面会に行き、また日本側に何度も善処を要請していたそうです。「善処を望む」とは外交部定例記者会見でも報道官が口にしていました。

 薛義は確か暴行容疑。日本において中国人が暴行容疑で逮捕されたケースは数多くあるかと思いますが、大使館員がどうとか日本政府に善処を要請するといったことが毎回行われているのでしょうか?

 それから気になる薛義のその後。政治的事件であり中国政府の対応からしても国外追放にして然るべきところでしょうけど、そのあたりはどうなっているのか。

 だいたい中国政府がこの事件に介入していたなんて報道は、日本ではほとんど行われていないでしょう。もう一切を明らかにした上で強制送還にした方が安倍政権の支持率も少しは上がると思うんですけどねえ。

 ●基地外と基地外を賞賛する民度、これぞまさに中国。(2007/06/10)
 ●お、ひょっとして非主流派の反胡錦涛ビーム?(2007/06/16)

 ともあれ私が『警察白書』で調べた限りでは、平成元年(1989年)から昨年(2006年)までの18年間、「在日外国人国籍別犯罪件数」では「中国人」(中国本土)がずーっと第1位の座を譲らず目下18連覇中。

「中国人を見たら110番」

 というスローガンを心に刻み付けておきましょう。毎度のことですが、これは警戒心を高めよということで、差別ではありません。「入れ墨の方入店お断り」が通用するなら「中国人は入店お断り」が通って当然な訳で。


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 このまま終わるのは胸くそ悪いので楊枝削りを少々。どちらも興味のある人にとっては「へーそうなんだ知らなかった」的内容が盛り沢山の良書です。文庫本なのもいいですね。

新選組二千二百四十五日

新潮社

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神風特攻の記録―戦史の空白を埋める体当たり攻撃の真実

光人社

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 それから個人的にはこれも良かったです。故・司馬遼太郎氏の知られざる短編集。読み出したらやはり魅き込まれて、気がついたら読了しておりました。

侍はこわい

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 今週は仕事のシフト変更などがありなかなか更新できず申し訳ありません。実は私の中で革命的な出来事が進行しつつあります。火曜日(6月19日)から、完全夜型生活から「朝起きて夜寝る」という人間的な生活リズムへの転換を断行。要するに改邪帰正といいますか、御家人「真人間化」へのリハビリがスタートしました。

 朝起きると夜型では出来なかったことが色々できるようになって楽しいです。ただ香港などの仕事仲間とのすり合わせで手間を喰いました。あいつら夜しか仕事しねーし(お前もだろ月曜までは >> 自分)。突発的事態ならともかく、普段は双方がわずかに重なっている「起きている時間」を連絡タイムにしようとあれこれあれこれ。

 私の場合、日本側は問題がありません。11時ごろに出社して新聞読みながらお茶して、あー12時だメシ食いに行こう、てなノリで午後から「それじゃ働くか」というリズムで動いているところばかりですから。

 考えてみると、どうも李登輝さんの訪日で取材めいたことをしたのが良い刺激となったようで、背中を押してもらったといったところ。李登輝さん本当にありがとうございました。すぐそばに立ったときに感じたホクホク感、いまでもありありと覚えています。m(__)m

 浮世離れして提灯記事に囲まれて舞い上がっている糞クリエイターどもへの「なんちゃって取材」とは正に天と地の差。取材者として吸収できるものが段違いです。というか比較するのも李登輝さんに失礼。

 写真撮らせろって言ったら手鏡出してグラサンの位置と髪型直してるんじゃねーよ地図の某。テメーの知名度なんか香港じゃ糞以下。不肖御家人と違って表紙にテメーの名前出したって雑誌の売れ行きが伸びたりしないんだから取材してもらえることに涙流して感謝しろボケ。……いや、私としたことがつい取り乱してしまいまして(笑)。

 ――――

 まあそんな訳で今週はブログもコソーリ活動にもなかなか手が付けられないまま金曜日になってしまいました。で、今回は土日向けのネタなんですけど鮮度が肝心ということで。そう、正に鮮度が肝心。

 ということで、標題の通りです。

 ●重金属野菜
 ●貴州省の総人口の半分がフッ素中毒
 ●養殖の魚やウナギに発ガン性物質のマラカイトグリーン使用
 ●トマトや青菜の農薬漬け

 ……それに水質汚染や大気汚染や土壌汚染。七色の河とか太湖のアオコ?大発生で衛星写真でもグリーンに輝く湖が確認できた……など、もう何が起きても驚かないぞ状態の中国なんですけど、さすがに奥が深いです。今度は硫酸ライチでビックリさせられてしまいました。

 類型としては農薬漬けとかマラカイトグリーンと同じで、鮮度を保ったり出荷時期に合わせて完熟させたりする手段のひとつのようです。ただ今回の硫酸ライチは見た目だけ。

 現地紙では「美容液」と表現されていますが、その名の通り、ただ見栄えを良くするために使われているところがいよいよ悪質です。しかも硫酸!正確にいえばアルコール硫酸ということになりますけど、劇毒?だけに効果は生半可なものではありません。

 ――――

 事件が起きたのは吉林省の省都・長春市。恩師は今でも「新京」とつい口にしてから言い直しています(笑)。それはともかく、数日前の出来事です。地元の若い女性、Aさんが市場で皮の赤々とした見るからに新鮮そうなライチ1kgを購入。そうです、もうライチが美味しい季節なんですねえ。

 ライチは広東省や広西チワン族自治区、福建省、海南省など南方の果物ですけど、東北部である長春まで流通しているようです。で、このAさん、帰宅して晩御飯のあとデザートにと、ベッドに腰を下ろしてテレビを観ながら賞味しようとしました。ライチの皮を剥く前から何やらみずみずしい。

 というより海の家のビールのように水の中に浸けられていたものを取り出したばかりというか、表面に液体を噴きつけられたかのような湿り具合。Aさんが怪しいと思ったかどうかは知りませんが、袋から漏れたその「水」が彼女のスラックスにポトリと一滴落ちたかと思うやジョワッという焼けるような音とともにスラックスに小破孔。

 その「水」はさらにベッドにもポトリと垂れるなり、今度はマットレスがジョワッ。これも小さな穴があいたのです。

「お母さん見て見てこのライチ変!」

 と慌てて母親を呼んだAさん。母親は試しにこの「水」をぬいぐるみの小熊に一滴落としてみたところ効果てきめん、小熊の顔に米粒大の破孔がジョワッ(他の物で試してもいいだろうに……クマさん可哀想)。

 おおおお、と二人で驚くそばからアイヤーアイヤーと母親がお腹を手で押さえました。胃に鈍痛。母親は硫酸ライチをすでに何個か食べてしまっていたのです。

 ――――

 幸い大事には至りませんでしたが、怒りの収まらぬ母親はライチ売りのもとへ足を運び猛抗議。その勢いに恐れをなした店主が皮の表面が黄緑色のライチの袋を母親に手渡し、もうこの店でライチは買わないと憤激する母親に、

「大丈夫。このライチは絶対大丈夫だから」

 と一言。

「ちょっとそれ、どういうこと?」

 と母親が問い詰めたところ、店主はアルコール硫酸をライチの表面に噴きつけていたことを白状。Aさんの買った赤色も鮮やかなライチも実は黄緑色だったのですが、このアルコール硫酸のひと噴きで早変わり。まさに「美容液」なのです。その効果のほどを御覧あれ。

 ●比較写真。右側がアルコール硫酸によるお化粧前、左側がお化粧後。
 http://hotnews.tianjindaily.com.cn/images/2007-06/21/xin_0406042109110411756511.jpg

 まるで違うでしょう?実は南方で産出されるライチを東北部まで運んで販売するには時間がかかるため、鮮度が落ちて皮の色も変わってしまいます。上記画像だと右側が自然な状態です。それをアルコール硫酸でお化粧するとのこと。

 ――――

 この話を耳にした『東亜経貿新聞』の記者が長春の果物卸売市場を回ってみたところ、実に売られているライチの半分が「美容液」すなわちアルコール硫酸でお化粧したものと判明。市場関係筋によると、産地から長春までは6~10日を要するため、この方法が密かにしかし広範に行われているそうです。

 市場で売られているライチは「お化粧後」の方が値段が安いうえ見た目も新鮮そうなのですが、実際には味が落ちていて、食感が悪くて種も大きく、しかもアルコール硫酸モノ。ちなみに「お化粧前」が500gで3.5元、「お化粧後」の硫酸ライチは1.6元。安かろう悪かろうを地で行く話ですね。

 記者はさらにライチの産地として有名な広西チワン族自治区・欽州市の担当部門にも電話取材。

「こっちは無農薬でいいものを作ろうとあれこれ苦心しているのに、仲買がとんでもないことをしている。評判に傷がつけば輸出にも響く」

 と憤慨していたそうです。

 ――――

 硫酸ライチを数個食べてしまったAさんの母親は、どうして皮を剥くときに気がつかなかったのか、という点に疑問が残りますが(笑)、使用量次第では消化器系統を傷めたりするので要注意。東北部在住の方のみならず、華北一帯でも同じようなことが行われている可能性があります。御注意あれ。

 ●「新浪網」(2007/06/21/14:35)
 http://finance.sina.com.cn/consume/puguangtai/20070621/14353712574.shtml




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 李登輝氏襲撃事件の容疑者・薛義の無罪放免を日本政府に求める、という実にイタい示威活動が北京の日本大使館前で6月18日、糞青(自称愛国者の反日信者)どもによって行われました。……前回のコメント欄で「おむら」さんが速報して頂いた通り、この件は日本でも報道されていますね。



 ●2007/06/18-12:47 中国人の釈放求め抗議=大使館前で「反日」気勢-北京(時事通信 207/06/18/12:47)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007061800271

 【北京18日時事】来日中の台湾の李登輝前総統にペットボトルを投げ付けたとして中国籍の自称エンジニア、薛義容疑者が逮捕されたことに反発する中国の民間活動家15人が18日午前、北京の日本大使館前で抗議活動を行った。日本政府に即時釈放を要求するなど「反日」的な気勢を上げ、抗議書を大使館側に渡した。




 参加者15名(プププ)なんて笑っている場合ではありません。連中の姿をよく見て下さい。例外なく首輪をつけています。首輪からはロープが伸びていて……どこにつながっているかは未だ不明瞭です。

 要するにこいつらは犬。ただし野良犬ではなくて、背後に飼い主(政治勢力)がいるということです。さもなくば、中国のような一党独裁国家で政治活動めいたことなどが許される筈がありません。

 中国においてデモは届出制ではなく、許可制です。当局がOKを出さないとやることはできません。

 つまり今回のデモについては当局がゴーサインを出している訳で、ただ騒ぎが大きくならないよう、たぶん人数を絞らせたのではないかと思います。官製・少人数の脱力系デモ、当ブログでいうところの「なんちゃってデモ」です。

 ――――

 デモそのものには興味がありません。留意するとすれば、このデモが半ば公開される形で実施されたということです。

 中国国内メディアは一切報じていませんが、中国国内からアクセスできる海外の親中系メディア、例えば香港のフェニックスTVや『香港文匯報』『大公報』、それにシンガポールの『聯合早報』のウェブサイトで記事を目にすることができます。

 ●『大公報』電子版(2007/06/18)
 http://www.takungpao.com/news/07/06/18/ZM-752969.htm

 ●フェニックスTV(2007/06/18/14:15)
 http://news.phoenixtv.com/taiwan/3/200706/0618_353_137210.shtml

 ●『香港文匯報』(2007/06/19)
 http://paper.wenweipo.com/2007/06/19/CH0706190019.htm

 実に微妙な、というより形式に流れた報道管制だといえます。

 ――――

 一方で今回のデモの主体であった反日サイトの総本山である「中国民間保釣連合会」「中国愛国者同盟」の掲示板から中国国内の掲示板へとこのニュースが転載されました。

 そして、この2つの民間組織の名前が記事に出たのもニュースといえばニュース。復権というほどではないにせよ、久しぶりに存在感を示したといったところでしょう。この報に接したお調子者系糞青どもが上海、広州、瀋陽などで模倣デモに走ったり、釈放要求署名運動なんてものに発展したりすると面白いのですけど。

 ともあれ、糞青どもは大いに気を吐いたことでしょう。そうさせてガス抜きをするために、胡錦涛がやらせたのかどうか。今回のデモの音頭取りは馮錦華、あの靖国神社の狛犬にペンキで落書きして逮捕されたDQN系糞青です。胡錦涛がこういう人物を頭にデモをやらせるかどうかは甚だ疑問です。

 ネット上で拾える報道をみる限り、胡錦涛の対日路線は揺らいでいないといった印象を受けます。

 胡錦涛の御用新聞である『中国青年報』が訪中した「日中青年世代友好代表団」なるものを特集扱いした、というのは前回紹介した通りです。

 その翌日からはこの訪中団の動静に関する日中友好万歳調の記事が国営通信社・新華社でもポンポン飛び出し、これを人民解放軍の機関紙『解放軍報』までが丹念にひとつひとつ転載しています。要所は押さえているといった印象です。そういう中で「なんちゃってデモ」への形式的な報道管制が異質です。何かあったのでしょうか。

 ――――

 実は、何かあったのかも知れない、と思わせる新華社電が出ています。『解放軍報』からの転載で、時間的には「なんちゃってデモ」より早い時間に配信されています。

 ●「新華網」(2007/06/18/08:49)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-06/18/content_6255797.htm

 長文の論評記事ですが、言いたいことはただひとつ、

「人民解放軍は党中央の指導に絶対服従するものだ。『軍隊の国家化』の動きは断固殲滅しなければならない」

 というものです。「軍隊の国家化」というのは、実質的には中国共産党の私兵である人民解放軍を「国軍」化することで、「党による指導」「党の私兵」という色彩を薄めていく動きです。また、「党の私兵」から「国軍」へと変質させることで、社会主義との縁を遠くしていくことにもなります。だからそういう動きの芽は発見次第潰していかなければならない、とこの記事は強調しています。

 異様です。この時期にこんな記事が出ることが異様です。

 「軍隊の国家化」に反対、というのは私の知る限りでは数年前から言われていることで、とりたてて珍しい話ではありません。

 ただ普通は「建軍節」である8月1日の『解放軍報』社説、いわゆる「八一社説」で言及されるもので、今回のようにわざわざ長文の論評記事を仕立て上げて云々することは稀です。

 ――――

 そこで、何かあったのかも知れない、ということになります。具体的には、人民解放軍内部で何かが起きた、ただし軍主流派が握る『解放軍報』が日中友好記事を転載し続けていることから、何かが起きたとしてもそのアクションは表面化する前に潰された、ということになるでしょう。

 「なんちゃってデモ」との関係は不明です。ただ軍内部で何かがあったのだとすれば、現在の表面的な日中友好ムードを演出し続ける胡錦涛政権に不満で、台湾問題などに敏感に反応する非主流派の電波系対外強硬派による動きである可能性が強く、糞青との相性はピッタリです。

 ともあれ『解放軍報』発の長文記事に、軍内部ひいては党上層部内の足並みが一瞬乱れた気配を感じた次第です。ほんのちょっとだけ不穏。糞青の暴走が均衡を破ることになったりして(笑)。




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 李登輝氏襲撃事件の続報が気になるところです。とはいっても容疑者に実刑判決が下るかどうか、くらいしか私には興味がありません。前回掲載させて頂いた永山英樹氏の文章、あの予測がピタリと的中して中国国内のネット上では早くも容疑者を絶賛する声が続々。永山氏の例え通りに「民族英雄」という書き込みまで本当にありました。永山さんすごいです。

 ●「捜狐」(sohu.com)李登輝氏襲撃事件報道に付随している掲示板
 http://comment2.news.sohu.com/viewcomments.action?id=250483826&order=hot

 これで『人民日報』あたりに李登輝氏の靖国参拝や日本での行動を熱く非難する論評記事などが出てくれば、新華社あたりが追従しそうなので面白いのですが、どうでしょう。

 その余波が『解放軍報』に及んで『中国青年報』が火消しに回るような展開なら胡錦涛ピンチ!なのですが、そういうエネルギーは2年前ならともかく(実際に反日騒動がそうでした)、現在の「反胡錦涛諸派連合」からは感じられません。政局にはならないでしょうねえ。

 ●Mさんからのメールで考えたこと。(2007/06/11)



 ……ならないでしょうね。でもちょっとだけ面白い展開が。

 単なる一発屋かも知れませんし一種のガス抜きの可能性もありますけど、季節柄、胡錦涛政権が闇の中をすり足で足場を探りながら、立ち位置を定めようとしている感じがしないでもありません。

 一応、成田空港での李登輝氏襲撃事件(2007/06/09)をおさらいしておきます。



 ●李登輝氏にペットボトル投げる、成田空港で中国人を逮捕(読売新聞 2007/06/10/01:43)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070609it12.htm

 成田空港で李登輝・前台湾総統(84)にペットボトルを投げつけたとして、千葉県警成田空港署は9日、中国籍、千葉市美浜区高洲、自称エンジニア薛義(せつ・ぎ)容疑者(34)を暴行の現行犯で逮捕した。

 李前総統には当たらず、予定どおり出国した。

 調べによると、薛容疑者は同日午後3時30分ごろ、成田空港第2旅客ターミナルビルの出発ロビーで、保安検査場に向かっていた李前総統に向けて、ジュース入りペットボトル(280ミリ・リットル)2本を続けて投げた。同署員らが取り押さえた。




 ……で、前掲の通り中国国内のネット上では容疑者を「民族英雄」と讃え、この犯行を「義挙」とする声で大いに盛り上がりました。「これはよくない。狭隘な民族主義でしかない」という声もあったのですが、「民族英雄」「義挙」という絶賛の嵐の前に埋没です。

 まあでも李登輝氏の訪日に対する抑制された対応ぶりからして、当局は煽らないでしょ。……と思いつつ事件後の外交部報道官定例記者会見(6月12日・6月14日)に目を通したらやっぱり騒ぎませんでした。李登輝氏襲撃事件についての質問は出たのかも知れませんが、記者会見録には全く出ていません。

 ところが6月14日の記者会見で、

「今年の7月7日は盧溝橋事件70周年記念日だ。中国側は記念活動を行うのか?中国政府は日本政府を関連記念活動に招くことはあるのか?」

 という質問が記者から出されました。この念の入り方は日本人記者のように思うのですが、どうでしょう。……ということは措くとして、報道官、この日は秦剛でしたが、歴史問題と現在の日中関係についての模範的な回答を行ったあと、

「記念活動が行われるかどうかだが、私は行われるものと確信している」

 と、ピシリ。あれー秦剛ちゃん断言しちゃっていーの?てなところです。そりゃ記念活動はやるでしょうけど、問題はどのくらい「濃い」かです。

 胡錦涛政権の対日姿勢からしてそんなにディープなプログラムにはならないと思いますけど、その前段の回答の調子からして「行われると思う」になりそうなところ、「行われるものと確信している」と強く言い切ったのが意外でした。

 私としては秦剛が誰に向けて断言したのか興味津々な訳で。

 ●外交部報道官定例記者会見(新華網 2007/06/14/20:57)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-06/14/content_6243642.htm

 ――――

 するとその翌日である昨日(6月15日)になって面白い記事が出ました。国営通信社・新華社系の国際時事紙『国際先駆導報』です。『人民日報』系の同類紙である『環球時報』ほど反日電波ゆんゆんな新聞ではありませんけど、胡錦涛政権のスタンスに比すればちょっとラディカルです。……で、その記事ですけど、

 ●馮錦華から薛義まで…愛国激情の弁(新華網 2007/06/15/09:31)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-06/15/content_6245460.htm

 あれ?薛義?……って李登輝氏襲撃事件の容疑者じゃないですか。……あ!馮錦華は靖国神社の狛犬にペンキで落書きし逮捕された犯人(2001年8月14日)。それで「愛国激情の弁」ですか。タイトルからメラメラしているじゃないですか。

 この記事にはサブタイトルとして、

「馮錦華から薛義まで、6年の長きを越えて、中国の民間では愛国の方法に関する論争がやまない」

 とあります。論争とは馮錦華や薛義の行為を愛国精神の発露とする「義挙・賞賛」派と、狭隘な民族主義の表現に過ぎないとする「愚挙・批判」派の間における意見対立ということでしょうが、記事そのものは薛義の人物像を描きつつ、前者つまり「馮錦華万歳!薛義万歳!」に傾斜した内容にみえます。

 この記事はまず冒頭で李登輝氏襲撃事件を描写したあと、早くも「狛犬にペンキ」犯の馮錦華を登場させ、この事件について、

「(薛義だけでなく)もっと多くの人数で押しかければ良かったのに」

 という第一印象を持ったと語らせています。のっけから「薛義万歳!」に傾いている、というのは深読みのしすぎでしょうか(懐疑)。

 ――――

 薛義については保釈説も流れましたが、『国際先駆導報』が日本の中国大使館に確認したところ未だに釈放されていない、とのこと。12日午後には同大使館の参事官が薛義に面会に行ったそうです。

 ちなみに「面会」と私は訳しましたが原文は「探視」という単語で、病気で入院した人を「お見舞いする」といったケースで使われる言葉。「面会」と「お見舞い」ではニュアンスがまるで違います。この時点で記事が早くも「薛義万歳!」に傾いている、というのは深読みのしすぎでしょうか(反語)。

 この記事によると、薛義は訪日するまで遼寧省・瀋陽市のソフトウェア会社でシステムエンジニアをしていたそうですが、すでにこのころから糞青(自称愛国者の反日信者)めいた所業の萌芽がみられます。

 ……というより糞青として立派に開花しています。当時の同僚は薛義がそのころから反日色が強かったと証言しており、ネット上の掲示板でのID登録を日本風の名前で行った職場の同僚に対し、薛義はIDを改めるよう執拗に説きまくり、その同僚が辟易して渋々それに服すまで「説得活動」をやめなかったそうです。

 いや、それだけなら「萌芽」でいいのですが、薛義は当時の職場内のサイトで「9.18記念活動」を各自が行うよう呼びかけ、自分は9月18日の午後にスローガンを流しながら(たぶん録音したもの)自転車で瀋陽市内を走って回ったそうです(笑)。御存知でしょうが、9月18日というのは満州事変の発端となった「柳条湖事件」(1931年)の起きた日です。

 ●九・一八……実は有難迷惑な国恥日?(2006/09/20)

 薛義は自らが実施したその「活動」のことも職場内のサイトに書き込んでおり、この「地球に優しい街宣車」(周囲はたぶん迷惑)による活動をしながら自らの非力さと孤独さを痛感したとし、今後は同種の活動に他の者も参加するよう呼びかけています。

 これはもう一人前の糞青です。しかもネット上で叫んでいるだけではなく現実世界で行動を起こし、しかしながら段取りが悪くて企画が空振りに終わるあたりは正に典型的なDQN系糞青。

 この辺のくだりで、この記事が比較的率直なルポであり、糞青への燃料投下を企図したものでないことがわかります。だって燃料目的なら「訪日後の様々な差別が薛義の中華民族としての自尊心を著しく傷つけ、ついに行動へと飛躍させた」くらいの作文があってもよさそうなものですから。

 ――――

 ともあれ瀋陽時代の薛義はバーチャルな「日本」に対し、ネット上ばかりか現実世界でもアクションを起こすほど憎悪の念を抱いていたことがわかります。相手があくまでも「脳内妄想の日本」であるところは多くの糞青と同様。反日風味満点の「愛国主義教育」の結実をみる思いです。江沢民も罪なことをしたものですねえ。

 しかしながらこの薛義が「生活の必要に迫られて」(同僚談)、憎悪し切っていた「日本」へと出稼ぎに渡るのです(笑)。このあたりの矛盾はどう処理しているのでしょう。

 18年前、就学生ビザで日本へ出稼ぎに出ようとビザ発給待ちの行列をしていた上海人たちが、手続きの遅延に抗議して「日本鬼子」云々といった横断幕などを掲げつつ順番待ちをしていて、

「お前らも大変だな。そこまでして『鬼子』の国へ行きたいのか」

 と、たまたま通りかかった現地留学中の御家人に同情されて沈黙した故事に照らしても、「矛盾」がさほど高いハードルでないことがうかがえます。まあ行列していた連中は別に糞青とか反日屋ではなかったのですが、DQN系糞青である薛義は、

「日本で働いて、日本人の手から1円でも多く奪い取ってやる」

 という緻密な理論武装(笑)で矛盾を解決していたのかも知れません。ちなみに先輩格の馮錦華は、

「いま振り返っても、あのとき日本へ行ったのは無駄ではなかったと思う。民族の尊厳を護る能力と条件が自分にあって、そして実際に行動した。自分でも誇りに思っている」

 とコメント。「あの事件を起こさなかったら今でも日本にいたか?」という記者の質問にはしばらく沈思し、

「かも知れない。出国(日本行き)は生活のためであり、自分の家庭を養い親孝行をするなどといった目的のためだからだ。素朴な願望だよ。ふつうの人間なんだから」

 とのこと。奇人の奇たる所以は自分では自分を奇人だと思っていないことにありますが、馮錦華はその条件を十分満たしているようです。しかし靖国神社の狛犬にペンキで落書きすることで「民族の尊厳を護る」という一念が果たされたというのですから、ずいぶん安っぽい「民族」であり「尊厳」ではありませんか(笑)。

 ――――

 ただ馮錦華の、また今回の薛義によるかような幼稚な行為に対し、中国国内のネット世論が「愛国的行為」(厳密には「反日」ではなく「愛国」なのです)として拍手喝采、賞賛を惜しまず英雄扱いしたのですから問題は深刻ですね。

 馮錦華や薛義は行動した分だけDQN系ではあるものの、ギャラリーの大半はそれを快挙とした。……とすれば馮錦華や薛義は奇人ではなく、ギャラリーの意向を代表したという点においてむしろ現代中国人のデフォといえるかも知れないからです。

 こうなると当ブログではお決まりの民族固有の病弊、という話になります。

 ●三千年の歴史に裏打ちされた「中華」というもんのすごーく強いプライド。
 ●西洋文明に半植民地化され、見下していた「小日本」にまで蹂躙されたというもんのすごーく強いトラウマ。

 ……この2点がいずれも医学が扱うレベルに達しているうえ、一人格・一民族に同居しているということです。

 『国際先駆導報』の記事はもちろんそんな方向への考察へと進むことはありません。馮錦華や薛義の行為に事件当時、英雄扱いする向きと嘆かわしいとする向きが存在したことを指摘しつつも、

「李登輝のような民族の恥は人民から唾棄されるのみだ。薛義の行為は一般的な中国人が発した質朴な声を代表した『台独』(台湾独立)への非難なのだ」

 という馮錦華のコメントのみを記していて、「嘆かわしい」派の論者を登場させていません。「薛義万歳!」に傾いている、というのは深読みのしすぎでは断じてありませんね(確信)。

 ――――

 ともあれこの記事の傾斜っぷりは胡錦涛政権のスタンスとは明らかに異なるものです。このところ「反日」をずっと封印されていてフラストレーションのたまっていたメディアが、ネット世論同様、今回の事件で気を吐いたというところでしょうか。

 あるいは、胡錦涛がこういう形で上手にガス抜きをした、ともみることができます。

 それとは正反対に、アンチ胡錦涛の政治勢力を背景に、こういう記事が胡錦涛の敷いた報道管制を突き破って表に出てしまった、という、より面白げな見方も可能です。第一に、秦剛が定例記者会見で「断言」したところが気になります。

 そしてもう一点。あたかもこの記事に合わせるかのように新華社が支那事変における「平型関会戦」参加者の体験談報道を行い、さらにこれはもはやお約束ですが、内モンゴル自治区で「旧日本軍が遺棄した化学兵器を発見」というニュースが続いています。おまけに『国際先駆導報』が日本の歴史教科書の何たら問題を合わせ技で扱っています。

 セットメニュー、つまり中国の政争におけるセオリーといえるメディアを使った政治的攻勢の線も濃厚、ということです。

 その裏付けになるかも知れないのは、同じ日に胡錦涛の御用新聞として知られる『中国青年報』(2007/06/15)が「日中青年世代友好代表団」なるものが上海入りしたことを特集記事めいた形(記事3本)で大きく報じていることです。これはまさに、

「『中国青年報』が火消しに回るような展開」

 ではありませんか。政局にはならないだろうと私はみているのですが、安倍晋三・首相の支持率の推移や参院選の結果次第では、

「もっと日本に強く出たらどうだ」

 という内部の声に胡錦涛が配慮せざるを得なくなる可能性もあります。このあたりは党大会を控えた綱引きもあるので流動的です。

 ……まあそのときは李登輝氏に再来日してもらったり、石原慎太郎・東京都知事にまた沖ノ鳥島へ行って日章旗を振ってもらう、といった一種の威力偵察で中共上層部の様子をうかがえばいいでしょう(笑)。

 取り急ぎ報告まで。




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 わかっていて気を付けているつもりでも、つい見逃してしまうことがあります。今回の標題である「報喜不報憂」もそのひとつです。

「いいニュース(喜)は報道しても、都合の悪いニュース(憂)は報道しない」

 という意味で、そういう傾向はどの国にもあるにせよ、いかにも中共系マスコミ向けの言葉です(笑)。中国のニュースを読むときはまずこれを頭に叩き込んで、それを前提にして報道に接しないといけないのですが、ふと気を緩めて何気なく読み過ごしてしまうこともあります。

 というのも、10年以上前にチナヲチ(素人の中国観察)をしていたころに比べると、新聞もかなり開明的になっているからです。販売部数の競争のためスクープ合戦で、「憂」を告発するケースも結構出てきています。

 ところが中国は報道メディアに対する定義が他国と異なり、
「メディアたるもの、党と国家の代弁者でけなればならない」という位置づけがいまも生きています。あまり「憂」を書き立てられると困るので、制限が設けられたりします。例えば、

「他の地区の炭鉱事故は取材禁止」

 などといったもので、例えば上海の新聞が山西省で発生した炭鉱事故を独自取材することは許されないのです。報道はできます。ただし国営通信社・新華社の配信記事をそのまま使えということで、販売競争のため突撃取材を展開したい新聞側にとってはどうにも物足りないものとなります。

 ――――

 逆に、政府というか党中央の意向で、政策徹底のため「憂」を強調する記事が配信されることもあります。例えば以前紹介した地方の末端レベルの豪華庁舎写真集などはその一例です。きょう(15日)の『人民日報』でこうした無駄遣いは断固許すべからずという論評記事が出ていますから、中央は本腰で事態の改善に乗り出すことになるのかも知れません。改善できるかどうかは、わかりませんけど。

 ……それはともかく。

 ●汚水集中処理施設、全国200都市で存在せず(新華網 2007/06/12/18:55)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/12/content_6232848.htm

 これもタイトル通りの内容で、「憂」を強調して「だめじゃないか」と各地方当局に圧力をかける内容の記事です。全国595都市を対象に調査してみたら200都市がアウト、というもの。それにしても処理施設がないということは河川ないしは海に垂れ流しということでしょうか。一応、処理施設を建設した都市が少しは増えたという「喜」にも言及されてはいますが、基調は中央から地方当局に対する「だめじゃないか」です。

 それから、これ。

 ●環保総局副局長「農民3億人余りの生活用水が安全基準以下(2007/06/07/19:52)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-06-07/195213177489.shtml

 農村部に住む3億人余りが安全基準以下の「水めいたもの」を生活用水・飲料水として使っているというものです。水源地がゴミ捨て場になっていたり糞尿が垂れ流しになっていたり、あるいは公害企業の工場廃水が処理されないまま流入していたりするのが原因のようです。

 ――――

 ところで、この記事を読んで私は「あれ?」と思いました。こうした調査報告は毎年出されているのですが、私のみた限りでは、この3年ばかりはいつも「3億人余り」なのです。

 おかしいな、と思った次第です。というのは毎年1月末から2月頭にかけて、前年の年間統計が出てきます。そうした時期にしばしば目にするのは、

「××省の水質改善活動で昨年、農民×百万人が安全な水を飲めるようになった」

 といった内容のものです。色々な省や自治区からこの記事が出てきます。

 でも全国統計だと毎年「3億人余り」。どういうことかといえば、「安全な水を飲めるようになった」記事は「報喜不報憂」型の報道なのです。

 例えばある省で昨年、300万人が安全基準に達した生活用水を使えるようになったという事実があるとします。これは「喜」であり、それを報じる分には事実に基づいた報道ということになります。

 ただ、全国的に環境汚染が問題とされているなか、その省で農民の生活用水が安全基準を満たさなくなってしまった、という事例もある筈です。ところが報道はそれについては口をつぐんでいますから,その実態がわかりません。

 わかりませんけど、いつまで経っても「3億人余り」なので、全国統計でいえば安全基準に達した水を「飲めるようになった」人の数と「飲めなくなった」人の数はほぼ同数なのではないか、という推測が成立します。

 ――――

 似たような事例として、

「××市は昨年、×十万人が再就職できた」

 という記事。地元当局が雇用を創出し、働き口をあてがってやったのだ、という自画自賛報道です。ところがこれも、逆に失業した人がどれだけいるかには言及していません。あるいは再就職者より失業者の方が多いかも知れないのです。

 この面における状況は、基本的に改善されていないようです。というのは、全国統計として出てくる「都市部失業登記率」は2002年にそれまでの3%台から4.0%になり、2004年から昨年(2006年)までは4.2%のままです。要するに再就職できた人の数とほぼ同数が失業していることになります。

 ちなみに、失業者の絶対数は着実に増加しています。

 2002年 770万人(4.0%)
 2003年 800万人(4.3%)
 2004年 827万人(4.2%)
 2005年 839万人(4.2%)

(『中国統計摘要2006』)

 さらにいえば、「都市部失業登記率」ですから農村部や出稼ぎ農民の就業状況はこの統計から知ることができません。

 また「失業登記率」であって「失業率」でないのは、失業者が役所で所定の審査を受けて失業登録をした人をカウントしているからで、厳密にいえば職についていても自宅待機状態の人や失業登録をできなかった人、ひいてはニート(いるんですよこれが結構)の数は含まれていません。

 ともあれ、実際はこれよりずっと深刻であることは間違いありません。

 ――――

 前回書いたように何事も政治が最優先、しかも一党独裁のお国柄ですから、中国の当局発表による統計は目安や参考にすることはできても、信を置けるかと言われれば現地での生活感覚との余りの差の大きさに首をひねってしまうことがままあります。それだけでなく、そうした統計記事を読むにしても、上述したような勘繰りが必要になるので全く骨が折れます。

 似たようなケースを他に挙げるとすれば、

 「和諧社会」(調和のとれた社会)
 「科学的発展観」
 「緑色GDP」

 といった、胡錦涛政権が現在掲げている基本路線に関するスローガンです。

 様々な格差と不公平が横行し拡大して、調和がとれなくてどうしようもなくなった状態まで来てしまったから「和諧社会」を呼号する訳で、江沢民時代の効率を無視した無茶苦茶な開発路線による弊害が限界に達したからこそ、規模や成長率よりも効率を重視しようという「科学的発展観」が叫ばれます。

 また、環境汚染がのっぴきならない段階に至ってしまったから、環境保護にも配慮した経済成長を、ということで「緑色GDP」が持ち出されているのです。

 もはや手遅れ、とはいいませんけど、こういうスローガンが声高に叫ばれるようになっている状況というのが、相当深刻であることは確かです。




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 雑談のようなものです。

 前回は物価統計に関する話題でしたが、この統計の話をしていくと、中国当局が発表する数字は果たしてアテになるのか、という話に落ちます。

 アテになりません。……と私は思います。当の国家統計局が独自に調査した全国統計と、各地方政府から上がってくる数字の総和を比較したところ、あまりに差があるので頭を抱えた、という話があります。政治的必要性から数字を加減されることもないとはいえないでしょう。

 とはいえ、他に目安がないのですから参考にせざるを得ません。

 以下は前回のコメント欄における「muruneko」さんと私のやりとりです。



 ●コア CPI ?(muruneko) 2007-06-13 20:55:18

 御家人さん、得意分野でなさげな事を尋ねてゴメンなさい。普通の国では、季節変動が大きい食料品などは消費者物価指数(CPI)からは除外して、コア CPI というのを金融政策の指標にする事が多いのです(インフレ・ターゲットというのは大体これを参照する)。

 支那の食料品物価が右肩上がりなのは、他の報道からしても納得ですが、コア CPI てーのは、中文報道には載ってますか?




 ●Unknown(御家人) 2007-06-14 00:51:25

 >>murunekoさん
  そうなんです私こういう話は苦手で。ただ虫の知らせかどうかは知りませんが「おさえとけ」という天の声を聞いたような気がしたので取り組んでみました(笑)。

 コアCPIというのは探してみましたが私の目では拾えませんでした。エントリー中にあるようにCPIを食品価格と非食品価格に分けて、その非食品価格の上昇率は前年同期比1.0%となっていますが、これがコアCPIに相当するのでしょうか?「3%が警戒ライン」としているように、中国はもっぱらCPIの推移を気にしているようなのですが……。(後略)




 ●国家統計局サイト覗いてみました(muruneko) 2007-06-14 09:11:36

 御家人さん、国家統計局サイト覗いてみました(私は中文読めませんから、英語サイトです)。

 仰るとおり CPI の組成種別毎の詳細は以下 URL に有りましたが(多分、参照された報道の元ネタ)、コア CPI に関しては記述が見付かりませんでした。どうも、その概念に基づいて統計を発表して居ないみたいです。この統計を何処まで信用してよいのか良く判りませんが、都市よりも田舎のほうが食料品の値上がりは大きいとなってますね。(中略)

 http://www.stats.gov.cn/english/statisticaldata/monthlydata/t20070528_402407029.htm

 支那オチしてる社会科学系の学者連は、何処まで支那の出す統計数値信じるのか、どうやって判断してるんでしょうね(大変そうです)。



 ええ、結局はそういう話になるのです。同じコメント欄の「que」さんのレス、



 ●もう3月から(que) 2007-06-14 08:35:22

 食堂の食べ物、値上がりしているみたいですね。

 ま、学生たちは、油、豚肉の値段があがっていることもしらないですが・・・・。



 という方が重みがあるようにさえ感じてしまいます。スーパーとか香港でいう「街市」(市場)を定点観測する方が確かなのではないかと思ったりもします。もちろん、それだと全国統計のような目安にはならないのですが。

 ――――

 私は研究者ではありませんから、学者さんたちがどう対処しているかはわかりません。

 ただ私には「護符」がありまして。

 大学時代、卒論の主査をして頂いた第二の恩師ともいうべき中国経済のK先生が、どうしようもない劣等生の私を見捨てることなく面倒をみて下さり、私が香港に渡ってからは激励の手紙まで頂きました。私にはこれがとてもうれしくて、いまでも外出する際にバッグに入っている東京都の区分地図、そこにエアメールの封筒ごとはさんで持ち歩いています。

 まるでお守りみたいですけど、K先生は強面なので「護符」という方がよりしっくりする気がします(笑)。

 その後、香港の自宅にK先生が訪ねてきてくれたこともありました。突然の来訪なので泡を喰いましたけど、あのときの嬉しさも忘れられません。

 ●さすがはHDL、正にアメイジングワールド。(2005/10/04)

 で、K先生に内緒で引用しますけど、「護符」の中に次のような一節があります。



ある資料(多分新聞の署名記事)で中国のような国にとっては,実際の生活感覚の方が、データ上でのインフレ等の議論展開よりも有益である、などと非科学的論調があったのですが、一笑にふせない説得力があり思わず納得してしまったりします。中国研究者ではなく、経済研究者であるならばデータ重視しても良いのですが、中国研究者には何かのこだわりがあり、どうしても踏み切れません。現実の中国の多様性と流動性、その反面根底に流れる表現しにくい何らかの一貫性といった強烈な印象があるからでしょうか。とにかく不可解、です。



 その世界では立派な研究者なのに、学生に対する手紙でも師匠風を吹かせたりアカデミックに構えたりしない率直さのようなものが伝わるでしょうか。そういう「ぶらない」ところがこの先生の強烈な人間的魅力でした。

 私は研究者ではありませんし、不勉強でもありますから、K先生のこの一節に「うんうんうんうんわかるわかる」と点頭することはできません。せいぜい「何となくわかります、その感じ」てなところです。「何となくわかる」というのはわかっていないのも同様なので、結局のところK先生のこの境地(15年くらい前)には達していないことになります。orz

 「全国大学学食平均価格指数」みたいなものを教育部から出してくれればいいんですけどねえ。……といっても結局はそのデータに信が置けるのか、という話に戻ってしまいますね。

 ――――

 雑談のついでに久々の楊枝削りをしておきます。不勉強の私にはファンタジスタ・麻生太郎外相が著した下の2冊がいま凄く役に立っています。


自由と繁栄の弧

幻冬舎

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とてつもない日本

新潮社

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それからこれは早い者勝ちになると思います。たぶん。

芙蓉鎮 全長・公開版

紀伊國屋書店

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 物価上昇に関する現地の生活感覚や庶民の声など、お情報を待ちしております。m(__)m。




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 血湧き肉躍るような話題ではありませんが、官民衝突,特に都市暴動が発生する遠因として、

「生活苦」

 というほどではないにせよ、

「家計のやりくりが難しくなった」

 というイライラが相当浸透していると思いますので、一応チェックしておきます。

 ――――

 国家統計局がきのう(6月12日)発表したところによると、今年5月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同期比3.4%に達しました。関係部門では「3%」を警戒ラインとみており、これを突破したこととなります。都市部で3.1%、農村部で3.9%だったとのこと。今年1~5月でみるとCPI上昇率は2.9%です。ただし、

 1月:2.2%
 2月:2.7%
 3月:3.3%
 4月:3.0%
 5月:3.4%

 ……と、3カ月連続で警戒ラインである3%を突破しているほか、5月の上昇率「3.4%」は過去2年で最大の上昇幅。低所得世帯への手当支給といった救済措置の実施を検討あるいは決定している地方政府もあります。

 「上昇率3.4%」といっても都市によって状況は異なるでしょうし、公式統計がこれなら実勢はもっと深刻な筈、という考え方もできるでしょう。例えば広東省では水害の影響で食品価格が平時の2倍に高騰しているということで、香港への野菜などの供給にも影響するのではという見方が出ています。

 ――――

 この「上昇率3.4%」も中身をみてやることでかなり印象が変わってきます。過去3年間には、CPI上昇率自体は1%でも、このうち食品価格の上昇率が2ケタ台で文字通り台所を直撃する形となり、年金生活者などが悲鳴をあげるといった事例がままありました。それに起因するデモなども起きています。

 今回はどうかといえば、やはり目立つのは食品価格で、上昇率は8.3%。非食品価格の上昇率が1.0%だったことを考えると、今回も台所直撃型です。この「食品価格」をさらに詳しくみてみると、

 卵類     ↑37.1%
 肉類・加工品 ↑26.5%
 食用油脂   ↑21.4%
 穀物     ↑_5.9%
 水産品    ↑_4.1%
 調味料    ↑_4.1%
 生鮮野菜   ↓_2.3%
 果物     ↓11.2%

 となり、極端なバラつきが目立ちます。

 ――――

 この中で目を引くのはやはり卵類の上昇率37.1%でしょう。その理由について香港の親中紙『香港文匯報』は、

「鳥インフルエンザの影響」

 としているのですが、ここまで極端な数字になるものでしょうか。逆に鳥フルが実際にはひどく蔓延しているのを当局が隠蔽しているのではないかと心配になります。

 肉類・加工品の上昇率26.5%も相当なものですが、これは豚肉の高騰による影響が大きいとされています。その理由として飼料の値上がりなど生産コストの上昇と周期的な供給量の減少期に入っているためだそうです。

 ――――

 国家発展改革委員会の発表によると、全国36都市の豚肉平均小売価格は6月8日時点で1kg当たり21.32元に達しており、今年4月25日の同17.14元から24.5%も値上がりしています。昨年6月の最安値である同14.58元に比べると6元余り高く、上昇率は実に46.3%。

 豚肉の価格は過去最高値である1997年第一四半期の1kg20.22元を上回って新記録更新中。卵類や牛肉・羊肉も程度の差こそあれ高騰基調で、6月8日時点・全国36都市の平均価格は卵類が同7.7元、牛肉が同22元、羊肉は同22.72元で、前年同期比での上昇率だとそれぞれ51.6%、15.8%、16.5%となります。卵類の値段は去年の5割増しになっている訳で、国家発展改革委員会も、

「短期的には、大幅な価格上昇は低所得層の生活に影響する」

 としています。穀物価格の前年同期比5.9%上昇、水産品価格の同4.1%上昇というのも小幅とはいえ毎日の献立に関わってくるものですから庶民には痛いでしょう。

 主食+おかず類が軒並み値上がりしており、いかに果物が2桁台で値を下げているといっても、所詮はデザートですから痛み止めにはなりません。生鮮野菜は上述したように水害などで地域的なバラつきが相当大きいものと思われます。

 ――――

 以上は当局が発表した数字によるものです。現地での感覚はどうなのか、地域ごとにどのくらいブレがあるのか、といったところまではわかりません。現地在住の方で庶民の声を拾える方は是非情報をお寄せ頂ければ、と思います。

 「家計が苦しくなってきた」感がどのくらいあるか、というのは社会の安定感に直接影響しますので、見逃せないところだと思うのです。高騰の目立つ豚肉に対し当局は「秋口には状況が改善されるだろう」としていますが、逆にいえばこの夏いっぱいは高値が続くということです。

 ちなみに国家発展改革委員会は「インフレ懸念はない」としています。

 懸念があろうとなかろうと、現実は比較的深刻な状況のようです。一例として、教育部が全国の大学に対し、

「食品価格の上昇で学生食堂の質が落ちることのないようにせよ」

 との通達を発しています。株踊りのようなインパクトはありませんが、これはこれで弱火でコトコト煮込むような形で効いてくる「火種」といえるでしょう。


 ――――


 ●「新華網」(2007/06/12/10:59)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/12/content_6231007.htm

 ●「新華網」(2007/06/12/17:44)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-06/12/content_6232648.htm

 ●「新華網」(2007/06/12/23:21)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-06/12/content_6233644.htm

 ●『香港文匯報』(2007/06/13)
 http://paper.wenweipo.com/2007/06/13/CH0706130004.htm

 ●『香港文匯報』(2007/06/13)
 http://paper.wenweipo.com/2007/06/13/CH0706130003.htm




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 李登輝氏訪日で私が何やらフワフワしていた間にも中国では色々な事態が進んでおりまして、数日前の記事なので速報ではありませんが、やはり拾うべきものは拾っておこうと思います。

 で、標題の通りです。香港の飲茶の定番ともいえる雲南省のプーアル茶、投機めいた買いが入って今年初めあたりから価格高騰が話題になっていたのですが、とうとうバブルがはじけてしまいました。

 ――――

 香港紙『明報』(2007/06/09)が北京の地元紙『北京晨報』(2007/06/08)の報道として伝えたところによると、投機目的の買い手がどっと参入した上、思惑でメーカーが出荷を見合わせるなどして少し前までは価格がどんどん釣り上がっていたプーアル茶の高級銘柄品が、ここ1カ月足らずの間に半値以下へと暴落しているそうです。

 私は銘柄に詳しくはありませんが、『明報』によると最高級品が1ロット(約30kg)2万元余りしていたのが1万元へと急落、他にも1kg当たりの値段では400元→195元、1250元→800元、832元→380元と半値以下に暴落したものが多く、投機目的の買い手は相当な痛手を負ったようです。

 関係者はこれについて、

「株式市場と同じで、プーアル茶も少し前には実勢を越えて過度に値が釣り上げられ、バブル状態だった。一部の茶葉メーカーが思惑で出荷を渋ったことや、品評会やらオークションなどが開かれたこともバブルに拍車をかけた。いまはそれが弾けた訳だ」

 として、大量の資金が株式市場へと転じたことが暴落の引き金になったと指摘しています。とはいえ合理的な価格水準に照らせば現在はまだ高値気味で、需給状況からすれば下落傾向はまだまだ続く見込みとのこと。

 このプーアル茶バブル、「プーアル茶は時間が経つほどおいしくなるし、価格も何倍にもはね上がる」ということで、長い目でみて大きく儲けようとする収集家のほか、右肩上がりの高騰傾向に目をつけ、短期間で売り抜けて利ざやを稼ごうとする投機目的の買い手の参入、そしてメーカー側も調子に乗ったことで、とうとうデッドラインを越えてしまい、かような仕儀に立ち至ったようです。

 ●『明報』(2007/06/09)
 http://www.mingpaonews.com/20070609/ccb1.htm

 ●『北京晨報』(2007/06/08)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-06/08/content_6213703.htm

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 で、気になるのはプーアル茶を暴落せしめる原因となった株式市場。5月30日の証券取引印紙税率引き上げに伴う急落で「あわや?」という緊張が走ったのは記憶に新しいところです。

 香港紙『蘋果日報』(2007/05/31)によると、このときは「抜き打ちとは卑怯」と怒った「股民」(個人投資家)が北京や上海で手製のプラカードを掲げるなどした抗議デモ(たぶん無許可)を行い、担当部門である財政部のウェブサイトにはF5アタックの嵐(笑)。

 また「おかげで損をした。謝罪と賠償を要求する」との怒りの声が財政部に寄せられ、そのための連携を呼びかける動きすらありました。幸いその後反発して騒ぎは収まったのですが、本番、つまりプーアル茶のような事態になったらどれほどの騒ぎになるかは予測不可能です。

 この後、株価は乱高下しながらも値を戻しつつあり、昨日(11日)の上海総合指数は3995.68と再び4000の大台をうかがう勢い。「股民」たちの強気も戻った模様です。

 ●「新華網」(2007/06/11/15:17)
 http://news.xinhuanet.com/stock/2007-06/11/content_6225785.htm

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 これは5月末時点の統計になりますが、貯金を取り崩して株につぎ込む、というトレンドは5月も衰えず……ではなくより激化しており、専門紙『上海証券報』はこれを、

「株式市場が活況を呈している影響で、銀行資金の『引っ越し活動』は依然として続いている」

 と表現。具体的には、上海の中国資本の銀行における人民元建て預金残高が前年同期比で258.9億元減少しています。前月比つまり単月の下げ幅としては1999年1月以来のものだそうです。

 ●「新浪網」(2007/06/09/02:19)
 http://finance.sina.com.cn/g/20070609/02193675892.shtml

 こうした情勢を反映したものか、5月末の急落時に噴出した「バブルだ」「いや違う」論争や「リスクは自分持ちだよ」的な記事が最近は少なくなり、江西省が公務員による勤務時間中の株いじりを禁止したとか、有名な経済学者が「大学生が株に手を出すのはいかがなものか」と語ったといった報道をチラチラ見かける程度となりました。

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 私は株のことはわからないのでこの程度しか紹介できませんし、予測を立てることもできません。ただ5月30日の「予行演習」をみる限り、いったんバブルがはじければ相当広範な都市部住民が損失を被ることになりそうです。経済面での衝撃よりも社会的影響の方が短期的には危険ではないかと思います。

 こういう状況ですから、最近「城管」(都市監視員)が露天商を殴って都市暴動に発展するケースが相次いだとの報に接してもつい斜に構えて、

「『城管』も露天商も『股民』だったりして」

 などと何の脈絡もないことを考えてしまったりします(笑)。……いやいや、現在の中国が抱えている数々の火種の中でもこれは爆発力・影響範囲ともども最大級ですから、笑っている場合ではありませんね。

 個人的には「そうだ物権法だ!」と見事に勘違いして当局相手に賠償訴訟に打って出る「股民」の出現に、今は亡きFEC(外貨兌換券)で500元。




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 李登輝氏襲撃事件の続報が気になるところです。とはいっても容疑者に実刑判決が下るかどうか、くらいしか私には興味がありません。前回掲載させて頂いた永山英樹氏の文章、あの予測がピタリと的中して中国国内のネット上では早くも容疑者を絶賛する声が続々。永山氏の例え通りに「民族英雄」という書き込みまで本当にありました。永山さんすごいです。

 ●「捜狐」(sohu.com)李登輝氏襲撃事件報道に付随している掲示板
 http://comment2.news.sohu.com/viewcomments.action?id=250483826&order=hot

 これで『人民日報』あたりに李登輝氏の靖国参拝や日本での行動を熱く非難する論評記事などが出てくれば、新華社あたりが追従しそうなので面白いのですが、どうでしょう。

 その余波が『解放軍報』に及んで『中国青年報』が火消しに回るような展開なら胡錦涛ピンチ!なのですが、そういうエネルギーは2年前ならともかく(実際に反日騒動がそうでした)、現在の「反胡錦涛諸派連合」からは感じられません。政局にはならないでしょうねえ。

 ――――

 まあ政局にならなくても現在の中国は十二分に多端です。



 ●「天安門犠牲者の母に敬意」中国紙に広告、当局が調査(読売新聞 2007/06/07/00:54)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070606id26.htm

 【香港=吉田健一】天安門事件から18年にあたる今月4日、中国四川省の夕刊紙・成都晩報の紙面に、事件の犠牲者の母親に敬意を表する内容の一文が掲載され、公安当局が同紙幹部ら関係者2人を拘束、調査に乗り出した。6日付の香港紙・蘋果日報が伝えた。

 掲載されたのは「六四(天安門事件)犠牲者の不屈の母親に敬意を表する」との中国語で13文字の文章。広告ページに1行広告として載った。天安門事件について、厳しい報道管制を敷く中国の新聞上で、こうした文章が公になるのは異例。香港メディアは、成都晩報が停刊処分となる可能性もあると指摘している。

 香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、成都晩報は広告ページの編集を外部の会社に委託しており、依頼を受けた若手女性社員が「六四」が天安門事件を意味すると気付かずに掲載したという。




 「気付かずに掲載した」とは嘘のような話ですけど、香港紙によるとこの女性社員は入社早々の新卒社員。とすれば高卒なら事件当時(1989年)出生していたかどうかで、大卒でも小学校に上がる前でしょう。この世代だともう天安門事件に関する政治教育を行う必要がない可能性もあり、「六四」と言われて何のことかわからなくても不思議ではありません。

 この女性社員、電話で広告掲載を依頼してきた相手に対し、実際に「六四」とは何かと尋ねたところ、ある炭鉱事故の記念日だという返答。それで納得してしまったようです。ともあれこの事件で複数の関係者が馘首されました。4名説と7名説があります。

 ただ問題の広告自体は写真をみると日本の新聞の3面記事の隅っこに並んでいるような細々とした広告の中のひとつで、よくこの中から拾い出したものだと感心するくらい目立たないものです。

 ●『星島日報』(2007/06/08)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0608eo06.html

 ――――

 成都は1989年に全国各地で展開され、天安門事件を契機に終息した民主化運動で、軍隊が投入された北京を除けば最も荒れた都市のひとつです。

 同年秋に私が古戦場めぐりで内陸部を回った際、私は西安から成都への寝台車で親しくなった出張者が成都で公費接待されるそのお相伴にあずかったのですが、駅からレストランまでの車中、いきなり広々とした焼け野原が出現したので再開発でもするのかと思いつつ眺めていたら、

「ここは市内最大のショッピングセンターだったんだが、六四で怒った民衆に焼き打ちされて、この通りさ」

 と出張者が私にささやいたので、ほほーと現場に改めて目をやっていると、

「外国人にそんな話をすべきではないでしょう」

 と、接待側のひとりがもの柔らかな語気ながらピシャリ。後で出張者と二人でトイレに寄った際、

「あいつは党員なんだ。嫌な奴だ」

 と苦い顔で吐き捨てるように教えてくれました。当時はまだ活動家の落ち武者狩りが行われていて、泊まる先々で必ず「査房」(抜き打ちのお宿改め)に出くわしたものです。成都は18年を経てすっかり近代的な都市に変貌したのでしょうけど、天安門事件が忘れ去られている訳ではないようです。

 こういう広告が出てしまうあたりに、統治のタガが緩み始めているのではないかという気がする一方で、ただでさえ暴動が頻発しているのですから、「六四」とか「民主化運動」と言われても何だか空々しく聞こえるような、それだけに危険な社会状況ではないかと考えたりもします。

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 私はACG業界(アニメ・コミック・ゲーム)に関わる仕事を本業としていますから実感できるのですが、ACGというのは衣食住をまかなえて、それでもカネが余るようになった経済水準に達してはじめて成立する産業です。

 実は「民主化運動」もACGと同じようなものではないかと。1989年の民主化運動も成都のように市民を巻き込んだ暴発例はあったものの、結局のところ大学生と知識人限定のムーブメントに過ぎませんでした。

 少なくとも現在の中国社会は1人当たり平均でみれば衣食住を確保できるかどうかといったレベルで、一般庶民もが参加する「民主化運動」なんて、そんな高尚なものが広く受け入れられる素地はなさそうです。そもそも民度そのものがそれをやるには低すぎますし。

 生活の糧である耕地が強制収用されたり、再開発で自宅を破壊されたり、公害企業の汚染垂れ流しで奇病が流行したり……というのが現状。そうして追いつめられた農民や都市住民が暴動を起こしているのです。民主化どころじゃありません。

 18年前の農村にも余剰労働力の問題が存在していて、それを解決するために郷鎮企業がもてはやされたり、現在の「民工」(出稼ぎ農民)の祖ともいえる「盲流」現象(職を求める農民たちによる都市部への人口流入)がすでに発生していましたけど、「失地農民」という言葉はさすがにありませんでした。

 「失地農民」については説明不要かも知れませんが、耕地を強制収用されて満足な補償金ももらえぬまま、指定された移転先で転業もままならず(補償金不足のため)、その日暮らしの流民同様の境涯に堕ちた農民たちのことです。

 そういったあれこれを考えると、中国の時勢は海外に脱出し活動している民主化運動家たちを置き去りにしてしまっているのではないか、活動家たちは1980年代末期の感覚のまま、中国社会の変化(例えば都市部と農村部の格差拡大)についていけずにただ呆然としているのが実情ではないか、と思えてくるのです。

 ――――

 こんなことを考えたのは著名な民主化運動家・魏京生氏が最近、日本当局に入国を拒否されてどうのこうのといったニュースがあったからです。……というより、破天荒にも私をメル友扱いして下さっているMさんがこの件に巻き込まれて相当難儀な目に遭われたから、というべきでしょう。日本政府による人権弾圧のような報道が行われたりもしましたが、実相は随分異なるようです。

 魏京生は「北京の春」とか「西単民主の壁」といった時代の民主化運動の祖ともいえる存在ですからネームバリューはありますけど、1970年代末期に当局批判の罪で投獄されて以来20年間のムショ暮らし。1989年の民主化運動はおろか、改革・開放政策下の中国社会というものを経験していませんから化石のようなものです。

 私はチナヲチ(素人の中国観察)を10年怠ったためにいまでもそのギャップに苦しんでいます。それが20年や30年近くともなれば、もはや正論を吐くことしかできず、活動家であればもはや役には立たないでしょう。まあ魏京生はシンボル的存在ですからそれでもいいのかも知れませんけど、天安門事件を機に海外に脱出した学生リーダーや知識人も、もはや似たようなものではないでしょうか。

「そりゃあんたの言うことは正論だけどさー、いまはそういう時代じゃないんだよねー。頼むから現状をみて物を言ってくれよー」

 という反応が中国国内の庶民から返ってきそうです。大学生、これは物の役には立ちません。そもそも大学自体、1980年代末期のようなエリート養成機関から、現在はホワイトカラー量産工場へと変貌し、大学も大学生の数も卒業即失業という問題が顕在化しているほど大膨張しているのです。

 大学生としての平均レベルが大幅に低下していることが第一。それから物欲まみれの金持ち学生かド貧乏な苦学生に両極分化しつつあるため、以前のような打てば響くような結束力は期待できません。

 若手知識人は私と同世代ですから民主化運動~天安門事件で挫折感を味わい、俗世間に埋没している向きが多いように思います。少なくとも1989年の民主化運動を主導した紅衛兵世代のような覇気もネットワークもありません。

 もうそういう段階は過ぎて、中国社会はより危機的な状況に入ってしまっているのではないでしょうか。冗談ではなく、いまの中国に必要なのは民主化運動家ではなく秩序をぶっ壊す革命家なのかも知れません。ただそれによって世の中がよくなるという保障はどこにもありませんけど。

 ――――

 天安門事件で死亡した学生たちを、遺族たちが北京市のその現場で追悼することが今年になって初めて許されました。



 ●天安門事件から18年 遺族ら現場で追悼式(Sankeiweb 2007/06/04/23:45)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070604/chn070604002.htm

 当局許可 胡政権イメージ改善狙う

 北京は4日、民主化運動を武力鎮圧した天安門事件から18年を迎えた。中国当局は今年、事件後初めて遺族らに対する監視を緩和し現場でささやかな追悼式を許可した。五輪開催を来年に控え、胡錦濤政権の対外イメージを改善したい思惑が背景にあるようだ。(北京 矢板明夫)

 3日午後10時すぎ、雨があがった。北京の夜は蒸し暑い。市西部の地下鉄・木●(=木へんに犀)地(もくせいち)駅近くの植え込みのそばに、数人の老人たちが黙々と何枚かの遺影を飾って簡単な祭壇をつくり、花束、果物、ビールなどを手向けた。ろうそくに火を灯すと、抱き合いながら泣き崩れた。

 1989年6月3日夜、戒厳部隊はこの場所で学生と市民に向けて発砲し、多くの犠牲者が出た。元大学教師の丁子霖(ていしりん)さん(70)の高校生だった一人息子=当時(17)=も近くで背中から心臓を撃ち抜かれ死んだ。

 丁さんはこれまで約200人の犠牲者の遺族を自力で探し出し、遺族会「天安門の母」を発足させた。このため、当局から嫌がらせを受け続けた。厳しい監視下に置かれ、買い物にも自由に出かけられなかった。

 先月31日、公安機関の幹部が丁さん宅を訪ね、「これからは自宅周辺の見張りを撤収する。今年の記念日は息子さんを弔ってもよい」と告げられた。遺族による追悼式が初めて許可された。
(後略)



 この変化について、胡錦涛政権が対外イメージを意識しているという見方は正鵠を得ていると私は思います。ただ、それだけが理由なのかどうか。

 もう民主化運動で揺さぶられるような懸念はなくなった、だから許可した、という一面もあるのではないでしょうか。

 民主化運動家たちが時勢から取り残され、中共政権にとってもはや脅威ではなくなったという認識です。民主化運動の再燃なんて、もはや案ずるに足らない。……要するに胡錦涛政権が自信と余裕を示していることの表れ、ということになります。

 ただし、それは同時に、中国社会がより危険な段階に入ったことを示すものでもあります。「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現を目指す、と呼号している胡錦涛や温家宝は、呼号しているだけにそのことに気付いていることでしょう。

 気付いてはいるし、そのために出来るだけの手も打っている。でも大勢の前には無力で、また大勢とは一見無関係な眼前の雑務に忙殺されつつ、ジリ貧にも似た状態で時流に呑まれていく。……終わりの始まりというのは、そういうものではないでしょうか。

 ついそんなことを考えてしまったのは、最近、妙に上ネタが揃い始めたという感想があるせいでしょう。まあ取るに足らない妄想ということにしておいて下さい。




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 何だかこの10日ばかりは非常に濃密で夢のような時間を過ごすことができました。いうまでもなく、李登輝・前台湾総統の来日によるものです。

 とはいえ仕事をしながら無理をしたのでさすがに消耗しました。よせばいいのに夜型生活で病弱なくせに芭蕉記念館や靖国神社へ出撃して取材活動をしたりして、それを当ブログで報告したりしていたので、2日間近く寝ない日もしばしば。さすがに副業までやる元気はなく、連載コラムは休ませてもらいました。休載理由に李登輝氏の名前を出さずに済むのは病弱者の利点です(笑)。

 ともあれ疲れました。きのう(土曜日)はさすがに爆睡!といいたいところですが、そこは悲しい習い性、4時間ばかり寝たところで香港紙の記事を拾う時間にパッと目が覚めてしまい、冴えてしまったので泣く泣くその作業をして、それを終えてしばらくしてからようやく眠くなりました。その後はまさに爆睡で、夜の記事集めの時間である午前1時直前までぐっすり寝ることができました。

 ところが私が寝ている間に事件が起きていたのですね。「90」さんからのコメントで知りました。



 ●李登輝氏にペットボトル投げる、成田空港で中国人を逮捕(読売新聞 2007/06/10/01:43)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070609it12.htm

 成田空港で李登輝・前台湾総統(84)にペットボトルを投げつけたとして、千葉県警成田空港署は9日、中国籍、千葉市美浜区高洲、自称エンジニア薛義(せつ・ぎ)容疑者(34)を暴行の現行犯で逮捕した。

 李前総統には当たらず、予定どおり出国した。

 調べによると、薛容疑者は同日午後3時30分ごろ、成田空港第2旅客ターミナルビルの出発ロビーで、保安検査場に向かっていた李前総統に向けて、ジュース入りペットボトル(280ミリ・リットル)2本を続けて投げた。同署員らが取り押さえた。




 中国国内でも速報されています。

 ●日本の空港で李登輝を襲撃した男は反台独者と判明(央視国際 2007/06/10/00:51)
 http://news.cctv.com/taiwan/20070610/100032.shtml

 ●李登輝の「台独」を憎悪、憤慨した男がペットボトルを投げつける(人民網 2007/06/10/07:54)
 http://tw.people.com.cn/GB/14810/5844408.html

 で、これについて「日本李登輝友の会」の永山英樹・理事がメルマガ「台湾の声」に発表した文章がなかなか的を得ていますので、「台湾の声」及び永山氏の同意を得てここに掲載します(強調部分は引用者によるもの)。



 ●成田空港の暴漢こそ「中国」だ(台湾研究フォーラム会長 永山英樹)

 本六月九日、李登輝氏が十一日間にわたる日本訪問を終えた。その間、岩手県平泉の中尊寺なる寺院が、脅迫を加える中国に阿り、李登輝氏への特別待遇の取り止めを受けると言う一幕はあったものの、それ以外においてはすべて順調に日程をこなすことができ、何よりであった。

 その間、李登輝氏は絶えず日本国民を激励した。奥の細道を散策しては、日本の伝統文化の美を国民に伝えた。靖国神社の参拝を通じては靖国神社とは何であるかを国民に教えようとした。これらが事実であることは、李登輝氏の来日前、来日後の諸発言をつぶさに見ればわかることである。そして記者会見や講演では、絶えず日本の覚醒を訴えた。「日本は再びアジアのリーダーになれ」と。

 つくづく「私」のない人だと思う。「私的旅行」だとは言っていたが、この人の念頭には「台湾」しかない。さらに言えば、かつて「残された時間で台湾のために働くとともに、日本を励ましたい」と述べたように、「台湾」以外にはその運命共同体である「日本」があるのだろう。そのことは、李登輝氏の今回の滞在中における以上の事どもを見るだけで明らかである。

 このように言えば、「個人崇拝」だの、「神格化」だのと即断する者もいるかもしれないが、「私」を捨て「公」についた観点からこれを見れば、日本国民は李登輝氏と言う日本のかけがいなき友、恩人に感謝するとともに、その覚醒の訴えに呼応しなければならないと言うことに気付くはずだ。

 そうでなくてはならないのである。そこで本日我々は、成田空港において帰国する李登輝氏を見送った。李登輝氏は「台湾万歳」を叫ぶ日本人に満面の笑顔で応え、一人ひとりに握手をして歩いた。だがそのときだ。一人の中国人の男が李登輝氏との至近距離まで走り、ペットボトルを二つ投げつけたのだ。それに対して李登輝氏は怒りの表情で睨みつけた。幸い男は警官に取り押さえられ、投擲物も李登輝氏に当たることはなかったが、夫人はSPに覆いかぶされた際、転倒して足を床に打った。

 男は取り押さえる警官隊に唾を吐きかけ、抗議する日本人に暴行を加えるなど、不敵の表情を見せた。それはそうだろう、これによって彼が本国で与えられるのは「民族英雄」の称号である。なぜなら日本に媚びて靖国神社を参拝した分裂(台独)主義の民族裏切り者に制裁を加えたのだから、中国の政府、国民がこれを称賛しないわけがない。

 つまり、この卑劣な男こそが「中国」なのだ。今回の事件を通じ、「中国」が日本人の前に顔を現したのだ。

 中国とはここまで薄汚い国である。日本人はなお、日中友好を求めるか。台湾統一の動きを黙認するか。

 「李登輝」と比較して「中国」を見れば、自ずと日本の敵がどこであるかがわかるはずだ。上述の中尊寺などは、明らかに敵国に従う売国寺だ。何としてでも李登輝氏の講演を妨害しようとした外務省などは売国省だ。彼らは道義のドの字も知らない国賊である。こう言った連中の存在を、これからもなお許容するか。



 この事件、保釣運動(尖閣防衛運動)などに従事していた中国の反日分子が、靖国神社の狛犬にペンキをぶっかけた事件と質的には似ているように私は思います。

 今回は暴行及び傷害未遂といったところでしょうか。検察及び司法にあっては、執行猶予などにせず、実刑判決の線でお願いします。あるいは今回の薛義という容疑者、狛犬ペンキ事件の犯人が執行猶予で無事帰国(帰国後は中国のネット世論が英雄扱い)したことを念頭に、犯行に及んだかも知れませんので。

 目下のところ、中国国内メディアの報道は論評抜きです。恫喝めいた言葉が中国側から飛び出した2004年末の李登輝氏訪日時ならともかく、中国政府の抑制された現在の対応ぶりからみて、中国国内メディアがこの薛義という容疑者を大々的に祭り上げるとは考えにくいでしょう。

 とはいえ永山氏の指摘通り、今回のニュースが浸透すれば、「中国民間保釣連合会」「愛国者同盟網」をはじめとする反日サイトで、この薛義を「民族英雄」と讃える動きが広がるでしょう。それでどうなるということもないでしょうけど。

 ――――

 基地外はどこの国にもいます。日本にもいるでしょう。

 ただ中国の場合は日本と違って、その基地外を賞賛する素地がある、ということです。久しぶりに「愛国無罪」という言葉が中国の掲示板に躍るかも知れません。

 「愛国」が断じて無罪ではないことを中国人に知らしめるべく、検察及び司法に改めて実刑判決をお願いする次第です。

 (1)基地外がいて、その基地外を賞賛することにためらいを持たない民度の国という点。

 (2)いかに近代的なビル群が建ち並んでいようと、所詮は一党独裁政権。言論の自由もなければ報道の自由、表現の自由から信教の自由もなく、普通選挙などもってのほか。デモももちろん許可制であるという点。

 この2点において明らかなように、いかに着飾ってみせてはいても、中国の本質はあの北朝鮮と何ら変わりがないということ、また各種の自由が当然のように保障され、普通選挙制が根付いた台湾とは全く別世界で、日本とは価値観を共有できないばかりか対話も成立し得ない蛮国であることを、私たちは肝に銘じておく必要があると思います。

 ――――

 21世紀最初の朝、2001年1月1日を私は台湾の台北郊外で迎えました。

 私を眠りから覚ましたのは、街宣車から流れる大音量の音楽でした。

 一瞬、耳を疑いました。驚くなかれ、それは中華人民共和国国歌だったのです。統一派の中でも過激分子の連中によるものなのでしょうけど、そのとき私は、台湾が民主国家であることを実感したものです。

 台湾は、中国や香港と違って、日本と価値観を共有でき、対話を成立させることもできる、東アジアでは得難い友邦です。

 台湾の統一・独立問題については「日本が巻き込まれそうで嫌だ」という考え方をする人もいるようですけど、日本が周囲を見回したとき、またシーレーンの確保という観点からも、日本と台湾は互いに「生命線」の関係であり、いわば一蓮托生という間柄であることを認識すべきだと思います。

 付言するなら、中国本土(香港・マカオ・台湾含まず)は日本における国籍別外国人犯罪件数において、平成元年以来、18年連続してナンバーワン。18連覇中の犯罪者輸出大国です。

「中国人を見たら110番」

 は誇張でも何でもありません。そしてこれは人種差別ではなく、警戒心を呼びかける言葉です。「入れ墨の人入店お断り」が通るなら「中国人入店お断り」が通っても何ら不思議ではありませんね。ちなみに日本における国籍別外国人犯罪件数で連覇中の状況に対し、中国大使館のコメントは、

「日本のマスコミが騒ぎすぎる」

 だったことを私たちは覚えておく必要があると思います。

 ――――

 ところで、中国政府の日本に対する再度の不満表明に関連して前回『毎日新聞』を血祭りに上げましたが(笑)、党中央機関紙『人民日報』の電子版である「人民網」に外交部報道官によるコメントの日本語版が掲載されましたので、改めてここで晒しageておくことにします。



 ●李登輝氏訪日、中国は日本に度重なる厳正な申し入れ(人民網日本語版 207/06/08/10:53)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/06/08/jp20070608_72108.html

 
(前略)

 ――李登輝氏は日本のメディアに対し、靖国神社参拝は兄を祭るためであり、政治的な活動ではないと語ったが、コメントは。日本側に申し入れを行うか。

 日本での李登輝氏のすることなすことから、あなた方は彼の目的が見て取れるだろう。中国は日本が李登輝氏の訪日を許可したことに、改めて強い不満を表明する。




 『毎日新聞』の記事はこちら。



 ●中国外務省:日本批判避ける 李氏の靖国参拝受け(毎日新聞 2007年6月8日東京朝刊)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/archive/news/2007/06/08/20070608ddm002030009000c.html

 【北京・堀信一郎】中国外務省の姜瑜副報道局長は7日の会見で、台湾の李登輝前総統の靖国神社参拝に関し「李氏が日本で行ったこと(靖国参拝)で、彼が何を考えているのか分かる。日本が訪日を許可したことに不満を表明する」と述べたが、日本政府への直接的な批判は避けた。8日の日中首脳会談を前に対日関係の安定を重視する姿勢を示したとみられる。
(後略)



 改めて指摘しておきます。『毎日新聞』のこの記事が、

「李氏が日本で行ったこと=靖国参拝」

 と断定している根拠はどこにあるのでしょうか。それから前回のコメント欄で「エミル」さんが指摘されたように、

「中国は日本が李登輝氏の訪日を許可したことに、改めて強い不満を表明する」

 とする中国外交部の声明に対し、

「日本政府への直接的な批判は避けた」

 という解釈はどういう思考回路から出てくるものなのか、是非とも知りたいところです。

 ちなみに、私は『毎日新聞』は結構好きなんです。スポーツ欄だけですけど(笑)。同紙の伝統ともいえる社会人野球の報道により撤してくれれば、絶対購読するんですけどね。……そういえば、都市対抗野球の予選がそろそろ始まりますね。今年は二次予選から観たいので、本業でも副業でも「病弱」が活躍しそうです(笑)。

 もちろん、本当にぶっ倒れたのでなければ当ブログは続けます。コソーリ活動同様、チナヲチ(素人の中国観察)は「ライス」ではなく「ライフ」なので。娯楽に過ぎませんけど。


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 いや、面白いです。

 「中国の反発は必至だ」っていいますけど、どう反発するのか興味津々です。

 と前々回のコメント欄で書きましたけど、果たせるかな中国側は興味深い反応をみせてくれましたねえ。

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 李登輝・前台湾総統が昨日(6月7日)、靖国神社に参拝したことは前回レポートした通りです。芭蕉記念館訪問のときとは段違いの取材陣多数が詰めかけ、テレビでもニュースで流れていましたね。

 しかし見事な足並みの揃いっぷりでした。どの局も李登輝氏の参拝シーンを映した後で、中国外交部報道官の「強い不満を表明する」という映像にスイッチ。視聴者には、

「李登輝氏の靖国参拝に中国が反発している」

 という印象が残ります。

 ところが、実は厳密にいうと中国は「靖国参拝」には反発していません。この報道官、姜瑜・副報道局長の会見記事を読めばわかるのですが、姜瑜副の口から「靖国神社」という言葉は1回も出ていないのです。同日である7日午後の定例会見で李登輝氏の靖国参拝について見解を求められた姜瑜は、

「李登輝が日本で行ったあれこれから、李登輝が目指しているものが何かみてとれる。中国側は日本側に対し、李登輝の訪日を許可したことについて改めて強い不満を表明する」

 としか語っていません。「不満」の対象も靖国神社ではなく、
「日本が李登輝の訪日を許可したこと」に関する再度の不満表明なのです。上述したように姜瑜はこの会見で「靖国神社」という言葉を一度も使っていません。要するに、台湾独立派の李登輝氏を支援するようなことはしないでくれ、と言っている訳です。靖国参拝問題ではなく、台湾問題。

 ……なのですが、日本には面白い新聞があるものです。



 ●中国外務省:日本批判避ける 李氏の靖国参拝受け(毎日新聞 2007年6月8日東京朝刊)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/archive/news/2007/06/08/20070608ddm002030009000c.html

 【北京・堀信一郎】中国外務省の姜瑜副報道局長は7日の会見で、台湾の李登輝前総統の靖国神社参拝に関し「李氏が日本で行ったこと(靖国参拝)で、彼が何を考えているのか分かる。日本が訪日を許可したことに不満を表明する」と述べたが、日本政府への直接的な批判は避けた。8日の日中首脳会談を前に対日関係の安定を重視する姿勢を示したとみられる。
(後略)



 
「李氏が日本で行ったこと(靖国参拝)」のくだりに注目です。どうしてカッコ付きで「靖国参拝」が挿入されているのでしょう?姜瑜はそんなことを言ってもいませんし示唆してもいません。だいたい「李氏が日本で行ったこと=靖国参拝」と断言できる根拠が知りたいものですね。

 報道官のコメントの内容をねじ曲げて報道するというのが『毎日新聞』ではトレンドなんでしょうか?系列テレビ局まで含めればインタビュー映像の小細工に始まって捏造に爆弾にハニカミ王子、そして今回の公式声明を伝える部分での勝手な解釈追加。解説記事ならともかく、報道官談話そのものを伝える部分でこれをやっちゃあいけません。

 職場内ブームとして「不祥事」が流行しているのか、竹橋だけ北京並に民度が低いのか(笑)。毎月11日は「自発的行列の日」とか廊下に痰を吐いたら罰金とかいったことが、あるいは「さあ来年はオリンピックだ」と枯れかかった観葉植物に緑ペンキを噴射、なんてことがあのビルの中では行われているのかも知れません(笑)。見事なまでにヒキョウですね。秘境だか卑怯だかは知りませんが。

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 実は今回の中国は、李登輝氏の訪日自体にも抑制的な対応、という気配もあります。「日本が訪日を許可」って、悠々自適の御老人が私人としてノービザで日本に入国することに何か問題でも?前科がある訳でもなし。

 姜瑜の発言で注目すべきところはあと2点。第一にこの李登輝氏訪日問題について、

「中日関係を発展するカギは中日間の3つの政治文書の原則と精神を堅持することにある」

 としている部分。「3つの政治文書」とは「日中共同声明」「日中平和友好条約」「日中共同宣言」です。中国が本当に怒り心頭なら、

「3つの政治文書の原則と精神に違反している」

 となるところであり、例えば2003年末に森喜朗・前首相(当時)が台湾を訪問して李登輝氏らと会見したときには、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治文書の基本原則を遵守するよう要求する」

 ……と、「違反している」には及ばないながらも「遵守しろ」という強い調子になっています。でも今回はそこまで踏み込んだ表現もありません。単純な比較でいえば、今回の李登輝氏訪日に対する中国側の「怒っている度」は、2003年末の森氏訪台に比べてもまだ低いということになります。

 ●中国外交部報道官定例記者会見(新華網 2007/06/07/19:11)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-06/07/content_6212213.htm

 ●李登輝氏の靖国参拝に対する外交部報道官談話(新華網 2007/06/07/16:49)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2007-06/07/content_6211719.htm

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 もう1点は目下のところ、ドイツで8日に予定されている安倍晋三・首相と胡錦涛・国家主席による日中首脳会談への影響はない見通しだということです。姜瑜いわく、

「明日の午前に胡錦涛主席はG8と新興5カ国の指導者による対話会に出席し、そのあとロシア、米国、フランス、日本、カナダ、イタリア、ドイツなどの国家指導者と会談する」

 ……とのことで、胡錦涛の現実外交路線に変わりはないことを示しています。ええ目下のところは、です。

「李登輝に訪日させて靖国神社にまで参拝されているのにこんなユルい抗議とはどういう了見だっ」

 と頭に血を上らせている向き、ひいては政治勢力が党上層部には存在しているでしょう。その方面からの反発をねじ伏せることができるかどうかで現在の胡錦涛政権の指導力を計ることができると思います。

 実際、外交部の定例会見では上のような調子でしたけど、中国国内マスコミは李登輝氏の靖国参拝を速報しており、中央テレビ局のウェブサイト「央視国際」(www.cctv.com)に至っては上海紙・『東方早報』の報道として当日の朝5時半過ぎに「きょう靖国神社訪問を予定」との消息筋情報を流しています。

 ●「央視国際」(2007/06/07/05:38)
 http://news.cctv.com/china/20070607/102421.shtml

 5時38分というのは北京時間でしょうから日本でいうと6時半でしょう。私が「李登輝友の会」に電話で問い合わせをしたりしながら出撃準備を進めていたころです。……その後、中共系通信社の中国新聞社や台湾の中央通信、台湾紙『聯合報』などをソースとするリアルタイムな報道が相次ぎ、扇情的な見出しの熱い記事が飛び交いました。

 これを追い風に胡錦涛の足を引っ張ろうとする政治勢力が出てくれば、党大会を控えて中国の政局がいよいよ先行き不透明になります。党大会で行われるべき大型人事や世代交代について胡錦涛が描いていた計画に狂いが生じる、ということです。

 胡錦涛が押されるということは中央の指導力低下につながりますから、「諸侯」と呼ばれる各地方勢力の経済面における暴走を許すことにもなりかねません。

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「ドラマが最終回に近くなると、いろいろな話がバタバタとまとまっていきますよね?ああいう感じにちょっと似ています」

 として、私が以前、現在中国の抱えている火種を列挙したことがあります。

 ●広西チワン族自治区の反「計画出産利権」暴動。
 ●李登輝・台湾前総統が来日、靖国神社参拝の可能性濃厚。
 ●相変わらず過熱気味の経済(各地方政府たる「諸侯」に対する胡錦涛政権の掌握力不足)。
 ●都市部住民の狂乱株踊り(週明けがちょっと楽しみかも)。
 ●福建省・アモイ市で化学工場誘致反対の市民デモが2日連続で発生。
 ●来年の台湾総統選挙を控えて中共イチ押しの馬英九がちょっとピンチ。
 ●食品価格が上昇中で低所得世帯の台所を直撃。特に豚肉は急騰しており緊急事態。

 ●上ネタ揃い過ぎ。ドラマの最終回近し、に似た展開では?(2007/06/03)

 このうち広西の同時多発・飛び火型農民暴動は続報がなく、当局による総括も行われていないので現状は不明です。李登輝氏については火種が炎となってメラメラ燃え始めてしまっています。この火を消し止められるかどうかは胡錦涛の腕次第。

 経済過熱と都市部住民の株狂いは綱渡りの状況が続いています。馬英九の事態が進むにはもう少し時間が必要でしょう。豚肉など食品価格の上昇レベルはいまなお危険水域にありますが、急転直下の展開、というのはなさそうです。

 問題は福建省・アモイ市の化学工場誘致問題。これについては上記エントリー「上ネタ揃い過ぎ。ドラマの最終回近し、に似た展開では?」でふれましたが、

「アモイが公害の街になる」
「アモイにガン患者が急増する」

 として市民が携帯メールで連携して二日連続の無許可デモを決行、その勢いに押されて腰砕けとなったアモイ市当局が早々に白旗を掲げ、プロジェクト中断を発表しました。

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 ところが、昨日(7日)の中国国内メディアの報道ではまた風向きが怪しくなってきました。化学工場誘致による環境面への影響を中央の関連部門(環保総局)が調査すると表明。アモイ市当局はその結果に従うとする一方で、市政府の沈燦煌・副秘書長が、

「このプロジェクトには劇毒だの発ガン率が高くなるだのといった要因は存在していない」

 と記者会見で早くも強気の発言なのです。中央との出来レース談合がすでに成立しているということでしょうか?中央による調査がまだ行われていないのにこの発言、市民の感情を逆撫でにするもものといっていいでしょう。

「市民の強い反発が予想される」
「デモ再燃は必至だ」

 といったところで、ひと波乱ありそうな展開になってきました。乱高下する株価や李登輝問題余波だけでなく、こちらの動きからも目が離せないのです。

 ●「新華網」(2007/06/07/11:53)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/07/content_6210380.htm

 ●「新浪網」(2007/06/07/20:25)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-06-07/202511978634s.shtml

 ●「新華網」(2007/06/07/23:52)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-06/07/content_6213016.htm




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