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日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)















 もう一週間前のことですが、3月13日、六本木で行われたデモ「2010 チベット・ピース・マーチ・イン・ジャパン」に参加してきました。

 毎年この時期には、必ずフリーチベットのデモが開催されます。チベット人及びフリーチベット支援者にとって、一年のなかで最も重要な時期だからです。

 まずは1959年3月10日のチベット蜂起があります。

 意識している方にとっては記憶に新しいことですが、2年前である2008年の3月10日にはチベット蜂起50周年ということでラサなどを中心にチベット人による抗議活動が展開されています。

 それに対し中国当局の治安部隊、つまり武装警察と人民解放軍が容赦ない武力弾圧を実施し、数多くのチベット人の血が流れ、また命が奪われました。

 ●シリーズ:チベット弾圧2008

 51周年であり、2周年でもある。フリーチベットのデモを行う節目の時期としては、またとない最良のタイミングなのです。

 という訳で今回も実施されたのですが、実は今回のデモについては、告知のあった当初から不満の声が多数あがり、評判があまり芳しくありませんでした。以下のような注意事項があったためです。


 ●当日掲揚する旗は、チベット国旗で統一させていただきます。

 ●先頭者が持つ旗・大断幕も、チベット国旗だけとさせていただきます。

 ●プラカードは、主催者の用意した物に限らせていただきます。

 ●デモ行進時には、主催者の用意した配布物以外は禁止です。

 ●過激な服やコスチューム、過激な批判の言葉が書かれているTシャツ等着用でのご参加は、ご遠慮いただきたいと思います。皆さんのご理解・ご協力を何とぞよろししくお願い申し上げます。

 http://tibet-cj.org/peace_march2010/notice.html


 純粋にチベット一色で、ということなのでしょうか。日の丸をはじめ東トルキスタンや南モンゴルの旗はダメ、というのはまあ理解できますが、チベット青年会議の旗も不可です。

 また、プラカードの持参も禁止されたこと、何が「過激」なのかよくわかりませんが「過激な服装」での参加もダメ、コスプレもダメ、ということで、二重三重の縛りが入った実に窮屈なデモということになりました。これを嫌って参加を見送ったフリチベサポーターも少なくないようです。

 私は、別の点で憤慨しました。主催者が「在日チベット人コミュニティ(TCJ)」である、ということについてです。

 在日チベット人主体のデモであれば、上に書いた厳重な縛りは理解できます。詳しくは知りませんが、恐らく在日チベット人の少なからずは中華人民共和国のパスポートを所持していることでしょう。ということであれば、表立って真っ向からの中共批判は差し控えたいという気持ちがあっても不思議ではありません。

 実際、デモの趣旨については、

「今回のチベット・ピース・マーチは、何かを批判するというよりも、チベット本土(自治区)に住んでいるチベット人が元気になるようなマーチにしたいと考えてます。」

 と告知されていました。在日チベット人としては、現状でデモをやるならこれが精一杯のところではないかと思います。

 ただし、今回のデモの開会式において代読された「チベット民族平和蜂起51周年記念日におけるダライ・ラマ法王の声明」には明確に中共批判が織り込まれていました。この内容からすると、今回のデモはダライ・ラマ法王の「3・10声明」に忠実なものではなかった、ということもできます。

 ――――

 で、私が憤慨した点というのは「日本の支援団体は何をやっているんだ」ということです。

 TCJを矢面に立たせ、デモの主催者とすることからしておかしいのではないか、と思いました。

 日本には、スタンスこそ様々なれどチベット支援団体が多数存在します。それをまとめ上げているいわば事務局的なものが、TSNJという組織です。

 その内情については、中の人でない私には全くわかりません。しかしTSNJがマトモに機能していれば、もっと間口が広く、より強い政治的アピールを前面に押し立てたデモが実現していたのではないでしょうか。

 昨年の「ピースマーチ」には、雨模様にもかかわらず約300名が参加しました。

 私自身は当時、

「ダライ・ラマ法王の甥御(側近でもある)がゲスト参加までしているのに、たった300名とは何事か。せめて500名は集めるべきだろ。事前告知が甘過ぎだ!」

 と、怒髪衝天だったのですけど。

 而して今回のデモは、暖かく晴天にも恵まれたというのに、参加者は約170名。たったの170名。何をか言わんやであります。

 ――――

 厳しい縛りがあったおかげで、デモ自体は非常に慎ましやかでオシトヤカで大人しいものとなりました。シュプレヒコールも、

「チベットに自由を」
「チベットに人権を」
「チベットに平和を」

 といった内容に終始し、「チベットに自由がないのはなぜなのか」ということで、本来叫ばれるべき中共批判は皆無。何やら修道女たちが行う清浄な儀式のようで、政治的示威活動と呼ぶにはまことに似つかわしくないものとなった、というのが個人的な感想です。

 ちょっと悪い言い方をすると、これ、「くれくれデモ」なんです。

 「自由をくれ」「人権を寄越せ」「平和をもたらせ」と叫んでばかりで、なぜそういう現状なのかという問題の所在である中共政権による侵略・同化政策には全く言及していません。これでは沿道の人には実情が伝わらないではありませんか。「察してくれ」というところなのでしょうが、政治的アピールとしては失格です。

 20年前、中国で生起した大学生・知識人による民主化運動、これには当時上海留学中だった私も積極的に参与した(笑)のですが、このデモにおいて学生たちは、

「民主万歳」
「自由万歳」
「報道の自由を」

 と叫ぶ一方で、

「李鵬下台」(李鵬首相は辞職しろ)
「小平下台」(トウ小平は蟄居しろ)

 とコールすることを忘れませんでした。忘れなかった、というより、それが街頭での政治的示威活動というデモの本来的な姿だからです。これが当たり前といっていいでしょう。

 ――――

 その意味で、今回は中共批判をスッポリ欠落させた、見事なまでに片肺飛行でした。ただし私はこの点については、主催者であるTCJは精一杯のことをやったと思っています。TSNJの下にあるチベット支援団体の不作為にこそ問題があるのではないでしょうか。

 ちなみにTSNJの代表職というのは任期1年で、傘下団体の長の持ち回りとなっています。要するに昨年のピースマーチと今年とではTSNJ代表が異なりますから、スタンスが一変し、やむなくチベット人が矢面に立ったということなのかも知れません。そのあたりの事情について私は全く知らないので、こうして邪推するしかないのですけど。

 もしTSNJが動いた結果がこのデモだというのなら、これはもう言語道断というほかありません。

 事情はどうあれ、フリーチベットの節目のデモとしては全くお粗末な内容でした。こういう手淫めいたデモには今後、参加することはやめよう、と思ったほどです。

「こんなデモじゃ、良いことなんか何もないですよ。日本のフリチベ運動に寄与するところなんか絶対にありません。まあ、何もしないよりはマシかも知れませんけどね」

 と、タシィさんに愚痴ったりもしたりして(笑)。とりあえず今回の主催者であるTCJではなく、日本のフリチベ支援諸団体の不作為(あるいはお粗末)に私は怒っております。

 ――――

 さて、以下は御家人こと倉田典膳、じゃなくてカワイモリタローが台湾・香港での拡散用に制作したものですが(実は硬軟とり混ぜて色々発信していたりするのです)、まあ手淫のようなものです。

 覚悟してはいたのですが、久しぶりに自分の北京語を聴いてみたら発音も抑揚も余りに日本人&香港人テイストに堕落していて、香港渡航以前の時期に比べると非常に退化しているので大層凹みました。アドリブなんで話している内容もgdgdですし。

 これから何とか精進しますので今回は(いや今しばらくは)どうか御勘弁下さい。m(__)m








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 ウイグル人はその故地を、中共政権によって強制収容所に変えられてしまった。

 ……という印象が、強く残りました。日本ウイグル協会が主催する緊急シンポジウム「ウイグルで何が起きているのか?」に出席しての感想です。

 今日のウイグル、チベット、内モンゴルは明日の台湾であり、明後日の日本である。……との危機感も、再認識させられました。

 コア層のコア層によるコア層のためのシンポ、というべき内容で、平素からウイグルをはじめ中国情勢に留意している人にとってはサプライズに乏しい面があったかも知れませんが、パネリストの方々に間近に接し、直接語りかけられると、テーマについての問題意識や感慨もまた新たになります。

 個人的には意義深く非常に良いイベントでした。





 ウイグル人はその故地を、中共政権によって強制収容所に変えられてしまった。

 ……との感想を改めて掲げておきます。



「ウイグル人はすでに自分の地域で二等市民になっているんです」

「職場を奪われ、自由を奪われ、自分の行動が自分の考え方で自由にできない、それが全てです」

「ウイグル人は現地で、命だけは自分のものとして持っていますけど、それ以外の文化、宗教、全部、全てが中国、つまり政府や漢人によって奪われているんです」



 ……とは、今回のメインキャストで日本ウイグル協会会長・世界ウイグル会議日本全権代表のイリハム・マハムティさんが当ブログのインタビューに際して語ってくれたことです。今回のシンポジウムでは、イリハムさんをはじめ各パネリストがこの点を強調し、また中共政権の覇権主義に警鐘を鳴らしました。

 ウイグル人の直面している苛酷で悲惨な状況は、すでにチベットや内モンゴルにおいても現出していること。

 台湾では対中融和路線を掲げる馬英九・総統が国民党主席にも選出され、中国のカネとヒトに呑み込まれそうな形勢にいよいよ拍車がかかりそうであること。

 そしてこうした状況は、日本にとっても、決して他人事ではないこと。民主党が掲げる諸政策を観じれば、総選挙による政権交代が行われた場合、その危険性はいよいよ高まることでしょう。

 他人事では、ないのです。

「ウイグル地域やチベットだと警察は何かあると5分もかからずにやって来る。降って湧いたように多数の警官や武装警察が駆けつけてくる。しかし6月26日に広東省の玩具工場で起きた漢人によるウイグル人暴行事件では、警察は5時間後にようやくやって来た。しかも漢人の暴行を眺めるばかりで制止しなかった」

 とイリハムさんは今回のシンポジウムで語っています。これをパネリストの一人である西村幸祐さん(ジャーナリスト・チャンネル桜キャスター)が受けて、

「日本でも去年の長野で、聖火リレーのときに同じことが起きたではないか。日本の警察官は中国人たちの横暴を眺めるばかりではなかったか」

 という趣旨の発言を行いました。まことにその通りであって、「他人事ではない」ことが、すでに日本でも起きているのです。

 ――――

 中共政権によるウイグル統治60年の歴史をイリハムさんの発言から拾ってみると、次のようになります。



 ●60年前に中国の軍隊がウイグル地域(東トルキスタン)に入ってきた。

 ●中国の軍隊はウイグル地域を軍事的に制圧した。

 ●制圧完了後、進駐軍の一部が新疆生産建設兵団として屯田兵のような形で同地に残留した。

 ●新疆生産建設兵団がまず手をつけたのは、工業ではなく農業だった。

 ●新疆生産建設兵団はウイグル人から最も好適な農地を奪い、さらに水源を奪ってその付近を開拓した。

 ●ウイグル地域の農業は地下水ではなく、山からの雪解け水に頼っている。

 ●このため新疆生産建設兵団の駐屯地はいずれも山の近くにある。

 ●水源を奪われたウイグル人の農民は、新疆生産建設兵団から水を買わざるを得なくなった。

 ●やがて新疆生産建設兵団は工業建設に着手した。

 ●中国は「各職場において地元少数民族の占める比率を65%以上とすること」との法律を定めた。

 ●これによって多数のウイグル人が職を得ることができた。当時はウイグル地域へ定住しようという酔狂な漢人(漢族=中国人)などいなかったから。

 ●しかし文化大革命での下放運動を契機に、中国当局による植民政策(漢人の強制移住)がどんどん推進された。

 ●漢人が激増した結果、ウイグル人は職を奪われ、「65%雇用」の法律は有名無実化した。

 ●貧困のため売血に走ったウイグル人たちが同じ注射針を使ったことにより大量のエイズ感染者が出現した。

 ●事態を打開しようと当局に善処を求めるウイグル人は「民族主義者」として弾圧された。

 ●2000年からはウイグル語で教育を行う自由が奪われた。いまではどんな僻村でも中国語教育が強制されている。

 ●2006年から「就職斡旋」という名目でウイグル人女性を中国本土へ連行し、漢人のやらない低賃金の仕事をやらせるようになった。

 ●連れていかれた女性は15~25歳の未婚の処女のみ。これは明らかな同化政策としてウイグル人の反発を呼んだ。



 こうして蓄積された民族の怒りが、6月26日の広東省の玩具工場で発生した漢人によるウイグル人暴行事件で頂点に達します。

 ウイグル人はこの事件を、インターネットで知りました。YouTubeに出回り、日本のテレビニュースでも使われた、あの暴行映像です。しかもこの映像は撮影者が漢人であるばかりか、一方でウイグル人を暴行した漢人たちを英雄扱いし、ウイグル人を軽侮し罵倒する言論が中国国内の掲示板にあふれ返ったといいます。

 この情報に接して驚愕したウイグル人は、怒りを秘めつつも事件の真相を説明してくれるよう地元当局に請願し、その回答を待ちました。5日間待っても回答がないため、ネットを通じて集まったウイグル人大学生が、ウルムチ市でデモ行進を実施したのです。

 「官逼民反」という中国語があります。「官」による横暴が極限にまで達したとき、追い詰められた「民」はその成否を問わずに蹶起する、という意味です。

 ところが、ウイグル人学生たちによるこのデモは、「蹶起」ではありませんでした。中国の国旗である五星紅旗を掲げ、ウイグル人も同じ中国国民として漢人と平等に扱ってくれ、そして事件の真相を説明してくれ、という意思表示だったのです。

 このデモに他のウイグル人も合流し、膨れ上がったデモ隊が政府庁舎のある人民広場へ入ろうとしたとき、その前に立ちはだかった治安部隊が群衆に実弾射撃を行い、また装甲車をデモ隊に突入させてウイグル人を次々に轢き殺していったといいます。

 ……が、当ブログが以前指摘したように、その現場を捉えた「流出画像」「流出動画」が現在に至るまで出て来ないため、全ては想像するしかありません。

 ――――

 想像の根拠となりそうなものはあります。

「7月7日未明時点で公安部門は暴力・破壊・略奪・放火の容疑者としてすでに1434名を逮捕。このうち男性は1379名で、女性は55名」

 という新華社電です。

 ●「新華網」(2009/07/07/08:40)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11664971.htm

 当局発表ということになりますが、これは当ブログでしばしば指摘しているように、尋常な数字ではありません。中国当局はデモ隊を暴徒に置き換えていますが、その総勢は3000名とも1万名ともいわれます。

 異常ではありませんか。「1434名」という数字の多さと、逮捕劇の迅速さ(たった丸一日)が、です。

 デモ隊が3000名とすればその半分、1万名としても参加者の15%が逮捕されているのです。官民衝突があったとすれば、治安部隊が懸絶した武力、例えば密集した強力な火力でウイグル人を圧倒しない限り、短時日にかくも高い比率の逮捕者が出ることは考えられません。

 ここからさらに想像することもできます。「1434名を逮捕」というこの1434名の中に、治安部隊による武力鎮圧での負傷者はもちろん、実は死者数も計上されているのではないか、ということです。

 ――――

 シンポジウムが始まる前に、唯一冷房のよく効いていた喫煙室にて偶然、イリハムさんと連れションならぬ連れモクをする格好になりました。

 イリハムさんによると、いまウルムチでは武装警察が令状なしでウイグル人の住まいを家宅捜索しているのだそうです。実質的な戒厳令状態といったところでしょう。

「銃器を所持しているかも知れないから」

 という理由で、武装警察がウイグル人女性の「身体検査」を行う、というセクハラも横行しており、怖くてとても外出できない状態だ、とのこと。

 また最悪の場合、「流出」や連携成立を恐れる当局がウイグル人から携帯電話を強制的に回収し、中のデータを全て消去してから返還するという措置すらとられるかも知れない、ということでした。

 自民族の土地が強制収容所になってしまう怒りと悲しみと恐怖。他民族による苛酷な統治を受け動物のように扱われ、せめて人間としての尊厳を求めんとするや、待っているのは容赦ない武力弾圧。

 それが正にいま、ウイグルで起きていることなのです。

 ――――

 パネリストの一人である横浜桐蔭大学教授・チベット文化研究所所長のペマ・ギャルポさんが、

「こうして見渡すと、大体いつも集会にお見えになる同じ方々で、喋る人たちも同じで」

 という意味の話をして聴衆の笑いを誘ったあと、

「本当はこの話を、ここに来ていない人たちに聴いてもらうべきだと思います」

「だからこそ、ここにいる人たちは、他の人たちにどんどん情報発信していかなければならないのです。今日のシンポジウムの意義のひとつも、そこにあります」

 と語っていたのが印象的でした。

 質疑応答を終えて閉会の挨拶に際し、イリハムさんに最後の質問として「日本人と日本に望むことは何か?」という問いかけがなされました。

「日本人に望むことは、貴重な一票、良い人を国会に送って、日本を本当に変えてくれる方々を選んでほしいということです。国会が変われば政府が変わって、私たちの運命に関心を持つ政府になってくれる。そうすれば私たちのいまの状態は必ず、早めに改善されるだろうと私は思っています」

 というのが、イリハムさんの回答でした。

 ――――

 余談になってしまうかも知れませんが、今回のシンポジウムでは、先日当ブログにトラックバックを打って下さった西村幸祐さんに初めてお目にかかり、ご挨拶させて頂くことができました。西村さんからは温かい言葉で励まして頂き、身の引き締まる思いがしました。

 また、西村さんはやはり今回のパネリストでチャイナウォッチャーである拓殖大学客員教授の石平さんに私を引き合わせて下さいました(西村さん、ありがとうございました)。石平さんからは、

「互いに頑張って、中共にとっての『大毒草』をあちこちで育てましょう」

 という激励の言葉を頂きました。かくなっては、不肖御家人も相勤めなければなりません。

 ……そして、ここまで読んで下さった皆さんも、もはや御同朋であります。

 一人ひとりそれぞれが、「大毒草」の輪を広げていこうでは、ありませんか。





 余談の余談です。会場では多彩なウイグル関連グッズが販売されていましたが、その中で一冊の本に目が留りました。平積みにされているものが、どんどんさばけていくのです。

「中国、発禁の書!」

「ウイグル文学初の邦訳」

「『中国の火薬庫・新疆ウイグル』は、なぜ独立を求め続けるのか?その原点を描いた壮大な歴史小説。封印された物語がここに甦る!」

 ……といった帯の文字が目を魅かずにはおれません。


 
英雄たちの涙―目醒めよ、ウイグル
アブドゥレヒム・オトキュル
まどか出版

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「ウイグル人の怒りと悲しみの理由が、これを読めばよく理解できます」

 という説明にも誘われて、迷わず購入しました。

 「ウイグル文学」ということが、何よりもまず魅力的。養生に努めつつ、じっくりと読んでみるつもりです。








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★★★ウイグル人の苛酷な境遇を知る上での必読の良書3冊★★★


中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書)
水谷 尚子
文藝春秋

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中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕
高田 純
医療科学社

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 広東省の玩具工場における漢人(漢族=中国人)によるウイグル人殺害事件について、新疆ウイグル自治区ウルムチ市にて真相究明を請願するウイグル人のデモ隊に治安部隊が実弾射撃などを行い騒乱に発展、多数の死傷者を出した事件が発生してから、もうすぐ2週間になります。

 中国は当ブログのいう「六四モード」、つまり圧倒的な軍事力で現地を制圧しておいて当局が思うように事を運ぶ一方、中国全土に対しては「ウイグル人による暴動で漢人に多数の死傷者が出た」との印象操作を執拗に繰り返しています。

 具体的には、現地においては民族衝突の芽を排除する一方、暴動嫌疑などでウイグル人を拘束するなど、ウイグル人を抑圧する形での「治安回復」が行われている模様です。

 これに対し、いわれなき差別を受けるウイグル人には事件で大量に増派されてきた「進駐軍」を前に、口にはできぬ憤懣が蓄積されつつあり、一方ですでに多数派を構成している漢人の側でも、ウイグル人に対する抜き難い憎悪が強まっているようにみえます。

 割れてしまった鏡は、もう修復することができません。現地の事態はもはやそこまで進んでしまっているように私には思えるのですが、如何でしょうか?

 さらにいえば、前回指摘した通り、中共政権はその国是から、強圧的な手法で、腕ずくで少数民族を黙らせる以外にもはや選択肢は残されていません。ただし、強圧的な手法が招くリスクを極力回避すべく、当局は当初より一貫して、

「『ウイグル世界会議』をはじめとする内外の分離独立・テロリスト勢力の煽動によるもの」

 と今回の事件を位置づけ、民族衝突という色彩を極力薄めようとしています。見え透いた三文芝居のようでもありますが、国際世論やイスラム諸国がウイグル人への同情・支援に回らぬ限り、この通らぬ道理も通ってしまうことになるのです。

 しかし、中共政権がより恐れているのは、民族衝突を発端に中国国内で「漢人vs漢人」という状況が現出することかも知れません。

 ――――

 中共政権と「世界ウイグル会議」の間で展開されている情報戦は、いまのところ中共政権側がイニシアチブを握っており、「世界ウイグル会議」は対応が後手後手に回っているように思います。

 典型例として挙げたいのは、御存知アルカイダの一件です。



 ●アル・カーイダ系組織が中国人標的…香港紙(YOMIURIONLINE 2009/07/14/13:26)

 【香港=竹内誠一郎】香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは14日、国際テロ組織アル・カーイダと関係するグループが、中国新疆ウイグル自治区ウルムチの暴動でイスラム教徒が多数死亡したことへの報復として、北西アフリカで中国が展開する開発事業やそこで働く中国人労働者を標的としたテロを画策していると伝えた。

 同紙によると、アルジェリアを拠点とする「イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダ」が報復を呼びかけている。英国の民間情報会社「スターリング・アシント」が、同組織からの指示を察知したという。アル・カーイダ系組織が、中国を直接威嚇するのは初めてとみられる。



 「英国の民間情報会社」というものの信憑性もさることながら、『サウスチャイナ・モーニングポスト』(南華早報)も英字紙とはいえ、著名なチャイナウォッチャーであるウィリー・ラム(林和立)氏を解雇するなど、中共政権の「植民地」と化した香港において生き残るべく親中色を強めていることを覚えておくべきかと思います。

 さらにこの「アルカイダ」の一件の直前である13日には、ウルムチ市でウイグル人男性2人が治安部隊によって射殺されています。当局報道によれば、「犯人」たちは「聖戦」を叫んでいたとか何とか。その翌日に「アルカイダ」報道ですから、どうもタイミングが絶妙すぎるきらいがあります。

 しかも当局は「アルカイダ」報道に素早く反応してみせました。



 ●在外企業の安全守る=アルカイダの報復宣言で中国…新疆ウイグル暴動(時事ドットコム 2009/07/14/18:30)

 【北京14日時事】中国外務省の秦剛副報道局長は14日の定例会見で、新疆ウイグル自治区での暴動でイスラム教徒のウイグル族に死者が出たとして、国際テロ組織アルカイダ系の組織がアフリカ北西部で働く中国人を標的に報復を宣言したとの報道について、「関係国と必要な措置を講じ、国外の中国企業などの安全を守る」と述べた。

 秦副報道局長はこの中で、今回の暴動について「反動勢力による暴力事件で、民族、宗教、人権問題ではない」と指摘。中国政府が法に基づき対応したと強調した。



 これで「アフリカ北西部で働く中国人」が一人でも死のうものなら、当局は「アルカイダ」糾弾を「世界ウイグル会議」批判とコンボで連呼し始めることでしょう。世界で最も命の値段が安い国ですから、国家安全部あたりに働かせれば「テロ」芝居はすぐに仕立て上げられます。

 「世界ウイグル会議」は、この「アルカイダ」でも先手を打たれてしまいました。本来なら当初、中共政権から事件の元凶として名指しされた時点で、それを否定するとともに、ウイグル人に死傷者が出たことについて暴力的報復を望まない旨、世界に強いメッセージを出しておくべぎでした。

 「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席は米政府諮問機関の会合に出席した際、今回の事件を「天安門事件のようだ」と指摘したそうです。事実だとすれば、重大な錯誤を犯していることになります。

 ●亡命組織主席が中国非難 「天安門事件のよう」(共同通信 2009/07/16/08:50)

 天安門事件とは、全く異なるのです。

 ――――

 昨年3月のチベットにおける事件に際して、私は以下の記事を書きました。

 ●【チベット】「六四モード」を崩すには?【中間報告】(2008/03/22)

 この中で、もし「六四モード」を崩すことができるとすれば、それは「流出」か「変質」に拠るしかない、と私は指摘しました。

 「流出」とは、そのまんまの意味、つまり「流出動画」ということです。ウイグル人のデモは当初携帯メールなどを通じて動員が行われたようですが、治安部隊の実弾射撃や装甲車の突入といった「動かぬ証拠」が、ビデオであれ携帯動画であれ、とにかくビジュアルとして現在に至るまで全く出てきていません。

 1989年の天安門事件のときは、軍隊が民衆に発砲する映像や画像が内外のプレスによってしっかりと捉えられ、全世界に報道されました。しかし今回の事件では、それがない。これでは国際社会の支持をとりつけるのは困難にならざるを得ません。

 一方の中国側は、お馴染みのウイグル人による破壊行為やブラッディな漢人ばかりを映した動画を発信し、内外のメディアにも配布しました。

 だからといってみんなが中国の言い分を正当とするには難しいほど中国には「前科」がたくさんあります。ただ、ウイグル人が治安部隊に武力鎮圧される「証拠」が出て来ない限り、「世界ウイグル会議」側が攻勢に立つことは容易ではないでしょう。

 惜しいことです。

 ――――

 「流出」と並ぶもうひとつの要素である「変質」とは、事態が「ウイグル人vs漢人」から「漢人vs漢人」へと質的転換を遂げてしまうことです。これを現出せしめるのは「流出」以上に困難なものでしょうが、実は今回、その萌芽がちょっとだけ見られました。当局は大汗をかいたことでしょう。

 ……とは、ウルムチ市の漢人が徒党を組み、武装してウイグル人を襲撃した事件です。この過程で、武装漢人と治安部隊の間に小競り合いが発生しています。これが私のいう「萌芽」です。民族衝突が官民衝突に、しかも「漢人vs漢人」という構図に変質しているではありませんか。

 結局、この小競り合いは小競り合いのままで終息してしまいましたが、もし武装漢人側に官民衝突による死傷者が出るようであれば、

「なぜおれたちを阻むのか?」
「なぜウイグル人を守るのか?」
「なぜおれたちを弾圧するのか」

 ……という形で、漢人の怒りの鉾先は「官」へと転じかねないのです。都市暴動の様式に則るのであれば、武装漢人どもは死体を担いで自治区政府庁舎へと殺到するところでしょう。

 このように鉾先が転じてしまい、これが火種となって新疆ウイグル自治区内に拡散されることになると、あちこちで炎が上がりかねません。先日のエントリーで言及したように、新疆生産建設兵団など同自治区に暮らす漢人の間にも、暴動の噂が流れるほどの鬱屈が蓄積されており、その可燃度は決して低いものではありません。

 こうなると、もうウイグル人は埒外で、漢人世界での官民衝突へと演目が移ります。「変質」という訳です。まあ今回は不発に終わりましたが、広東省の玩具工場で起きたような民族衝突が再発したとき、治安当局の介入の仕方如何では事態が「変質」することになるでしょう。

 ――――

 ともあれウイグル人側にとって、事態を打開する上での焦眉の急は「流出」です。3000名なり1万名が参加したデモであれば、某かの映像が出てきてもおかしくないと思うのですが……。





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 ウイグル弾圧糾弾デモに昨日12日、参加してきました。

 結論から先にいうと、時間的余裕のないなか急ごしらえのデモにしては、なかなか健闘したという印象です。



満堂の胸を打ったイリハム・マハムティさんの名演説。


一連の事件の流れ(クリックで拡大)。

 
宮下公園を埋め尽くした参加者。


桐蔭横浜大学・大学院教授のペマ・ギャルポさん。

 
繁華街を行くデモ隊。


私の場合は「日本人のため>義によって助太刀仕る」。


 懸念されていた天候も晴れ間がのぞく上々な空模様。細長い形をした集合場所の宮下公園へ行くともうぎっしりと人で埋まっていて、おおこりゃ凄いぞ。……とワクワクしたら後ろの方はスカスカでちょっとガッカリ。500名には届かないな……と思っていたのですが、どんどん人が入ってきて人数が膨らんでいきました。

 デモの終盤に、最後尾にいた警官の方に人数を尋ねると、

「600人くらいだね。今回は結構集まった。途中参加の人がずいぶんいたよ」

 とのこと。1000名くらい来るかな?と期待していた私はちょっと肩透かしを喰った格好でしたが、時間がないため告知も不十分でしたし予報では雨も降りかねない天気とされていたので、上々というべきでしょうか。

 デモ隊は繁華街も通るコース取りで、とりあえずウイグル弾圧に怒っている人間がこんなにいるんだ、ということは十分に伝わったと思います。目抜き通りを進むのは、不特定多数へのアピールという点でやっぱりいいですね。以前私が当ブログにてくさした、

「1000名もの人数を擁しながらすでに2度やっているNHKへの突撃を再度繰り返して広範な一般市民へのアピールを全く優先せず、生卵を壁に投げつけてグシャリと無駄にしたような愚昧なデモ」

 とは大違いです。ああ今ここに1000名の人数がいれば、と思わずにはいられませんでした。1000名を4列縦隊にすると、沿道から見ると延々250列にもなります。その隊列が繁華街を縫っていくと、実数以上の大人数にみえるものなのです。その存在自体が大きなアピールとなり、ニュースとしては旬な話題であるウイグル弾圧問題だけに、通行人により強い印象を残せたのではないかと思います。

 ――――

 ただし急造デモの悲しさで、梯団ごとのコーラー(音頭取りの人)に善し悪しがありました。シュプレヒコールの合間合間に、

「御通行中の皆さん……」

 という形で、ウイグル人が中国共産党による民族浄化ともいえる境遇にさらされていること、マスコミがウルムチの事件を十分に伝えていないこと、実はウイグルで40回を超える核実験が1996年までに実施されていて、シルクロードに魅かれて同地を訪れた日本人観光客も被曝した可能性があること、……などを柔らかい語気と簡潔な語り口でアピールしてくれたらなあ、というのが残念な点です。

 実際にそれをやっているコーラーもいたのですが、シュプレヒコール同様の悲憤慷慨調ですし語る内容も不備が多く、沿道にはその内容が伝わっていないようでした。要するに人数ではアピールできたものの、

「え、それマジ?」

「そんなことあったの?全然知らなかった」

 といったインパクトには欠けていたように思います。……私は「piyo」さん、「dongze」さんと一緒に歩いていたのですが、写真撮影をしたりしているうちに二人とははぐれてしまい、結局最後尾でゴール。ただその分、梯団ごとの差異をみることができてよかったです。

 ――――

 あえて難じていうなら、デモの前に開かれた宮下公園における集会が来賓スピーチがだらだらと続いてやたらと長過ぎました。

 最初にマイクを執ったイリハム・マハムティさんの演説は正に魂の叫びともいえるような素晴らしい内容(文末動画参照)。感極まって泣き出す女性参加者もいるほど懸命で一途な思いを聴衆に訴えるもので大変良かったです。

 そこで出陣!となれば意気軒昂で良かったのでしょうが、そこから来賓スピーチが延々と1時間余りにも及び、「dongze」さんも「piyo」さんも私もこれには辟易。だって俺たちデモするために来てるんだぜ?てなところです。

 人間関係のしがらみとかデモにおける型のようなものがあって仕方がないのかも知れませんが、振り返ってみると出陣集会はデモの時間とほぼ等しいかそれ以上!で、デモに来た者としては何やら時間を無駄遣いしているようで士気減衰。

 イリハムさんが心を打つ本当に見事なスピーチをしたので、頼むから残りのリレートークは解散式でやれよ、といった気になりました。小学生のころ、運動会の開会式がやたら長くて毎年イライラさせられましたが、まあそんな感じです。

 ――――

 最後になりますが、現場では色々な方と接することができました。「piyo」さん、「dongze」さん、昨年長野で奮闘した「しんたろう」さんのほか、当ブログの二度にわたる電話インタビューに快く応じてくれたイリハムさんをはじめ、在日チベット人の中では見識・人格とも群を抜く存在であるペマ・ギャルポさん、TSNJ前代表で私にとっては先輩にあたる田中健之さん、その後見役ともいえるいつもダンディーな池尻泰顔さん、それから最近大車輪の活躍でこちらはただただ瞠目するばかりの「八角」さんなど、いつもお世話になっている方々に御挨拶させて頂くことができました。

 ともあれ、準備期間が短いことを考えれば今回は見事なデモだったと思います。今回得た経験値をバネに、アピールの要点をより良く沿道に理解してもらえるようなデモへと一皮むければいいな、と思いました。主催者・関係者の方々、本当にお疲れ様でした。

 実は私には外出禁止令が医者から出ていたのですが、それを破ってのデモ参加。さすがに身体にこたえました。という訳で、このくらいで勘弁させて頂きます。









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 前回紹介した中共政権によるウイグル弾圧に抗議するデモが本日、行われます。

 「渋谷駅前での街頭宣伝」「中国大使館前での抗議」「デモ」の三本立てなのですが、私は体調を考慮してデモ一本に絞ることにしました。

 本当は大使館前で中国語の発声練習でもしようかと思って文言を準備していたのですけど。

「強烈抗議中共軍警血腥鎮壓維吾爾人的和平請願活動!」

「強烈抗議中共獨裁政權在東突大力推進種族清洗政策!」

「中國中國,可憐的中國,一直以來並非是小國,但再花多少年也成不了大國!」

 ――――

 いささか支那……じゃなくて品下る物言いも実は用意してたりなんかして。でも良い子の皆さんはこういう言葉を口にしてはいけません。

「來生不做中國人,來世做豬都不做中國人!」

「中國人[o阿]中國人,男盜女娼遠不如豬!」

 ……ないとは思いますが、万一、変な中国人が近づいてきたら、

「一句話,平反六四!」

 と、一刀のもとに斬って捨てましょう。

 ――――

 集合場所の宮下公園は広いところではありませんが、そこを立錐の余地もないほどの人で埋め尽くす光景がみてみたいです。

「みんなで歴史をつくりましょう」

 などと大袈裟なことは申しますまい。

 それでも、中国国内に残してきた家族を慮って表立って活動できない在日ウイグル人たちにとっての、メモリアル・デイになるよう頑張ろうではありませんか。

 ちなみに時間的にちょっと微妙なのですが、閉店まで間があるようでしたら、私はデモ終了後に「約束の場所」で独り反省会を開くつもりです。

 ――――

 プラカード、カンバッジ、東突Tシャツは準備完了で、懸念材料は空模様のみ。

 私たちの願いが、どうか天まで届きますように。


  










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 新疆ウイグル自治区・ウルムチ市で7月5日、ウイグル人によるデモが行われ、これに治安部隊が流血の武力鎮圧を行ったことから、民族衝突事件へと発展した一件、事態は少なくとも現場においては「戦後処理」の段階に入りつつあります。

 ただし、一方では同市の人口の7割を占める漢人(中国人)が、多数派であること、また治安部隊が「寛容」であることに乗じて、ウイグル人を大勢で襲撃し袋叩きにするといった事件、いわゆる「人間狩り」が散発的に発生している模様です。





 「戦後処理」については書きたいことが色々あるのですが、もう少しネタを寝かせて状況を見極めたいという気持ちがあります。……もちろん、明日12日に控えたデモへの出撃準備と体調の調整を優先させているということも、ありますけど。

 ……てな訳で今回は週末恒例の楊枝削り。今回の事件を読み解く上で、これだけは読んでおきたいという必読の良書が3冊あります。


 
中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書)
水谷 尚子
文藝春秋

このアイテムの詳細を見る



 
中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕
高田 純
医療科学社

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 それから、改めてデモの告知をば。渋谷駅頭での街頭宣伝と中国大使館への凸が新たに加わりました。



―――― 告 知 ――――

★★★7月12日「中国政府によるウイグル人虐殺抗議デモ」★★★


 ●渋谷駅前街宣(13時30分頃から14時30分まで)

 ●中国大使館前抗議(13時頃から。麻布税務署前集合)

 ●デモ

 【集合場所】 宮下公園(東京都渋谷区神宮前6丁目)

 【日時】2009年7月12日(日)

     15:00 集合開始
     15:30 集会
     16:15 デモ行進
     16:45 解散

 【コース予定】宮下公園→電力館→渋谷区役所→神南→渋谷駅前→宮益坂下→宮下公園






 すでに有志によるプラカード用画像の制作・拡散が始まっています。



ネットプリント番号【80811852】


ネットプリント番号【83825441】


ネットプリント番号【22980310】


 詳細は日本ウイグル協会のウェブサイトを御参照下さい。こちらにも秀逸なるプラカードの図案が色々と揃っています。

 ――――

 最後に。

 皆さん、これまでに、マスコミの報道でかように「ウイグル」という単語があふれる事態があったでしょうか?

 まさに千載一遇の好機、なのです。

 このチャンスを逃すことなく、ウイグル人のため、また本質的に同じ危機を抱えている日本人のため、人数で押しまくって問題の周知徹底に努めようではありませんか。

 中国におけるウイグル人の境遇、シルクロードでの核実験、そして中共政権によるウイグル弾圧が、日本人にとって決して対岸の火事ではないことを。





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 流血の武力鎮圧から3回目の夜を迎えています。外遊中の胡錦涛が慌てて帰国する破目になった今回の一件、事態は混迷化の度を深めているかのようです。

 しかし観じ切ってしまえば、カギはタイトルの通り、多数派を形成する漢人(中国人)の暴力を当局が抑えられるか、ということになってきたように思います。

 当ブログの朝駆けインタビューに応じてくれた在日ウイグル人、イリハム・マハムティ氏が代表を務める日本ウイグル協会のウェブサイトには、8日に入ってから異様な情報が並び始めました。



 事件の簡単なまとめ。(7月8日20時30分更新)

 6月26日中国広東省で失業した漢人が流したデマがきっかけで、玩具工場で働くウイグル労働者が襲撃され多くの犠牲者が出た。
 ↓
 7月3日ウイグル人の世界組織、世界ウイグル会議がその事件に抗議するために世界同時抗議を行った。
 ↓
 7月5日中国ウイグル地域ウルムチでもウイグル人による抗議デモが行われた。中国政府は武力で鎮圧。
 ↓
 7月6日カシュガル、グルジャなどウイグル各地の都市で抗議デモが発生。
 ↓
 現在ウイグル地域では、漢人によるウイグル人への襲撃虐殺、漢人とウイグル人の衝突が起きている。



 ……と、民族衝突の事態が事件の起きた新疆ウイグル自治区・ウルムチ市以外へ拡大する一方、



 2009/07/08/11:10

 ●ウルムチの20ヶ所で漢人によるウイグル人襲撃事件が起きたが、中国政府の武装警察は来ていない。

 ●カシュガルの小学校を漢人が襲撃。20人の子供を殺害し、遺体を道路に捨てた。

 ●中国政府は生産建設兵団の中国人に武器を配りはじめた。



 ……など、多年にわたる植民政策で多数派に転じた漢人の跋扈が始まったことを思わせるニュースが出てきています。まるで6月26日の広東省の玩具工場で起きた事件を再現するかのような事態です。

 実はまずこのニュースに接して私は、事態が情報戦、心理戦、神経戦の段階に入ったのかなと思いました。昨年のチベット弾圧が「中共政権vsチベット亡命政府」という図式を印象づけたように、「中共政権vs世界ウイグル会議」といった状況が醸成されつつあるのではないか、ということです。

 ところが、上に並べたような事態が決して大袈裟なものでないことをニュース映像で知りました。


ウイグルでの中国人による人間狩り / Man hunting by Chinese



 もちろん民族衝突ですから、ウイグル人が多数派を形成する地区で立場を逆にした状況が進行していても、おかしくありません。

 ――――

 実をいうと、上海での留学経験を経た私のウイグル人に対するイメージは、当初決して良いものではありませんでした。

 現地ではシシカバブを焼く気の良いお兄さんもいましたが、一般には、いまはなきチェンマネ(FEC=外貨兌換券と人民元の闇兌換)で鮮やかなマジックで外国人を騙すのに手慣れたグループ、小犯罪集団といった印象が強く、帰国後に相識ったウイグル人知識分子に対し、失礼にも、

「正直、私がマトモなウイグル人に会ったのはあなたが初めてです」

 と言って相手を苦笑させたりもしました。もっともその知識分子も「いやそれはわかるよ、わかる」と笑いながら頷いてくれはしましたけど。

 ――――

 もちろん、歳月を重ねたいまは、そういう偏見からはすっかり自由になっています。

 逆に、現在の私はインタビューやデモやシンポジウムを通じて、イリハムさんの生真面目な姿勢に心を打たれることが多く、また中共政権による民族浄化としかいいようのない圧制に対する知識も不十分とはいえ一応あることから、自らが生まれ育った故郷を漢人に侵食されていく、伝統的な生活・文化習慣を維持することさえ許されないウイグル人を応援している立場です。

 だいたい日本における外国人犯罪でいったら、何はなくとも中国人ですし。件数で言えば少なくとも平成元年以来20年連続で在日外国人犯罪の国籍別トップの座を守って他を寄せ付けず、東京都心の生活レベルにおいては、中国人による侵食すら実感させられることがままあるほどです。

 ただし民族衝突ですから彼我の人口差が懸絶している場合、多数派の横暴がまかり通り、上述した通り地域によってはウイグル人がその立場に回る可能性もあるだろう、とは思っています。

 ――――

 しかし現実問題、例えば区都ウルムチ市の状況についていえば、多数派はあくまでも漢人であり、民族衝突となれば漢人がウイグル人を圧倒することが可能です。

 実際に上の動画のような状況が発生しており、外国メディアのカメラにそれが捉えられ、しかも本来止めに入るべき警官の姿が全くないばかりか、漢人の跋扈が黙認されている。……ということは、異常な事態が進行しつつあることを感じずにはおれません(モスクを焼かれたというウイグル人のコメントもありましたね)。

 外国のテレビクルーに現場を押さえられるくらいですから、似たようなこと……具体的には上に並べた日本ウイグル協会が発表した情報が謀略・宣伝の類ではなく、実際にいま現在、現地で頻発しているということを、個人的な見解云々を超えて考えざるを得なくなりました。

 想像を絶するような状況が、いま実際に、ウイグル人の故郷で発生しつつあるのです。


広東省の玩具工場で起きた漢人によるウイグル人への暴行事件



 今回の大事件の発端となったこの玩具工場での襲撃事件において、漢人の警官たちはウイグル人が襲撃されるのを手をつかねて眺めているばかりでした。同じことがいま、ウルムチ市で起きているとすれば、どうでしょう。

 欧米諸国などから当事者は冷静になるように、との呼びかけが相次いでいますが、実際問題、少なくともウルムチにおいては、当局の治安部隊が多数派を形成する漢人の暴虐跋扈を止めることができるか、どうか。……その一点にかかっているといっても過言ではないでしょう。

 要するに「漢人vs漢人」という図式になることを当局が厭わないかどうか、ということです。ウイグル人狩りを行っている漢人グループと警官隊が衝突するリスクを、胡錦涛以下党中央が敢えて冒せるか。もし民間人側に死傷者が出れば、前回詳述したように、事態が民族衝突とは全く別の方向へと動き出す可能性もあるのです。

 それが中共政権を根底から揺さぶる化学変化を発生させかねないことも踏まえた上で、秩序と治安回復のため、党中央が高度な政治判断に踏み切れるか、どうか。……なるほど胡錦涛が慌てて帰国する訳で、現状は昨年のチベット弾圧よりもはるかに深刻なものということができるでしょう。

 ――――

 いま私たちにできることは、そう多くはありません。その効果も多くを望めません。

 しかしながら、漢人による侵食という危機感については程度の差こそあれ認識を同じくすべき日本人として、自分たちにできることがあれば、やっておくべきではないでしょうか。

 それは、先代から受け継いだこのニッポンを、より良い形で次世代へと受け継がせる作業に等しいものだと私自身はは考えています。



―――― 告 知 ――――

★★★7月12日「中国政府によるウイグル人虐殺抗議デモ」★★★


 【集合場所】 宮下公園(東京都渋谷区神宮前6丁目)

 【日時】2009年7月12日(日)

     15:00 集合開始
     15:30 集会
     16:15 デモ行進
     16:45 解散

 【コース予定】宮下公園→電力館→渋谷区役所→神南→渋谷駅前→宮益坂下→宮下公園






 すでに有志によるプラカード用画像の制作・拡散が始まっています。



ネットプリント番号【80811852】


ネットプリント番号【83825441】


ネットプリント番号【22980310】


 いまウイグル人が置かれている苛烈な状況が、決して対岸の火事でないことを私たちは認識すべきでしょう。





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 新疆ウイグル自治区・ウルムチ市におけるウイグル人のデモを当局の治安部隊が武力弾圧した事件の続報です。

 最初にひとこと。今回の事件について、日本のマスコミでは「暴動」という言葉が多用されていますが、これはウイグル人に対して公正さを失した表現だと私は考えています。当初はウイグル人によるデモ行進だったのが、治安部隊による実弾射撃や装甲車両の突入などを経て、結果的に暴動のような状態になった、というのが実情ではないか、と思うのです。

 昨年3月に、チベット自治区・ラサ市で発生した事件と同じです。虐げられてきた民族の怒りが頂点に達して行われたデモ行進。それを当局が武力弾圧することによって途方もなく混乱した、悲惨な状況を現出せしめた。……私はそう思うのです。

 ――――

 今回の事態について興味深いのは、中国当局の事件に関する情報の出し方です。当初は小さな扱いで済ませようとした気配があります。

 私の記憶違いでなければ、新華社による第一報は7月5日夜に出た海外向けの英文記事で、漢族2名ないし3名が死亡した、というもの。しかしながら前回紹介した時事通信電にあるように、



 新華社通信によれば、「ウイグルの母」と呼ばれ、近年ノーベル平和賞候補として名前が挙がっている在米ウイグル人の人権活動家、ラビア・カーディルさん率いる在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」が暴動を主導、インターネットなどで「大きな事をしよう」と呼び掛けていたという。中国当局は「国外からの指揮、扇動を受け、国内の組織が実行した計画的、組織的な暴力犯罪」と位置付けている。

 ●新疆で暴動、死者多数=ウイグル族と警官衝突か…中国(時事ドットコム 2009/07/06/11:36)



 ……と、事件そのものは小さくまとめつつも、その首謀者をいわゆる「分離・独立勢力」とレッテル貼りをしています。こういう形で軽く流せれば万事祝着、ということだったのでしょう。

 が、ウルムチはラサ同様、外国人が多く立ち寄ったり滞在したりする観光都市です。しかもいまや携帯電話でも動画撮影が可能な時代で、情報は中国内外を問わず飛び交うことになります。

 ……ということで、事件を隠蔽することができなくなってしまいました。事件の規模も党中央の想像をはるかに超えるものだったのかも知れません。そこで7月6日未明には、事件を早くも「暴力・破壊・略奪・放火」などによる深刻な「暴力犯罪事件」と認定した記事が国内に向けて配信されています。

 ●「新華網」(2009/07/06/04:23)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2009-07/06/content_11659258.htm

 記事自体は簡潔なものながら、禍々しい画像つきの記事です。しかも、

「截止到23時30分,已有多名無辜群衆和一名武警被殺害」

 という含みを持たせた一節があることは要注目。

「(7月5日)23時30分までに、すでに多くの罪なき民衆(多名無辜群衆)と武装警察官1名が殺害されている」

 という意味ですが、市民の死傷者数を概数でも出さず「多名無辜群衆」としたところに、まだ事件隠蔽への未練が残されていることを感じさせます。要するに、含みを持たせた記事なのです。

 ――――

 しかし、結局は隠し通せなくなり、当局の失態を露わにしなければならなくなりました。そこで今度は逆に思い切った大事件扱いへと一変。被害者数も、

「死者129名・負傷者816名」

「死者140名・負傷者828名」

 と膨らんでいき、いまは6月6日19時の時点で、

「死者156名・負傷者1080名」

 に達しています。「バレちゃあしょうがねえ」という悪代官ぶりですが、中国におけるこの種の事件報道の慣例に照らしていえば、この数字は水増しされたものではなく、逆にまだ実数を相当下回る数字ということができるかと思います。

 一方で注目したいのは逮捕者数です。

「現時点で公安部門は暴力・破壊・略奪・放火の容疑者としてすでに1434名を逮捕。このうち男性は1379名で、女性は55名」

 と同じ記事で報じられています。これまた注目すべき数字といえるでしょう。デモ隊は3000名とも1万名ともいわれ未だ実態が明らかにされていないのですが、仮に3000名とすると、その半数が拘束され、残り半分の何割かは治安部隊の武力鎮圧によって死傷していると考えられるからです。デモ隊が1万人だったとしても拘束率15%というのは、尋常ではありません。

 ●「新華網」(2009/07/07/08:40)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11664971.htm

 ちなみに、中国当局から首謀者扱いされている「世界ウイグル会議」がこの事件に関して6日午後にいち早く声明を出したことも、中国当局に対するプレッシャーとなったことでしょう。世界ウイグル会議日本代表・日本ウイグル協会会長であるイリハム・マハムティ氏の許可を得て以下に全文を転載しておきます。



 ●世界ウイグル会議「東トルキスタンで発生した虐殺事件に関する声明」


 中国共産党政府がウイグル人に対して行ってきた民族的差別や抑圧、そして同化政策などの結果、ウイグル地区から沿岸部の広東省のおもちゃ工場に強制移送されてきたウイグル人たちは同工場の漢民族従業員たちにより虐殺される事件が発生した。この事件で60名近くのウイグル人が殺され、100名を超えるウイグル人が重傷などを負った。

 そして今日7月5日、広東省で発生した悲惨な虐殺事件、そして長く続いてきたウイグル人に対する民族的虐殺に抗議するため、ウイグル民族がウルムチの中心地4か所に集まり計1万人が参加し、平和的なデモで自らの不満を表した。しかしこのデモは多数の警察、軍や車両の出動で武力的鎮圧を受けた。

 世界ウイグル会議が直接現地から入手した情報によると、この武力鎮圧で死亡した人は100人を超え、多数が負傷した。この中で幼い子供や女性もいた。

 酷いのは、ウルムチの人民広場、南門、ラビヤ・カーディルデパートの前、延安路、陶器工場前などのいずれのデモ場所も一律悲惨な虐殺を受けた。軍の車両下で踏み殺された。軍・警察の銃で殺された。暴力で殺された・・・・・

 我々の把握した情報では、すでに逮捕された人は1500人を超える。全ウイグル地区ですでに軍事態勢が敷かれている。一方、ウイグルのアクス県でも7月5日の夜からデモが始まっていることが分かった。カシュガルで起こっているデモについてはまだはっきりとした情報を入手していない。

 世界ウイグル会議としては、全世界の民主主義国家や国民、人権団体などがこの事件に緊急な対応を取り、ウイグルで中国軍や警察などに虐殺されているウイグル民族を助けるよう促す。国連やNATOなどが関与し、検察団を派遣し、平和秩序を守り、冷静に対応し、今でも虐殺が続いているウイグル民族を一刻も早く鎮圧軍から守るよう呼び掛ける。

 2009年7月6日

 ※翻訳:イリハム・マハムティ



 この声明にある「死者100名以上」について、

「これはウイグル人だけの数字ですか?」

 とイリハムさんに尋ねたところ、

「いえ、漢族も含まれます。混乱した状況で、興奮したウイグル人が、漢族を見て手を出したことも考えられますから」

 と率直に語ってくれたことには敬服しました。もちろん、イリハムさんのお人柄もあるのでしょうけど。

 それにしても、

「すでに逮捕された人は1500人を超える」

 という一節は新華社電と符合していて、空恐ろしいものを感じずにはいられません。



 「警官隊が群衆に向かって突然発砲し、人びとがバタバタと倒れた。道ばたには漢民族もウイグル族も関係なく、血だらけの男女が横たわっていた」。ウイグル族の男性住民(32)が発生当時の様子を振り返る。6日までに日本経済新聞記者が現地に電話取材したところ、衝突の実態や背景が明らかになってきた。5日午後7時半(日本時間同8時半)ごろ、ウルムチ市中心部に住民らが続々と集まり出し、デモ隊は数千人規模にまで膨らんだ。「ウイグルに自由を」などと叫んだ民衆は、制圧に向かった警官らにレンガや石を投げつけ始めた。街中に発砲音が響いたのは、その直後だった。

 ●中国・新疆暴動、ウイグル族に根強い不満(NIKKEI NET 2009/07/07/08:22)


 ――――

 さて、今後は事件の全容解明と中国当局がどう事態を収拾するかということが焦点となりますが、中国当局の出方については想像に難くありません。タイトルにある通り、「六四モード」と「人民戦争」路線で突っ走る、というもの。要するに昨年3月のチベットの事件に際しての対応と同じやり方です。

 「六四モード」というのは1989年の天安門事件直後に採られた措置をお手本にしたもの、という意味です。

 まずは事件区域に「結界」を張って、外国人観光客や報道陣など一切を締め出しにかかります。これが完了すれば現地情報が外部に漏洩しなくなります。その上で現地では実質的な戒厳令状態のもと大掃除が行われ、容疑者検挙と市民への政治教育が徹底的に行われます。検挙に際しては密告も奨励されることでしょう。政治教育はウイグル人を洗脳するというのではなく、政治教育を受けさせることで漢族つまり中国人への従属を再認識させる、というものです。

 「人民戦争」とはチベットでは「ダライ集団」を主敵としたように、今回は内外の「分離・独立勢力」「テロリスト」などを敵と認定して、全国民を挙げてその撲滅に努めようというものです。そのためにウイグル人の乱暴狼藉と漢族被害者の流血映像などといった編集された映像が「事件の真相」というタイトルで何度となくニュースで繰り返し全国に流され、一方で新華社など限られたメディアに取材させての「現地ルポ」たる官製報道が紙媒体・ネット上を飾ることとなります。

 ――――

 厳密にいえば中国国内向けの「結界」ともいえる「人民戦争」をも含めたものが「六四モード」ということになるのですが、武力で有無を言わさずねじ伏せる「現地向け結界」はともかく、「国内向け結界」というのは意外に効果を発揮するものです。なぜかといえば、総人口の9割以上を占める漢族にとって、加害者がウイグル人という「異民族」だからです。

 視聴者は血を流す漢族市民の姿に同族意識と「自らが世界の中心」という中華意識を激しく刺激され、被害者に同情するとともに、加害者への憎悪を燃え上がらせます。ウイグル人は中国全土に散在していますから、映像の効果次第では、それら事件とは無関係なウイグル人に迫害が及ばぬよう、当局が市民を説諭する状況も出てくるかも知れません。

 このあたりの詳細についてはすでに昨年3月のチベット弾圧で詳しくふれているので、そちらを御参照頂ければと思います。

 ●中国観察シリーズ:チベット弾圧2008

 仮に今回の事件に対し欧米諸国が激しく反発するようだと、今度はそちらに憎悪が向けられ病的なナショナリズム・愛国無罪が噴出する可能性もあります。それについては、こちらを。

 ●中国観察シリーズ:攘夷運動2008

 ――――

 さてさて。

 最後にジャーンと銅鑼が鳴ってまたまた当ブログの独自取材です。昨日も取材させて頂いた世界ウイグル会議日本代表・日本ウイグル協会会長であるイリハム・マハムティ氏に今日も朝駆けインタビュー。肩書の立場からくる制約のため慎重に言葉を選びながらも、気になる情報をあちこちに散りばめて下さいました。

 イリハムさん、外出前の慌ただしい時間のなか、快く取材に応じて頂きありがとうございます。m(__)m



 ――昨日の朝に比べて色々な状況が明らかになってきています。まずは日本ウイグル協会のホームページに昨夜の時点で声明が出ていますが、現在の状況や被害者の最新情報を。

「最新情報は昨日の時点から今まで内部と全く連絡がとれない状態です」

 ――ウルムチ以外でもデモが発生したという情報がありますが、地域は把握していますか?

「ちょっとまだわかりません」

 ――7月5日にデモを行うという計画が事前にあったのでしょうか?

「そういう情報については全くわかりません。私は組織的にやったものではないと思います」

 ――自然発生的に集まって、ということですね?

「はい」

 ――デモでウイグル人が要求していたことは何でしょう?

「前回お話ししたように、6月26日のことを政府がはっきりさせてほしい、ということだけなんです」

 ――ただ昨日は「ウイグル万歳、自由万歳」とデモ隊が叫んでいたというお話でしたね?

「はい」

 ――この「ウイグル万歳、自由万歳」というのは、どういう意味なんでしょうか?

「ウイグル人はすでに自分の地域で二等市民になっているんです。我々はあなたたちと同じ中華民族だよ、ということをアピールしているんです」

 ――自分たちは中華民族とは違う、ということをアピールしているのではないのですね?

「はい。中華民族とは違う、ということをアピールしているのではなくて、我々も同じ、平等な民族であるということをアピールしているんです」

 ――だから漢族と同じように、平等に扱ってくれ、ということですね?

「そうです」

 ――「自由万歳」というのは、どういう意味でしょうか?

「自由がほしいんです。これはウイグルだけじゃなくて、中国全土の人々みんなが自由がほしいのです」

 ――なるほど。ところで中国側の映像では、デモ隊と思われる群衆が路上を動く様子を映したあと、すぐにウイグル人による破壊行為と漢族被害者の映像に切り替わりました。その間に何が起きていたのでしょうか?

「それは私も現状を十分把握していないので、いまの段階では回答することができないんです」

 ――デモが騒乱に発展したのが先か、治安部隊が手を出したのが先か?

「警察が先に手を出したのは確実だと思います」

 ――治安部隊はデモ隊に対してどういう行動に出たのでしょうか?

「事件の全容については我々もまだ調査しなければならない部分がありまして、色々なことについて、ああなった、こうなった、と私がコメントすることは、ちょっとできないんです。共産党が我々を悪者にしている現時点では、第三者が事件の全容を明らかにしてほしいところです」

 ――昨日のテレビのインタビューでは戦車が突っ込んできたとか、そういうことをイリハムさん自身が仰っていましたが?

「そうです。それは情報提供者の話を私が伝えている、ということです」

 ――戦車が先に突っ込んだのか、発砲が先だったのか?

「それはいまのところは確認できていません。情報提供者とは30時間以上、連絡がとれない状況です」

 ――ただそうしたことが行われたことは事実であろう、と?

「事実であろう、ではなくて、実際にあったんです」

 ――新華社の最新発表では死者156名、負傷者828名となっていますが、これはウイグル人を含めた数字でしょうか?

「もちろん、ウイグル人が大勢含まれていると私たちは判断しています」

 ――実際の死傷者数はこれよりもずっと多いと考えていますか?

「私はそう考えています」

 ――あなたがテレビの取材を受けたときに「ウイグル人の怒りが頂点に達した、その表れがデモだ」とコメントしていましたが、その具体的な例を挙げて下さい。

「職場を奪われ、自由を奪われ、自分の行動が自分の考え方で自由にできない、それが全てです。ウイグル人は現地で、命だけは自分のものとして持っていますけど、他の全ては中国、つまり政府や漢人によって奪われたんです。だから怒りの頂点だと私は思って、そう話しました」

 ――チベット同様、宗教活動に対する制約、というのもあったのでしょうか?

「もちろん、もちろん。いま言ったように、ウイグル人は命だけは自分のものとして持っているんですけど、それ以外の文化、宗教、全部、全部が、奪われているんです」

 ――デモで「自由万歳」という言葉が叫ばれたというのは、そういうことを意味している訳ですね?

「そうです」

 ――中国側は当初、英文の新華社電で死者3名などと報じていましたが、その後大幅に被害者数を増やして、いまはもう死者156名と、大事件という扱いにしています。これは、当局は最初は小さな事件ということにして情報封鎖を試みたけれど、それが不可能なため、思い切って大事件として発表したということなのでしょうか?

「そうですね。当局は最初、我々が何の情報も持っていないと考えて、自信満々で死者3名という嘘のニュースを流しました。ところが残念ながら、当局より我々の方が情報を持っていて、それを当局より早く、世界に発信したんですね」

 ――ところで、今回と同じようなことが去年、チベットで起きています。そのときはチベットのラサ市を当局が封鎖して、外国人が入れないようにしてしまいましたけれども、今回、ウルムチ市に対しても同じようなことが行われる可能性はあると思いますか?

「十分に考えられます」

 ――昨年のチベットと違うのは、(1)ダライ・ラマのような世界的に著名な宗教的・精神的指導者がいないこと(2)チベットと違って海外のウイグル人組織がいくつかに分かれていること(3)イスラム教徒であるということがアルカイーダのようなテロリストを容易に想像させること(4)世界的な不景気で国際社会は中国の果たす役割に期待していること。……こうした点はチベットに比べてウイグルは国際世論を味方につけることが難しいと思うのですが、如何でしょう?

「テロ、テロというのは中国共産党のデタラメで、実際にウイグルで、ウイグル人の組織あるいはウイグル人がテロを行ったというけれども、その証拠はといえば、中国政府は何の証拠も出していない。ただ何人かが捕まって、テロリストが捕まったと言う。それで正式な裁判も行わないで、死刑判決とか無期懲役判決とかを出している。それから、中国共産党がウイグルで何をやっているかということが、いまでは広く知られるようになっています。だからまたテロということにして、それを我々のせいにして、我々をテロリストとして宣伝するやり方は、もう通用しなくなっていると思います」

 ――今日もまた朝早くから不躾な取材に応じて下さり、本当にありがとうございました。



 なお、抗議活動はカシュガルなどウイグルの他の地域にも拡大しているとの情報もあります。

 目が離せない状況が当分は続くことになりそうです。





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 大事件勃発であります。

 中国新疆ウイグル自治区のウルムチ市で昨日7月5日午後、広東省の玩具工場で先月下旬に発生したウイグル人と漢族(中国人)の衝突事件に抗議するウイグル人のデモ隊が治安部隊と衝突、死傷者・逮捕者多数が出ている模様です。

 当ブログの独自取材によると、治安部隊はデモ隊に発砲、警察車両の突入もあり、死者は警察車両にひき殺された人だけで17名に達し、今後状況が明らかになるにつれ、死傷者の数はより増えるものとみられています。

 まずは尋常でない事態であることを示唆する写真の数々をば。


 

 

 

 


 続いては日本メディアの報道をどうぞ。



 ●中国新疆でウイグル族暴動 3千人規模、2人死亡か(共同通信→MSN産経ニュース 2009/07/06/01:20)


 【北京=共同】新華社電によると、中国西部の新疆ウイグル自治区ウルムチで5日午後、住民らが通行人を襲い道路を遮断、車に火を付けるなどの暴動が起きた。香港メディアは同日、ウイグル族関係者の話として、約3千人のウイグル族がデモに参加、多数の警官と衝突し、2人が死亡、300人が拘束されたと報じた。

 中国では6月下旬、広東省韶関市の玩具工場で、同自治区から出稼ぎに来ていたウイグル族の労働者が漢民族に襲われ2人が死亡、漢民族を含む118人が負傷する事件が起きており、反発したウイグル族が暴動を起こしたという。

 今年10月に建国60周年を控え、中国政府が少数民族に対する引き締めを強めていることも不満の背景にあるとみられる。同自治区では、昨年8月、警官襲撃など北京五輪妨害を狙ったテロが相次いだ。



 その香港メディア、地元最大手紙『蘋果日報』(2009/07/06)の報道によると、ウイグル人約1万人が昨日午後5時ごろデモを行い、出動した治安部隊1000名以上と衝突。

 中国国営の新華社通信によると事件で漢族3名が死亡、20数名が負傷したとのこと。

 その新華社電に頼った時事通信の記事では、中国当局による脚色めいた内容がそのまま伝えられており、これだけでは官製報道を鵜呑みにした「反体制組織の謀略」という印象のみが残る内容となってしまっています。



 ●新疆で暴動、3人死亡=ウイグル族と警官衝突か-中国(時事ドットコム 2009/07/06/06:00)


 【北京6日時事】中国国営新華社通信は6日、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで5日午後に暴動が発生し、漢族の一般市民3人が死亡、20人以上が負傷したと報じた。警察当局が民衆を追い払い、暴徒を逮捕。暴動は鎮圧されたと伝えている。現地では、多数の車両が放火され、建物が破壊されたもようだ。

 新華社通信によれば、「ウイグルの母」と呼ばれ、近年ノーベル平和賞候補として名前が挙がっている在米ウイグル人の人権活動家、ラビア・カーディルさん率いる在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」が暴動を主導したという。

 暴動の原因や規模など詳細は明らかになっていないが、AFP通信は5日、日本にいるウイグル人活動家の話として、約3000人のウイグル族住民が約1000人の警官と衝突したと報じた。



 これに対し前掲『蘋果日報』は、

「警官隊は電気警棒を使い、空に向けて威嚇射撃を行った。少なくともウイグル人2名が死亡し、300名が逮捕されたと聞いている」
「夜11時になっても400人以上のウイグル人がデモを行っており、事態はまだ沈静化していない」

 といったウルムチ市住民の話を紹介。ウルムチ市公安局は電話取材に対し「ノーコメント」の一言で、同局のウェブサイトには、

「ウルムチ市の治安は安定しており秩序も保たれている。市民はデマを信じないように」

 との一節が出現。ただし「デマ」が何を指すかは言及していない、と報じています。また、新疆ウイグル自治区のトップである王楽泉・自治区党委書記が事態を鎮めるべく直接指揮をとっており、同市の企業や商店には3日間の営業停止が命じられたとの情報も。

 同じ香港紙の『明報』によると、デモ参加者は3000名。警官隊約1000名との衝突で少なくとも2名が死亡し負傷者多数、また300名が拘束され、市内の商店には今日(6日)は休業するよう当局から指示が出た、となっています。

 いずれの報道も指摘しているのは、6月下旬に広東省の玩具工場で発生したウイグル人と漢族の従業員同士の衝突事件が今回の抗議活動の直接的な原因となっている、ということ。また建国60周年を控えて、当局による治安の引き締め強化も遠因との観測もあります。

 広東省の工場における民族衝突事件はこちら。



 ●中国の工場でウイグル族と漢族が衝突、2人死亡(YOMIURI ONLINE 2009/06/27/18:48)

 【香港=竹内誠一郎】香港紙の明報は27日、中国広東省韶関市の香港系大手おもちゃ工場で26日に、新疆ウイグル自治区から雇用された少数民族ウイグル族と漢族の従業員同士が衝突し、ウイグル族の2人が死亡、双方の計118人が重軽傷を負ったと報じた。

 明報によると、工場の従業員は約8000人。ウイグル族約600人が採用された5月から、女性従業員への乱暴などの事件が相次ぎ、ウイグル族の仕業と見なした一部の漢族が宿舎を襲った。経営者は明報に対し、「衝突は生活習慣の違いが主な原因」と説明した。



 ……ここまででも大きなニュースということになりますが、問題はいずれの報道も、概ね本日未明時点での情報に拠っているということ。情報も錯綜している模様です。

 そこで当ブログは最新情報に接するべく、世界ウイグル会議日本代表・日本ウイグル協会会長であるイリハム・マハムティ氏に電話取材を試みました(イリハムさん、夜討ち朝駆けで申し訳ありませんでした)。

 すると驚くべきことに、治安部隊はデモ隊に実弾射撃を行ったうえ、警察車両がデモ隊に突入。轢死者だけで少なくとも17名に達しているとのこと。また銃撃による死傷者などについては、今後時間の経過とともに明らかになっていくだろう、ということでした。

 一問一答は以下の通りです。



 ――まずお伺いしたいのは、ウイグル人が抗議行動のようなことをしているところに、中国当局の治安部隊が警官隊や警察車両を出したということですね?

「そうです」

 ――警官隊による発砲もあったということでしょうか?

「そうですね」

 ――これは威嚇射撃ですか?それとも人間に向けて直接……?

「一番最初はもちろん空に向かって。みんなに解散するよう警告したんですけれども、解散しなかったんで、そのあとは人間に対して発砲したんです」

 ――それから警察車両などが、ウイグル人をひき殺したと?

「そうです。17人が死亡しました」

 ――17人!

「それは車の下に下敷きになって死んだ人だけで17人です」

 ――発砲とか、衝突による死者とは別、ということですね?

「はい」

 ――香港の新聞とか日本のニュースでは死者は2名となってますけれども?

「それは昨日夜の10時くらいの話なんです」

 ――だんだん状況が明らかになっているということなんですね?

「そうです」

 ――抗議活動に参加したウイグル人は何人くらい?

「それも現時点でははっきりした数字は出て来ないんですけど、お昼までには出てくると思います」

 ――香港の新聞によると、最初ウイグル人がデモをしていたところに、漢族つまり中国人のグループと衝突して喧嘩になって、そこに警察が出てきたという形なんですけれども?

「そういう話は一切ないです」

 ――そうすると、ウイグル人が抗議活動をしているところに警官隊が出てきた、ということでしょうか?

「そうです」

 ――多くのニュースは6月下旬に広東省の工場で起きたウイグル人と漢族の衝突事件、これが原因だとしていますけど?

「そうです」

 ――直接の原因はその事件ということですね?

「だいたいの情報はその通りです」

 ――ウイグル人が抗議活動で「民族差別反対」とか「民族浄化反対」といった横断幕を掲げていたという報道もありますが?

「そんなことは言っていません」

 ――そうすると抗議活動というのはどんな形で?

「みんなで集まってウイグル万歳とか自由万歳と唱えた、それだけです」

 ――なるほど。あの青い東トルキスタンの旗が掲げられたということは?

「ありません。そういう話はないです。みんなが持っていたのは中国の旗です」

 ――朝早くから取材に応じて頂き、誠にありがとうございました。



 ともあれイリハム氏のコメントにあるように、事件の詳細は続報待ちということになります。

 取り急ぎ速報まで。





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 いやこれはまた唐突な。

 ……てすみません
「東突」ですね。東トルキスタンのことです。ウイグル族の海外組織は亡命政府も含めて色々あるようですが、このうちウイグル人による独立国家成立を目指している「東トルキスタン解放組織」(ETLO)がこのほど、中共政権に対し武装闘争の開始を宣言しました。宣戦布告というところですか。

 http://news.bbc.co.uk/chinese/simp/hi/newsid_4290000/newsid_4295900/4295912.stm

 ソースはBBC、前回のコメント欄で「ひろぽん」さんが教えて下さったものです(ひろぽんさん有り難うございました)。写真までついています。黒覆面をかぶった男が紙を手に声明文を読み上げています。その背後には自動小銃を掲げたやはり黒覆面姿の2人が。

 声明を読み終えたらそのままグロ映像(斬首)に入りそうな物々しい雰囲気です。実際にあの独特の音楽が流れて江沢民あたりが肉切包丁で首を引きちぎられたら快哉を叫ぶ人がたくさんいることでしょう。

 ――――

 さてこのビデオ、ETLOからドイツ・ミュンヘンに本部を置く
「東トルキスタン情報センター」(東土耳其斯担信息中心)へと送られてきたものをBBCが入手したそうです。制作したのはETLO天山支部の模様。

 今年はときあたかも新疆ウイグル自治区成立50周年です。これをウイグル族の側からみれば「侵略されて50周年」な訳ですから唐突ではないのでしょう。ETLOはビデオ声明の中で、

「あらゆる手段によって中国政府に武装闘争を発動する」

 と高らかに宣言しています。このETLOも東トルキスタン情報センターも、中共政権下においてはテロ組織認定されているそうです。中国が国際社会の反テロリズムの潮流に乗って、非暴力主義をとる者をも含めた内外の分離独立派に弾圧を加えている、と一部の人権団体は中共政権を非難しています。

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 このニュースを香港では「明報即時新聞」、それに台湾の「中央通信」及び「中広新聞網」が論評抜きで速報しています。

 ●明報即時新聞
 http://hk.news.yahoo.com/050930/12/1h6r1.html

 ●中央通信
 http://tw.news.yahoo.com/050930/43/2cz0u.html

 ●中広新聞網
  http://tw.news.yahoo.com/050930/43/2cz0u.html

 興味深いニュースですが、やや眉唾な感じがしないでもありません。いや声明を発表したETLOは戦意旺盛なのでしょうが、これが内外のウイグル人たちの姿勢を代表するものかどうか。

 ――――

 あれは昨年のことだったと思いますが、やはりウイグル人組織が米国で亡命政府の成立を発表したことがありました。ところが当の米国において最大のウイグル人組織がこの亡命政府を承認しませんでした。他国の組織も意見が分かれていたと記憶しています。

 正直なところ「東突」の問題は私にはよくわからないのですが、常識的に考えれば、独立を目指すにしても武闘派と非暴力主義の穏健派グループがあるでしょうし、武闘派の中でも例えばアルカイーダに接触しても目的を果たそうという一派があれば、それでは国際社会から認知されないとする向きもあるのではないかと。

 あとは方法論や目的は似ていても、人間関係の好き嫌いで割れてしまっているかも知れません。亡命政府が海外のウイグル人組織にすんなりと承認されなかった理由はそんなところだろうか、と当時考えたりしました。

 ――――

 すると中央通信から続報が入ってきました。
「世界ウイグル代表大会」という組織の報道官が9月30日、

「我々は武装闘争による新疆独立を支持しないし、それを励行しない。自らそれを行うこともない」

 との態度表明を行いました。

 同大会は非暴力主義を標榜しており、中国政府に対し呼びかけと対話要求を繰り返す一方、ウイグル人の問題について米国から中国に圧力をかけてもらい、民主的な方法で問題解決を図ろうという立場とのこと。穏健派というところでしょうか。ともかくETLOのやり方は物騒だし誤解を招くということで早々に一線を引いた、という感じです。

 また中央通信は台湾と香港の専門家へのインタビューも行っていますが、いずれも米国が「9・11」以降テロ組織と対決する姿勢で一貫していること、それについて中国の支持も取り付けたことから、ウイグル人の人権問題で米国は妥協する、つまり見て見ぬ振りをするだろうという見方で一致しています。

 http://tw.news.yahoo.com/050930/43/2czgx.html

 勇ましい声明ながら、それに賛同するウイグル人組織がどれほどあるかは疑問符、といったところでしょう。

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 せっかくですから中共の動きも追ってみましょう。「50周年」及び「国慶節」(建国記念日)ということで、中央からの代表団が新疆ウイグル自治区を訪問して回り、かつて暴動がしばしば発生し不穏な状況にあると伝えられた新疆兵団をも視察しています。

 今回その代表団を率いている「中央代表団団長」が
羅幹・党中央政治局常務委員です。羅幹は司法・公安(警察)を束ねる党中央政法委員会書記を兼務しており、中共最高の意思決定機関ともいえる党中央政治局常務委のメンバーの中では治安方面の担当。その筋に顔が利く存在でもあるといえるでしょう。

 羅幹は昨年秋に10万人が決起した四川省・漢源農民暴動の際にも成都まで出向いて鎮圧の総指揮を執ったといわれています。新疆の「50周年」にこういうドスの利く人物が送り込まれたというのは、新疆兵団の鎮撫も含め、決して偶然ではないと思います。また、現実に新疆に不穏要因が現出していることを示すものかも知れません。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-09/29/content_3559846.htm

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 武装闘争は大いに結構。ただシシカバブを焼いている同族のお兄ちゃんとかを巻き添えにしないようにして下さい。ここはまず羅幹を斬首して出陣の血祭りとしたら如何。あいつ李鵬派だし。


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 【追記1】
香港紙『明報』の報道によると、今回中共に宣戦布告した「東トルキスタン解放組織」(ETLO)のメンバーの一部はアルカイーダで訓練を受けた経験があるそうです。

 http://hk.news.yahoo.com/050930/12/1h7kb.html



 【追記2】
今朝の香港各紙(2005/10/01)によると、当ブログにて詳報を重ねてきた番禺太石村の「農民による民主化運動」が遺憾ながら予想されていた結末を迎えました。村長罷免動議賛成署名者584名のうち396名の村民が署名取り消しを申告。これによって法律の定める「村長罷免動議には村内有権者の20%の署名が必要」という要件を満たさなくなり、罷免動議そのものが不成立で落着しました。署名取り消しに応じた村民が当局の硬軟取り混ぜた脅し上げに屈したであろうことは想像に難くありません。……というか既報の通りですね。(2005/10/01/09:49)



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 暴動、暴動、また暴動です。当ブログは決して暴動専用ではないのですが、申し合わせた訳でもないのに騒動がまとまって発生する時期がなぜかあります。昨年秋にもそういうことがありました。今回は、夏に展開されるであろう権力闘争劇の前座とでもいっておきますか。

 現在進行中の暴動もあります。広東省仏山市の郊外で発生した官民衝突です。これは当局の農地収用に絡む補償で農民が警官隊と衝突……という典型的なパターンです。今朝(2005/07/04)の香港各紙はこぞってこの事件を報じています(親中紙を除く)。

 それを受けて、日本でも時事通信がごく短い記事でこれを報じています。

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 ●村民2000人が警察署に集結=土地収用に抗議-中国広東省(2005/07/04/15:00)
 http://www.jiji.com/cgi-bin/content.cgi?content=050704143646X629&genre=int

 【香港4日時事】4日付の香港紙・太陽報などによると、中国広東省仏山市の郊外で、農地の強制収用に抗議する村民約2000人が地元の警察署前に集結、けが人も出る騒ぎになった。中国では先月、河北省定州市で土地収用に絡むトラブルで村民54人が死傷する事件が伝えられたばかり。 

 ――――

 で、本来ならこの話に入りたいのですが、なにせ香港各紙が揃って報じている事件。如何せんその関連記事をいちいち吟味する時間的余裕がいま現在ありません。……ということで、この件は続報を期待しつつ後回し。

 別のニュースでいきます。といってもこれまた暴動まがいの官民衝突。ネタが尽きませんねえ。しかも今回は、

「チベット族vs警官」

 ……なのです。ウイグル族の次はチベット族。これは目が離せません(……てほどでもないですけど)。

 ――――

 事件を報じたのはこれまた香港紙『太陽報』。他の香港紙には出ていませんでした。中国国内メディア?言うまでもないでしょう。……と思いつつ調べてみたら、ちゃんと報道されているではありませんか。

 てことは一群のチベット族による警察との衝突ながら、政治的背景の全くない純粋な刑事事件ということなのでしょうか?

 とりあえず『太陽報』はこちら。

 ●チベット族が警察署を襲撃、警官隊との衝突も――長春
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050704/20050704014807_0001.html

 続いて、元ネタはこちら。「東亜経貿新聞」から「新浪網」に転載されたものです。チベット族の一団と防暴警察(機動隊)が睨み合っているものです。画像あり。

 ●警官襲撃犯12名の釈放求め数十人が警官隊と睨み合い――長春(画像つき)
 http://news.sina.com.cn/c/2005-07-01/02117095203.shtml

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 先に流れを言ってしまうと、6月29日に職務質問のようなことから男たちの一団と警官の衝突が発生し、警察は12名を逮捕。すると翌30日に、今度は約60名が警察署前に集まり、逮捕者の釈放を求めました。このため機動隊が出動して3時間ほど睨み合うも、衝突が起きないまま一群は退散。

 ……で、この逮捕者を出した側というのがチベット族のグループのようです。チベットから遥か離れた長春市(吉林省)での出来事ですから、この一群は族人同士が結盟した互助組織、つまり漢族がいうところの「幇」のようなものなのかも知れません。

 ――――

 さて、事件の見所である大立ち回りがあったのは6月29日ということになります。

 繰り返しになりますが舞台は吉林省長春市。西広場派出所のある警官が、道行くチベット族が刃物を所持していることを見とがめたのが発端です。この警官が職務質問を行おうとしたところ、同行していた他のチベット族十数人がいきなり警官に襲いかかってきたのです。

 今回は刃物も登場します。チベット族側……面倒なので便宜上「チベットチーム」にしましょう。このチベットチームがそれぞれ所持していた刃物を振り回し、警長(巡査部長のようなもの?)を含む警官多数が負傷。チベットチームはそのままキレた勢いに任せて派出所内に乱入。器物損壊のほか警察車両を破壊するなど暴れに暴れました。

 が、事件を聞き付けた東広場派出所から増援の警官隊が現場に駆け付けると、さすがのチベットチームも衆寡敵せず。結局は警官隊に取り押さえられ、逮捕者12名、他に1名が罰金で釈放となりました。

 チベットチームがなぜ刃物を所持していたのか、どうして警官・派出所襲撃に走ったのかは不明です。

 ――――

 ところが、事件はこれで収まりませんでした。騒ぎのあった翌日である6月30日の午前8時50分、チベットチームが乱入した西広場派出所前に続々と男たちが集まってきたのです。その数ざっと60名。警察当局に対し、前日の事件処理は不当だとして拘留されているチベットチーム12名の釈放を求めました。この60名もチベット族の一団です。

 一触即発の不穏な空気。事態の拡大を恐れた警察側は機動隊合計300名以上を出動させ、派出所の前に人の壁をつくりました。機動隊ですからヘルメットに盾を所持した物々しい装備で、チベット族と肩が接するばかりの距離で睨み合いとなりました。

 対峙すること約3時間、結局要求は容れられないままチベット族の一団は退散しましたが、このうち1名は警官隊と小競り合いとなり、また刃物を不法所持していたため逮捕されました。

 その後、ある警官が「派出所の処理に納得できないなら正当な手続きを踏んでくればいいのに、秩序にも影響するこういうやり方はまことによくない」と言うと、その場にいた野次馬たちからも「そうだそうだ」と和する声が上がった、という形で「東亜経貿新聞」は記事を締めています(笑)。

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 警官を襲撃したチベットチームも翌日に現れた60名にものぼるチベット族の一団にしても、刃物を所持していたくらいですから黒社会のようなものなのでしょうか。

 ただ12名が捕まったと聞いた翌日に、60余名を動員して警察に釈放を要求してくる。しかもそれが全てチベット族。マイノリティとしての団結力、動員力、それに戦闘力……といったものが、いざとなれば発揮されることを示した事件といえるかも知れません。

 人口でいえば圧倒的多数派とはいえ、漢族の目には不気味に映ったのではないでしょうか。


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 いやいや、別に前回紹介した江西省・九江学院の「学生運動」(暴動)が遊び半分のイベントだった、という訳ではありません。あれはあれで学生の怒りの発露であり、世相の一端を映す鏡。

 ……というか中国社会で遍く行われている汚職あるいは汚職まがいの行為に対する行動ですから、数々の都市暴動や農民暴動と同じ範疇に含め、同列に論じていいと思うのです。だから「21世紀型」と枕詞をつけてみました。

 ただ「従来型」であろうと「21世紀型」であろうと、同様に大学で起きた事件なら、やはり「命がけの闘争」の前にはニュースとしてのインパクトを失います。

 ええ、昨日書き漏らした一件、山東省の大学で発生した学生による民族衝突(ウイグル族vs漢族)のことです。情報の確度はまだ「?」なんですが、500人が刃物などを振り回しての大立ち回りですから、インパクト優先で記事になったのだと思います。

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 元ネタは香港紙『太陽報』(2005/07/02)で、そのソースは「国内のネット情報」。学校側が同紙の電話取材に対し事件の存在そのものを否定しているのはお約束としても、やはりソースの弱さからうーんと考えてしまうところです(※1)。

 でもやはりインパクト優先なんでしょうね。日本では共同通信電を掲載する形で『産経新聞』(電子版)が報じています。

 ●中国で学生同士の衝突相次ぐ 山東省、江西省で(Sankei Web)
 http://www.sankei.co.jp/news/050702/kok086.htm

 2日付香港紙、太陽報によると、中国山東省の山東理工大で6月27日、学生計500人が漢民族とウイグル民族に分かれて衝突、重傷者5人を含め少なくとも9人がけがをした。(中略)
 報道によると、山東理工大の衝突は、バスケットボールの際のもめごとが発端。刃物などを持ったウイグル民族の学生約30人が、寮で漢民族の学生らに暴行を加えたため衝突が拡大。武装警官が鎮圧し数人を拘束した。(後略)

 ……と、この記事で九江学院のニュースとの合わせ技により、「香港紙、太陽報によると」という形で民族衝突が伝えられました。九江学院は「学生同士の衝突」ではないのですが、そこは大人の事情ということにして大目に見ることにしましょう。性質の異なる2つの事件(共通項は「大学生」のみ)を1本の記事に無理矢理詰め込むと、こうやってタイトルで行き詰まってしまうものです。

 ――――

 それでは『太陽報』の記事を基に話を進めていきましょう。

 ●ウイグル族と漢族計500名が流血の衝突――山東理大騒乱、武警出動し鎮圧
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050702/20050702013740_0001.html

 舞台は山東省●博市(●=左がさんずい、右は上が巛、下が田)の山東理工大学。『産経』にある通り、発端はウイグル族の学生と体育学部の学生(こちらはたぶん漢族)がバスケットボールに興じている際に起きたトラブルのようです。たぶん戯れにバスケをやるというより、「ウイグル族vs漢族」といった意気込みが両者にあったのではないでしょうか。トラブルの詳細は不明ですが、幸いその場では衝突に至りませんでした。

 ただウイグル族側には恨みが残ったとみえて、6月27日午後10時ごろ、30名以上のウイグル族学生が武器を手に体育学部の22号宿舎を急襲。肝心の相手は居合わせなかったものの、乱入したウイグル族学生は当たるを幸いにその場にいた漢族学生たちをタコ殴り。学生会主席を務める学生を含む漢族学生多数が負傷する事件となりました。

 目標の相手はいなかったけどこいつら漢族だ。構うもんか、やっちまえ。……というノリに、ウイグル族学生と漢族学生の間に以前から某かの反目が存在していたことがうかがえます。

 ――――

 一方的にやられた漢族学生も、もちろん黙ってはいません。午後11時半ごろ、いざ反撃とばかりに体育学部の数百名を動員し、こちらも棍棒などを手にウイグル族学生が住む外国語学部8号宿舎を包囲。

「ウイグル豚は出ていけ!」

 などと叫びながら投石し、窓ガラスが相次いで割られました。これと同時に漢族学生が大挙して宿舎内に乱入。ウイグル族学生を殴打するなどして、重傷者が少なくとも5名。宿舎内にあった机やベッド、PC、テレビなどは全て窓から地面へと放り投げられて破壊されました。ウイグル族学生は機敏に難を逃れた者もいましたが、それ以外は血祭りに上げられたそうです。

 こうなるともう大学側の手には負えません。市公安局(警察)から派遣された警官が事態収拾に務めましたが果たせず、とうとう武装警察(武警)を出動させて、午前3時ごろにようやく騒ぎが収まったそうです。漢族学生が襲撃した8号宿舎の荒らされ方はひどいもので、ドアというドアは全て蹴破られ、床にはガラスの破片や棍棒、レンガなどが散乱する有様。

 『太陽報』の記事は民族衝突に刃物も使われたと冒頭で書いているのですが、どの場面でどちらが使ったのかは具体的に言及されていません。衝突に加わった者はウイグル族・漢族合わせて合計500人にも及ぶとされていますが、それならもっと派手な場面があっても不思議ではありませんよね。例えば学生寮内だけでなく、屋外での衝突とか。……このあたりは謎です。

 ――――

 事件の翌朝、つまり武警投入で事態が終息してほどない午前6時には、大学内のネットや電話などが全てマヒし使用不能になりました。これは事件の噂が広まることを恐れた当局による封鎖措置でしょう。他にも寄宿舎の外には警官が警戒に立ち、学生には禁足令が敷かれました。

 大学生による集団的事件+民族衝突という事件の性質を山東省当局も深刻視し、同省公安庁や教育庁といった省レベルの担当者を大学に派遣。事態把握に努める一方、騒ぎの音頭をとったリーダー格の学生を逮捕する方針で調査が進められました。

 すでに学生数名が拘束されているといわれ、体育学部、外国語学部の学校側の責任者には、それぞれ行政処分が下された模様です。

 ――――

 ところで、ネット接続や電話が封鎖措置の対象とされ、外出も禁ずるという戒厳令状態とはいっても、携帯電話がありますよね。公安のバーカ(笑)。

 ……という訳でこの事件の話はすぐにネットに流れ、中国国内の掲示板の多くで話題となりました。ある掲示板では、自分は山東理工大学の漢族学生だとする者が出現、同大学ではウイグル族学生がこれまでもしばしば騒ぎを起こしており、漢族学生もとうとうキレたのだ、と発言しています。他にも今回騒ぎを起こしたウイグル族学生を「あいつらは鬼畜だ!男じゃない!」と罵る怒りのレスもあったそうです。

 ウイグル族側の反応はたぶん専用掲示板のようなところで拾えるでしょう。私も以前そのURLを持っていたのですが、いま探してもちょっと出てきませんorz。まあ「飛び火」に期待しつつ(笑)、続報待ちといったところです。とりあえず、中共政権が連呼する「調和社会の実現を」が未だに実の伴わぬお題目にすぎないことはよーくわかりました(笑)。


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 【※1】当ブログは昨日、書き手の体力という制約(笑)により九江学院とこの民族衝突の二者択一を迫られた訳ですが、インパクトはあっても民族衝突は確度の点で疑問符がつく。でもホンモノなら翌日以降に後追い報道があるだろうということで、九江学院を優先しました。その後追い報道が現時点まで待ってもまだ出でこないのですが……。

 【関連】「続・河南省の民族衝突事件(漢族vs回族)」(2004/11/03)
     「河南騒乱(漢族vs回族)第二稿」(2004/11/05)


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 【追記】
この事件の関連スレが「百度」に残っていました。御覧になるのもまた一興かと。(2005/07/04/20:27)

     http://post.baidu.com/f?kz=21631400
     http://post.baidu.com/f?kz=21486008
     http://post.baidu.com/f?kz=22227436



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 地味な小ネタなのですが、こういう事故、いや「事件」も拾っておいた方がいいでしょう。

 新疆ウイグル自治区のウルムチ市にある発電所で5月13日、石油タンクの爆発事故が発生しました。

 ●ウルムチの発電所で石油タンク爆発事故、5死1傷(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-05/13/content_2955417.htm

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 この記事によると、13日15時半ごろ、新疆紅雁池第二発電有限公司構内の石油タンクで激しい爆発が発生。火災を引き起こし、ウルムチ市内の各所から高々と立ち上る黒煙や火の手を見ることができたとのこと。報道時点での被害者は死者5名・負傷者1名。発電所のダメージも大きいものの、ウルムチ市への電力供給には影響が出ないそうです。

 この日は午後から強い風が吹いていたため、一時は延焼する勢いを止めることができず、30台近い消防車が現場に駆け付けて消火活動に当たったようです。再度の爆発を警戒して現場に向かう道路は全て武装警察が封鎖し、関係者以外の立ち入りをシャットアウト。

 鎮火後に警察関係者が現場検証を開始し、18時ごろになって封鎖も解除され、記者も現場に入ることができました。石油タンクは1基が跡形もなく破壊され、もう1基のタンクも20mほど吹き飛んでいたそうです。現場近くにいた工員の話では、ちょうど休み時間のためテント内で休息していたところ、突如として巨大な爆音、続いて石油タンクから火の手が上がるのが見えたとのこと。

 この発電所はウルムチ地区の電力供給の主力を担う存在のひとつで、タンク2基合計で1000トンの石油を入れることができるものの、爆発当時には700トンほどが残っていたものと推測されています。

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 私は記事漁りの中で一応事故関連のニュースも集めているので幸いすぐ拾い上げることができたのですが、実は今朝の香港紙『香港文匯報』にごく短い記事ですがその続報が出ていました。

 ●安全局、新疆の爆発事件調査に乗り出す
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0505160026&cat=002CH

 ウルムチ市延安路に位置する新疆華電紅雁池有限公司構内の石油タンク2基(最大備蓄量1000トン、爆発当時の残量は700トン余り)で先ごろ爆発が発生し、死者5名・負傷者1名を出した。損失は現時点での推計で400万元余り。国家安全部門はこの事故を非常に重視し、国家安全局が現地へ調査員を派遣している。

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 この記事によって、爆発が「事故」ではなく「事件」の疑いが濃厚であることが明らかになりました。

 国家安全部といったらもう、反動勢力の監視とかインターネット関連の動向チェック、それに分離・独立運動や民主化運動に対処したり、人影の絶えた夜道で日本人らしい挙動不審な男を私服で尾行したり(笑)……そういう、公安(警察)よりもドスの効いた部門なのです。今回の一件は分離・独立運動勢力による破壊活動の線が強い、ということなのでしょう。

 だいたい「新華網」の記事で「武装警察が道路を封鎖」ってところから尋常でない物々しさを感じます。あるいは、死者の中に実行犯が含まれていたのかも知れません。

 以上、『香港文匯報』は香港における親中紙の筆頭ですから、記事の確度は高いと思われます。

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 ちょっと前にはバスを爆発させる事故もありましたし、つい最近、11日にも伊寧市からウルムチ市へと向かう長距離バスを爆発物を持った男がジャック。駆け付けた警官が包囲するなか爆発物に点火しバスを大破炎上させる事件もありました。犯人の男はその場で警官によって射殺されています。

 ●新疆伊寧警察、バスジャック男を射殺
 http://www.tianshannet.com.cn/GB/channel3/98/200505/13/156340.html

 犯行に及んだ原因は家庭内のトラブルによるものと報じられていますが、これはまさに死人に口なしで、本当のところは誰にもわかりません。もっとも報道によれば犯人の名前は「張宝国」で漢族めいてはいますが。

 最近、そういう活動が活発化しているのでしょうか?新疆に関しては犯行声明などが一切出ないのでわかりにくいです。

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 それにしてもウルムチ市に「延安路」があるとは知りませんでした。ひどいものですね。


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 河南省の民族衝突(漢族vs回族)については今月3日にもう書いているのですが(※1)、某巨大掲示板の某スレでこのテーマについて問われたとき、それを叩き台にしてレスをつけたんです。そしたら叩き台があったからなのか、そっちの方が何だか短切にまとまっていて良く思えるのです(ええ、もちろん私にとっては、ということです)。

 という訳で、捨ててしまうのも勿体ないのでそのレスに一部加筆&改行修正を加えたものを置いておきます。

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 回族というのは、確かウイグル族とは違いますよね?顔を見ただけでは漢族と見分けがつかない、と今回の報道のどこかで読みました。私には回族との接触経験がない(あったとしても気付いていない)ので、回族については特に何の印象も持っていませんでした。

 今回の河南の事件、発端は諸説あるようで、私にもどれが正確なのかわかりません。ただ、死者7名・負傷者42名・逮捕者18名という事件が起きたことは当局も認めています(民族衝突説は断固否定中)。事件があったことを認めているなら、これほどの惨事、国内でも報道すればいいんですけどね(笑)。

 まあ当局発表で死者7名なら、実際は倍か5倍か10倍か……というところでしょう。

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 それにしても、今回の事件を通じて、漢族がどう思っているにせよ、回族の方にはマイノリティとしてのストレスが予想以上に蓄積されていたことがわかりました。

 あとは、マイノリティとしての強固な団結力と非常によく機能する情報網・連絡網。――これには中国指導部も驚いているのではないでしょうか。私は冗談でなく「いざ鎌倉」(※2)という言葉を思い出しました。

 しかもチベットとか新彊のような辺境ではなく、中原にそういう「戦闘的な組織」が即応態勢で存在しているというのは、中共にとってある種の脅威でしょう。

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 事件が外電を通じて世界に報じられたことも中共にとって痛いでしょうけど、「とうとう事件が起きてしまった」という事実がより尾を引くことになるかも知れません。

 とは、この事件によって回族は心をたぎらせ始めただろうということです。

 河南、河北、山東、寧夏……あるいはそれ以外の地区も対象に含まれるかも知れませんが、それまで休火山として手当てしておけばよかった「回族問題」が、事件が起きてしまったことで、いつ噴火するとも知れぬ「活火山」に昇格を果たした、と言えるのではないでしょうか。

 私にとっては、中国における深刻な対立軸がまたひとつ増えた、というのが率直な感想です。これでいよいよチナヲチが難しくなります……。


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【※1】「続・河南省の民族衝突事件(漢族vs回族)」(2004/11/03)

【※2】いやいや、別に私が御家人だからというオチではありません。鎌倉時代のそれではなく、私は内職に楊子削りをする下級幕臣の方ですので。


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