日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)


 昨年秋に江沢民が引退して胡錦涛政権がスタートした当初、胡錦涛が「靖国神社」に対して如何にナイーブだったか、反日サイトに対する姿勢が如何に強硬だったかを御記憶の方も多いかと思います。

 恐らく胡錦涛は当初、イニシアチブを終始中国側が握った形での未来志向型の対日外交を構想していたのだと思います。

 ところが意外にも日本側の腰が強く、首脳会談でも「参拝しません」との言質をとれなかった。逆にODA打ち切りなんて話を持ち出されてしまいます。

 そこで軍部など対外強硬派からの風当たりが強くなります。「国家統一促進法」(反国家分裂法)制定の動きもその一環でしょう。

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 胡錦涛に対する「弱腰に過ぎる」という反発の表れですが、それが決定的になったのは、
昨年12月に李登輝氏への訪日ビザ発給が確定的になった時点でしょう。それに続いて2月の尖閣諸島の灯台国有化、さらに日米安保の「2プラス2」で「胡錦涛に任せておいて大丈夫なのか」という声が強まったと私は思います。

 その動きが「反日」気運を上手に利用した権力闘争、さらに5月以降の「靖国」を止められない胡錦涛への「ヘタレ認定」へと発展していきます。呉儀ドタキャン事件ではクーデター説との関係も取り沙汰されました。その後の胡錦涛は半ば軍部の操り人形になってしまった観があります。

 
「胡耀邦生誕90周年」イベントは、そうした頽勢を少しでも挽回するためのものです。もともと胡錦涛を推していながら趙紫陽元総書記の死去に伴うゴタゴタで疎遠になってしまった党の長老グループとの関係修復を狙ったものでしょう。清廉とのイメージがある胡耀邦を担ぎ出すことで、胡錦涛の好きな風紀粛正に対する効果も狙っているのかも知れません。

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 上記の限りだと胡錦涛は軍部や対外強硬派とばかり戦っていたようにみえてしまうので、最後にさらに話題を転じておきます。

 例の「炭鉱における官民癒着」で中央が各地方政府の党幹部に資本撤退を求めた件は進展がないままです。新しい情報としては石炭の本場ともいえる山西省で国家機関職員及び国有企業経営者合計190名が自主的に資本撤退を行ったとのニュースがあります。

 http://politics.people.com.cn/GB/1026/3730882.html

 が、たぶんこの数字は25日時点の「貴州、河南、河北など9省の不完全統計で合計497名」に含められているのではないかと思います。

 ●国家機関職員と国有企業経営者497名が炭鉱から資本撤退
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-09/26/content_3546408.htm

 しかもこの山西省のトップである張宝順・省党委書記は胡錦涛と同じ共青団(共産主義青年団)出身で、つまり
胡錦涛派のホープなのです。その親分のためにひと肌脱ごう、ということなのか、胡錦涛の提唱する「科学的発展観」を実践して山西省が如何によくなったかを力説する文章も発表しています。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-09/28/content_3554419.htm

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 そういう忠実な子分がいるところがあれば、逆に政敵系列が治めている地区もあるでしょう。ただそれらは言わば例外のようなもので、基本的には「中央政府なんて俺たちの経済発展を邪魔するだけだ」という
「中央vs地方」という対立軸があり、それが対外強硬派や江沢民系列と組んで「アンチ胡錦涛派」ともいうべき政治勢力を形成しているように思います。

 地方のボスにとっては
胡錦涛憎しではなく、地元の開発欲求を常に満たしてくれない「中央」に反発しているのです。仮に胡錦涛が失脚してその後を温家宝が継げば、今度は「アンチ温家宝派」を構成することでしょう。要するに軍部だけでなく、動機は異なれど総論賛成の諸派連合が胡錦涛の相手だということです。

 さて、軍主流派を味方につけたと思われる胡錦涛ですが、「国家主席+党総書記+党中央軍事委主席」という序列ナンバーワンの最高指導者として、軍部とどういう関係を築いていくのか、それに軍主流派の分別がどの程度のものなのかは興味深いところです。ちょっと前に、

「もし米国が台湾問題の絡みで中国の主権の及ぶ範囲(軍艦や航空機を含む)を攻撃したら、西安から東の都市を全て潰される覚悟で米国を核攻撃する」

 みたいな放言をして物議を醸した将軍がいましたよね。確か朱成虎少将でしたか。そういう発言が公になってしまうのは、当時、胡錦涛の軍部に対する統制力がよほど弱体化していたことを示すものです。

 あの勇ましい「朱成虎発言」が軍主流派の意思を代弁しているのなら、中共政権は早晩火病を発端に潰れるしかないでしょう。ですから個人的には軍部の「分別の度合い」と胡錦涛の引きずられ具合、そういったものが目下気になっているところです。



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 素朴な疑問です。

 『朝日新聞』(2005/09/26)が一面トップで陸上自衛隊の「防衛警備計画」なるものを報じました。

「『中国の侵攻』も想定」

 という大見出しに魅かれて、私はつい売店で買ってしまいました(笑)。中国、香港、台湾のメディアは速報といえるタイミングでこのニュースを報じています。電子版で速報しておいて翌日の紙面で詳細な報道を行った新聞もありました。

 いやメディアだけでなく、同日(9月26日)の中国外交部定例記者会見にもこの話が持ち出されています。持ち出した記者はA日かK同か(五七五)。爛々と目を輝かせて中国サイドからの手ひどい日本批判を待っていたのかも知れません。

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 が、さすがに報道官はよく訓練されています。この質問に対しては原則論に終始して、記事そのものについては見事にスルーしていました。

 http://news.xinhuanet.com/world/2005-09/27/content_3553388_1.htm

 で、素朴な疑問なんです。私は外交部報道官としては、上のようなリアクションで正解だと思っています。だって
この『朝日新聞』の記事、ウラは取れていますか?日本政府が公式にその存在を認めたものなんでしょうか?記事が確実なものかどうかを通り越して、話題だけが一人歩きしているように思います。

 そういう無責任な記事がタネ火になって、また反日騒動とかに発展したら……ああ、それはそれでいいことかも知れませんね(笑)。

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 さてそれとは全く別の話。党の重要会議である「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)を前にして、中国政治もややヒートアップしてきた印象があります。

 胡錦涛総書記は、とりあえず
人民解放軍の主流派の支持を取り付けることに成功したようです。根拠ですか?根拠も何もあったもんではありません。ここ数日の『解放軍報』(人民解放軍の機関紙)には胡錦涛を持ち上げる記事がどんどん出てきています。それが国営通信社のウェブサイトである「新華網」にも転載されているのです。

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 ●平和・発展・協力・調和――胡錦涛総書記の国連談話を読み解く
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-09/26/content_3544490.htm

 ●軍総政治部、胡錦涛主席の「汚職汚職根絶・風紀粛正」講話を下達
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-09/27/content_3548787.htm

 ●郭伯雄中央軍事委副主席、駐広東部隊の調査研究会で科学的発展観の実践・貫徹を強調
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-09/27/content_3548971.htm

 ●徐才厚中央軍事委副主席、駐北京部隊で先進性教育活動の専門調査研究会を開催
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-09/27/content_3549094.htm

 ●党の軍事指導理論の重大なる刷新
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2005-09/27/content_303695.htm

 ●新世紀・新段階におけるわが軍の歴史的使命理論シンポジウム、その一側面
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-09/28/content_3557777.htm

 ●胡錦涛主席の重要理論に関する学習会についての発言ダイジェスト
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-09/28/content_3554435.htm

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 9月26日以降だけでもこんなにあります。最後の記事なんか長くて長くて、なかなか終わらないので私はもう半泣き状態でした(笑)。

 こうした文章の中に
「三個提供、一個發揮」「三個素質、四個本領」といった言葉が出てきます。それらをキーワードとする「新理論」で全軍に胡錦涛色を打ち出していこう、ということかと思います。

 簡単に言ってしまうと、
「努めよ」「怯むな」「誇りを持て」「忘れるな」「信じろ」「励め」「負けるな」「進め」……といった、精神主義というかある種の覚悟といった抽象的なものです。

 その点は「雷鋒に学べ」型の風紀粛正キャンペーンに傾きたがる胡錦涛本来の好みと平仄が合っています。いまはまだ無理でしょうが、そのうち江沢民を神棚に祭り上げて胡錦涛が自分なりの軍事指導理論をでっち上げ、それを柱に据えることになるのでしょう。

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 人民解放軍といっても派閥などが色々あるのでしょうが、これだけの勢いで攻勢をかけることができた、というのは胡錦涛が『解放軍報』を制し、軍部の多数派を味方につけたことを意味するものでしょう。ですから記事の洪水は、ある意味その陣取りゲームにおける
勝利宣言のようなものといってもいいかと思います。もちろん、これで全てが終わった訳ではありませんけど。

 問題は人民解放軍の主流派は胡錦涛支持に回った、ということなんですが、「支持に回った=胡錦涛が掌握した」というよりは、「軍部主流派が胡錦涛を担いだ」という色合いが濃いように思えることです。胡錦涛は神輿に乗って担がれているけれども、主導権は自分の手にない……もちろん皆無ではないにせよ、
最高指導者として自由自在に切り回せるような状況にはないという印象です。

 ここから先はもう少し事態が煮詰まってみないとわかりません。ただ仮に軍部が大きな発言力を持つことになるのであれば、対外政策においては当然ながら
武断的なアクションが増えることになるでしょう。

 例えば昨年秋の中国原潜による日本領海侵犯事件、あれは発覚後の中央サイドの周章狼狽ぶりからみて軍部の一部が勝手に先走った結果ではないかと私は思います。胡錦涛の本意ではないでしょう。

 最近では東シナ海の問題のガス田付近に中国海軍の艦艇が出現、それも日中中間線ギリギリのところを狙って航行したようですが、これが武断的アクションといっていいかと思います。

 これも胡錦涛の本意ではないでしょうが、軍主流派に引きずられて認めざるを得なかったのではないかと。軍艦を差し向けて挑発してみせるなんて、いかにも軍人の頭から出そうな発想ではないですか。そして、「原潜による領海侵犯」と「資源紛争地域への海軍派遣」、その深刻度の差が血気に逸った一部の連中と軍主流派との分別の差かと思います。

 ここで念を入れておきますけど、強硬姿勢=武断的アクションではありません。軍事力に拠らずとも強硬姿勢を示すことはできるでしょう。そうではなく、
主として軍事力に拠って強硬姿勢を表現しようというのが武断的アクションです。


「下」に続く)



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 言わずと知れた番禺太石村(広東省広州市番禺区魚窩鎮太石村)の「農民による民主化運動」です。終息したと思ったら後日談までありました。

 ここまでの動きについては下記を御参照下さい。ゲッこれ全部読まなきゃダメ?……と思った方は一番下の2本(「これぞ温家宝の唱える……」上下)だけ読んで頂ければ大体の経緯は御理解頂けるかと思います。

 「民主化運動」だから断固弾圧――番禺太石村事件。・上(2005/09/15)
 「民主化運動」だから断固弾圧――番禺太石村事件。・下(2005/09/15)
 番禺太石村事件3――愚民量産を邪魔されると中共は御陀仏。(2005/09/16)
 これぞ温家宝の唱える「中国型民主」(笑)・上(2005/09/23)
 これぞ温家宝の唱える「中国型民主」(笑)・下(2005/09/23)

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 太石村の村長(村民委員会主任)に土地売却をめぐる汚職疑惑が浮上し、抗議してもラチがあかないと悟った村民たちは人権活動家などの助けを得て法知識を学び、ついに合法的な手続きで村長罷免動議を成立させるという中共政権史上恐らく前代未聞と思われる快挙を成し遂げました。

 動議成立ということで、まず罷免の是非を審議する村民委員会7名の選出が必要となりました。村民に時間的余裕を与えない当局の汚い手口にも負けず、村民は独自候補7名を擁立。選挙戦で当局が押し立てた「官製候補」7名を全て退けて圧勝、正に民意に基づいた村民委員会が成立しました。これまた歴史的快挙です。

 ところが村民たちの不幸は、自分達の村が政府や法律の上に中国共産党が一党独裁で胡座をかいているという異常な政治制度の国にあったことです。異常な国情には異常な「民主」がやっぱりお似合い。民意の存在を糸屑ほどにも感じさせない「中国型民主」です。

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 温家宝首相は9月6日、海外を含むマスコミの前で大見得を切り、その民主化構想(中国型民主)について大いに語ってみせたのですが、太石村で起きた一連の出来事は、その「中国型民主」の実態がどういうものかを、また温家宝の熱弁が如何に虚偽のカタマリであったかを期せずして鮮やかに浮き彫りにしました。

 とは、選挙が終わるとともに、村民委員会に当選した7名の「民選候補」に匿名電話などによる脅迫が開始されたのです。その執拗で凄みのある脅し上げに耐えられなくなった当選者たちは一人また一人と村民委員職を離れていき、とうとう9月23日までに7人全員が辞職に追い込まれてしまいました。

 ぽっかりと空いた村民委員のポストには、落選した当局の「官製候補」7名がそのまま繰り上げ当選。時代劇の脚本でもこれほどの筋は「ベタすぎ」と一蹴されそうなお芝居が、現実に行われたのです。

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 一方では村民やその支持者たちに対して露骨なまでの弾圧が加えられています。

 まずは9月12日以来消息不明となっていた村民たちの法律顧問・郭飛雄氏が警察に逮捕されたことが正式に確認されました。

 一昨日(9月26日)には村民を支援してきた大学教授や人権活動家が取材陣と共に太石村を訪れたところ水を浴びせられ、さらに暴徒に袋叩きにされるなどして負傷する事件が起きています。他にも取材のため村にやってきた記者が汚水をかけられるなどして追い払われています。

 村は事実上、村外との接触を禁じられた封鎖状態といってもいいでしょう。「なんちゃって戒厳令」といったところです。常時60~70名の警官が村内を常時巡察し、数人がかたまって話をしているのを見ると一喝してやめさせたりもするそうです。これではまるで3人以上が集まることを禁じられた植民地時代のマレーシアだかインドネシア(記憶モード)のようなものではないですか。

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 そして、脅迫の鉾先はいま一般の村民にも向けられています。罷免動議の成立によって10月7日に開かれることになった村長罷免大会(村民の直接投票で罷免の是非を決めるもの?詳細は不明)を流産させてしまおう、というのが当局の肚。「当局」といっても様々なランクがありますが、番禺区政府までは直接関与しているようです。

 こちらの脅迫も念が入っています。具体的には罷免取消動議のための署名集めなのですが、まずは戸別訪問して脅しあげる。その一方で当局関係者が村民を飲茶に招いたりと硬軟両面から追い込んでいくという戦術です。

 また、12日のの警官隊による急襲や当初の抗議活動(ハンストなど)で警察に拘留されている者の家族に対しては、「署名に応じれば釈放する」という迫り方。

「村民21名の署名が集まるごとに一人ずつ釈放してやる」

 という条件が番禺区当局から示されているという噂も流れているようです。

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 これまで事件を追い続け、ネット上で村民を支持してきた掲示板「燕南社区BBS」に対しては、21日に国務院新聞弁公室からサイト運営者に直々の電話があり、太石村事件に関する文章を全て削除するよう求めてきたといいます。

 国務院とはすなわち中央政府。これが事実なら、事件に関与しているのが番禺区や広州市といった地元レベルだけでないことがわかります。地元当局による事件処理のやり方についても御墨付きが出ているのでしょう。汚いですねえ。温家宝の構想通りにやってみた結果がこれですから。

 さすがは「中国型民主」とでも言いますか、その執拗さと徹底ぶりはこのように並ではありません。まさに完膚なきまでに、相手を撃殺するまで手を休めない、といった執念を感じます。1989年の天安門事件もそうでしたし、文化大革命や反右派運動もそうでした。あるいは歴代王朝における「官」と「民」の関係もそうだったのかも知れません。地金が出ちゃったというかお里が知れるというか。

 何やら捨鉢な感想ばかりが湧いてきます。「官」の汚さは当然のことながら、本来なら先頭に立つべき存在である大学生や知識人が都市生活を謳歌し、成年男女の3割までが親に養われているのです(事実上のニート)。

 その一方で農民が法律を用いて自分の権利を行使するやり方を自ら懸命に学び、それを成就させつつも最後には当局に潰されていく。どうにも救われないじゃないですか。この件に関しては結語が浮かびません。浮かばないまま打ち切りにしておきます。

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 こういう話題ですからついでにふれておきます。親中紙『香港文匯報』(2005/09/27)によると、北京の天安門広場近くで26日午前、ごく小規模の爆発があったそうです。事故なのか事件なのか、逮捕者が出たのかなどについては目下のところ不明です。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0509270022&cat=002CH

 それからとある裁判のニュース。湖北省・黄石市で発生した政府庁舎襲撃事件について首謀者ら10名に第一審の判決が言い渡されました。……て、そんな事件が起きていたんですねえ。

 「新華網」(2005/09/27)及び香港紙『蘋果日報』(2005/09/28)の報道によると、首謀者らは8月5日午前1時ごろ、当局の認可を得ない非合法デモ(大洽市から黄石市まで)を計画しインターネットを通じて大洽市民に参加を呼びかけたとのこと。

 デモの動機は「政府に対する抗議」。現在大洽市の管轄下にある複数の「区」を黄石市に吸収合併させる統廃合計画が進んでおり、それによって順調な経済成長を遂げてきた大洽市の今後の発展に影響が出るとの懸念から、大洽市民の多くはこの統廃合計画に不満を募らせていたようです。

 そして8月6日午前、首謀者らは集合地点に屯集した群衆を率いて予定通り黄石市までデモ行進し、黄石市に到着したところで暴徒化。政府庁舎に赴いて玄関の自動ドアや植え込み、柵などを壊して回る一方、庁舎内にも乱入して数々の破壊行為を働き、さらに近くを走る高速道路の料金所付近をデモ行進して大渋滞を引き起こしたとか。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-09/27/content_3548680.htm

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 前回紹介した「造反官僚」の件もそうですが、何だか中国社会のタガが緩み始めているような気がしないでもありません。

 中央の求心力低下は分権化と競争原理の導入を骨子とする改革開放政策の帰結ともいえますが、本来なら別の調節手段で中央がマクロコントロールを効かせる計画だったのが、それがまだ十分に機能しないうちに社会状況が先に悪化してしまいました。具体的には貧富の差や地域間格差の拡大、それに失業者の増大や党幹部による汚職の蔓延などといったところでしょうか。

 そうした危機を「強権政治&準戦時態勢」のもと荒療治を施して乗り切ろうとした(と私はみています)胡錦涛総書記の計算も随分狂ってしまったようですし。……ただ強力な野党のような対抗勢力がない分、中共は倒れるにしてもゆっくりと腐りつつ朽ちていくように思います。「造反官僚」は目下のところ「中央vs地方」という対立軸のみで「地方vs地方」の気配はありませんから、まだ分裂を云々できる段階ではありませんし。

 何だか最後は主題と関係ない話になってしまいました。すみません。


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 【参考記事】

  ●反中共系ラジオ局「RFA」(2005/09/26)
  http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/09/26/china_rights_taishi/

  ●反中共系ラジオ局「RFA」(2005/09/27)
  http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/09/27/china_rights_taishi/

  ●香港紙『太陽報』(2005/09/26)
  http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050926/20050926020611_0001.html

  ●香港紙『明報』(2005/09/27)
  http://full.mingpaonews.com/20050927/cac1.htm



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 何やらここ一両日で色々な動きがありましたね。

 ●温家宝首相の訪欧延期。
 ●陸上自衛隊の「防衛警備計画」なるものを『朝日新聞』が報道。
 ●中国海軍が東シナ海を担当する予備役部隊を編成。
 ●香港立法会議員団の訪中。
 ●炭鉱への出資問題をめぐり大量の造反官僚。
 ●中国、東アジア首脳会議への米国の参加反対を表明。
 ●中国のネット規制強化。 
 ●温家宝、訪中した日中経済協会代表団に「歴史問題の勉強を」。
 ●アジア開発銀行、中国に45億ドルを融資。

 ざっと並べてみてもこのくらいあります。

 中国海軍の予備役部隊というのは旧日本海軍でいうと鎮守府直属の二等駆逐艦による駆逐隊みたいなものでしょうか。そりゃまた豪気だねー、と。いきなり海軍部隊を出してきた日にはこちらも海上保安庁ではなく海上自衛隊で対応しなければならなくなりますね。

 中国がいままで活動家を丸腰で派遣していた尖閣諸島問題、いまは活動家の先走りを抑えに抑えているのでしょうが、国内世論や党上層部の主導権争いがありますから、次に中国が手を出してくるときはガチ(奪還作戦かどうかは別として、護衛艦艇つき)だろうと私は思います。

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 党の重要会議である「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)も間近ですから、とりあえず石原都知事にまた沖の鳥島へ行ってもらって、日の丸を振ってもらうか具体的な施設建設に取りかかるなどして煽ってみたらどうでしょう。

 人民解放軍の機関紙である『解放軍報』などは最近、胡錦涛総書記のもとに一致団結するよう繰り返し強調していて、それを国営通信社の「新華網」などが転載したりしています。しきりに強調しなければならないほど団結が揺らいでいるのでしょう。表に出て来ない動きが色々あるのだと思います。政権運営の主導権をどの政治勢力が握っているのかちょっと見えにくい状況が続いています。

 香港の立法会議員団の広東省訪問も地味ながら面白いニュースです。広東省トップとの会見で議員の一部(民主派)が天安門事件(1989年)の名誉回復を求めたのに対し、

「名誉回復はできないし、名誉回復が行われることもない」

 ときっぱりと拒絶されています。

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 他にも番禺太石村に新展開があるなど題材は豊富なのですが、とりあえず「炭鉱への出資問題をめぐり大量の造反官僚」、この続報をお伝えします。地味なようですが、冒頭に並べたニュースの中で最も異常な出来事といえるかも知れません。

 ●関連記事
 「造反官僚続出『炭鉱投資、クビになってもやめない!」(2005/09/25)

 地方の党官僚が炭鉱(無許可のヤミ炭鉱含む)に出資するのをやめろ、と中央政府が通達を出して、その撤退期限が9月22日でした。20万元投資すれば最低でも年に20万元の収益があるというオイシイ話に地方の幹部が飛びついて、事故が起きても地元党官僚が隠蔽してしまうという官民癒着の構図を打破しようというものです。

 各地方が通達に大人しく従うかどうかは中央政府の威厳を示すバロメーターでした。ところがフタを開けてみるとこれがまた惨澹たる状況。直轄市・省・自治区レベルでこの通達に従順だった地区は皆無といっていいでしょう。

「まだ正確な数字がつかめないので……」

 などと言い訳されて面従腹背、内蒙古自治区では何と資本撤退に従った党幹部は一人もなく、

「クビになっても炭鉱投資はやめない」

 という言葉まで飛び出して、それが中国国内メディアに報道される始末。要するに温家宝首相率いる国務院(中央政府)の面子が丸潰れとなった訳です。

 ――――

 この内蒙古自治区の総員通達無視、それに「クビになっても炭鉱投資はやめない」という反応は各方面に衝撃を与えたらしく、関連評論がわらわらと湧いて出てきました。

 ●何が役人に「クビになっても炭鉱投資はやめない」と言わせるのか(中国経済時報)
 http://opinion.people.com.cn/GB/51863/3723935.html

 ●「クビになっても炭鉱投資はやめない」とは誰を挑発しているのか(大河報)
 http://opinion.people.com.cn/GB/1034/3722245.html

 ●「クビになっても炭鉱投資はやめない」は虚言だ!(斉魯晩報)
 http://opinion.people.com.cn/GB/1034/3721851.html

 ●「クビになっても炭鉱投資はやめない」に対する3つの提案(法制日報)
 http://news.xinhuanet.com/lianzheng/2005-09/26/content_3543850.htm

 ●恐るべし、資本撤退した官僚は皆無(瞭望)
 http://news.xinhuanet.com/lianzheng/2005-09/26/content_3546682.htm

 ●炭鉱の「官民癒着」根絶は任重く道なお遠し(新華社)
 http://news.xinhuanet.com/zhengfu/2005-09/26/content_3544427.htm

 ●炭鉱の「官民癒着」役人の「資本撤退無視」が示すものは?(人民日報)
 http://society.people.com.cn/GB/1063/3725083.html

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 ものすごい反響です。で、恥を晒した中央政府は昨日(9月26日)、資本撤退者の最新統計を明らかにしています。

 ●国家機関職員と国有企業経営者497名が炭鉱から資本撤退
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-09/26/content_3546408.htm

 この497名は25日夜時点での人数なのですが、全国統計ではありません。「貴州、河南、河北など9省の不完全統計」というごく一部の地域に限られた、しかも大まかな数字なのです。随分腰が引けた発表になっています。何とまあ情けない。

 ヤミ炭鉱撲滅と官民癒着根絶に関する通達が出たのは8月下旬です。当時このニュースに接した私は、こういう通達を出せるくらいだから中央政府の威令が各地に及んでいるのだろうと思ったのですが、どうやらそうではなかったようです。

 昨年から問題になっている土地の強制収用についても、中央から厳しい通達が出ると今度は「土地借り上げ」が各地で流行しました。「土地買収」じゃなくて賃借するだけだから問題はなかろう、というものです。

「上有政策下有対策」(中央の政策に対し、地方はそれを骨抜きにして面従腹背)

 の典型例ですが、今回の炭鉱問題ではよりダイレクトに、しかも全国各地から拒否反応が返ってきたのですから一種の異常事態です。

 ――――

 ここに政治の影をみるとすれば、どうなるでしょう。この1年余り、胡錦涛はその出身母体である共青団(共産主義青年団、ユース共産党みたいなもの)系統の人脈をしきりに各地に送り込んで勢力扶植に励んできました。省や自治区政府の首長とかそのサブ(副省長や自治区副主席)、ひいては実質的なトップである党や自治区の党委員会書記、あるいは副書記といったレベルでの人事です。

 でも結局のところ中央から派遣された雇われ親分ですから、地元生え抜きの部下たちをまだ十分に掌握できていない、つまり下僚から親分として認知されていないのではないかと。あるいはアンチ胡錦涛の政治勢力が地元幹部レベルに根を張っていて邪魔しているということも十分考えられます。今回の問題も、つまりは中央政府と地方政府の間での利害対立ですから。

 それにしても、拒否の姿勢が余りにあからさまであることに驚かされます。内蒙古自治区の「資本撤退者ゼロ」という数字の形で間接的に示した拒否反応。しかもそれに加えて「クビになっても炭鉱投資はやめない」と
中央政府に喧嘩を売っているかの如き強腰はどこから来ているのか、何を恃んでいるのか。これは興味深いところです。

 ともあれ、かくも多くの
「造反官僚」の出現に中央政府はマスコミ総動員で前掲のような一種のキャンペーンを展開しているのが現状です。経済政策の実質的な運営者である国家発展・改革委員会は中央による「宏観調控」(マクロコントロール)という言葉を盛んに呼号していますが、この体たらくでは各地区の開発欲求を巧みに抑えバランスをとりつつ持続的安定的経済成長を目指す、というのは画餅に終わりそうな印象です。

 それにしても毎度毎度感じることですが、「公の精神」というものが中国の「官」にはカケラすらみられませんね。その点については日本の官僚も怪しいものですが、中国はさすが私腹の肥やし方のスケールが違います。しかも堂々としている(笑)。これは民族性なのでしょうか。いずれにせよあと100年待っても近代国家にはなれそうにありません。



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 東京は台風一過の青空です。随分涼しくなって、心なしか秋めいてきたようでもあります。

 でも世間的には連休明けの月曜日ですね。私のように旧正月以外はカレンダーに赤字の日がない(涙)ヤクザな稼業に身を堕とした者を別とすれば、連休明け+月曜というのは何とも気鬱なことでしょう。特にサラリーマンの方、お察し致します。

 という訳で軽い話題にしておきましょう。中国語にも「避重就軽」という言葉があることですし(カナーリ意味が違うかも知れません)。

 ――――

 はい、そういう訳で標題の通り「男体盛」です。何も言わずに下のURLに飛んでみて下さい。

 ●新華網(2005/09/25、『北京青年報』より転載)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-09/25/content_3540627.htm

 ……ね?タイトルの下に皆さんお馴染みの
「女体盛」の写真。さて今度は何をつまもうか……と宙を漂う親爺の割箸が卑猥です。でもここで留まってはいけません。さらに下へ下へとと画面をスクロールさせていくと、ほら、「男体盛」が。

 いよいよ気鬱になりましたか。そうですか。まあこの写真、拡大されていたらグロというか精神的ブラクラというか。……「新華網」もそこは心得たもので「女体盛」より小さいサイズにしてあります(笑)。学生時代の飲み会で酔い潰れて寝てしまった奴にみんなで油性マジックで落書きしたのを私は思い出しました。

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 この「男体盛」には一応理屈がついているようです。昨年4月、雲南省昆明市のレストランが「女体盛」サービスを始めて話題となったそうですが、その数カ月後、重慶市の『新女性』誌が、

「男女平等」
「女性を商品化する風潮へのアンチテーゼ」

 という主題のもとに実施した企画で、実際に誌面を飾ったものです。ただどういう訳か1年以上を経たいまになってその特集が発掘され蒸し返された次第。当時「男体盛」を享受したのは『新女性』誌の女性編集者や出版元の女性従業員、つまり女性に限定されたとか。

 こういう行為、つまり「女体盛」や「男体盛」を
「芸術的パフォーマンス」と強弁する向きもあるようですが、「男体盛」の写真を見る限り、それは芸術に対する冒涜ではないかと(笑)。芸術を語るならせめてモデルを選んでほしいところです。

 私はやっぱり酔い潰れたところを悪戯されたオッサンにしか見えません。どうせなら全身を映してほしかったですね。黒い靴下を履いているような気がするのは私だけでしょうか。

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 ちなみにこの記事には「女体盛」=「日本」のような物言いは一切出てきません。反日ネタかと思ったのにちょっと肩透かしを喰った気分です(笑)。

 ……という訳で秋晴れの朝にふさわしい爽やかなニュースでした。御堪能頂けましたでしょうか?



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 どうも私は温家宝首相が好きになれないようです。

 胡温体制と呼ばれる現在の胡錦涛政権ですが、この1年ばかり、何だか胡錦涛総書記ばかりが汚れ役や苛められ役になっているような気がするのです。別に胡錦涛を好きだという訳ではありませんが、胡錦涛の中共政権への危機感は、文書になったものもそうですが、直線的で素人の私にもわかりやすいものです。

 ただそれに対する「アンチ胡錦涛」ともいうべき抵抗勢力(諸派連合)があり、折にふれて胡錦涛を苛めたり圧力をかけたりする。いまや国家主席+党総書記+党中央軍事委員会主席という序列ナンバーワンであるのに、政権運営の主導権が胡錦涛の側にあるのかどうかも定かではないような状況です。

 で、温家宝はというと、陰で胡錦涛をフォローしているのかも知れませんが、表向きは庶民派を偽装してそのイメージ向上に努め、オイシイところは全部自分が持っていってしまう。エイズ村視察、障害者の子供が学ぶ学校訪問、そして先の小学校訪問などがそうですが、いずれも児童に優しく語りかける。それがまたみんな揃いも揃って女子児童。ひょっとすると幼女趣味があったりして(笑)。

 ――――

 その温家宝が来月訪欧する予定を延期しました。香港の親中紙にあたってみると、

「より重要な国内事務を処理する必要があるため」
(『香港文匯報』2005/09/24)

「目下のところ『その他の重要な国内事務』が何を指しているのかは不明だ。ただこの期間(訪欧を先延ばしにした期間)に共産党の年に一度の大会(五中全会=党第16期中央委員会第5次総会)や有人宇宙船の打ち上げが行われるものとみられる」
(『大公報』2005/09/24)

 とあります。五中全会の期間中に訪欧することは考えられませんから、その根回しなのか、五中全会の開催そのものが早まったのか。

 原因が五中全会絡みで、開催そのものが早まったためならば、それは温家宝にとって予想外の事態が発生した、つまりもっと後に開くべき大会を何らかの望ましくない理由で前倒し開催しなければならなくなった、ということになるでしょう。胡錦涛が党務、温家宝が政務を主に担当していることを考えれば、政務絡みの非常事態が発生した、とも考えられます。

 ――――

 で、温家宝の訪欧延期と関係があるかどうかはわかりませんが、実はいま政務にとってゆゆしき事態が起きていることは確かです。それが中国国内のメディアにも報じられて私もちょっと驚いています。炭鉱に関する問題のことです。あるいは炭鉱問題によって中央vs地方という対立の構図がはからずも浮き彫りにされてしまった、ということかも知れません。

 炭鉱といえば第一に当局の認可や安全審査を無視したヤミ炭鉱が全国に存在していて、それがしばしば炭鉱事故の原因となっていたことが挙げられます。第二はいわゆる炭鉱汚職ともいうべきもので、地元当局の党官僚がヤミ炭鉱ないしは歴とした炭鉱に出資することで懐を暖めているという問題です。官僚にとっては打ち出の小槌ですから、事故が起きてもその隠蔽に協力してやったりします。

 ――――

 業を煮やした中央政府は8月下旬、
「安全生産条件と非合法炭鉱の整理・封鎖に関する通達」という最後通告を発しました。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/23/content_3393421.htm

 その内容はといえば、まずヤミ炭鉱に対して「直ちに操業を停止しろ」となっています。ただこれは一発退場ではなく、あくまでもイエローカード。

「基準を満たしていない炭鉱には1度だけ操業停止・環境改善の機会を与え、期限までに安全生産許可証を手にできなかった炭鉱については法によって一律閉鎖とする。操業停止による環境改善の期限は今年末を超えてはならない」

 要するにヤミ炭鉱にも1度だけ更正のチャンスを与えるというものです。

 と同時に、炭鉱に対し出資している官僚に対し、1カ月以内に資本を引き上げるよう厳命しています。汚職の温床や事故隠蔽の根を絶つ措置です。最終期限は9月22日。

 ――――

 ところが、この出資問題の進捗状況がどうもうまくいっていないんです。9月22日という期限を過ぎても、上の通達に従わない地方があります。

 最もあからさまなのは内蒙古自治区です。『中国青年報』(2005/09/22)によると、22日当日の午後4時現在で、出資とりやめに応じた官僚はなんと
ゼロ。1名もいないのです。「通達」を発した中央政府からみれば「造反官僚」ということになります。

 地元の炭鉱経営者の間では「官をクビになっても出資は取り下げない」という言葉があるそうです。「年間20万元投資すれば、収益は20万元を下らない」ともいわれているそうですから、出資している役人にとってこれほどオイシイ話はない、ということなのでしょう。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-09/22/content_3524583.htm

 全員が「通達」を無視したことで際立ってしまいましたが、もちろんこれは内蒙古自治区に限ったことではありません。「造反官僚」は全国各地に遍く存在しています。

 9月22日の期限を迎えたことで各地の進展状況を伝える記事の標題は、

「すでに自主的に資本を引き揚げた官僚がいる」

 となっています。要するに「炭鉱と縁を切っていない官僚がまだたくさんいる」ということでしょう。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-09/22/content_3524901.htm

 ――――

 同じような内容の記事があります。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-09/22/content_3524901.htm

 官僚の出資問題についてのみピックアップしますと、

 広東省:具体的数字はまだ明らかになっていない。
 貴州省:すでに自主的に資本を引き上げた者がいる。
 内蒙古自治区:出資をとりやめた者は誰一人いない。「クビになっても出資はやめない」との言葉も。
 陜西省:出資をやめない者は免職との最後通牒。
 山西省:期限(9月22日)までに出資をとりやめない者は免職とする方針。

 ……とまあこんな感じでして、要するに期限までに全員が「通達」に従った地区はなく、中央の言うことを聞かない役人がたくさんいる模様です。

 各省・自治区の対応も本腰を入れているのか中央政府向けに「ウチはちゃんとやってますよ」とポーズを示しているのか、よくわかりません。まさに「上有政策下有対策」(中央に政策があれば地方にはその対策がある)を地でいく状況です。

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 地味なニュースではあるのですが、これほどの「造反」ぶりも珍しいものです。各地方政府に対する中央の威令が届きにくくなっていることを示す現象として記憶しておいていいかと思います。



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(「上」の続き)


 それにしても、従来の農民争議とは全く異なり、太石村の争議が「民主化運動」という性質を持っていることは当局も早々に気付いていたでしょうに、どうして事態が二転三転する破目になったのでしょう。それに警官隊を踏み込ませたうえ「悪者」「陰謀」認定しておきながら、掌を返して選挙をやろうというのもおかしな話です。

 二転三転した理由は察することができなくもありません。まず内陸部の僻村などではなく、広州市郊外という海外のマスコミも容易に潜入できる地理的条件に恵まれたこと。実際にそのおかげで香港紙や反中共系ラジオ局「RFA」、それに反体制系ニュースサイト「大紀元」などを通じて事件の情報が世界に流れ、日本の新聞でも報じられました。そのことが当局の動揺を呼んだ可能性はあるでしょう。

 第二点として、当局の足並みが揃わなかった可能性があります。太石村の問題に上級部門が介入するとすれば、魚窩鎮政府、番禺区政府、広州市政府、そして広東省政府ということになりますが、番禺区政府あたりが強硬策をとったところ、広州市あるいは広東省当局から「穏当にやれ」と叱られた。逆に地元当局が法に則って処理しようとしたところ、上級部門から待ったがかかったのかも知れません。

 いずれにせよ、意思決定機関が複数だったゆえの二転三転ということです。この期間中、温家宝首相が広東省を視察中(09/09-09/13)だったことも見逃せません。不祥事が明るみになり中央政府から叱責されるのを恐れた広東省当局あるいは広州市当局が気を利かせて強硬策に出たのかも知れませんし、逆に温家宝直々に「潰せ」とのお声掛かりがあったのかも知れません。

 ――――

 急遽「選挙をやろう」となったのは、たぶん党中央の機関紙『人民日報』に出た署名論評が原因かと思います。

 ●村民が法に拠って村長に「不信任決議」を提出(『人民日報』2005/09/14)
 http://www.people.com.cn/GB/paper49/15696/1387992.html

 この論評記事は村民たちに好意的なのです。「民」が「官」に不信任をつきつけたこと、そしてそれが合法的な手続きによって行われたことを積極的に評価し、

「これは村民自治を大きく前進させる出来事ではないだろうか」

 という趣旨の内容になっています。番禺区当局が「首謀者」とみていたと思われる馮秋盛氏による村民への啓蒙活動も「好ましいこと」として捉えられ、馮氏の名前まで出ています。

 ――――

 ここで、温家宝首相が9月6日、「村」や「街道」(都市部における末端行政単位)での直接選挙実施などを足掛かりに、着実に民主化を進めていくとの決意表明を行ったことを想起すべきでしょう。

「もし中国人民がひとつの村をうまく運営することができれば、その後数年の間に鎮(村のひとつ上の行政単位)をちゃんと運営できるようになると確信している。この制度は順序よく漸進的にやることになる」

 ……というものですが、署名論評はその実例ともいうべき旬の話題とされたのかも知れません。

 太石村の「民主化」を讃えたこの記事は『人民日報』といっても地方版(華南新聞)に掲載されたものですが、党中央の機関紙であり、中央政府の意向を反映している可能性もあります。太石村の事件に「陰謀」認定を出した番禺区当局(たぶん広州市当局と同腹)がこの記事に動揺したことは想像に難くありません。

 また、『人民日報』での扱いこそ地味でしたが、この記事は大手ポータルの「新浪網」(SINA)や「捜狐」(SOHU)、また「大洋網」などに転載されました。「捜狐」に掲載されたのは9月16日でしたが、「新浪網」と「大洋網」は14日、つまり即日掲載です。この動きを見た地元当局が中央の意思と感じ、翌15日に慌てて選挙の実施を打ち出したというのはありそうな話です。

 ――――

 ただし、温家宝の決意表明はあくまでも建前でしょう。いかに末端行政単位とはいえ、当局の望まない民選候補がどんどん当選してしまうような事態、これは中共としては絶対避けたい筈です。折からの人権問題に対する欧米の批判、さらにブレア英首相と会談する直前というタイミングもあって、庶民派を偽装しているウソ泣き首相の温家宝は上のようなホラを吹いてみせたのだと思います。

 そう考えてみると、『人民日報』の記事をみて「明日選挙をやる」と言い出した地元当局は、慌てながらも中央の意思をしっかりと確認し、一応の方針を立てて選挙の実施に踏み切ったのかも知れません。

 当局は「官製候補」7人を擁立した一方で、村民たちが独自候補を担ぐことを認めています。村民が独自候補を立てるとすれば、民意のごく自然な反映として「官選候補」が全敗しかねないことは
想定の範囲内だったことでしょう。そして実際に、定数7をめぐる選挙は7-0で村民の完勝となりました。このメンバーで罷免動議の是非を問う訳ですから、村長のクビは確実なものとなったも同然です。

 ――――

 が、このままで終わらないのが「中国型民主」です。一敗地に塗れた当局は、選挙がダメならということで、
脅迫活動に乗り出したのです。要するに当選した民選候補たちに対し匿名電話をかけ、当選を辞退しないとタダでは済まなくなるぞと脅し上げたのです。

 まるでヤクザや匪賊のやりそうなことです。そのヤクザを使って怪我させてやるとか命までとるといった脅迫もあったようです。一方で村内を60~70名の警官が歩き回り、数人で集まって話をしている村民をみると追い散らしているとのこと。

 さらに罷免大会の開かれる10月7日には警官多数が乱入するから「怪我をしたくなければ大会には出ない方がいい」という噂を触れ回っている輩もいるそうです。当選者だけでなく、村そのものが脅し上げられているといった観があります。

 ……これが温家宝の言う「中国型民主」の実態なのです。「村」「街道」単位では直接選挙が実施されるといっても、それはあくまでも建前であり形式です。当局の意に沿わない候補が当選したら、裏から手を回して潰してしまう。
「政府」の看板を掲げていながら、ここには「公」がカケラすらも存在していません。茫然とする思いです。

 なお、この選挙を視察に訪れた湖北省枝江市の呂邦列・人民代表(市議会議員のようなものだが、普通選挙を経て選出された訳ではなく、あくまでも官製人事によるもの)が警察によって一時拘束されています。

 村民たちの法律顧問である郭飛雄氏も依然として消息不明ですし、12日の警官隊の突入で逮捕・連行された馮秋盛氏の母親など村民20余名も未だに拘留されたままです。当局が村民たちへの脅迫を行っていることからすれば、拘留している村民は当局にとって一種の人質のような価値を認められているのかも知れません。

 これが本来「人民に服務する」(為人民服務)とされた「官」のやることでしょうか。護民官であるべき機関が豺狼と化しているのはどうしたことでしょう。

 ――――

 そしてその挙げ句、どうなったかを記さなければなりません。

 「RFA」(2005/09/22)や香港紙『蘋果日報』(2005/09/23)の報道によると、村民委員会委員に当選した「民選候補」7名のうち、
5名が脅しに屈して辞表を提出(「RFA」の記事では6名)、中には身の危険を感じ村を離れて避難してしまった委員もいるとのことです。

 さらに地元紙である『番禺日報』(2005/09/21)が
「地元政府は太石村村民委員会の会計記録には何ら問題点はなかったと判断」とする記事を掲載しました。今回「民主化運動」に出た動機である「村長の汚職疑惑」にシロ判定が出たのです。そりゃ武力行使までして村民から奪取した会計記録を掌中にしているのですから、判定は思いのままでしょう。

 翌日の『番禺日報』(2005/09/22)には、署名論評が登場。村民たちの手続きは「正に法に則り整然と行われた」としながらも、罷免要求に基づいた抗議行動や会計記録のある村民委員会の建物を占拠したことを批判。「正に法に則り整然と行われた」
罷免動議も、村長は潔白という当局の結論が出たので意味を失った、としています。

 ――――

 現時点までの状況、というよりもはや事件の顛末と言うべきかも知れませんが、経緯は上の通りです。

 選挙実施決定よりこのかた、地元当局のやり口には唖然とするばかりですが、これが番禺区政府なり広州市政府の独断による暴走だとは考えにくいです。
温家宝をはじめとした中央政府の支持がなければ、ここまで露骨かつ悪辣な行動には出られないのではないでしょうか。

 もしそうでないのなら、事件のニュースは海外にまで流れてしまっているのですから、中央政府が逆の形で介入し、地元当局を叱責して然るべきところです。……と私は思うのですが、どんなもんでしょう。

 ともあれ、「農民による民主化運動」という歴史的な試みがよってたかって弾圧され、「官」によって完膚なきまでに叩き潰されてしまったことは確かなようです。



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 笑っちゃいけませんけど皮肉りたくもなります。例の「農民による民主化運動」、広州市番禺区の太石村事件のことです(正確には広東省広州市番禺区魚窩鎮太石村)。

 当ブログでも事件当初から追いかけている事件です。これまで事態が二転三転してきました。「民主化運動だから潰されたんだ」と私は最初に指摘しましたが、その考えはいまも変わっていません。それどころか、事態が転変を重ねるうちに、だいぶわかりやすい展開になってきました。

 ここまでの動きについては下記を御参照下さい。

 ●「民主化運動」だから断固弾圧――番禺太石村事件。・上(2005/09/15)
 ●「民主化運動」だから断固弾圧――番禺太石村事件。・下(2005/09/15)
 ●番禺太石村事件3――愚民量産を邪魔されると中共は御陀仏。(2005/09/16)

 横着な方は以下を。いままでのざっとした流れについて前回ふれたものです(かなり大雑把です)。

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 村民は村長の汚職を糾弾して当初弾圧され、翻って要求が受け入れられ、かと思うと警官隊に踏み込まれ、「社会の安定を見出す不埒な行為」と地元のニュースで叩かれ、悪者扱いさえされました。
 
 ところが中央のメディアで村民の法制に基づいた行動に対する好意的な記事が出ると、地元当局は再び掌を返したように村民委員会の改選を認め、ただし官製候補を立てて我意を通そうとしました。ところが村民が自分達で推した別の7候補が選挙では圧勝。すると今度は当選した「民選候補」に対する脅迫が行われ、村民の団結を何とか切り崩そうと躍起になっています。

 ……この二転三転ぶりにはいくつかの原因があると思いますが、いずれにせよ「対話」の存在する余地はなく、実際にそのカケラすらみられません。そればかりか、村民を支援していた弁護士が消息を絶ち、選挙を視察に訪れた人民代表が警察によって一時拘留されるという事態すら起きているのです。

 ――――

 太石村の村民たちが法律に則って汚職疑惑のある村長(村民委員会主任)罷免動議提出に必要な署名を集め、それが受理されて罷免動議が認められたのが9月11日。ところが翌12日に警官隊多数が村を急襲、実力行使によって村民たちが「汚職の証拠」として厳重に管理していた会計資料一切を持ち去りました。その夜の番禺地区のテレビニュースでは、

「一部の不法分子はある種の企てを達成するため、ごく一部の無知な村民を煽動して村長罷免の名目で村民委員会を占拠し、その財務室を封鎖、また幾度にもわたって番禺区や魚窩鎮の担当職員や同村の幹部を職務を妨害するなどの行為に及んでいる。」

 と報じて、一連の事態を「少数の不法分子による陰謀」と決めつけました(まるで1989年の天安門事件のようです)。村民たちがちゃんと法に即して署名を集め、それが受理し罷免動議が認められたことは全てスルー。こうなると署名も何も「なかったこと」ということになります。

 村民たちは何ら法を犯していないのに悪者扱いされる。ここが象徴的なところです。村民の一部ないし村民たちが「悪」とされたのは「法律に照らして違法」だったからではなく、中国共産党の価値観からみて「政治的に悪」だったからです(これも1989年の民主化運動と同じ展開です)。

 ――――

 法律や政府よりも中国共産党の意向が優先される、というのは中国では常識です。

 村民に広く法律知識を持たせてしまうと、「法制あれど法治なし」という現状を再確認するだけでなく、さらに認識を深めて、問題の原因は政府や法律よりも高い位置に党(中共)が存在しているからだ、それが諸悪の根源だ、という「常識」に気付いてしまう
ことになります。

 それが困るから、中共は毛沢東時代以来ただひたすらに愚民政策、それを揺るがすことなく現在まで堅持し続けているのです。「愚民量産を邪魔されると中共は御陀仏」とはそういう含意です。

 だから太石村の事件にも上記のようなパワープレイが用いられました。「政治的に悪」認定が出た訳ですから、あとは「少数の不法分子」(たぶん村民に法律の知識を教え込んだ馮秋盛氏など)を警察が逮捕するだけです。この「陰謀説」に足並みを揃えるかのように、村民の活動を法律顧問として直接支援してきた郭飛雄氏も同じく12日から消息を絶ち、行方不明になっています。

 お決まりのパターン、「民主化運動だから断固弾圧」ですね。歴史的な活動ともいえる太石村の「農民による民主化運動」は、これで潰えたかにみえました。

 ――――

 ところが、ここで再び事態は一変します。署名活動も村長罷免動議も「なかったこと」とされた筈なのに、
番禺区政府は9月15日になって突如、太石村村民委員会選挙の実施を発表したのです。村民にしてみれば、なぶられているようなものでしょう。

 ちなみにこの選挙は村長選挙ではなく、村長罷免の是非を決める村民委員会を選出するというものです。定数は7。番禺区政府は候補者として7人の名を挙げましたが、これとは別に村民が自分達で候補者を立ててもよいとのことでした。

 ただしこの選挙、15日に実施を発表して投票は翌16日の午前9時。村民や、村民をネット上で間接的に支援している反体制系知識人たちに時間的余裕を与えないためでしょう。

 が、村民たちは屈することなく、自分たちで7人の独自候補を擁立しました。そして行われた村民委員会選挙の結果は、
村民たちが担ぎ上げた「民選候補」7人が全員当選。「官製候補」で村民委員会を固めることで我意を通し、問題を握り潰してしまおうとした当局の目論見は、見事に崩れ去ったのです。


「下」に続く)



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 いまはすっかり御無沙汰してしまっていますが、中国の反日サイト(掲示板)に連日出撃していたころの話です。歴史問題などについて粘り強くアプローチを試みる方などがいて、その知識の豊富さも含めてすごい人たちがいるもんだなあと思い、それが私も戦列に加わる動機となったのですが、私自身はハナっから中国人と対話するつもりはありませんでした。

 中国政府は都合の悪いこと(例えば人権問題や人民元切り上げ)についてはしばしば「国情」という言葉を使います。「中国は国情が特殊だからそれを理解しろ」ということなのでしょうが、私は、こちらが相手の「国情」に理解を示すと同時に、向こうも日本の「国情」を尊重するなら、そのときに初めて対話が成立する可能性があると考えていました。

 ――――

 ですからただ一度の例外を除けば、反日サイトに対する私のアプローチは嫌がらせのようなものでした。

 旧正月に合わせてその期間にもっとも忌まれる縁起の悪い事件のスレッドで掲示板を埋めてみたり、日本における中国人犯罪の記事(中国語)を報じるスレッドを立ててそこで延々と記事(中国語)をupしたり。スレが落ちてくると新しい記事を加えて、某巨大掲示板風にいえば「ageる」のです。スレ一覧の上位に中国人にとって不愉快なそのスレッドが常にあることになります。

 親切もしました。中国国内で報じられていない、当局にとって都合の悪いニュースをいち早く流してやることです(笑)。あとは香港人に化けて参入し些かの攪乱を試みたりもしました。むろん以上のあれこれは全て複数のサイトでやるのです。

 別に何か目的があってどうこうというのではなく、単なる娯楽です。私にとっては「サカつく」より面白いので(中国語の練習にもなりますしw)、それまで余暇を独占していたプレステ2を横に置いたまでのこと。いまはそれが当プログに変じている訳です。ただ必要を感じればいつでもまた出撃します(笑)。

 ――――

 さて中共政権の話です。中国国内の報道に接していると、昨年冬ごろから胡錦涛派が押されるようになって以来、何やら国がまるごと「反日サイト化」してしまっているようでもあり、当局の「反日サイト化」が様々な反日サイトを乱立させ、勢いを与えたようでもあります。

 日本に対しては、自国の歴史観、いわゆる中共史観を押し付けてきます。靖国問題のA級戦犯云々ひとつとっても、日本の伝統文化ないしは風習を尊重しようとする気配がまるでみられません。むしろ「その弊風を我々が改めてやる」という勢いで接してきます。

 最近は歴史観が問題だとかいって日本のゲームをも槍玉に挙げる構えもみせてきましたね。
要するに対話の成立する相手ではありません。

 実は国是(というより中共の党是)のようなものとして対話の必要性を認めていない、ともいえます。国内問題に関しても同様の姿勢で臨んでいるからです。数々の「強制執行」がその実例です。陳情者に対しても、土地収用においてもそうですし、ネット規制や言論統制、報道統制でも対話は存在せず、あるのは一方的な通達(=命令)や規制強化の法律制定などです。

 ――――

 当ブログで再三とりあげ、事態を追っている広州市番禺区の太石村事件、これもまだ二転三転しています。後日詳報しますが、村民は村長の汚職を糾弾して当初弾圧され、翻って要求が受け入れられ、かと思うと警官隊に踏み込まれ、「社会の安定を見出す不埒な行為」と地元のニュースで叩かれ、悪者扱いさえされました。

 ところが中央のメディアで村民の法制に基づいた行動に対する好意的な記事が出ると、地元当局は再び掌を返したように村民委員会の改選を認め、ただし官製候補を立てて我意を通そうとしました。ところが村民が自分達で推した別の7候補が選挙では圧勝。すると今度は当選した「民選候補」に対する脅迫が行われ、村民の団結を何とか切り崩そうと躍起になっています。

 ……この二転三転ぶりにはいくつかの原因があると思いますが、いずれにせよ「対話」の存在する余地はなく、実際にそのカケラすらみられません。そればかりか、村民を支援していた弁護士が消息を絶ち、選挙を視察に訪れた人民代表が警察によって一時拘留されるという事態すら起きているのです。

 ――――

 中共とは、対内的にも対外的にも「対話」の存在しない政権なのです。9月3日の世界反ファシズム何たら60周年記念式典における胡錦涛総書記の演説、この中に、

「落後就要挨打」
(立ち後れれば喰いものにされる)

 という表現が登場します。この言い回しは最近のこの種の論評でも頻用されており、流行語とも合言葉ともいった感じです。アヘン戦争から第二次大戦が終結するまでの時代、この言葉は国際社会における価値観の一端だったと言ってもいいでしょう。

 ただ「喰いもの」にするにもソフィスティケートされた形でそれをやるか、周囲の眉をひそめさせるようにやるかの違いがあり、日本もまたその価値観の中で明治維新を成立させ、歴史の中で右往左往し、翻弄されもしました。興味深いのは胡錦涛演説が「世界反ファシズム何たら60周年記念式典」におけるものであるために、かつて中国を「喰いもの」にした
英仏露などはここから除外されていることです。

 そしてもう一点、「落後就要挨打」と当時の状況を捉えていながら、歴史を語る上では「落後就要挨打」が当時の常識だったとせず、あくまでも現在の価値観に基づいて当時の歴史を評価し、また断罪していることです。

 そもそも第二次大戦が終結して60年が経ち、すでに21世紀である現在において「落後就要挨打」を呼号することに私は不気味さを感じます。まるで
今度は自分たちがやる番だと言わんばかりではないですか。むろん一方では「覇権主義はとらない」だの「平和的台頭」(でしたっけ)だのと強調していますが、要するにそれは「ソフィスティケートされた形で今度はこっちがやる番だ」ということに他ならないのではないかと思います。

 改めて強調しますが、中共政権においては、対内的にも対外的にも私たちのイメージする「対話」は存在しないのです。

 ――――

 こういうことを書いてきたのは、もちろん
東シナ海における資源紛争が念頭にあるからです。形だけの「抗議」とか「早急に実務者協議を」なんて言っているようでは、相手に先手を打たれていることを証拠づけるようなものです。格好悪いだけでなく無能の証でもあります。要するにこの問題に対し中共政権となお「対話」しようとしている。

 私は別に武力行使に踏み切れと言っている訳ではありません。
「東シナ海を協力の海に」なんて甘いことを言っているから付け入れられるのです。「対話」を認めない国に対しては、ハッタリでもいいですから毅然とした強腰の対応で臨まないとこっちが泣きを見る、だから日本政府しっかりしてくれということです。

 貿易摩擦などであればともかく、こと主権問題(境界線画定作業)について、中国は利害絡みで目をつぶってロシアに譲歩することはあっても、現在の状況下において日本に対しては一歩も退くことはないでしょう。それをまず念頭におき、それを基礎に戦略戦術を練ってほしいのです。

 恫喝には恫喝を以て報いる必要があるなら、それを採ってもいいでしょう。日本は衆院選をやったことで、この1カ月は一種の「権力の空白期」に近い状態にありました。最近の東シナ海における中国の振る舞いはそれを突いたものでもあり、10月開催予定の「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)に向けた党上層部内での綱引きの反映でもあるでしょう。逆に10月になると今度は中共が「五中全会」という内政で手一杯になります。これは日本にとっての好機です。

 ――――

 いや、先の話はやめましょう。事態はすでに動いているのです。私たちは、自分たちに出来ることがあれば、それをまずやるべきではないかと私は思います。私個人について言えば、このブログを書くこと、関係各方面にメールを送ること、周囲にこの問題についてより認識してもらうよう働きかけること、ぐらいしかありません(あとは香港に置いてある業務用拡声器で日本の立場を明らかにし、中共に喧嘩を吹っかけるかも知れません。現在準備中)。

 東シナ海資源紛争、この問題について私の知識は極めて浅薄なものですが、某巨大掲示板でこの問題を扱っているスレッドがあり、そこをROMることで私なりに勉強させてもらっています(ニュース極東板です)。

 【提案は】東シナ海油田問題 統一スレ★13【論外】

 個人的にはこのスレッドに登場する
「有馬温泉 ◆BCjH.6d5ig」氏の見解が非常に参考になります。豊富な知識に裏打ちされ、また平衡感覚に富んだ卓論だと私は思います。

 そしてこのスレッドから生まれたこの問題についてのまとめサイト。

 【中国】日中境界海域で資源採掘施設 [05/28] まとめサイト

 これまでの経緯をはじめ、関係官庁のメールアドレスやメール文の模範文例もあり重宝します。

 ――――

 こういう呼びかけは私の柄ではありませんし過去にもやったことがないかと思いますが、次の世代のために何かやれることがあるなら、それはやっておきたいと思うのです。

 60年余り前、あるいは毅然と、あるいは思い悩みつつも、自らの命と引き換えに日本と日本人の未来を護らんとした先人たちに比べれば、いまの私に出来ることなど遥かに微々たるものにすぎません。それでも何か出来ることがあるなら、悔いを残さぬようやっておこうと私は思うのです。



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 番禺の事件に続報が出たり色々な動きがあるようですが、何だか私の方が虚脱してしまった感じなので小ネタに逃げます。週末向きの話として使おう使おうと思いつつちょっと古びてしまった題材です。

 世間は連休を謳歌しているようですが、そんなもの、私には全く無縁でした。まず週末に昔むかーし関わったことのある業界の展示会に義理で顔を出す破目になりました。完全夜型生活の私としてはそれでもう十分重労働だったのですが、日曜日が中秋節で連休となったのをいいことに、土曜から3日間、香港から色々な人が来てそれに応接するうちに私の連休は終わっていました(涙)。

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 どうしてそうなるかと言うと、香港のある分野に以前肩入れしたことがありまして、もう随分前のことなのに虚名だけが残っているようなのです。それで私を叩けばまだ何か音がするだろうと思っている若い連中がこの3日間にゾロゾロと来日しまして、来日ついでに五月雨式に訪ねて来られてしまえば会わない訳にはいきません。

 何を勘違いしたのか香港政府の若手官僚まで会いに来たのには驚きました。

「今度香港政府もいよいよこういうことをやることになったのですが、どうすればうまくいくでしょうか」

 いやだからもう私を叩いても何の音もしないのです。それに今さらそんなことやろうったって手遅れ。香港はもう終わってるんですから緩やかに玉砕するしかないんですよ。……と言う訳にもいきません。ちょうどそのテーマを昔文字にしたことがあるので、

「香港社会がこういう条件を満たせるようになればうまくいきます。無理ならやらない方がいいと思います」

 と、それを印刷して手渡したりしました。

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 そんな感じで金土日月を過ごした後に残ったのは、みんながみんな手土産に持ってきた月餅の山です(笑)。そりゃ季節柄イチ押しの菓子折なのでしょうが、一部を親に送ってあとは近所に配りでもしないと消費できそうにありません。古い友人と会う機会も持てたのですが、奴もやっぱり月餅を持ってきたのには閉口しました。

「おい今年の中秋節は『九・一八』(柳条湖事件)だぞ。それなのに日本人に手土産を持ってくるとは一体どういう了見だ(笑)」

「バーカ、おれたち香港人を大陸の連中と一緒にするなよ。歴史の話なんておれたちには何の関係もない」

 という冗談が言い合えるのもたぶん奴が私と同世代だからで、いま学校で勉強しているガキ共ならまた違った反応になるのかも知れないなあ、などと思いました。

 ともあれ期間限定で無理やり昼型生活に戻したうえ、色々な人と会ったので何だかボーッとしています。嵐のような4日間でした。
おお、嵐。そうです今回は正にその話をしたかったのです。……って無理矢理ですか。そうですか。

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 米国のハリケーンで水没した住宅街をワニが泳いでいる映像を目にしましたが、似たようなことが中国でも起きています。遼寧省の話です。

 8月中旬と古いネタなのですが、確か8月15日記念で民間組織が大連かどこかで反日活動をやるとかやらないとかいった話がありました。結局当日は北上してきた台風(温帯低気圧?)で暴風雨となり、半島で突き出た位置にある大連はともかく、同じ遼寧省でも内陸部ではそれどころじゃありませんでした。

 嵐です。豪雨による洪水の被害も出た筈ですが、そんなこと私は覚えちゃおりません。ともかく同省本渓市の太子河の河畔に、観光スポットであるワニ園がありました。34匹のワニを飼育していたそうです。

 ……となればもう先の展開が読める話ですね(笑)。太子河のさらに上流にダムがありまして、豪雨で水かさが増し危険水位に達したので放水することになりました。「1時間後に放水」とワニ園にも通知がありました。8月13日の午後2時ごろのことです。

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 河畔と書きましたがこのワニ園の池は太子河の本流から2mとしか離れていなかったのです。

 ともかく34匹のワニを河から離れた池に移動させないとお待ちかねの展開となってしまいます(笑)。飼育係はじめ職員が急いでワニの移送にとりかかりましたが、ワニがむずかって作業は遅々として進みません。ようやく5匹を移したところでタイムリミットの1時間が過ぎてしまいました。

 お待ちかねの展開です。ダムの放水により太子河の水位はみるみる上昇し、奔流はなお29匹が残っていたワニ池にも流れ込みました。水の勢いで飼育池を囲っていた柵が瞬時に破壊され、ワニ池は瞬く間に太子河に飲み込まれてしまいました。

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 ということで標題通りです。体重300kgの「キング」を始め、
ワニ29匹が行方不明に。地元当局にしてみれば反日デモなんかよりもシャレにならない事態です。本渓市には洪水警報に加え「ワニ警報」が発せられ、ワニ園職員や警察を中心とする捕獲チームが結成されました。

 職員はワニ捕獲用の専用網を持ち出しました。よくわかりませんがワニの口を塞ぎつつ絡めとってしまうスグレモノのようです。ワニ池の周囲から捜索範囲を広げていき、2日間で15匹の捕獲に成功。そのうち1匹は民家からわずか20mのところで捕獲されたそうです。

 体重300kgの「キング」は水位が下がったところで、ワニ池に残っていることが判明しました。重すぎて水の流れに乗れなかったようです。それでも
なお13匹が逃亡中とあって、気を抜くことはできません。

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「太子河は全長400km。ウチの区内でも川幅は広いところで100mもある。水位が下がったとはいえ、川の水は濁ったままなので発見するのは困難だ。」

 とは捕獲チームのリーダーである王陽介・水洞景区偵察大隊副隊長のコメントです。困難なのはわかりますけど、何だか区外に逃げたワニのことは関知しない、という官僚臭が漂っているようでもあります。ワニが市民を襲う可能性はあるのか?という質問には、

「もちろんだ!長年飼育されているから野生のワニと一緒にはできないが、侮れない攻撃力を有しているとみていい」

 と表情を引き締めました。一方ワニ園の飼育関係者は、

「水温は低いし、気候もこれから涼しくなるから熱帯育ちのワニが冬を越せないのではないかと心配だ」

 と、呑気なコメント。市民の安全よりワニの命かよ、とツッコミが入りそうです。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/16/content_3359438.htm

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 翌日に続報が流れました。
13匹のワニは依然行方不明と事態は進展していません。そんななか、早くも責任のなすりつけ合いが始まりました(笑)。

 ワニ園側が、「ダムの放水通知が遅く、時間的余裕がなかった」として賠償を求める構えを示したのです。これに対しダム側は自らの責任を否定。肝心のワニが見つからないまま、泥仕合いになりそうな予感を漂わせています。

 地元警察当局は発見次第射殺することも選択肢に含めつつ、なおも捜索を続行中とのことです。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/17/content_3366087.htm

 ……で、これ以降続報らしいものを私は目にしていません。

 騒がれていないのですから人的被害は出ていないのでしょうが、一体どうなったのか。逃げたワニはいずれもタイ産のもので、水温が低いと水から上がって体を暖める習性があるそうです。でも遼寧省ですから陸地に上がっても涼しいことでしょう。ワニにとっては厳寒でしょうから生き延びるのは難しいのかも知れません。

 以前、浙江省かどこかの動物園でやはりタイ産のワニを飼育しようとしたところ、動物園側に関連知識が乏しかったのか、冬に全滅してしまったそうです。

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 それにしても、13匹が行方不明なんですからパニックめいた反応が市民の間に起きてもよさそうなものです。

 実はそこら辺が一番の見所で、
いかにも「中国クオリティ」な数々の面白いリアクションを見て楽しむのがこの事件の正しい味わい方のように思えるのですが、残念ながら報道はそれにふれていません。

 少しは空気嫁>>地元メディア。ワニも寒さに負けず頑張れ。赫々たる戦果を期待しています。(不謹慎?何それ?)



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 3回連続になってしまいますが、旬な話題で新情報もどんどん出てくるので番禺太石村事件を引っ張らせて頂きます。

 今回の事件の最大の特徴は農民が法律を盾に戦っていることです。陳進生村長(村民主任委員会)罷免動議を番禺区政府民政局に提出しようとして断られると、今度は署名活動。中国の法律によると村長罷免動議は300名の署名で成立するそうですが、その数を大きくクリアしたため動議成立、太石村のひとつ上の行政単位である魚窩鎮政府(ちなみにそのひとつ上が番禺区政府、その上が広州市政府)によって9月11日、その旨が太石村に知らされました。

 法律に即して手続きを進めた村民たち。それを支えたのが、村民にはどういう権利があり、それをどう行使すればよいのかを懇切に教えた人権活動家です。軍師ですね。そしてそれに啓発されたのかどうか、そこら辺の事情が不明なのですが、やがて村民の中に積極分子が出てきます。当局から「首謀者」とされている馮秋盛氏がそのひとりです。

 馮氏は村民の間に法律知識を広めることに努め、なぜ村長を罷免する必要があるのか、罷免するにはどういう法手続きが必要かを説いて回りました。署名活動も当初村民たちは気乗り薄だったそうですが、馮氏が講習会のようなものを開催することで、法律を武器に自分達の権利を行使することについて村民に自信を持たせ、ついには村長罷免動議成立までこぎつけた、というものです。

 ●香港紙『明報』(2005/09/14)の関連記事。
 http://hk.news.yahoo.com/050914/12/1gmvc.html

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 この間、ネット上で声明を発表したり言論活動を行うなどした反体制系知識人の存在も、村民の背中を押す一助になったという点で側面援護になっています。同時に、太石村の事件を広く伝える役割を果たしたといえるでしょう。

 ところで「今回の事件の最大の特徴は農民が法律を盾に戦っていること」と上に書きましたが、村民たちが戦っている相手は誰なのでしょう?それは「官」のようでもあり、実は違うようでもあります。正確にいえば、中国全土に蔓延する「法制あれど法治なし」という「人治」の現状であり、同時にあくまでも「人治」を堅持しようとする「官」、ということになりますか。

 これをさらにつきつめると法制や政府よりも中国共産党が優先される「国情」が元凶、あるいは法制や政府の上に立つ中国共産党が諸悪の根源、ということになりますが、反体制系知識人はともかく、太石村の村民はさすがにそこまでは考えていないようです。ただ当局は、村民ひいては国民の意識がそこまで高まることが中共政権維持にとって致命的な打撃になりかねないことを肌で感じていることでしょう。

 ですから国民を「愚民」のままにしておくのです。反抗の色をみせたり、法に基づいて権利を主張するなど意識の高まりの兆候を察したら、火の手が上がらないうちに力づくで叩き潰す、というのがデフォ。その実例は昨年来の紹介している農民暴動などいくつもありますし、火の手が上がってしまったためにやむなく軍隊を投入して武力鎮圧したのが1989年の天安門事件(六四事件)です。

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 だからこれもデフォということになるのでしょうか。村長罷免動議が成立したのが9月11日、ところがその翌日である12日に警官隊が……というのは前回ふれた通りです。そしてその夜、複数の反体制系ニュースサイトによると、番禺地区のテレビニュースで太石村の村民を悪者扱いする報道がなされたとのことです。

「近ごろ、わが番禺区の魚窩鎮・太石村で村民の一部が非合法に集結し、村民委員会に圧力をかけるという状況が発生している」

「一部の不法分子はある種の企てを達成するため、ごく一部の無知な村民を煽動して村長罷免の名目で村民委員会を占拠し、その財務室を封鎖、また幾度にもわたって番禺区や魚窩鎮の担当職員や同村の幹部を職務を妨害するなどの行為に及んでいる。」

「9月2日以降、村民委員会の職務は麻痺状態であり、これは社会の安定に深刻な影響を及ぼし、好ましくない影響をもたらすものである」

「番禺区党委員会政法委員会の副書記兼維安総治弁公室の陳樹桐主任は、番禺区党委・番禺区政府はこの事態を重視していると表明。関係各部門に対し、政治の高みから、また社会の大局安定を維持するという高みから、全力を以て太石村の問題解決に取り組むよう求めた」

 ●「博訊網」(2005/09/16)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2005/09/200509160024.shtml

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「一部の不法分子」
「ある種の企て」

 という言葉から、当局がこの騒ぎを社会問題ではなく政治問題だと位置付けたことがわかります。そしてここには、太石村の村民が法に則って行った署名活動や、それによって魚窩鎮政府が村長罷免動議の成立を認めたことが全く出てきません(「なかったこと」にされたようです)。

 1989年の民主化を求めた学生デモが「動乱」と認定され、天安門事件に至っては「反革命暴乱」との政治的評価(定性)が下されたのと同じです。太石村の村民たちが実施した合法的活動を法律を基準に論ずることなく、「政治的に悪」という中国共産党の価値観で断罪している訳です。

 12日に太石村で非合法集会が開かれたため警官隊が突入したのだ、という理由付けがなされているという説もあります。前回紹介した村民のコメントの中に、

「おれたち村民は村民大会を開いて、村長の罷免を決めようとしていただけじゃないか」

 というものがありました(香港紙『蘋果日報』2005/09/13)。11日に村長罷免動議が成立したことで、罷免するかどうかを決める村民の集会を以て「非合法集会」と無理矢理こじつけたものかも知れません。そうでもしない限り、警官隊が出動した理由づけができないからでしょう。

 このときに警官隊は太石村・村民委員会の財務室から会計書類など一切を持ち去りました。これについても別の村民の証言があり、実は事件の前日に政府の担当者が同村を訪れ、会計書類をコピーして持ち帰っているというのです。その翌日に警官隊が突入して今度は原本を奪っていったのは、陳村長の汚職という事実の証拠隠滅を図るためといわれても仕方ありません。

 ●反体制系ニュースサイト「大紀元」中国語版(2005/09/15)
 http://www.epochtimes.com/gb/5/9/15/n1053213.htm

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 ところがここに来てまた事態が一変しました。村民の合法的行為(署名活動)を受け入れた筈が翌日には一転して悪者扱い、かと思えば再び一転して太石村村長選挙が実施されることになったのです。

 番禺区政府が15日に発表したもので、日時は9月16日午前9時。番禺区政府は候補者として7人の名を挙げていますが、他に村民たちが自分達で候補者を立ててもよいとのことです。

 今日公示して明日投票という慌ただしさは、もちろん村民ひいては村民を間接的に援助している反体制知識人たちに時間的余裕を与えないためでしょう。ネットなどを通じて事件の波紋が全国に広がるのを防ぐ目的もあるかと思います。

 とりあえず12日夜にニュースで流れた「政治的に悪」認定は引っ込められたようですが、あまりに急な村長選挙に村民は不満なようです。

 というのはこの選挙が「村長改選」を掲げているからです。「改選」では村長が任期満了になったか、あるいは病気などの理由で職務遂行が不可能になったために選挙をやるかのようではないか。……というもので、村長罷免が理由ではないという位置付けなのです。

 要するに村民たちによる「罷免動議」が「なかったこと」にされ、同時に罷免理由だった村長の汚職疑惑がこれによってパッと消えてしまう訳です。この点、警官隊がすでにコピーして当局の手にある会計資料の原本を全て持ち去ったことと
見事に平仄が一致しています。

 当の陳村長は不測の事態に備え、すでに太石村を離れて魚窩鎮政府で村長としての仕事をしているといわれますが、限りなくクロに近いとされる汚職疑惑、これが事実なら少なくとも番禺区、あるいは広州市の要路者にまで鼻薬を効かせているのではないかと思われます。

 ●反体制系ニュースサイト「大紀元」中国語版(2005/09/16)
 http://www.epochtimes.com/gb/5/9/16/n1054276.htm

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 で、この先どうなるの?と聞かれても、これだけ二転三転してしまうともちろん私にはわかりません(笑)。ただ今回の一件は農民が法治意識を持ち、法に基づいた権利行使を「官」に求めたことが主題であるという点において「民主化運動」であり、『南方都市報』や反体制系知識人たちが画期的と評価したように他の農村争議とは全く異質なもの、ということを改めて強調しておきます。

 さらに人権活動家が軍師についているというのは一種のオルグ活動ということができます。これは中共が政権を樹立するために当初地下活動として地道に行ってきたことと同じで、革命活動そのものと言えなくもありません。ただし中国国内では中共が革命政権な訳ですから、こうしたオルグ活動は「反革命」になってしまいますけど(笑)。

 いや、これは笑って済まされないことです。太石村村民の活動を法律顧問として直接支援してきた郭飛雄氏が突如失踪し、9月12日から消息不明となっています。

 http://asiademo.org/news/2005/09/20050914.htm#art01

 今回の騒動、見方によっては農民暴動や都市暴動といった「キレる」ことで起こる騒ぎよりも中共にすれば「危険」な事件でしょう。当局にいつもの問答無用・一刀両断的な腰の強さがみられず、事態が二転三転するのも不可思議です。続報を待ちたいと思います。



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「上」の続き)


 「民主化」の成就に太石村の村民たちが喜んだのもつかの間のことでした。

 村を挙げた署名活動により村民委員会主任(村長)罷免動議が認められた翌日である9月12日の朝、1000人にのぼる警官隊が突如、村を襲ったのです。

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 ●不正抗議の村民追い払う 警察、「証拠」持ち去る 中国(「Sankei Web」2005/09/13)
 http://www.sankei.co.jp/news/050913/kok040.htm

 中国広東省広州市番禺区の農村地帯で12日、役場幹部による公金不正処理があったとして抗議行動を続けていた村民らを警官ら約1000人が放水などで追い払い、村民側が保管していた村の会計資料を持ち去った。13日付の香港紙、明報などが伝えた。

 報道によると、村民側の一部は暴行を受け、約50人が拘束されるなどして消息が不明になった。村民側は幹部の不正の「証拠」が改ざんされる可能性があると指摘している。

 村民側は幹部の罷免などを求めて7月末から抗議を開始。地元当局は今月10日、村民らの罷免要求を認めると発表したが、村民側は関係資料改ざんを警戒し、罷免手続きに必要な会計資料の提出を拒んでいたという。(共同)

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 サラリと書かれています。確かに事実はその通りのなのですが、そのソースとなった香港紙は具体的な描写に踏み込んだ生々しいもので、読み手が受ける印象は全く異なったものになります。香港の新聞記者はセンセーショナルな書き方に流れがち、ということもあるのですが。……ともあれ、『明報』『蘋果日報』(2005/09/13)の記事を参考に話を進めることにします。

 警官隊は村民による村長罷免動議が承認された翌日である9月12日の午前(8~9時)、50台を超える警察車両などに防暴警察(機動隊)約1000人が分乗して太石村に突入しました。

「番禺区政府も民政局も、魚窩鎮政府も派出所(警察署)も、揃いも揃って良心のカケラすらない!あいつらみんな人間じゃない!奴らは賊だ!おれたち村民は村民大会を開いて、村長の罷免を決めようとしていただけじゃないか。何で1000人もの阿SIR(広東語による警官の俗称)が出てきて財務室に入り込んで、太石村を血まみれにしなきゃいけないんだ!」

 とは『蘋果日報』に電話で寄せられた現地村民の声です。人口が2075人という太石村に対し、警察側は機動隊など1000人を動員したのです。その車列は警察車両をはじめ、機動隊を乗せる大型バスと消防車1台、救急車4台など合計63台にものぼる「大軍」でした。

 しかもその中には霊柩車も1台加わっていたという目撃談が『蘋果日報』に出ています。

「霊柩車まで連れてくるってのは、おれたち村民に死ねってことか!」

  と、農民はそのことでいよいよ怒りを募らせたようです。この件は『明報』や反体制系メディアの報道には出て来ないので未確認情報ですが、官民衝突に霊柩車が動員されたとすれば前代未聞です。警察側にすれば脅し目的で投入したのかも知れませんが、事実とすれば農民を舐めきっているというか、悪辣極まれりと言うほかありません。

 ――――

 で、警官隊は村外に通じる道路を全て封鎖した後、一直線に目指したのが財務室、つまり村長の汚職を裏付ける村の会計書類などをまとめて保存している場所でした。前回ふれたように、村民が入口を厳重に施錠し、24時間態勢で見張りを立てていた場所です。

 見張り役に加え、急を知って入口周辺に50名ばかりの村民が駆け付けましたが、その顔ぶれは主に60~80代の老婦、つまりお婆さんが中心。しかし、警官隊は抵抗力に乏しいお婆さんたちにも全く容赦することはありませんでした。

 前もって打ち合わせができていたのでしょうが、警官隊はまず消防車を前面に立てて、高圧放水を実施。それを浴びてバタバタと村民が倒れたのに乗じて機動隊が襲いかかり、警棒をふるって老婦らを殴打したのです。相手がお婆さんでも一切手加減することはなく、このために負傷し、また殴られて気絶する老婦も多数出たとのことです。

 これで抵抗は排除された、ということになるのでしょう。機動隊は二重三重に施錠された財務室入口のドアを破って室内へと入り、村民たちが必死で守り続けていた会計書類など一切を持ち去ったのです。

 『明報』によると財務室は村民委員会の建物の3階にあり、機動隊に続いて建物の中へと入った当局の役人多数が奪い取った帳簿などを一切を外に持ち出し、警察車両のところでパラパラとめくって内容を確認していたそうです。もちろん村民たちは高圧放水と警棒による殴打で排除されており、手も足も出ません。

「奴らは村民の目が届かないのをいいことに、きっと核心にふれる資料を破棄するか改竄するつもりなんだろう」

 『明報』に電話で事件を知らせてきた村民の一人は、涙声で嗚咽しながらそう話したそうです。

 ――――

 別の村民は思わぬ事態に、広州市公安局(警察署)に急を告げ、上級部門(番禺区は広州市に属する)にあたる市公安局に救援を求めました。ところが返ってきた答は何と恫喝でした。

「お前らがまた騒いだら、今度は数百人どころか数千人を出動させてその口を塞いでやるからな」

 この言葉で「武力鎮圧」が番禺区政府はもちろん、広州市政府の意思でもあることがわかります。

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 会計書類を奪ったことで警察側は作戦目的を達成したことになりましたが、事件はそれだけでは済まず、機動隊は放水と警棒で負傷あるいは昏倒した老婦らを拘束、連行していきました。負傷者は正規の病院ではなく、留置所の医務室で治療を受けたらしいという村民の声を『明報』は伝えています。その人数は48名にものぼるとのことですが、正確な消息は未だ不明のままです。

 ちなみに、事件当日のものを含めた画像が反体制系ニュースサイト「大紀元」(中国語版)に出ています。

 http://www.epochtimes.com/gb/5/9/14/n1052238.htm

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 前日の村長罷免動議成立から一夜明けてのかくも容赦なき武力弾圧。この暗転を一体どう捉えたらいいのでしょう。

 警官隊の行動が番禺区政府だけでなく広州市政府の意思でもあるらしいことは市公安局の対応で察することができます。あるいはもう1ランク上の広東省政府の意思かも知れません。より一歩進めて、北京の中央政府から直々の命令が下った可能性もあります。

 それは、今回の件が他の農村争議などとは違い、立派な「民主化運動」だからです。しかも反体制系知識人らがそれを応援している。「署名活動→村長罷免」というプロセスは法の手続きに則ったものですから、これがモデルケースになると全国の都市や農村の末端組織に同様の動きが飛び火し、各所に火の手が上がるという中共政権にとって最悪の事態にもなりかねません。

「一見庶民派のスタンスであるかのような胡錦涛総書記・温家宝首相なら一議もなく潰しにかかるところでしょうが」

 と前に書きましたが、広州郊外という海外プレスも入りやすい場所が舞台ながら、それを顧みずに「一議もなく潰しにかかる」ことが選択されました。

 事件の性質が正真正銘の「民主化運動」であるために、しかも全国各地に飛び火すれば炎を噴き上げる可能性の高い社会状況があるために、「海外の目」を顧慮せず、動じずに警官隊の投入となったのではないかと思います。この点は1989年の天安門事件(軍を投入して民主化運動を武力鎮圧)と同質の、中共政権の凄みを感じます。

 ――――

 それにしても皮肉なものです。温家宝首相は欧米諸国による人権問題批判を念頭に置いてのことでしょう、9月6日、ブレア英国首相との会見を前に、「村」や「街道」(都市部における末端行政単位)での直接選挙実施などを足掛かりに、着実に民主化を進めていくとの決意表明を行っているのです。

「もし中国人民がひとつの村をうまく運営することができれば、その後数年の間に鎮(村のひとつ上の行政単位)をちゃんと運営できるようになると確信している。この制度は順序よく漸進的にやることになる」

 と温家宝はコメントしています。が、実際にはそれから一週間と経たぬうちに、全く正反対の、「官」が問答無用で法を踏みにじり、村を踏みにじる事件が起きたのです。

 タイトルにあるように、私は今回の件について「民主化運動」だから素早く弾圧されたと考えています。当局にとっては都市部でそれが起きるのも怖いでしょうが、中国にあって都市など所詮は農村という闇の広がりの中に点々と灯った豆電球のようなものです。「農民による民主化運動」はいよいよ怖いでしょう。「農村が都市を包囲する」ではありませんが、他ならぬ中共が農村での運動を基礎にして政権を奪取しているのです。

 ――――

 「潰せ」

 という指示がどのレベルから出たのかは実に興味深いところです。案外、先日は偉そうに漸進型民主化構想を語ってみせた温家宝あたりが命じたものかも知れませんよ。

 普段から庶民派を偽装しているこのウソ泣き首相、実はちょうど9月9日から13日にかけて広東省を視察しているのです。広東省のトップなどを引き連れて、珠海、中山、仏山、東莞、深セン、そして当の広州などを相前後して訪れています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-09/13/content_3485387.htm

 海外にも報じられた事件なのですから、「知らなかった」では済まされませんよ。



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 前回にチラリとふれた「農民の民主化運動」の新展開についてです。広東省は広州市、番禺区魚窩鎮の太石村が舞台の事件。ここ1カ月余りの間に様々な動きが出て、事態は展開に展開を重ね、目まぐるしく二転三転しました。

 「斜陽の広東王国に農民のハンストに上海の情報戦。」(2005/09/01)
 「お馴染みの農民争議、でもこれはちょっと違う。」(2005/09/11)

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 ここまでの流れを追ってみますと、

 ●太石村が再開発を目的とした土地売却を行う。
 ●村に入る筈の土地売却益約1億元が行方不明に。
 ●村民委員会主任(村長)に汚職疑惑。
 ●村民の会計資料開示を村長は拒否。
 ●村民は村長罷免動議を決議。
 ●土地売買の経緯が明らかにならないままの土地収用に反対する農民が警官隊と衝突。
 ●番禺区政府に村長改選要求を提出するも、区政府(民政局)はあっさりと拒否。
 ●農民が区政府庁舎前に座り込んでハンストなどの抗議活動。翌日に警官隊がこれを一掃。
 ●農民は退却したもののこれに屈せず、今度は署名運動を展開。1000名近い署名を集める。

 ……ということになります。

 土地をめぐる官民衝突は農村・都市を問わず全国各地で頻発しており、当ブログもその一部とはいえ、かなりの数の事件を昨年から紹介してきました。

 でも上記
「お馴染みの農民争議、でもこれはちょっと違う。」で指摘したように、今回の争議は表面的には過去のケースと似ていても、その実質は全く別物です。

 ――――

 重複を恐れずにいいますと、頻発しているケースは「立ち退き補償金が少ない」「立ち退きたくない」「移転先に不満」「強制執行など政府のやり方が横暴」といったあたりが対立の焦点となっています。その問題をつきつめていけば、政治制度や民主化といった課題に行き当たることでしょう。ただし現状では社会問題のレベルに過ぎません。

 ところが太石村の事件は「罷免動議」に基づいた「村長改選要求」が主題なのです。いきなり「民主化」がテーマに据えられた点が他のケースと全く異なります。政治問題なのです。9月11日付のエントリーでこれを、

「農民による民主化運動」

 とわざわざ赤くして書いたとき、背中がゾクゾクするというか血が騒ぐというか、そういう戦慄に私は襲われました。それにしても罷免動議、改選要求、ハンスト、署名活動といった闘争手段が村民たちの発想から出るものだろうか……と首をひねっていたら、果たせるかな人権活動家が軍師のように農民を指導しており、一方で中国内外在住の反体制系知識人が連名で支持声明を発表、村民を応援するネット上での言論活動も展開されました。ちなみに、村民による改選要求は中国国内の法規に照らしても合法的なものです。

 ――――

「一見庶民派のスタンスであるかのような胡錦涛総書記・温家宝首相なら一議もなく潰しにかかるところでしょうが、海外で報道されるとそう簡単に事を運べなくなります」

 と以前に指摘しましたが、その後事態は村民側に有利に展開しました。反中共系ラジオ局RFA(自由亜洲電台)によれば、改選要求を拒否していた番禺区政府・民政局が村民が提出した署名を受け入れ、その確認作業に入ったのです。

 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/09/09/china_rights_taishi/

 中国の法律では、有権者300名の署名が確認されれば村長罷免動議が認められることになるそうです。そして9月11日、太石村の村民委員会が「太石村村民による村長罷免動議が認められた」という魚窩鎮政府の公告を発表しました。

 http://asiademo.org/2005/09/20050914b.htm

 つまりは法の定める手続き通りに事が運んだに過ぎないのですが、「法制あって法治なし」という中国社会にあって、常に弱者の立場に立たされる農民の要求が法律に即して認められたことは画期的な事件ともいうべきものでした。

 今後は村長罷免の是非を問う投票が村民によって行われ、それに平行して太石村の会計記録の監査が実施されるということになります。すでに関連資料を村長のもとから奪取していた村民は「公開された形での監査には応じる」としていました。

 会計記録など資料の一切はある部屋にまとめて保存され、入口はドアと鉄格子型ドアという二重構造(中国や香港では珍しくありません)。その鉄製のドアにもチェーンロックなどがいくつか施されたうえ、その前に椅子を置いて村民たちが24時間態勢で警備していました。

 http://img.epochtimes.com/i6/5091400081673.jpg

 物々し過ぎるようでもありますが、「官」に対する「民」の抜き難い不信感が如実に表現された情景といえるかと思います。「公開された形の監査には応じる」という村民の姿勢にもそれが出ています。

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 ともあれ、「農民による民主化運動」は勝利を収めたのです。「憲政・民主の先例を開くもの」と反体制系知識人たちは評価し、広東省の地元紙で権力に屈さぬ報道で定評がある『南方都市報』(2005/09/12)は、「改革・開放の初期に実施された農業改革(全面請負制:悪平等ではなく収穫量に応じて各人の実入りが決まる)のテストケースにも匹敵する画期的な出来事」と報じたそうです。

 くどいようですが、これが9月11日です。改めてそう書かなければならないのは、事態は翌12日、信じ難い方向へと暗転することになるからです。


「下」に続く)



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 衆院選後の中国の対日政策を馬鹿なりに考えてみるつもりが、つい余談に流れてしまった前回の続編です。ただしこれは速報で、「宿題」はしばしお預け。中国の外交部報道官が定例会見で衆院選に言及したのでとりあえず一報しておきます。

 まあ標題が全てです。以上。

 ……と終わらせる訳にはいきませんか。いま「農民による民主化運動」の新展開に泡喰っているところなんで手短かにいきます。以下に要点を訳出。報道官はボソボソと早口で喋る神経質そうな秦剛です。

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 記者:先週末に日本の小泉首相が再選を果たしたが、中国側はこれについて祝意を示さないのか?

 秦剛:終わったばかりの日本の衆院選は日本の内政問題だ。私はこの問題について評論する立場にはない。強調しておきたいのは、中国政府は中日友好関係を発展させていくという……
(以下原則論)。

 記者:今回の衆院選は自民党の圧勝だった。日本国民の多くが小泉首相を支持していることの現れだと思うが、中国側はこれをどうみているのか?

 秦剛:日本の衆院選は日本の内政問題だ。日本の有権者がどの政党、どの指導者に投票したかは日本国民が自ら決めること。どの政党、どの指導者が政権を運営することになっても、中日関係が改善され発展することを我々は望んでいる。

 記者:小泉首相は対中関係において色々批判されているが、今回小泉首相が再任を果たしたことで、中日関係はどのような発展をたどると思うか?また、中国は小泉首相に祝電を贈る用意はないのか?

 秦剛:中国側としては……
(以下原則論。祝電に関する質問はスルー)。

 ――――

 中共は祝電を打つのがどうしても嫌みたいですね(笑)。

 日本の内政問題だから口をはさまない、というのも初めて聞く台詞です(笑)。民主党が勝っても同じことを言っていたかどうかは実に興味深いところですね。

 それにしても衆院選を「日本の内政問題」とするなら、より些末である筈の靖国問題になぜ口をはさみたがるのか、不思議ですねえ。今回の会見でも、「小泉圧勝」については「日本の内政問題」とかわす一方で、

「日本の指導者による靖国神社参拝に断固反対する。また、日本の一部右翼勢力が教科書を修正し歴史を改竄する行為に断固反対する」

 と言っています。これは立派な内政干渉でしょ。

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 靖国神社、歴史教科書といった案件にも「日本の内政問題だ」と言える器量が中共にはないんですねえ。

「じゃあお前んとこの天安門事件はどうよ?」
「大躍進やった後の飢餓で何人死んだか言ってみな」
「文化大革命で何人死んだか言ってみな」

 ぐらいは記者も切り返せよトンチキ。……てそんなことしたら会見に出られなくなっちゃいますか(笑)。もちろんプレスパスも剥奪。記者も所詮はリーマンですからキャリアに傷をつけたくはないでしょうしねえ。プレス魂のカケラすらない。

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 あ、それから前回取り上げた「右傾化」に対する回答が一応示されていることにも言及しておかなきゃいけませんね。

「日本の一部右翼勢力が……」

 ということで、
右翼勢力の台頭によりかくなっているものの、日本国民全てが右傾化している訳ではない。この点はしっかりと分けて考えるべきである。……という従来のスタンスが改めて示されました。

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 しかし本当に祝電を打たないのでしょうか。

 それによって国際社会で恥をかいたり呆れられたりすることがあるとすれば、それは自分の側だということがわかっていないとはさすがに思えません。

 わかっていても嫌なんでしょうね。「自民圧勝」ならともかく、今回は実質的に「小泉圧勝」ですから。

 よほど悔しかったのでしょう(笑)。



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 理非もなく言ってしまいますが、やっぱりラッキー・アドミラルなんだと思います。もちろん小泉首相のことです。

 火事場や修羅場を鮮やかに切り抜けるのは手腕だけでなく運も味方しないと。よく言われるように、「悲運の名将」という物言いは単なる言葉遊びで、実在することはないのでしょう。

 歴史的大勝利。その勢いを駆って靖国神社参拝を是非、と言いたいところですが、お隣にジリジリと焦れる国があるので(笑)、もう少し焦らしてあげてもいいかなと。

 ●中国青年報:自民党圧勝で「5度目の靖国参拝近い」(サーチナ・中国情報局)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000003-scn-int

 ……ね?あちらさんもドキドキなのです。せっかく胸ときめかせて待っていてくれるのですから、期待を裏切ってはいけません。

 10月開催予定とされる中共の重要会議「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)直前に参拝、あたりが絶好のタイミングかも知れません。緊急事態にシナリオが狂って重要会議は紛糾、ていうのを一度見てみたいのです(笑)。

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 ●小泉首相の「タイトル防衛」がアジアの喝采を浴びるのは無理ぽ?(新華網)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-09/12/content_3476464.htm

 この標題は一種の負け惜しみなのでしょうか。十八番の「アジア」が出ましたね。さてさてどういう範疇の「アジア」なんでしょう?すでにタイのタクシン首相は祝意を表明しているんですけどね(※1)。

 例によって隣国限定の「アジア」?としても韓国の基地外大統領からは祝電が届いていますし(※2)、台湾政府の東京における出先機関のトップ、つまり駐日大使である許世楷・駐日代表もお祝いのメッセージを寄せています(※3)。アジアではありませんが中共外交官続々亡命のオーストラリア、あそこのハワード首相からも「偉大な改革者」との賛辞が(※4)。

 ……あとは中共と北チョソだけですね。温家宝祝電マダー?チンチン(AA略)てなもんです。胡錦涛?いや胡錦涛はそれどころじゃないでしょう。米国でいきなり被告人になっちゃいましたから。

 ●民主化運動家の王丹・王軍涛両氏、米国で胡錦涛国家主席を告訴(明報即時新聞)
 http://hk.news.yahoo.com/050912/12/1gjkb.html

 裁判が終わるまで出国できなかったら面白いんですけど。ラッキー・アドミラルとは好対照ですね。衰運一直線。

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 で、自民党の圧勝に終わった衆院選に対する中共の反応を楽しみにしていたんですが、目下のところは「新華網」(国営通信社・新華社のウェブサイト)も「新浪網」(SINA・大手ポータル)も同じ記事を使って特集を組んでいます。前掲の『中国青年報』の記事もその中の1本。……つまり一種の報道規制が敷かれているということです。中共にとってはデリケートにならざるを得ない選挙結果なのでしょう。

 衆院解散からこのかた、ずっと注目されてはいました。「新華網」をはじめとした中国国内メディアがどんどんニュースを流していましたから。日本での世論調査結果(首相支持率、政党別獲得議席予想など)もあれば、中国社会科学院あたりの専門家の分析もあって、もう色とりどり。

 情報を流し過ぎて民主化運動のタネ火になるんじゃないかとこちらが心配するほどでした。だって「小日本」のくせに普通選挙制が常識で指導者の支持率調査もできるなんて生意気すぎるじゃないですか(笑)。

 ところが選挙結果が判明してからは、とりあえず使っていい記事が限定されました。突き付けられた現実に対する党中央の腰が未だ定まっていないからでしょう。この段階で勝手に変な分析記事などを載せられては困る訳です。

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 ●右翼勢力強大化の証し 批判目立つ中国ネット(共同通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000031-kyodo-int

 【北京11日共同】11日投開票の衆院選で自民党が圧勝したことが伝えられると、中国の大手ニュースサイト「新浪網」では「日本で右翼勢力がますます強大になっていることを示した」などと、選挙結果を日本の民意の右傾化とみて批判する書き込みが増えた。

 中国では小泉純一郎首相の靖国神社参拝などに関心が集中しており、選挙結果は首相の外交政策への信任と受け止められている。「小泉首相が退陣するのがいいとは限らないし、権力の座に残っても悪いともいえない。冷静にみるべきだ」という客観的な意見もあったが、「過去も現在も日中友好などないし、将来もない」などといった感情的な書き込みが多数を占めた。

 ……この記事がなかなか重要だと思います。

 要するに中国としては「小泉圧勝」という現実とそれを実現せしめた日本の民意、これをどう受け止めるかということです。ここでは、

「日本で右翼勢力がますます強大になっていることを示した」
「日本の民意の右傾化=日本国民の総右傾化」

 という二者択一になっています。この2つから選べというなら、後者の方が現実に即しているように思います。中国のネット世論も多くがそういう反応だったのではないでしょうか。もちろん連中のいう「右傾化」は私たちにとっての褒め言葉(笑)。日本国内であればより適切な単語が使われることでしょう。

 ――――

 ただ、中共としては後者を選べないのです。「日本国民全体の右傾化」だと、例えば「反日」の鉾先が「日本の右翼勢力」から「日本人」に変わる訳ですから。

 中共は今までずっと、

「悪いのは日本の一部の右翼勢力」
「右翼勢力が台頭し軍国主義が復活する気配をみせている」

 という趣旨のスタンスを維持してきました。それを「日本の民意の右傾化=日本国民の総右傾化」としてしまうと、お題目の「日中友好」が語れなくなり(だって握手する相手がいなくなる訳ですから)、日本を敵国同然の扱いとせざるを得なくなってしまいます。
「日本人=敵」です。でも現実を考えれば、文化大革命のような魔女狩りをやって日本企業と日本人の全てを国外追放にでもしない限り、そういう位置付けはできようがない。だから現時点では一種の報道規制でしのいでいる、という印象を受けます。

 ところが、ネット世論はこの束縛から自由でした。少なくとも選挙結果の大勢が判明した9月11日夜時点では、です。今後もこの話題を自由に語れるかどうかはわかりません。ということで、刹那を逃さずネットの声を拾った共同通信はGJ!でした。

 ――――

 「右傾化」

 というこの言葉、私にとっては年初以来ずっと気になっていたものです。中国国内メディアの日本関連記事において「右翼勢力」という言葉はすっかり定着していますが、今春の「反日騒動」前後から、「右傾化」という単語もしばしば見かけるようになっていました。

 「右翼勢力」はそのものズバリなのですが、「右傾化」なら「国民の」「政治家の」「社会の」といった主体が必要になります。今年4月からで調べてみると、「政界の右傾化」「政壇の右傾化」といった使われ方が主流ですが、「社会全体の右傾化」という際どい表現を使った文章もありました。いずれも歴史観や歴史教科書問題に絡んだ記事です。

 ただ、これまでは基本的には「日本で右翼勢力が強大になってきている」という文脈の中で語られたものでした。「日本が右傾化しつつあるのは……」という一節のある「新華網」の記事には、

「反対する相手は日本企業ではなく、日本人民ではなく、日本文化、日本製品、日本の技術や資金などでもない。日本の右翼勢力とその政策こそ反対する対象だ」
(※5)

 と、ちゃんとフォローが入っています。蒋立峰・中国社会科学院日本所所長も『人民日報』によるインタビューの中で「右傾化」について言及し、

「日本の指導者と民衆を同一視する向きが中国では一部にあり、日本政治の『右傾化』を日本民衆の『右傾化』と捉えている。だが現実に『右傾化』という一言で日本の政治的現状を規定するのは正確ではないし、日本民衆の思想傾向をその言葉で表現するのはより大きな誤りだ」

 とわざわざ述べています(※6)。でも民意が反映される普通選挙制の下にあって「政治の右傾化=民衆の右傾化」とくくることは決して誤りとはいえないように思うのですが……。一党独裁制の下で呼吸する所長さんの気苦労が忍ばれるようでもあります。

 ――――

 ともあれ報道規制中の現在、「小泉圧勝」は、

「『女刺客』などの言葉がマスコミを賑わせた劇場型政治の帰結」
「小泉マジックが有権者を『洗脳』した」
「郵政改革にテーマを絞ってわかりやすい選挙にし、浮動票を取り込んだ」

 といった理由で説明されています。まあそういう側面も確かにあるにせよ、何だか日本国民が主体的に選択したのではなく、「揃いも揃ってコロリと騙された」とでも言いたそうな論調です。
選挙結果が民意の反映であることを認めたくないようでもあります(笑)。

 ともあれ、「日本国民の総右傾化を示すもの」といったベタすぎる分析は、現時点では御法度のようです。もちろん「小泉圧勝=靖国参拝支持が圧倒的多数」ということはないにせよ、「いい加減にしろ中国」という思い(=右傾化w)が広範かつ着実に浸透しつつあることには留意すべきでしょう。

 ――――

 ちなみに中国の政局への影響ですが、これは間違いなくあるかと思います。「自民圧勝」ならともかく、実質は「小泉圧勝」です。中共現執行部に対するヘタレ認定を裏打ちするようなものですから、胡錦涛の首がいよいよ締まるということです。

 実はもうかなり締まっているようにも思えますけどね。例えば先日、東シナ海資源紛争の現場である天然ガス採掘施設「春暁」付近に中国海軍の駆逐艦など5隻が出現、それも日本の主張する中間線にギリギリかからないところを航行しましたが、あれは投票日直前を狙ってやったものではないでしょうか。

 台湾の総統選挙のときに大規模な軍事演習を行ったりミサイルを試し撃ちしてみたりしたのと同質なもので、いかにも軍人的発想の示威行為です。結果からみるといずれもみな自慰になってしまいましたが(笑)、軍権を握った筈の胡錦涛が制服組の一部を掌握できていない証左といえるかも知れません。

 台湾総統選挙時の軍事演習は江沢民が軍部に迎合した結果でしょうが、今回も胡錦涛が同じように迎合したのか、それとも胡錦涛の知らぬところで勝手に先走った一派があったのか。いずれにせよ、政情不安定を示すシグナルということになります。

 ――――

 何だか普段に増して散漫な内容になってしまい申し訳ありません。今回の圧倒的すぎる選挙結果を受けて、中共の対日政策に何らかの変化があるのだろうかという話をしたかったのですが、どうも道草を食い過ぎました。本来語るべき内容は宿題にさせて下さい。


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【※1】http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000234-jij-int
【※2】http://www.sankei.co.jp/news/050912/kok049.htm
【※3】http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050912-00000028-san-int
【※4】http://www.sankei.co.jp/news/050912/kok094.htm
【※5】http://news.xinhuanet.com/world/2005-04/12/content_2818298.htm
【※6】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/22/content_3251534_2.htm



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