今回は自分のためにお勉強。
私は毎日中国情報の記事集めをしてはいますが、対象は主に中国、香港、台湾の中国語媒体が中心で、時間的な余裕もないことから日本メディアの報道もつい見逃しがちです。
ですから中国そのものや日中関係を眺めることはできても、中国の絡んだ国際問題というものには全くお手上げで、何も知ることがありません。
例えば今回のミャンマーをめぐる問題もチンプンカンプン。……という訳で、今回は日本各紙から関連記事を拾って、自分のためになるところを抜粋してみることにしました。
まずは外務省のHPで概論を。
●ミャンマー連邦(トップページ>各国・地域情勢>アジア )
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/myanmar/data.html
◇面積 68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)
◇人口 5322万人(2004年時点)
◇主要産業 農業
◇一人当たりGDP 219ドル(2005年、IMF推定)
◇物価上昇率 17.6%(2005年、世銀資料)
◇失業率 約10.2%(2006年度推定)
◇政体 軍事体制(暫定政府)
◇内政
(1)1988年、全国的な民主化要求デモにより26年間続いた社会主義政権が崩壊したが、国軍がデモを鎮圧するとともに国家法秩序回復評議会(SLORC)を組織し政権を掌握した(1997年、SLORC は国家平和開発評議会(SPDC)に改組)。
(2)1990年には総選挙が実施され、アウン・サン・スー・チー女史率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したものの、政府は民政移管のためには堅固な憲法が必要であるとして政権移譲を行わなかった。総選挙以降、現在に至るまで、政府側がスー・チー女史に自宅軟禁措置を課す一方で、同女史は政府を激しく非難するなど、両者の対立が続いてきた。2003年5月には、スー・チー女史は政府当局に拘束され、同年9月以降、3回目の自宅軟禁下に置かれている。
(3)2003年8月、キン・ニュン首相(当時)が民主化に向けた7段階の「ロードマップ」を発表し、その第一段階として、憲法の基本原則を決定するため国民会議を開催する旨表明した。同年5月、国民会議が約8年ぶりに再開され、継続的に審議が行われている。
(4)2004年10月、キン・ニュン首相が更迭され、ソー・ウインSPDC第一書記が首相に就任。
●ミャンマー―流血拡大を各国は防げ(朝日新聞社説 2007/09/27)
http://www.asahi.com/paper/editorial20070927.html
◇デモのきっかけは、8月15日に軍当局がガソリンなどを突然数倍に値上げしたことだ。バス代値上げなどが市民生活を直撃し、人々の寄進で生活する僧侶が不満を代弁して立ち上がった。
◇この国の軍は、戦前に日本軍の訓練を受けたビルマ独立義勇軍の流れをくむ。「独立の父」アウン・サン将軍が暗殺された後、62年にネ・ウィン参謀総長がクーデターで政権についた。長年の圧政への不満が88年に爆発。数十万人のデモがネ・ウィン氏を退陣させたが、軍が出動してデモに発砲し、3000人ともいわれる犠牲者を出した経緯がある。
◇軍部はその後、アウン・サン将軍の娘で民主化指導者のスー・チーさんを自宅に軟禁した。90年の総選挙ではスー・チーさん率いる国民民主連盟が8割以上の議席を獲得したが、これを無視して民政移管の約束をほごにしている。
◇ミャンマーの現状に対して、中国の責任は大きい。ミャンマーを通ってインド洋と結ぶパイプラインの建設を進め、沖合の天然ガスの試掘権も得ている。中国からの投資が経済の命綱になっており、影響力を行使できる立場だ。それだけではない。国連安全保障理事会で今年1月、スー・チーさんの解放などを求める決議案を米英が提出したが、中国は「内政不干渉」を理由に、ロシアとともに拒否権を行使した。
という訳で中国が軽やかに2ゲト。
●9月29日付 編集手帳(読売新聞 2007/09/29/01:37)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070928ig15.htm
◇軍事政権が強気でいるのは、中国の擁護があるからだという。中国はミャンマーに石油の採掘権を持ち、海軍の寄港地を持つ。権益大事の軍政びいきならば、人道を踏み台にしても我が身を肥やす国と、無数の目には映ろう。
石油の採掘権と海軍の寄港地。権益大事の軍政びいき。なるほど。
●ミャンマー、資源確保優先 民主化ドミノ警戒 制裁踏み切れぬ中国(産経新聞/Yahoo! 2007/09/28/08:01)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070928-00000061-san-int
◇中国は、北京五輪を来年に控えて、民衆を弾圧する軍政を支持しているという国際的なイメージを持たれたくない一方で、ミャンマーのエネルギー確保といった資源戦略、そして安全保障戦略の観点から、現時点で制裁などの厳しい措置には踏み切れないのが実情だ。
◇中国外務省の姜瑜報道官は27日の定例記者会見で、デモ隊への発砲を支持するか否かという質問に直接的な回答を避け、「国際社会はミャンマー情勢の緩和に建設的な助けとなるべきだ」「情勢を複雑にすべきでない。抑制した対応をすべきだ」と繰り返し、民生向上への協力を示唆した。さすがに「内政不干渉」という言葉は使わなかったものの、制裁に反対の立場を示したといえる。
◇中国は1月、ミャンマーの人権状況に懸念を表明する国連安全保障理事会の決議案も拒否権を行使、葬り去っている。その直後、ミャンマーは中国側に1万平方キロに及ぶ天然ガス田の探査権を与え、ミャンマーと中国を結ぶ石油・天然ガスパイプラインの建設計画も加速した。中国への「見返り」とみられている。パイプラインには、不安定な要素が強いマラッカ海峡ルートへの依存度を下げる効果が期待されており、その意味でも関係強化は重要なのだ。
◇中国はミャンマーにとって、タイに次ぐ第2の貿易相手国であり、主な兵器供給源でもある。軍事研究者によると、中国は過去10年間で、ミャンマーに対し旧式のミグ系戦闘機六十数機、空対空ミサイル約300基、小型艦艇約10隻など、約6億2000万ドル分以上の兵器を供与してきた。
制裁に反対の立場を示唆ですか。軍事的にも主な兵器供給源。もしかすると兵隊の履いていたサンダルも中国製かも。「旬日を経ずして足の甲がただれる」にFEC100元。
●ミャンマー政権支持の中国 米国で高まる批判(Sankeiweb 2007/09/29/19:32)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070929/usa070929006.htm
◇ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」の中国専門研究員ジョン・タシック氏は「中国は過去十数年、ビルマ(ミャンマー)での軍事、戦略、経済などの多方面で自国の利益と勢力を拡大するために、その軍事政権を支援してきたので、その現状を守ることが至上の政策目標だろう」と語った。
◇タシック氏らによれば、中国は(1)ミャンマーの天然ガスを大量に購入し、ミャンマー北東部から雲南省へのパイプラインを完成した(2)ミャンマーの海岸部のキャウクフューなどに港湾施設を建設し、雲南省と結ぶ高速道路を開設して軍事能力を高めた(3)ミャンマー軍部に総計14億ドル(約1600億円)相当の兵器類を供与あるいは売却して、軍同士のきずなを強めた-ことなどで、ミャンマーに強力な軍事、戦略、経済の橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。
◇ジョージメイスン大学のジョン・デール教授は「中国はこうした戦略的利益の保護と、自国の独裁体制のゆえに、ミャンマーの独裁政権への挑戦を本当は激しく忌避している」と述べる。
ミャンマー軍事政権=中国の軍事・戦略・経済面での橋頭堡、てな訳ですね。
そしてEUが動きました。
●国連人権理、「ミャンマー軍政」で特別会合開催へ(読売新聞 2007/09/28/19:48)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070928i212.htm
◇国連人権理事会は28日、軍政による反政府デモへの武力弾圧が続くミャンマーに関する特別会合を開催することを決めた。欧州連合(EU)が東欧や中南米諸国に働きかけ、日本を含む17か国が開催を要求した。
◇EUなどは、ミャンマー軍政を非難する強い文言の決議を採択したい意向だが、中露が反対するのは必至だ。
必至のようです。
(「下」に続く)