日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)



 ●長井さん死亡でEUが軍政非難(読売新聞 2007/09/28/23:47)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070928id21.htm

 ◇欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会は28日、日本人ジャーナリスト長井健司さんがミャンマーで取材中に銃撃を受け死亡したことについて、「ミャンマー国内で起きているすべての暴力行為と同様、容認できない」(報道官)との見解を示した。

 ◇反政府デモを取材する外国メディアに対する軍事政権の対応を非難した。




 欧州はこういうことに敏感ですね。そういえば天安門事件(1989年)に対する制裁として実施された対中武器禁輸措置もいまなお継続中です。而してわれらがニッポンは……。



 ●対ミャンマー 米欧、軍政に圧力 日本は制裁に慎重(Sankeiweb 2007/09/28/23:30)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/070928/wld070928024.htm

 ◇ミャンマー軍事政権が反政府デモに血の弾圧で応じたのを機に、軍政に対する米欧の姿勢が一気に厳しさを増している。一方、日本政府は経済制裁の発動に慎重な姿勢を示しており、その対応ぶりは対照的だ。

 ◇米財務省は27日、軍政の中枢にある国家平和発展評議会(SPDC)のタン・シュエ議長(上級大将)ら高級幹部14人、国営銀行などの在米資産を凍結すると発表した。米政府は2003年のミャンマー民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさんの再軟禁を受け、対ミャンマー制裁法を同年施行しており、今回の措置は追加制裁だ。

 ◇対ミャンマー強硬姿勢では、旧宗主国の英国の方が上かもしれない。ブラウン首相は24日の与党、労働党年次大会演説で、「ビルマやジンバブエなどで虐待されている人々に次のメッセージを送るべきだ。人権は普遍的で不公平は永遠には続かない」と軍政を非難し、26日には他国に先駆けて国連安全保障理事会の緊急招集を提唱した。

 ◇フランスのサルコジ大統領も25日の記者会見でミャンマー軍政を非難、26日には、エリゼ宮(仏大統領府)で同国の亡命政府首相と会談した。欧州連合(EU)は軍政主要メンバーの資産の凍結と、同メンバーへの査証発給禁止を決めている。

 ◇これに対し、日本政府の姿勢は抑制的だ。福田康夫首相は28日、「いきなり制裁すればいいということではない」と記者団に述べた。

 ◇日本人カメラマンが銃撃されて死亡したとの一報が入った27日夜、外務省の木村仁副大臣は、同省に呼び出していた駐日ミャンマー大使に実力行使の中止を要求。28日には外務省が情報収集と邦人保護のための連絡室を設置し、藪中三十二外務審議官を29日にミャンマーに派遣することを決めるなど、一応の対応はとっている。

 ◇しかし、町村信孝官房長官は27日夜に緊急の抗議談話を発表したものの、「官房長官が出てくるほどのことではない」(官邸筋)として、首相官邸に出邸しなかった。28日の記者会見では、人道支援目的の無償資金協力に関しても「直ちにやめると決断しているわけではない」と指摘した。

 ◇ミャンマーをめぐっては、中国がミャンマー軍事政権との関係を深めている。このため、中国が経済制裁に反対する中で、制裁に積極的な欧米諸国と同一歩調をとれば「結果として、ミャンマーが中国にだけ傾斜していく姿が本当にいいのか」(町村官房長官)という計算もあるようだ。




 自国民が射殺されているのに「いきなり制裁すればいいということではない」ですか。これ、北朝鮮の拉致問題に対しても使われそうなフレーズですね。……って総裁選でもう使われていましたか。フフン♪

 ハッタリのひとつすらかますことのできない日本はなんと情けないことか。畳みかけますけど自国民が射殺されているのに、です。余談ですがマッチーはこれで著しく男を下げましたね。

 ――――

 ……番組の途中ですがここで香港・台湾からの情報。香港の親中紙である『香港文匯報』(2007/09/28)が外電からの引用として伝えたところによると、EUは中国がミャンマーの事態好転に関与しなければ、国際社会は2008年の北京五輪をボイコットすべきだとの姿勢を示したそうです。

 また台湾の『自由時報』も同じようなニュースを報じています。こちらも外電によるものですが内容が具体的になっており、欧州議会副主席が、

「中国がミャンマーの事態好転に関与しなければ、EU加盟国は2008年の北京五輪をボイコットすべきだ」

 と提案したとのこと。この副主席は、

「五輪はわれわれが中国を行動させるための唯一の有効な手段」

 だとして、英国のブラウン首相と現在のEU議長国であるポルトガルに対し、北京五輪ボイコットに関する討議を行うよう書簡にて求めるそうです。

 ●『香港文匯報』(2007/09/28)
 http://paper.wenweipo.com/2007/09/28/GJ0709280005.htm

 ●『自由時報』(2007/09/28)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/sep/28/today-int3.htm

 ――――

 さて、自国民が射殺されているのに「いきなり制裁すればいいということではない」とのたまったのは福田首相。温家宝と電話会談を行った模様です。フフン♪



 ●ミャンマー軍政に制裁発動と国際圧力を(日本経済新聞社説 2007/09/29)
 http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20070928AS1K2800328092007.html

 ◇軍事政権が流血の惨事を引き起こしたにもかかわらず、福田康夫首相は制裁発動には慎重だ。情勢の展開をさらに見る必要があると述べ、人道支援も続ける考えを示唆した。対応が甘いのではないか。米国はミャンマーの軍事政権首脳、銀行に照準を合わせた制裁を新たに実施した。

 ◇人道援助は確かに一般の援助とは違い、じかに市民生活を助けるためそう簡単にはやめにくい。しかし時には重い決断も必要だ。民主化運動の精神的支柱アウン・サン・スー・チーさんはかつて、軍政が続く限り援助はいらないと述べたこともある。

 ◇国際社会は今、中国の対応を注視している。中国は資源開発、貿易や兵器輸出を通じてミャンマー軍事政権を支えてきた。中国は最も大きな影響力を与えられる国であろう。だが、内政不干渉を口実にロシアとともに国連安全保障理事会で非難決議の採択に反対した。温家宝首相は福田首相との電話会談で国際社会の建設的な対応へ中国としても努力すると述べたというが、優柔不断であるとの感は否めない。




 その優柔不断、というより口を濁した温家宝の対応。



 ●ミャンマー情勢「中国も努力」、温首相が福田首相に(読売新聞 2007/09/28/13:22)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070928i105.htm

 福田首相は28日午前、中国の温家宝首相と電話で約25分間会談した。温首相は、軍事政権による市民への武力弾圧が続くミャンマー情勢について、「情勢を注視している。国際社会が建設的な支援をするべきで、中国としても努力していく」と述べた。




 親中派というのは中国と親しい訳ですから、仲のいい友人として、こういうときに中国にとって耳の痛い話や忠告をすることのできる人のことを指す筈です。少なくとも福田首相はこの範疇には入っていませんね。

 ところでその温家宝ですが……。


 ●中国首相、安定回復へ「自制」訴え=ミャンマー問題で英首相と協議(時事通信 2007/09/28/22:39)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date3&k=2007092801281

 ◇中国の温家宝首相は28日、ブラウン英首相と電話でミャンマー問題について意見交換した。中国外務省によると、温首相は平和的手段によってミャンマー情勢を早期に安定させるため「自制」が必要だと訴えた。




 「自制」が必要なんだそうです。でもどうして自制ではなくカッコ付きの「自制」なのかといえば……。



 ●デモ側も自制を=ミャンマー情勢で中国外相(時事通信 2007/09/30/00:10)
 http://www.jiji.com/jc/zc?key=%b9%e2%c2%bc&k=200709/2007093000003

 ◇高村正彦外相は29日、ニューヨーク市内のホテルで中国の楊潔※(※=竹カンムリに褫のつくり)外相と会談し、反政府デモに対する治安部隊の実力行使で多数の死傷者が出ているミャンマー情勢の改善に向け、軍事政権に影響力を行使するよう中国側に求めた。

 ◇楊外相は「双方の自制を望む」と述べ、デモ参加者も行動を慎む必要があるとの認識を示した。




 ……はい。民衆側もデモなどの行為を自制しろ、という意味だったんですね。いやはや。

 以上、おかげさまでミャンマーと中国をめぐる問題について上っ面だけながらお勉強することができました。ああそれから、

「相手が嫌がることはやらない」

 という福田節の真骨頂も垣間みた思いです。フフン♪

 でも今回の「相手」って誰?少なくともミャンマーではなさそうですけど。フフン♪

 こういう連中を自分たちの税金で養っているのだと思うと全く腹が立ちます。フフン♪




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 今回は自分のためにお勉強。

 私は毎日中国情報の記事集めをしてはいますが、対象は主に中国、香港、台湾の中国語媒体が中心で、時間的な余裕もないことから日本メディアの報道もつい見逃しがちです。

 ですから中国そのものや日中関係を眺めることはできても、中国の絡んだ国際問題というものには全くお手上げで、何も知ることがありません。

 例えば今回のミャンマーをめぐる問題もチンプンカンプン。……という訳で、今回は日本各紙から関連記事を拾って、自分のためになるところを抜粋してみることにしました。

 まずは外務省のHPで概論を。



 ●ミャンマー連邦(トップページ>各国・地域情勢>アジア )
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/myanmar/data.html

 ◇面積 68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)
 ◇人口 5322万人(2004年時点)
 ◇主要産業 農業
 ◇一人当たりGDP 219ドル(2005年、IMF推定)
 ◇物価上昇率 17.6%(2005年、世銀資料)
 ◇失業率 約10.2%(2006年度推定)

 ◇政体 軍事体制(暫定政府)
 ◇内政
 (1)1988年、全国的な民主化要求デモにより26年間続いた社会主義政権が崩壊したが、国軍がデモを鎮圧するとともに国家法秩序回復評議会(SLORC)を組織し政権を掌握した(1997年、SLORC は国家平和開発評議会(SPDC)に改組)。

 (2)1990年には総選挙が実施され、アウン・サン・スー・チー女史率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したものの、政府は民政移管のためには堅固な憲法が必要であるとして政権移譲を行わなかった。総選挙以降、現在に至るまで、政府側がスー・チー女史に自宅軟禁措置を課す一方で、同女史は政府を激しく非難するなど、両者の対立が続いてきた。2003年5月には、スー・チー女史は政府当局に拘束され、同年9月以降、3回目の自宅軟禁下に置かれている。

 (3)2003年8月、キン・ニュン首相(当時)が民主化に向けた7段階の「ロードマップ」を発表し、その第一段階として、憲法の基本原則を決定するため国民会議を開催する旨表明した。同年5月、国民会議が約8年ぶりに再開され、継続的に審議が行われている。

 (4)2004年10月、キン・ニュン首相が更迭され、ソー・ウインSPDC第一書記が首相に就任。






 ●ミャンマー―流血拡大を各国は防げ(朝日新聞社説 2007/09/27)
 http://www.asahi.com/paper/editorial20070927.html

 ◇デモのきっかけは、8月15日に軍当局がガソリンなどを突然数倍に値上げしたことだ。バス代値上げなどが市民生活を直撃し、人々の寄進で生活する僧侶が不満を代弁して立ち上がった。

 ◇この国の軍は、戦前に日本軍の訓練を受けたビルマ独立義勇軍の流れをくむ。「独立の父」アウン・サン将軍が暗殺された後、62年にネ・ウィン参謀総長がクーデターで政権についた。長年の圧政への不満が88年に爆発。数十万人のデモがネ・ウィン氏を退陣させたが、軍が出動してデモに発砲し、3000人ともいわれる犠牲者を出した経緯がある。

 ◇軍部はその後、アウン・サン将軍の娘で民主化指導者のスー・チーさんを自宅に軟禁した。90年の総選挙ではスー・チーさん率いる国民民主連盟が8割以上の議席を獲得したが、これを無視して民政移管の約束をほごにしている。

 ◇ミャンマーの現状に対して、中国の責任は大きい。ミャンマーを通ってインド洋と結ぶパイプラインの建設を進め、沖合の天然ガスの試掘権も得ている。中国からの投資が経済の命綱になっており、影響力を行使できる立場だ。それだけではない。国連安全保障理事会で今年1月、スー・チーさんの解放などを求める決議案を米英が提出したが、中国は「内政不干渉」を理由に、ロシアとともに拒否権を行使した。




 という訳で中国が軽やかに2ゲト。



 ●9月29日付 編集手帳(読売新聞 2007/09/29/01:37)
 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070928ig15.htm

 ◇軍事政権が強気でいるのは、中国の擁護があるからだという。中国はミャンマーに石油の採掘権を持ち、海軍の寄港地を持つ。権益大事の軍政びいきならば、人道を踏み台にしても我が身を肥やす国と、無数の目には映ろう。



 石油の採掘権と海軍の寄港地。権益大事の軍政びいき。なるほど。



 ●ミャンマー、資源確保優先 民主化ドミノ警戒 制裁踏み切れぬ中国(産経新聞/Yahoo! 2007/09/28/08:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070928-00000061-san-int

 ◇中国は、北京五輪を来年に控えて、民衆を弾圧する軍政を支持しているという国際的なイメージを持たれたくない一方で、ミャンマーのエネルギー確保といった資源戦略、そして安全保障戦略の観点から、現時点で制裁などの厳しい措置には踏み切れないのが実情だ。

 ◇中国外務省の姜瑜報道官は27日の定例記者会見で、デモ隊への発砲を支持するか否かという質問に直接的な回答を避け、「国際社会はミャンマー情勢の緩和に建設的な助けとなるべきだ」「情勢を複雑にすべきでない。抑制した対応をすべきだ」と繰り返し、民生向上への協力を示唆した。さすがに「内政不干渉」という言葉は使わなかったものの、制裁に反対の立場を示したといえる。

 ◇中国は1月、ミャンマーの人権状況に懸念を表明する国連安全保障理事会の決議案も拒否権を行使、葬り去っている。その直後、ミャンマーは中国側に1万平方キロに及ぶ天然ガス田の探査権を与え、ミャンマーと中国を結ぶ石油・天然ガスパイプラインの建設計画も加速した。中国への「見返り」とみられている。パイプラインには、不安定な要素が強いマラッカ海峡ルートへの依存度を下げる効果が期待されており、その意味でも関係強化は重要なのだ。

 ◇中国はミャンマーにとって、タイに次ぐ第2の貿易相手国であり、主な兵器供給源でもある。軍事研究者によると、中国は過去10年間で、ミャンマーに対し旧式のミグ系戦闘機六十数機、空対空ミサイル約300基、小型艦艇約10隻など、約6億2000万ドル分以上の兵器を供与してきた。




 制裁に反対の立場を示唆ですか。軍事的にも主な兵器供給源。もしかすると兵隊の履いていたサンダルも中国製かも。「旬日を経ずして足の甲がただれる」にFEC100元。



 ●ミャンマー政権支持の中国 米国で高まる批判(Sankeiweb 2007/09/29/19:32)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070929/usa070929006.htm

 ◇ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」の中国専門研究員ジョン・タシック氏は「中国は過去十数年、ビルマ(ミャンマー)での軍事、戦略、経済などの多方面で自国の利益と勢力を拡大するために、その軍事政権を支援してきたので、その現状を守ることが至上の政策目標だろう」と語った。

 ◇タシック氏らによれば、中国は(1)ミャンマーの天然ガスを大量に購入し、ミャンマー北東部から雲南省へのパイプラインを完成した(2)ミャンマーの海岸部のキャウクフューなどに港湾施設を建設し、雲南省と結ぶ高速道路を開設して軍事能力を高めた(3)ミャンマー軍部に総計14億ドル(約1600億円)相当の兵器類を供与あるいは売却して、軍同士のきずなを強めた-ことなどで、ミャンマーに強力な軍事、戦略、経済の橋頭堡(きょうとうほ)を築いた。

 ◇ジョージメイスン大学のジョン・デール教授は「中国はこうした戦略的利益の保護と、自国の独裁体制のゆえに、ミャンマーの独裁政権への挑戦を本当は激しく忌避している」と述べる。




 ミャンマー軍事政権=中国の軍事・戦略・経済面での橋頭堡、てな訳ですね。

 そしてEUが動きました。



 ●国連人権理、「ミャンマー軍政」で特別会合開催へ(読売新聞 2007/09/28/19:48)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070928i212.htm

 ◇国連人権理事会は28日、軍政による反政府デモへの武力弾圧が続くミャンマーに関する特別会合を開催することを決めた。欧州連合(EU)が東欧や中南米諸国に働きかけ、日本を含む17か国が開催を要求した。

 ◇EUなどは、ミャンマー軍政を非難する強い文言の決議を採択したい意向だが、中露が反対するのは必至だ。




 必至のようです。


「下」に続く)



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 偶然ながら、ちょうどミートキーナ、拉孟、騰越の玉砕戦に関する書籍をAMAZONからまとめて取り寄せた矢先だったので、直接関係はありませんけどミャンマーの事態の進行ぶりがつい気になってしまいます。この事態に対する中国の動きからも目が離せません。

 もはや説明不要でしょうが、ミャンマーの軍事政権に対する国民の反政府デモが発生して大きな盛り上がりをみせていたなか、これを取材していた日本人記者・長井健司さんが武力鎮圧の挙に出たミャンマー軍兵士から至近距離で発砲されて射殺されました。まずは謹んで長井さんの御冥福を祈りたいと思います。また、不条理に対する問題意識を原動力に海外各地で取材活動を続けてきたことに私は心から敬意を表します。

 今回の事件に関する一連の報道のなかで、印象に残ったのは毎日新聞の記事でした。



 ●ミャンマー:日本人記者死亡 最後までカメラ手に--最前線で取材中(毎日新聞東京朝刊 2007/09/28)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/archive/news/2007/09/28/20070928ddm041030115000c.html

 (前略)
長井さんはAPF通信社(東京都港区)の契約記者兼カメラマンで、イラク戦争やパレスチナ、中国と北朝鮮の国境地帯など、危険な地域での取材経験が豊富だった。(中略)

 (AFP通信社の)山路社長は目を赤くしながら、「長井さんは怒りを持って現場に入り取材する人だった。非常に残念だ」と声を詰まらせた。「誰も行かない所に誰かが行かなければならない」が長井さんの口癖だったといい、「実情を伝える人間が1人減ったという思いだが、我々はやるべきことを続けたい」と話した。
(中略)

 ミャンマーで何度も取材してきたカメラマン、三留理男さんは「デモ隊に交じって取材するカメラマンは目立つ。一般的に流れ弾に当たって死亡する確率は低い。軍から狙い撃たれた可能性もある」と推測した。

 イラク取材中に銃撃され死亡したジャーナリストの橋田信介さんの妻幸子さんは「ミャンマーでは77年から00年ごろまで夫と30回近く取材をした。現地で長井さんに適切な協力者がいたかが気がかりだ」と語った。
(後略)



 長井さんの死は、私にとっては他人事ではありません。

 1989年に上海に留学した際、大学生・知識人による民主化運動に出くわし、6月4日の軍隊による北京の学生・市民らを手当たり次第に射殺して回った武力弾圧、すなわち天安門事件で運動が事実上終息するまで、デモ三昧の毎日を送りました。私は性分なのか常に最前線を飛び回っていました。……というより気付いたらいつも最前線にいました(笑)。

 もし留学先が北京の大学だったら、私の行動原理からすると無事だったかどうかは非常に怪しいところです。上海に留学したことは命冥加だったと今でも思っています。

 ――――

 長井さんは修羅場での豊富な取材経験をお持ちのようでしたが、第一報を受けて私が考えたのは橋田幸子さん同様、ローカルスタッフ(現地人の協力者)はいなかったのかな、ということでした。

 現地語に通じているとともに、現地人だけに全体の流れやその場の空気を読むことに長け、いざというときの逃走経路など地理感覚も持ち合わせているローカルの協力者は何にも代え難い不可欠な存在なのです。

 公開されている動画をみると、治安部隊の到着で群衆がサーッと退くなか、長井さんは逃げることなくその場に踏みとどまり、撮影を続けていたところを至近距離からミャンマー軍兵士に射殺されています(兵士がサンダル履きなのに驚きました)。

 軍事政権で、鎮圧に出動した軍隊が発砲するような極限状況でしたし、兵士の頭には外国人記者というのは軍事政権に楯突く存在と認識されていても不思議ではありません。群衆から離れて現場に踏みとどまった長井さんは、兵士からすれば恰好の標的だったのではなかったかと思います。

 長井さんは持ち前の正義感から取材に熱中していたのかも知れません。ただ、ローカルスタッフがいれば袖を引っ張ってでも長井さんを現場から離れるようにしていただろうと思います。残念です。

 ――――

 私は留学先の大学では中国入りする前から悪名を轟かせていましたが、一方で強力な「後台」(後ろ盾・保護者)もいましたから、民主化運動が生起してからも心置きなく無茶をさせてもらいました。

 ただ、大学側(留学生弁公室)にマークされていたことは確かです。何たって母校と留学先の大学の提携関係が打ち切られるのに一役買っていましたから(笑)。

 あれは民主化運動の引き金となった胡燿邦・元総書記の急死から半月ほど前のことでしたか、大学の図書館で中国政治関連の本を漁っていたところ、日本語学科の中国人学生が私に近づいてきて、

「襦袢という言葉がよくわからないのですが、説明してもらえませんか?」

 と話しかけてきました。それが接触するための口実であることはミエミエだったので、

(こいつが俺の目付役という訳か)

 とやや憂鬱になったのですが、一応質問には答えてやりました。すると相手は私の手にしている本に目を留めて、

「新権威主義というのを知っていますか?」

 と、いきなり政治の話に切り込んできたので私はいよいよ憂鬱になりました。当時、趙紫陽時代の中国指導部やそのブレーンの間でもてはやされていた一種の開発独裁論のようなものでしたが、私の知っていることを答えると、今度は所有制の話を振ってきました。

(あーこいつはやっぱり目付だな)

 と思いつつも、そこは若年客気でしたから、毒を喰わらば皿までだ、という気持ちが先に立って(笑)ひとしきり相手をしてから、互いに自己紹介をして別れました。

 ――――

 結局、この日本語科の学生が目付だったのかどうかはわかりませんでしたが、私にとっては実に重宝する水先案内人になってくれました。

 情報収集や他大学に情報網を張り巡らす過程でずいぶん働いてくれましたし、スクープめいた急報の際にもすぐ私のところに駆けつけてくれて、貴重な場面に居合わせることが再三あったのも彼のおかげです。

 いわゆるローカルスタッフです。

 他大学での集会やデモに参加するときも常に彼が一緒でした。私が手元に引きつけておいた、という方が正確かも知れません。中国語の面でも便利だったのです。学生集会ではマイクがないために聞き取りにくい部分があったり、演説者が声を枯らしているために不明瞭な部分があります。それをフォローしてくれました。

 また、上海の中心部を歩いていてすれ違った通行人の会話(上海語を含む)に耳をそばだたせて、

「いま、人民広場にデモ隊が向かったって話していました」

 などと私の穴をよく埋めてくれました。デモ隊や公安(警察)の動きをみながら、適確に進退をアドバイスしてくれたのも彼です。

 この学生が大学差し回しの俺の目付役か、などと当初疑ったことはすっかり忘れて、ま、こいつと一緒なら大丈夫だろう、という安心感を抱いたものです。まあ、大学が私に手出しできないことで多寡をくくっていた部分もありますけど。

 いまは連絡が途絶えてしまったのですが、彼の働きには私はいまでも感謝しています。留学先が北京じゃなくてよかった、と思いつつ。

 ――――

 長井さんに関するニュースが続々と飛び込んでくるなか、その死を悼みつつ、以上のことを私は思い出しました。

 別に混乱した状況下でなくても、留学生や駐在員にとって頼りになるローカルは重要な存在です。ふんぞり返っているような駐在員は、いざというときにそれで泣きをみることになるでしょう。日本人としての矜持、「俺は日本人だから恥ずかしい真似はできない」という気持ちを持ちつつ、また社内での階級という点でケジメをつけつつも、現地スタッフと親しい距離感を保つよう努めることが肝要かと思います。

 説教臭くなってしまい申し訳ありませんが、これは私が香港や台湾で働いてきた上での経験によるものです。

 最近は、

「搾取OK、環境基準ユルユル。コストものすごく低いアルヨ」

 で外資企業の誘致に力を入れてきた中国当局が、どうもにわかに方針を転じて外資企業を選別したり必要な場合は悪人に仕立て始めたような気配があります。中共系メディアの報道によると、とりあえず環境汚染の問題で日立建機が吊るし上げられたようです。

 ある種の「踏み絵」に直面したとき、頼りになるのはやはりローカルスタッフであることは覚えていて損はないと思います。……はいはい老婆心老婆心(笑)。




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 何をいまさら、という感じがしないでもありませんが、以前当ブログで告知した、

「9・15『友邦・台湾を国連へ!』アピール行進」

 に参加した感想を報告しておきます。……ていうかその告知エントリーのコメント欄で第一印象を記してはいますけど。



 ところで昨日(9月15日)、上で告知したデモに参加して参りました。集合場所で「御家人さんいるかなw」とか連れの方と話していたあなた、あなたの後ろにいたのが私です。もちろん名前が出たので私はスーッと別の場所に移りましたけど。

 デモは動員力不足。あれを成功と称するのは中共並みの自画自賛です。でも今回は主題に忠実なデモだったので思い切り声を枯らして参りました。

 とはいえ街宣車を先頭に立てるのはやはりやめてほしいです。ライトユーザー(一般市民)にはあれだけで嫌悪感が先に立つということを理解できない感覚に私は嫌悪感。マーケについてもう少し研究してほしいですね。




 えーあれから2週間近く経っているのですが、基本的に第一印象のまんまです。

 参加者は300~400名とのこと。この種のデモとしてはいつもより人数が多かったのは確かです。当ブログと相互リンクしているブログ「台湾は日本の生命線!」の永山英樹さん(李登輝友の会理事)が音頭をとってシュプレヒコールを盛り上げていました。永山さん、本当にお疲れさまでした。

 こういう趣旨のデモに私は大賛成です。私と似たような思いを持つ人も少なくないと思います。でも、それでも集まったのは300~400名。出発点となったさして広くもない公園を埋め尽くすこともできませんでした。デモの掲げる主題に照らせばカナーリ少ないのではないかと私は感じました。

 例えば「2ちゃんねる」のような巨大掲示板でのスレ立てなどをやってほしかったです。私は事前にあちこちの板を回ってみたのですが、探し当てられませんでした。関係ありそうなブログにトラックバックを打つのもひとつの方法ですけど、それも行われなかった模様です。

 残念。事前に声をかけてくれれば、正に友邦・台湾が切所にさしかかっている時期だけに私も予定を調整して、動員力には期待できませんが当ブログにて「チナヲチ隊」を組織してデモ参加&突発OFF会もありかな……くらいのつもりはあったのですけど。

 ――――

 ともあれ、上でも書きましたけど、デモ隊の先導役が某政党の街宣車だったことに幻滅・失望・違和感・嫌悪感でした。その政党がどうのこうのというのではなく、街宣車を先鋒に据えた時点で一般市民的にはドン引きだったのではないでしょうか。

 デモの様子は「アマチュア市民」さんからご教示頂いたウェブサイトでみることができます。

 http://taidoku.fc2web.com/ouen122kokuren.htm

「明治通りで多くの歩行者の注目を集めました」

 なんてキャプションがあります。もしかしたらデモ隊に拍手を送った人がいたかも知れません。しかし私の目には、信号待ちしていた人たちの大半が違和感・異質感の表情で眺めていたようにみえました。

「何この人たち?」
「信号変わったんだからさっさと交差点渡れボケ」

 てなところです。カメラを構えているのは台湾メディアか主催者関係筋。携帯で撮影している若い女性もいましたけど、表情からすると「何この人たち?」の物珍しさが動機になっているように感じました。

 ――――

 私はデモ隊の後尾近くにいたのですが、李登輝友の会理事で芭蕉庵での取材に便宜を図って下さった片木裕一さんが近くにいました。浴衣姿で唐傘を掲げた出で立ちです。唐傘の頂点には横長のパネルがついていて「日台友好」のような意味のことが書かれていました。

「粋ですねえ」

 と声をかけたところ、何でも台湾でデモに参加した際も同じ格好で臨んだら、目立ったものだから(そりゃそうでしょう)その写真が台湾の新聞の紙面を飾ったそうです。

 この種のデモにはもう少しほんわかした空気というか、そういう洒落っ気がもっと必要だったように思います。2ちゃんねらーあたりに私はそれを期待していたのですが、もしスレ立てが行われていなかったのであれば以て瞑すべしですね。

 それから、巨大掲示板で告知・実況が行われれば、デモの主題について参加者以外にも伝わっていくもの,広がっていくものがあっただろうと思います。今回はそれがなかった様子なので参加者だけが事態を再認識した、といったところではないかと。

 まあ、いくら沿道からみて面白げなデモであっても、街宣車を先頭に立ててしまえば台無しなんですけどね。一体このデモによって日本のどういう層にアピールしたかったのかいまだに私にはわかりません。参加者のひとりとして正直、あれだけは恥ずかしかったです。




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「上」の続き)


 そこで標題の件となる訳です。中国人はもともと民度が低かったところに、中共政権による愚民教育を施された。中共政権にしてみたら、国民が賢くなって多党制を認めろとか選挙権を寄越せなどと言い始めたら困るからです。

 もっとも中共政権のレベルも国民同様に低いものでしたから、愚民教育といっても多寡が知れています。それでも民度が低いためにある程度有効に作用し、それに権力闘争が結びついて反右派闘争だの大躍進だのといった愚昧な政治運動とそのしっぺ返しである大飢饉、さらに文化大革命のような愚行が繰り返されました。

 喜劇とも悲劇ともつかぬこの激動の時代を生き抜いてきた庶民は、さすがに天真爛漫ではなくなります。さらに改革・開放政策が始まり、外国の情報が入ってくるようになると、自国がいかに後れているか、時間を無駄にしてきたかを思い知らされる訳です。

 恰好な比較対象が隣国の中にありました。同じボロボロの状態からのスタートだったのに、あの小賢しい小日本に比べたら中国はなんと惨めなことか。……その原因を作ったのは何か、と考えれば、中国共産党への呪詛に自然に行き着きます。

 ただ、公に大声でそれを叫べば一党独裁政権の報復を受けることになりますから、例えばタクシーの運転手なら行きずりの日本人乗客(私)をつかまえて、延々とそうした呪詛や悔恨を語り続けるしかありませんでした。

 「社会主義」や「中国共産党」といったものの求心力が低下し、国民の心が離れ始めていることは1980年代の前半から指摘されていました。その挙げ句の果てに起きた民主化運動に対し、切羽詰まった当局は武力を用いることを選択しました。完全武装の歩兵が突撃銃を乱射し、戦車や装甲車が縦横無尽に走り回って学生や市民を無差別に、片っ端から虐殺。それが天安門事件です。

 こうなるともう求心力どころではなくなります。ソ連をはじめ東側の共産政権が次々に崩壊していく時期でもありました。中国当局は自動小銃を国民に突き付けて従順たることを強要し、天安門事件について語ることを禁忌としました。

 ――――

 さらに私が留学している間、つまり天安門事件から半年と経たぬうちに、テレビでは在りし日の中国共産党の活躍ぶりを描いた映画がたくさん放映されるようになりました。悪役は「日本鬼子」すなわち旧日本軍。

 中華人民共和国が成立してからの40年で、中共は国民に誇るべき事績を何も残せず、ただただ負の歴史を繰り返してきたため、抗日活動というセピア色の思い出にすがるしかなかったのです(よほど古い作品らしく、映画はみんな白黒のものばかりでした)。また、中国共産党に向けられた憎悪を外へそらそうという狙いもあったのでしょう。

 その思惑をそのまま教育プログラムとして学校へと導入したのが、江沢民による反日風味満点の「愛国主義教育」です。スタートしたのが確か1994年でしたか。天安門事件当時に小学生や中学生といった子供だった国民は、事件に対する正確な認識を持てるほどの年齢ではありません。それより下の世代は言わずもがなです。

 これを10年余り施したところ、現在では30歳以下なら間違いなくこの「愛国主義教育」を全身に浴びて育った世代ということになりました。こうなると教え込まれた「嘘」も当人にとっては「嘘」でなくなります。

 やや極端な言い方をすると、「中共万歳、中国万歳、反日万歳」というのが江沢民型の愛国主義教育。レッテル貼りという作業の繰り返しのようなものですから、柔軟性を欠いた思考癖、硬直的な価値観が身体に染み込みます。そして何かあると叩き込まれた「反日」属性が爆発するという厄介な仕掛けです。

 中国が21世紀に入ってから歪んだ形ながら高度経済成長を実現したことも、中共万歳かどうかはともかく、中国万歳の風潮を助長しました。さらに「反日」属性の作用などもあって、いわゆる「狭隘な民族主義」が跋扈することになります。インターネットの普及もそれに拍車をかけたといっていいでしょう。日本でもそうですが、掲示板などで行われる議論は簡潔かつ過激な内容へと流れがちだからです。

 ――――

 そうした中国人の増長というか頭のネジが数本飛ぶというか、ともかく浮世離れした愚妹さを露呈してしまったのが2004年夏のサッカーアジアカップ。根拠なき反日ブーイングに代表される中国人観客のマナーの悪さです。

 そして、その3年後である今回の女子サッカーワールドカップでも中国人観客また同じことを繰り返してしまいました。ところが、今回は試合後に日本選手が整列して、

「ARIGATO 謝謝 CHINA」

 という横断幕を掲げて観客席に向けて一礼したことで、中国人観客は振り上げた拳の持っていきどころがなくなってしまいました。それどころかこの行為がある種の感動を呼んだらしく、期せずして観客の間から拍手が湧き起こったそうです。

 そして、上述した『中国先駆導報』などのマスコミによる中国人観客への指弾が行われ、ネット上では掲示板における論争が勃発しました。ちなみに2004年夏のアジア大会においては『中国青年報』が、

「政治とスポーツを一緒くたにするな」
「こんな『愛国』には誰も拍手しない」

 という評論を掲載して苦言を呈したところ、糞青(自称愛国者の反日信者)をはじめネット世論の集中砲火を浴びて沈黙させられてしまいました。

 ●中国サポの暴挙に指導部が苦言?(2004/07/29)

 ●憤青/糞青(2004/07/31)

 ところが、今回は様子がちょっと違うようです。

 ――――

 何が違うかといえば、まずネット上で「反日ブーイング」の当否をめぐる白熱した議論が展開されたことです。かつて『中国青年報』がネット世論に叩きに叩かれてしまったことを思うと、どこかが進歩したのかも知れない、といえるかも知れません。

 中国人観光客の評判が海外で散々であることが多少は関係しているのでしょうか。あるいは、胡錦涛政権が「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現を声高に叫ばなければならないほど「不調和」で、さらに環境汚染や食の安全が切迫した問題となってしまった中国社会において、「中国万歳」の熱狂から醒めた中国人がある種の平衡感覚を取り戻しつつあるのでしょうか。

 もっともネット上での議論については、「いや、工作員が多数まぎれこんでいるから」との一言で片付けることもできます。「みっともない」「恥を知れ」という意見が主流になるよう、中国当局が世論操作を試みている可能性があるからです。

 ただし、「反日ブーイング」を非難したマスコミについては、明確な変化をみてとることができます。2004年に異議申し立てを行って袋叩きにされた『中国青年報』は、御存知の通り胡錦涛・総書記の御用新聞。その胡錦涛は総書記就任以来、外交の主導権を奪われていた時期を除けば、対日外交路線は基本的に一貫しています。

「歴史問題は忘れないし靖国参拝は許さないけど、現実的に前向きに未来志向でやっていこうよ」

 といったもので、「歴史問題」を盛んに言い立てて日本人の反感を買った先代の江沢民に比べると「対日融和・現実路線」ということができます。

 『中国青年報』が中国人観客に呈した苦言もまた胡錦涛の対日外交姿勢を反映したものとみていいのですが、当時はネット世論から一方的にブーイングを浴びて大人しくなってしまいました。

 ――――

 ところが、今回は違います。前述の『中国先駆導報』の記事は、教え諭すような『中国青年報』の評論と比べればはるかに喧嘩腰で戦闘的です。

 それから、今回は「反日ブーイング」への非難が胡錦涛傘下の『中国青年報』ではなく、新華社系の国際時事紙である『中国先駆導報』から出されたという点にも注目です。同紙は人民日報系の『環球時報』ほどではないにせよ、電波系反日基地外紙の一面を持っています。成田空港で帰国しようとする李登輝・台湾前総統にペットボトルを投げつけて逮捕された糞青を英雄扱いし、独占インタビューをも果たした「前科」もあります。

 2005年春の「反日騒動」のころから胡錦涛は新華社を掌握し切れていない印象があったのですが、今回はその新華社系の中で最もラディカルな『中国先駆導報』が糞青どもの感情を逆撫でにするような記事を掲載しました。

 この記事は大手ポータルや各地の主要ニュースサイトに転載されています。北京五輪を控えて中国人観客のマナーの悪さや「反日ブーイング」を懸念する指導部の意向が反映されているように思えます。さらに、胡錦涛がこれまで十分に統御できていなかった新華社を掌握しつつあることもうかがわせます。

 新華社といえば、その電子版たる「新華網」も署名評論を発表しています。

 ●競技会場の日本チームに一体どのようにして向き合えばよいのか(新華網 2007/09/20/00:00)
 http://news.xinhuanet.com/comments/2007-09/20/content_6754044.htm



 もしこうした「抗日」感情を競技会場へと持ち込めば、非文明的であるばかりでなく、中国観客の国際的イメージと中日両国人民の友好を損なうことにもなる。




 と言い切っている点はこれまた3年前の『中国青年報』より踏み込んでいる観があり、胡錦涛の肉声を耳にしているようでもあります。

 さらに注目すべきは、



 2004年、中国で開催されたサッカーアジアカップにおいて、サポーターが日本を中傷するプラカードを掲げ、「抗日」スローガンを叫んだために、中国は日本とアジアサッカー連盟高官から批判を受けた。




 とはっきり書いてある点です。事件当時、中国外交部は、

「一部の少数の中国サポーターの振る舞いは目にしたくないものだ」

 としつつも、

「日本のメディアも騒ぎすぎる」

 と逆ギレしていたのですが、この記事のこの一節によって、当時の中国人観客の振る舞いが「悪事」だとはっきり認定されています。地味ながら、これはまことに大きな変化といわなければなりません。

 これまた2004年秋の政権発足とほぼ同時に反日サイト潰しをやった胡錦涛の対日姿勢や、北京五輪関係者の意向を反映した内容なのでしょうけど、ここまで言い切ったということ、そして『中国青年報』ではなく新華社の配信記事でそれが行われたという点に、胡錦涛による主要メディア掌握が相当進行していることがみてとれるように思います。

 これはまた、胡錦涛が江沢民の始めた「愛国主義教育」から「反日風味」を薄めようとしていることともリンクします。

 ●「鬼畜米英」から「ぜいたくは敵だ」へ。愛国主義教育にも胡錦涛色?(2006/10/22)

 リンクしてはいますけど、それによって江沢民型の「反日風味満点の愛国主義教育」を受けた中国人、当ブログのいう「亡国の世代」の「反日」属性が弱まるかどうかは疑問です。……と水をぶっかけておきますか。

 その「亡国の世代」もそろそろ結婚し子供を持つ年頃になっています。中国人の民度を退行させたという意味で「失われた十年」と呼ぶべき時期を経た現在、原状回復が可能かどうかは北京五輪をみてのお楽しみということにしましょう。

「『競技会場の日本チームに一体どのようにして向き合えばよいのか』だと?テメーで考えろこの糞畜生どもが」

 と私も激語してこのエントリーを締めることにします。……あ、最後の最後に一言。もし私なら掲げる横断幕は、

「ARIGATO 謝謝 江澤民」

 これ以外には考えられません(笑)。なぜかってあなた、馬鹿は死ななきゃ治らないなどと申しますけれども、隣国がその馬鹿を躍起になって大量生産しているというのは、日本にとって誠にもって慶事というべきではないかと……。




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 えー馬鹿は死ななきゃ治らないなどと申しますけれども、隣国がその馬鹿を躍起になって大量生産しているというのは、日本にとって誠にもって慶事というべきではないかと愚考する次第でございます。もちろん馬鹿ゆえに何を仕出かすかわかりませんから、その備えを十分にしなければなりません。備えをしっかりと固めた上で、対岸から高見の馬鹿見物。これまた楽しからずやでございます。

 ……という訳で、今回は先日のエントリーのコメント欄で「実相実」さんが寄せて頂いたネタについて取り組むことにします。私は中国国内メディアからの記事漁りの過程で「論争」を知って「やれやれ」と思ったのですが、日本でも詳報されているとは迂闊にも知りませんでした。「実相実」さん、ナイスフォローありがとうございます。

 それではまず日本での報道から。



 ●日本チームの「謝謝」に中国で論争(Sponichi Anex 2007/09/21/17:40)
 http://www.sponichi.co.jp/soccer/flash/KFullFlash20070921028.html

 日本の女子サッカーチームが中国で観客からブーイングを受けたにもかかわらず、試合後に「謝謝」(シエシエ)と中国への感謝を表した横断幕を掲げたことに対し、同国内では「勇気に感動した。見習うべきだ」と称賛する声と「過去の侵略を認めない日本の宣伝活動に感動するなど中国の恥だ」と反発する声が交錯、メディアも巻き込んだ論争に発展している。

 日本チームが横断幕を掲げたのは、17日に杭州で行われた女子ワールドカップ(W杯)の対ドイツ戦。ドイツサポーターを装った圧倒的多数の中国人観客からブーイングを浴びる中、0―2で敗れたが、選手は試合後に観客席前で整列。「ARIGATO 謝謝 CHINA」と書かれた横断幕を広げ、深々とおじぎした。

 翌18日、四川省の成都商報(電子版)が写真付きで伝えると、話題は全国に飛び火し、主要サイトには「最大の敗者は日本選手でなく(マナーの悪い)観客だ」(中国網)と反省を促す書き込みが。しかし「日本に手心を加えるな」「ブーイングは当然」との反論も相次ぎ、一部ではののしり合いも起きている。

 こうした中で20日付の週刊紙「国際先駆導報」は、日中の歴史問題の重要性を認めつつも「中国には未来志向で健康的な大国意識が必要」と強調。歴史問題をスポーツに絡める態度をやんわりといさめた。

 中国では2004年のサッカーのアジア・カップ対日本戦で観客が反日騒ぎを起こした経緯があり、北京五輪では日本選手団を冷静に迎えられるかが焦点になっている。 (共同)




「北京五輪では日本選手団を冷静に迎えられるかが焦点になっている」

 という最後の一節が実に印象的です。「ネタだろそれ?」と言いたいところですが、これがシャレやオチではなくマジなのですから深刻としかいいようがありません。

 真面目な話、金メダルをとった日本選手が日の丸を背に会場をウイニング・ランしたら暴動になるかも。暴動になればそれが世界中にテレビ中継されて中国は開催国のメンツ丸潰れ。中国の大好きな「国恥日」がまたひとつ増えることになります(笑)。日本選手の皆さんは、さりげなく巧みにオーディエンスを挑発してほしいものです。

 いや、特に何かをする必要はないのです。競技に全力を尽くしてメダルを獲得して頂ければそれで十分。君が代が会場に流れるだけで観客はヒートアップしてくれるでしょうから(笑)。金メダルでなくても、中国選手を押しのけて銀メダルや銅メダルを獲得、というシチュならもうそれだけで険悪な空気となるでしょう。

 ちなみに、上の報道の文中にある『国際先駆導報』の記事で横断幕の写真をみることができます。

 ●ブーイングとお辞儀の対決、「中国ありがとう」という日本の寛容に学べ(新華網 2007/09/20/10:39)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-09/20/content_6759277.htm

 この記事自体が、



 日本と聞くとすぐ脊髄反射する奴は糞。

 日本の「すごさ」を冷静に認めるべし。

 ブーイングで「戦闘」したり「復仇」したりしている連中は永遠に「すごくない」。

 連中はブーイングが愛国の表明になると本気で考えているのだろうか。




 といった意味の言葉をあちこちに散りばめた極上燃料です(笑)。同時に、



 1994年の広島でのアジア大会の閉幕式のあと、6万人の観客が去った会場にはゴミひとつ落ちていなかった。

 100kmに及ぶ大渋滞に出くわしても騒ぐことなく、日本人は誰もが整然と秩序を守った。

 第二次大戦後、日本人は廃墟となった国土を瞬く間に経済先進国へと変貌させた。




 といった日本の「すごさ」の実例をいくつか挙げて、サッカー女子日本代表にブーイングで報いた観客とそれに同調する向きを真っ向からぶった斬っている極めて戦闘的な内容。「やんわりといさめた」なんてレベルじゃありません(笑)。

「中国では2004年のサッカーのアジア・カップ対日本戦で観客が反日騒ぎを起こした経緯があり」

 と前掲記事にはありますが、この4年間で全く進歩はみられなかったということですね。……いや日本相手だけでなく、中国人観客は国際試合で醜態をさらしています。それから観客ではなく、観光客としても中国人はあちこちで顰蹙を買っているようです。

 ●愛国主義教育でオトナになった「亡国の世代」面目躍如。・上(2006/12/08)

 ●愛国主義教育でオトナになった「亡国の世代」面目躍如。・下(2006/12/08)

 中国当局もこの観客のマナーの悪さを懸念しているようですが、そういう愚民を量産してきたのは誰か?と問い詰められたら答に窮することでしょう。

 ●「北京五輪、最大の課題は中国人観客のマナー」ってお前が言うな!(2007/08/09)

 ――――

 まあ4年間でどうなるものでもないでしょう。何たってあなた、焼け野原から立ち上がった日本が復興して、高速道路網を整備したり新幹線を走らせたりしている時期にですよ、中国では紅衛兵が赤い手帳を振りかざして「毛主席万歳」を唱えたり、「革命無罪,造反有理」と叫びながら誰彼を吊るし上げては人民裁判を開いたりリンチよろしく撲殺したりしていたのですから(文化大革命)。

 昔流にいうと、「地平線」(果てしない)かつ「メダカ」(すくいようのない)ほどの「民度の差」なるものが日本など先進国と中国の間にはあるようです。

 でもね、と私はちょっと考えてみました。私が上海に留学していた1980年代末期だったら、こういうことが起きただろうか。……と考えてみると、どうもリアリティがないのです。

 中国チームが格下の相手に負けて、その不甲斐なさに観客が暴徒と化すことはあるかも知れませんし、実際にそういう事件は発生しています。でも日本が相手だから、日本vs中国であろうと日本vs第三国であろうと試合前の国歌吹奏ではブーイングで「君が代」を封殺して、試合中は一方的に日本の相手チームを応援して……なんて節操のない出来事が起こるような空気は当時の中国にはありませんでした。

 もしそういうことをする観客がいれば、

「みっともない」
「恥を知れ」
「スポーツと歴史問題を結びつけるな」

 という反応がマスコミからも庶民からも出てきたと思います。当時の中国人には、

「中国は後れている。このままでは世界の潮流から取り残される」

 という危機感があり、後れていることを自覚している分だけ謙虚だったり素直だったり、また日本をどうこういう以前に「後れる」原因をもたらした中国共産党をまず呪詛していました。ちなみに、その危機感から生まれたのが1989年の民主化運動であり、それに対し当局が「中共人」という立場を「中国人」より優先させて、流血の弾圧を以て報いたのが天安門事件でした。

 当時,私が親しく付き合っていた中国人大学生や上海の一般市民をタイムマシンで現代に連れてきて「ブーイング」の光景をみせたら、みんな腰を抜かすことでしょう。……てほどの大袈裟なリアクションではなくても、眉をひそめることは間違いないと思います。


「下」に続く)



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 現金ですねえ全く。まあ三千年もの時間をかけて磨き上げられたその面の皮の厚さが中国人の持ち味なんでしょうけど。

 いやなに祝電の話です。自民党総裁となった福田康夫氏が昨日(9月25日)、国会で首相に選出されました。

 するってーと間髪入れずに、中国の温家宝・首相から福田首相に祝電が届きました。外相に就任した高村正彦氏には楊潔チ・外交部長からの祝電が。

 ●「新華網」(2007/09/25/20:08)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-09/25/content_6791480.htm

 おかしいですねえ。2005年9月の衆院選で自民党が圧勝し、小泉純一郎・首相(当時)が再選されたときには祝電を寄越さなかったじゃないですか。それもちゃんと理由をつけて。当時の外交部報道官がちゃんと対応しています。



 ●小泉圧勝に祝電なし。「だって日本の内政問題だし」(笑)(2005/09/14)

 記者:先週末に日本の小泉首相が再選を果たしたが、中国側はこれについて祝意を示さないのか?

 秦剛:終わったばかりの日本の衆院選は日本の内政問題だ。私はこの問題について評論する立場にはない。強調しておきたいのは、中国政府は中日友好関係を発展させていくという……
(以下原則論)。

 記者:今回の衆院選は自民党の圧勝だった。日本国民の多くが小泉首相を支持していることの現れだと思うが、中国側はこれをどうみているのか?

 秦剛:日本の衆院選は日本の内政問題だ。日本の有権者がどの政党、どの指導者に投票したかは日本国民が自ら決めること。どの政党、どの指導者が政権を運営することになっても、中日関係が改善され発展することを我々は望んでいる。

 記者:小泉首相は対中関係において色々批判されているが、今回小泉首相が再任を果たしたことで、中日関係はどのような発展をたどると思うか?また、中国は小泉首相に祝電を贈る用意はないのか?

 秦剛:中国側としては……
(以下原則論。祝電に関する質問はスルー)。



 【※追記】コメント欄での御指摘により、中国政府は9月22日になって小泉首相に祝電を送ったことが判明しました。訂正してお詫び申し上げます。それにしても福田首相には就任当日に即祝電なのに、小泉首相には1週間以上のタイムラグというのは、中国側に何か不都合でもあったのでしょうか?(笑)

 うーん。衆院選は「日本の内政問題」だけど、自民党総裁選はそうではない、ということでしょうか?麻生太郎・外相が誕生したとき、当時の中国外相だったあの子泣きジジイの李肇星が祝電を打った、という話を聞いた記憶もありません。

 やっぱあれですか、ポスト小泉を争う自民党総裁選に出馬しないことを表明する以前、中共系メディアが一時期「福田のフックだ」を盛んに持ち上げていたくらいですから、首相就任となれば願ったりかなったりという浮かれ気分で、つい「日本の内政問題」という枠を取っ払ってしまったとか。

 党三役の顔ぶれをみれば温家宝が舞い上がるのも理解できますけどね。「しっかり責任を負う大国」を自認するのであれば、そうコロコロと原則を変えたりはしないでしょうに。

 「中華」(世界の中心)を自称したり三千年の歴史を自慢したり「寛容な民族」と照れもなく自らを誇ってみたり、それから大国崛起だ平和的台頭だなどと騒いだりしている割に、実は懐が狭いんですよね。特に日本に対しては理性的な対応ができないようで。何事も感情論に走った物言いが目につくような気がします。私個人の感想ですけど。

 ついでに温家宝が発した祝電の内容を紹介しておきましょう。適当な翻訳ですからアテにしちゃいけませんよ。



 中日両国は一衣帯水の友好的隣国だ。両国の平和的共存、世代を超えた友好、お互いを利する協力、そして共同発展は、両国及び両国人民の根本的利益に合致し、またこの地域の平和、安定と繁栄をも利するものだ。中国政府はこれまでと同じように中日友好政策を堅持する。また全面的な中日戦略互恵関係を構築して、両国関係を長期的に健全かつ安定したものにするための努力を日本と共に行っていきたいと願っている。




 美辞麗句が並んでいます。中共政権が美辞麗句を並べたときは「中共語」として翻訳しなければなりません。くどいようですが、私なりの解釈を改めて以下に並べておきます。



 ●【温家宝来日】言いたい放題やりたい放題!それでも日本は拍手喝采。orz(2007/04/13)

  野暮を承知で申し上げますが、中共政権が言うところの「対話」「協議」とは
「中共の言い分の押しつけ」「中共からの命令伝達」であり、「協力」とは「中共への奉仕」ということで、「平和」とは「中共による制圧下での非戦時状態」という意味。

 「友好」とは
「中共に従順」です。「友好団体」「友好人士」なんて中共に呼ばれている連中の顔ぶれを思い浮かべればわかるでしょう。中共のいう「中日友好」とは「日本が中共に従順な国であること」という意味です。「孫子の代まで友好を」なんて冗談じゃありません。

 ちなみに「交流」とは
「中共の価値観の押しつけ&軽度の洗脳」。軽度の洗脳とは、

「中国はいい国だ」
「日本は昔なんてひどいことを中国と中国人にしてしまったのだろう。反省しないと」

 という気持ちにさせることです。

 それをわかっている人が少なすぎますね。政治家も国民もです。ざっくりと言えば、30歳以下だと天安門事件(1989年)をリアルタイムで認識していないでしょう。中共が牙をむいたシーン、流血・粛清を伴う常軌を逸した政治運動といった中共本来の得意技を「体験」していないのです。
「中共政権=かなりオシャレであか抜けた北朝鮮」ということに気付いていません。

 むろん、「対話」「協議」「協力」「友好」「平和」「交流」といった「中共語」も正確に翻訳できない訳で。



 嫌な局面になりましたねえ。何が嫌って、温家宝が嬉しそうにしているのが嫌。温家宝を喜ばせている日本の政界も嫌。それでも自分の投じた一票がほんのほんの少しだけでも反映された結果なのですから、自分にも責任があります。

 ま、こうやって喜んだり苦々しく思ったりすることもできない中国国民(香港・マカオ含む)に比べれば日本人は遥かに恵まれているんだけどさ。……と考えても慰めにならないし。orz

 本稿とは関係ありませんけど、展示会の取材で来日した仕事仲間や古馴染みの編集者たちと一夕を共にした際、

「お前ら一国家二制度って知ってるか?『国家』っていうのは中共一党独裁政権のことだ。『二制度』ってのは中国本土型奴隷制と香港・マカオ型奴隷制。そうだろ?」

 と言ったら香港人たちに大ウケしました。お前ら笑ってる場合かよー。

 ……てオチにならないですよね。ああ嫌だ嫌だ。




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 中共の党大会目前ということでいよいよ本格的に様々な人事情報が飛び交い始めた観がありますが、今回は前々回のコメント欄で「参謀本部作戦課」さんから頂戴したお題をもとに、発足以来満3年になろうとする胡錦涛政権の歩みを振り返ってみようと思います。



 ●ご教授下さい(参謀本部作戦課) 2007-09-22 11:49:01

 (前略)
さて、胡組と江組の抗争についてですが、前々からひとつ大きな疑問があります。胡組長や温若頭も叩けば決して埃の出ない身体ではないはずです。特に温若頭の放蕩息子の評判は皆様も耳にされたことがあると思います。

 江組は何故ここに手を付けないのでしょうか。

 今となれば土俵際、俵一本を残すところで、その余力さえないとの解釈も成り立つのですが、この二三年というスタンスで考えれば不思議の一言に尽きます。それとも家族には手を出さないなどという床しき不文律でもあるのでしょうか(笑)。

 軽いジャブは何発も放っているようですが、足腰に確実に効くボデーブローを打たないのは何故でしょうか。往時のトウ組のように権力を完全に掌握していれば、攻め入る僅かの隙も無いとの解釈が成りたつのですが、胡組はまだまだその域には達っしてはいないと思います。
(後略)



 人事のことは私にはわかりません。消息筋を持っていませんし、娯楽でやっていることですから情報網を張り巡らせるほどの肩入れをするつもりもありません。北京や香港在住ならともかく、東京にどっかり座り込んでいるのも現地感覚という手ざわりを得られないという点で不便です。

 人事はやはり内部事情や裏情報を掴んでいないと見えにくいものです。例えば香港在住なら、政論誌の編集者と仲良くなっておけばその種の情報を得ることは容易です。消息筋はそうした数々の情報についての信憑性を確認する存在、というように私は位置づけています。……というより、以前香港在住時に趣味で中国観察をしていた時期はそういう情報網を勝手に構築していました。

 中国国内メディアという「当局発表」だけに頼ってみるとすれば、江沢民は2004年秋の「四中全会」で党中央軍事委員会主席の座を胡錦涛に譲って完全引退した際、当時は大番頭格だった曽慶紅を同委のメンバーに送り込めなかった時点で基本的に終わっています。

「腹心を党中央軍事委に送り込めない=甲斐性なし=院政が敷ける実力がない」

 ということです。

 ――――

 そもそも江沢民の求心力によって成立する「江沢民派」というものが存在したのかすら怪しいものです。むしろ利権に群がる形で成立していた地方保護主義の最大勢力=「上海閥」というのが実情ではなかったかと思います。

 「上海閥」であれば、同腹である他の地方保護主義勢力を糾合することで相当な抵抗勢力たり得ることができます。さらに軍内部の一部勢力と連携が成立すればモアベター。

 そういうモアベターな状況下で対立の構図が浮上したのが、2005年春の「反日騒動」とその直後に起きた「呉儀ドタキャン事件」です。江沢民がこれにどれほど関与していたかは不明ですが、胡錦涛政権にとって最も危機的な段階だったと思います。

 私見をいえば、これは胡錦涛政権が発足直後である2004年秋の対日外交においてエラー続きで外野席からダメ出しをされた上に、

 ●日本の新防衛大綱制定
 ●李登輝・前台湾総統の来日
 ●尖閣灯台の日本政府管轄化
 ●日米両国が安保「2+2」で台湾問題に日米が介入することを示唆

 といった出来事がむらがり起こったことで軍内部の危機感が高まり、折から浮上していた日本の歴史教科書と国連安保理常連理事国入り問題を好機とばかりに高々と掲げるとともに反日世論を煽り立て、アンチ胡錦涛諸派が胡錦涛政権に戦いを挑んだものと思います。

 ――――

 一方の胡錦涛側は江沢民引退を現出させた最大の功労者と思える支持基盤・党元老連との関係が、趙紫陽・元総書記の死去(2005年1月)に伴う生前の業績評価をめぐってやや疎遠になっていたこともあり、この政争では防戦一方の展開となりました。局地戦で勝利を収めても、数日後には相手に優勢をひっくり返されるといった苦しい展開です。

 ところが幸いというべきか、市民レベルでの「反日」が予想以上に盛り上がり、週末ごとに反日デモが全国各地で開催されるような状況となったことで、「反日」が「反政府」運動に転化する可能性が出てきました。放っておいても都市暴動・農村暴動の頻発している社会状況です。胡錦涛側もアンチ胡錦涛諸派もビビッてしまい、慌てて手打ちをして一緒になって全力で火消しに走り、ねじ伏せるようにして「反日騒動」を終息させました。

 ただ軍内部にはそれでは収まらない勢力があったのでしょう。あるいは対外強硬派によるクーデター計画くらいは練られていたかも知れません。ともかく軍内部が割れていたことは、同年の建軍節(8月1日)に人民解放軍の機関紙『解放軍報』が掲載するいわゆる「八一社説」において、

「党中央の絶対的指導」

 といった表現が17回も出てくることでわりかます(前年の2004年はわずか4回)。要するに軍人は党中央に従順であれ、という強いメッセージを発する必要があるほど一枚岩でない局面にあった、ということでしょう。

 ともあれ緊迫した状況を収拾するために、胡錦涛が自ら呼び戻す形で「呉儀ドタキャン事件」が起きています。これは小泉純一郎・首相(当時)との会談を回避することで、靖国神社参拝問題などに関する小泉首相の発言によって日本側にさらにポイントを稼がせる(=軍部やアンチ胡錦涛諸派を勢いづかせる)ことを防いだのではないかと思います。

 ――――

 このあと、2005年10月に小泉首相が靖国神社を参拝し、それに中国が内政干渉を行ったことで日中関係が「本音を言い合える関係」(笑)へと冷え込みます。反日騒動が再発しても不思議ではない状況でした。

 が、そうならなかったのは胡錦涛もアンチ胡錦涛側も反日世論が盛り上がった挙げ句、その矛先が中共政権へと向かうことを恐れて民間レベルの「反日」に力づくで対処したからでしょう。

 どういうことかといえば、胡錦涛側もアンチ胡錦涛サイドも「中国人」である以前に「中共人」であり、中共一党独裁政権が存在しているから現在のような様々な特権を享受できるのだ、という単純な理屈を同年春の「反日騒動」でよくよく学習したからだと思います。

 そしてこの時期(2005年10月末~11月末)、「反日」とは別の次元で、胡錦涛政権と軍主流派の間に同盟ともいえる連携が成立します。何がどうなったのかはわかりませんが、軍人事で胡錦涛支持派を抜擢する一方で対外強硬派を干したり、汚職嫌疑で反対派の佐官・将官を潰したり、潜水艦沈没など軍務遂行中に発生した不祥事にかこつけて軍高官を更迭、といったことは記事などで確認できます。

 そして12月に入ってから突如、『解放軍報』が胡錦涛礼賛の記事を洪水のように連日掲載するという異様な状況が現出します。

 胡錦涛が軍部掌握を進めたのか、影響力の拡大(政治への容喙)を狙う制服組が胡錦涛を担いだのか、あるいはまた別の事態だったのかは私にはわかりません。ともあれこのキャンペーンを経て2006年に入ると、軍主流派に推戴された胡錦涛政権はアンチ諸派からのジャブを何度か喰らいつつも、それでよろめくことなく着実に政権基盤を固め、優位を確立していきます。

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 それを内外に強く印象づけた決定的な出来事が、上海市のトップだった陳良宇・上海市党書記(当時)を汚職嫌疑で失脚させたことでしょう。胡錦涛にとって最大の抵抗勢力だった「上海閥」の次世代の有力者を葬ったことで、「上海閥」そのものを潰滅に追い込んだのです。

 ……いや、現時点では潰滅してはいないのですが、お世継ぎのいない大名が改易となるのと同様に、次世代のリーダーを失った「上海閥」は世代交代とともに無力化することを宿命づけられたのです。

 それから1年。現在の状況は皆さん御存知の通り、胡錦涛に近い人物が地方のトップや政権中枢のポストへと抜擢される動きが露骨なまでに続いています。

 そういう流れで10月15日に「十七大」(第17回党大会)が開幕するのですが、冒頭に書いたように、人事ばかりは私にはわかりません。

 過去の党大会を振り返っていえることは、いかに胡錦涛が優位を確保しているとはいえ、党中央政治局のメンバー、さらに最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の顔ぶれについては、派閥力学だけでなく政治家個人個人の土壇場における「人間力」にも左右されるので、意外な結果、つまり予想されていたより大人しいバランス人事に落ち着くことが多い、ということです。

 例えば陳良宇とその眷属をお縄にし、さらに汚職事件の全容解明のため党中央規律検査委員会の特別チームなど「進駐軍」を上海に送り込んで、「上海閥」を事実上陥落させた胡錦涛ではありますが、陳良宇の後釜、つまり上海市のトップ(上海市党書記)に就任したのは「団派」など胡錦涛系列ではなく、二世組である「太子党」のホープ・習近平でした。

 これは、胡錦涛直系の若手を抜擢すれば上海側の感情を刺激し、無用な摩擦が生じる可能性があったこと、また胡錦涛系以外で陳良宇潰しに働いた閥外の人物(たぶん曽慶紅)の意を汲んだ論功行賞的な一面もある人事かと思われます。

 同じような形の人事が「十七大」でも行われる可能性があります。……というより、むしろ過去の党大会では往々にしてそういう流れに落ち着いている、というべきかも知れません。

 ――――

 つい最近、私にとっては意外な出来事が起こりました。党中央政治局が9月17日の会議で、「十七大」に提出される党章修正案の内容を決めた、というニュースです。

 意外なのは、この「修正案」に、胡錦涛がかねてから提唱している「科学的発展観」と「和諧社会」(調和のとれた社会)が織り込まれる模様、という点です。胡錦涛政権は発足してまだ3年。ですから胡錦涛の指導理論はいずれ党章に盛り込まれることになるにせよ、それはもっと内容を練り上げ煮詰めた上でのことで、たぶん5年後の「十八大」で実現するのではないか、と私は考えていました。

 「科学的発展観」というのは、一言でいえば「効率重視の成長路線を」というもので、江沢民時代のGDP成長率信仰に対するアンチテーゼといってもいいでしょう。

 GDP成長率をモノサシに幹部の業績評価を行うと、成長率を高めることが至上課題となり、無駄・不必要・非効率な乱開発が行われやすくなります。誰も使わない建物や誰も通らない道路を建設しても、GDP成長率を高めることになるからです。乱開発の過程では,農地の強制収用や環境汚染が往々にして深刻化することにもなります。

 そういうGDP成長率信仰を排除し、無駄・不必要・非効率な乱開発を戒め、成長率よりも効率重視の経済発展を志向するのが「科学的発展観」です。ここでいう「効率重視」には環境汚染に対する配慮も含まれます。

 一方「和諧社会」とは、現在中国社会に存在する様々な深刻な格差を極力是正し、「調和のとれた社会」を実現しようというもの。「様々な深刻な格差」とは沿海部vs内陸部、都市vs農村、党幹部vs庶民といった関係において存在する収入や生活環境などの大きな開きのことで、他にも業種間格差や出稼ぎ農民への差別、また失業者や失地農民、それに訴訟などで「官」による不公正の犠牲となった庶民をも加えていいでしょう。

 この「科学的発展観」と「和諧社会」は胡錦涛オリジナルなのですが、当ブログでしばしば指摘しているように、こうした美辞麗句はつまるところ、それを声高に唱えなければならないほど中国社会が「非効率」と「不調和」な段階に入っていることを示すものです。

 胡錦涛オリジナルの路線とはいえ、江沢民からバトンを受けた者が胡錦涛でなくてもやはり選択肢がないため、似たような内容の政策を掲げるしかなかっただろうと私は思います。要するに胡錦涛は「ババを引いた」訳です。

 ――――

 それはともかく、この「科学的発展観」と「和諧社会」が今度の「十七大」で党章に織り込まれるとすれば、それは党中央における胡錦涛の指導力が「仕切れる」段階にまで強化されていることを示すものともいえますから、注目すべき事態です。

 例えば「科学的発展観」において環境保護の指標となる「緑色GDP」なるものが未だ算出不能であるように、この胡錦涛オリジナル路線はまだ十分に成熟した指導理論とはなっていません。それでも拙速ながら党章に織り込むとすれば、上述したように党中央において党章に織り込むことを認めさせるだけの胡錦涛の指導力の高まりが考えられます。

 ただ、それだけではないでしょう。これまた前述したように、拙速ながらも「科学的発展観」と「和諧社会」を党章に盛らねばならないほど、中国社会の「非効率」と「不調和」が来るところまで来てしまっているという認識が党中央にはあるのではないかと思います。

 さらに、「非効率」と「不調和」の推進者がいまなお存在していることを念頭に置いている、ということも考えられます。「上海閥」を潰し、直轄市・省・自治区といった各地方のトップに胡錦涛は自らの子分をどんどん送り込んでいますが、それだけで「ともあれ地元優先」という伝統的な地方保護主義を根絶することはできません。

 その証拠に、今年の経済成長率は昨年同様、中央の定めた目標値(8%前後)を大きく上回り、現時点ですでに通年での2ケタ成長が確実視されています。毎月、あるいは四半期ごとの経済統計が発表されるたびに、

「マクロコントロールの強化を」

 という声がお題目のように唱えられるのですが、要するに中央の威令が各地方勢力に対し十分に及んでいないことの表れです。胡錦涛系のホープが地方の指導者に就任しようと、そのホープ君がその地方をちゃんと仕切り、中央に服せしめられるかどうかは別問題。

 そして経済統計から察するに、実際にはどうやら多くのホープ君が十分に管轄下の地方勢力を仕切れておらず、「非効率」と「不調和」の推進者を跋扈させているようにみえます。「科学的発展観」と「和諧社会」を党章へ織り込むことが実現するとすれば、そこには「明」と「暗」の要因が作用しているとみるべきではないかと思います。

 ――――

 最後に「参謀本部作戦課」さんからの御質問、「なぜ江沢民は胡錦涛や温家宝の子息の乱行に手をつけないのか」ということについて。

 あるいは御指摘のように「家族には手を出さないなどという床しき不文律」が中共にはあるのかも知れませんが、真偽は不明なのでそれは別として話を進めます。

 第一の理由は、政敵の家族に手をつけるということは、相手方からも同じことをされるのを覚悟しなければなりません。そうなると江沢民の子供たちも色々やっているので江沢民は自らの晩節を汚すことになります。

 第二に、政敵の家族に手を出すというのは上述したように同じ手でやり返される可能性がありますから、圧倒的な優位を確立していない限り使えない必殺技です。この点、院政を敷く甲斐性すらない江沢民にはできない相談ということになるでしょう。

 トウ小平は1992年の南方視察で政治勢力としての保守派を潰滅に追い込み政治的優位を確立させましたが、それでもその年の秋に開かれた「十四大」(第14回党大会)では、やはりある程度のバランス人事に妥協せざるを得ませんでした。

 現在の胡錦涛も政治勢力としては江沢民を圧倒していますが、「上海閥」のお世継ぎに予定されていた陳良宇を斬るのが精一杯。いや精一杯どころか、陳良宇が失脚したこと自体が驚きをもって内外に受け止められました。「そこまでやれたのか」という衝撃です。

 カリスマ不在の集団指導体制下では、これでもかなり上出来といえるのではないかと思います。

 回答になっているかどうかわかりませんけど、私の見方は上の通りです。




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 前回の続報です。



 ●陳炳徳・解放軍総参謀長がウガンダ国防軍司令と会見(新浪網 2007/09/21/20:27)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-09-21/202713944714.shtml



 という何の変哲もない短信から、人民解放軍の総参謀長という要職がそれまでの梁光烈から陳炳徳(総装備部部長)に替わった、ということを当ブログにて報じました。



 異動が私の見落としでなければ(異動がこれまで公式に発表されていなければ)、きょう9月22日の香港各紙がこのネタを逃すことはないでしょう。その際に梁光烈・前総参謀長と陳炳徳・現総参謀長、そしてこの2人と胡錦涛の関係も解説してくれるかも知れません。




 とも書きましたが、その予想通り『明報』と『星島日報』がこのネタに喰いついてくれました。嬉しいですねえ。両紙ともさすがに解説つきです。

 ●『明報』(2007/09/22)
 http://www.mingpaonews.com/20070922/cab1.htm

 ●星島日報(2007/09/22)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0922eo02.html

 それによると、人民解放軍を統括する中央軍事委員会には「総××部」という機関が4つあるそうです。総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部のことで、いずれも戦略・戦術やイデオロギー統括、兵站関連や装備担当といった実務の元締めに当たります。

 この中で一番格上なのが総参謀部。そのトップである総参謀長にこれまで総装備部長だった陳炳徳が昇格したことが、公式には発表されていないものの、前掲の新華社電における記事文中の肩書きから確認された訳です。

 で、『明報』と『星島日報』の解説によると、これまで総参謀長だった梁光烈は、当年72歳で引退するとみられる曹剛川・国防部長(国防相)の後釜に座ることが内定している模様とのこと。これも昇格人事です。ただし曹剛川はやはり9月21日に国防部長の肩書きで訪中したチャドの大統領と会見していますから、国防部長人事はまだ行われていないということになります。

 ――――

 世代交代ということになるのでしょうか。『星島日報』は新たな顔ぶれについて、

 ●国防部長:梁光烈

 ●総参謀長:陳炳徳
 ●総政治部主任:李繼耐
 ●総後勤部長:廖錫龍
 ●総装備部長:常萬全

 ●許其亮(空軍司令員)
 ●吳勝利(海軍司令員)
 ●靖志遠(二砲部隊司令員)

 との予測を行っています。「二砲部隊」とは「第二砲兵」と称される戦略ミサイル部隊のこと。陸海空の三軍からやや超然としたポジショニングであるところがミソです。衛星破壊ミサイル実験をやったのがこの部門でしょう。現在では大気圏外の、つまり人工衛星など宇宙空間における軍事も担当しているフシがあります。

 まあ元々中国の宇宙事業は軍事と直結してもいます。それを象徴する一例は、ロケット発射基地を海南島に建設するというニュース。

 ●「新華網」(2007/09/22/19:47)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-09/22/content_6772700.htm

 この記事の冒頭に、

「国務院、中央軍事委員会の批准を経て、わが国は海南省文昌市に新たなロケット発射場を建設することになった」

 とあります。国務院とは中央政府のことですが、これに加えて中央軍事委員会の認可、つまり軍部の承認も手続き上必要ということになっている訳です。

 ――――

 冒頭の話題に戻りますと、香港では『蘋果日報』『東方日報』『太陽報』の3紙が今日(9月23日)になって「総参謀長人事」を報じています。一日遅れです。素人がやっている当ブログの後になってしまってはいただけません。私はちょっとだけエッヘンです。

 それはともかく遅れた恥ずかしさもあるのでしょうか、3紙はいずれも短信で片付けています。『東方日報』は記事文末に、

「総合報道」

 と付されています。「総合外電報道」だと複数の外電からまとめた詰め合わせセットという意味なのですが、「総合報道」というのは往々にして他紙のネタをパクった、というニュアンスです。

 一方、やはり遅れをとった最大手紙『蘋果日報』は臆面もなく報道者を、

「本報記者」(本紙記者)

 としています。この恥知らずが、と言いたいところですがコソーリ活動で世話になっているのでやめておきましょう。……というより、『蘋果日報』の記事には一応オリジナル部分があるのです。

「66歳の彼(陳炳徳)は軍部における胡錦涛の直系と目されている。今回総参謀長に就任したことは、胡錦涛が軍部をすでに掌握していることを示している」

 と、短文ながらも留意しておきたくなる内容です。真偽は別ですし「博訊網」あたりからパクったような気もしないでもありませんが、とりあえずGJ!ということにしておきましょう。毒林檎クン、いつもありがとねー。




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 ご無沙汰致しまして申し訳ありません。とりあえず生きております。

 ここ2週間ばかりは色々あって全く身動きがとれませんでした。記事漁りは欠かしていませんけど、最近4~5日に拾った分にはまだ十分目を通していません。木曜日(9月20日)に「東京ゲームショウ」(TGS)を取材して、記事を書いて、写真を送って、ようやくひと山越えた、といったところです。

 私はゲーム雑誌の編集者とかではなくコラム屋(副業)なので各ブースを回ってプレスキットを片っ端から集めて……なんてことをする必要はないので体力的には楽です。

 本業のために流れを把握しておく必要はありますけど、取引先は広報とか宣伝部とかではなく法務・版権関係や海外営業部門が中心なので、TGSには毎年半ば義理で顔を出しているようなものです。副業のために会場に行って全体の空気を感じればそれで十分。あとは旧知の関係者と挨拶したり仕事絡みの密議に及んだりするだけ。

 で、香港から編集者どもが取材にやってきます。私は連中にとってガイジンですからどこか「局外中立」という印象があるのでしょう。コラムの供給先もそのライバル誌の連中も挨拶にきてくれます。もう10年書いているので、若手になると私のコラムを読んで育ちましたなんて言う連中もいます。虚名というのもありがたいものです。

 ただし困ることがひとつ。連中から放置されない分だけ良しとすべきなのですが、毎年閉口するのは連中が揃いも揃って月餅を手土産に会いに来ることです。

 そりゃ来週は中秋節で時節柄無難な菓子折りということになりますけど、正直なところあまり私の口に合うものではありませんし、月餅1個でも結構重い食べ物ですから始末に困ります。

 香港だと東海堂の月餅や九龍酒店の洋風月餅は美味でいいんですけどねえ。どうせ香港から菓子折りを持ってくるなら、元朗名物の「老婆餅」にしてほしいです。あれは私の好物ですから。……まあ、こちらも毎年判を押したように人形町の老舗和菓子屋・寿堂の「黄金芋」を持たせてやるのでお互い様かも知れませんけど。

 ――――

 という訳で、元々急な仕事が入って青息吐息のところにTGSの取材や香港・台湾系の連中との応接が入り、さらに香港の岳母、つまり配偶者の母親と姉が唐突に東京見物にやって来ました。本日(土曜日)に帰国するのでそれまではこちらも応接に時間を割かざるを得ませんでした。

 とはいえこの岳母、日本が大好きで実に楽しいオバチャンです。私とは香港時代から「煙友・機友」(タバコ友達&テレビゲーム友達)なのでウマが合うのもいいです。パズルボブルとかテトリスだと何度対戦しても私は勝てません。毎日どちらかのゲームを1度クリアするまでは床に就かないそうなので筋金入りです(笑)。

 それから岳母は北京語が多少話せます。私は香港に長居しすぎて広東語が北京語の発音を崩してしまったという後悔もあるので広東語は耳にするだけでストレスになるのですが、岳母はこの点もクリアしているのでいよいよ好朋友なのです。さらに来日するとこれほど年甲斐もなく毎日大はしゃぎするという好ましい人間風景も眺めていて飽きることがありません。一緒にいるだけで楽しくなります。

 まあ、そうは言っても時間をとられるので当ブログの更新どころではありませんでした。誠に申し訳ございません。m(__)m

 これからは少しずつ更新頻度を高めていくことができるかと思います。3~4日もチナヲチから離れると時勢から取り残された気分になりますし、実際に進行している様々な事態をかなり遅れて追いかける格好になってしまいますけど、押さえるべきところを押さえていければ幸いです。

 ――――

 とりあえず肩ならしに1本。つい最近胡錦涛の側近である令計画・党中央弁公室副主任が主任に昇格するという注目すべき人事が発表されました。

 これは日本でも報じられましたし、香港紙では胡錦涛勢力の浸透という線でかなり大きな扱いだったのですが、中国国内メディアの多くは人事異動を事務的に伝えるという簡素な記事。主任だった王剛の転出先はまだ発表されていません。

 こういうごく短い簡潔な通達めいた発表なれど政治的に大きな意味を持つ、それであれこれ邪推する、といったあたりがチナヲチの醍醐味のひとつです(笑)。

 で、昨日(20日)にも似たようなことが。これは単に私が見落としていただけかも知れませんけど、人民解放軍の総参謀長が交代したようです。これも注目すべきニュース?といえるでしょう。

 記事自体は素っ気ないのです。大手ポータル「新浪網」が掲載したものですけど元は国営通信社・新華社の配信記事です。



 ●陳炳徳・解放軍総参謀長がウガンダ国防軍司令と会見(新浪網 2007/09/21/20:27)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-09-21/202713944714.shtml



 と、一見すると何の変哲ないニュースなのですが、……あれれ?と私は思いました。解放軍の総参謀長は梁光烈が務めていた筈なのです。

 陳炳徳は中央軍事委員会のメンバーで人民解放軍の総装備部・部長職だった筈。ごく最近まではそのポストでマスコミに登場していました。軍内部の序列も梁光烈の方が上。これは党元老の葬儀などで参列者が併記される際に確認できます。

 しかも、異常なのです。何がかといえば、この記事は「ウガンダ国防軍司令と会見」という何でもない内容だけでなく、なぜか本題とは関係ない梁光烈・前総参謀長の経歴が文末にたっぷりと付されています。おおおおおおおお。

 こういう記事はゾクゾクしますねえ(笑)。

「国営通信社の報道で××が××という肩書きをつけて登場したことから、人事異動が行われたことが確認された」

 というような共産圏報道の典型的なケースです。異動が私の見落としでなければ(異動がこれまで公式に発表されていなければ)、きょう9月22日の香港各紙がこのネタを逃すことはないでしょう。その際に梁光烈・前参謀総長と陳炳徳・現参謀長、そしてこの2人と胡錦涛の関係も解説してくれるかも知れません。

 5年に1度開催される中国共産党の一大政治イベント・第17回党大会を前に、にわかに色々な方面から様々な動きが出てざわついてきた印象です。何しろ世代交代や大型人事が行われる一方、イデオロギー面でも大方針が確立される場ですから、中国国内メディアに限ってもあちこちでの「蠢動」を十分透かしみることができます。

 党大会の開催までに、そこら辺を遅ればせながらおさらいしておく必要があります。他にも日中関係や台湾問題などでネタ満載。あちこちで暴動も起きているようですし。

 ともあれ今回は再起動宣言ということで。m(__)m




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 「緊急」と銘打ってありますが別に突発したものではなく、単に当ブログでの告知が遅れただけなんですけど。

 タイトル通り「友邦・台湾を国連へ!」とのデモ行進が明日(土曜日)午後、新宿で行われます。首都圏在住の方もそうでない方も、御時間に余裕があればふるってご参加下さい。

 「友邦」という意味で日の丸を持参しても、また「皇国興廃在此一戦」の縁起からZ旗を掲げての参加も歓迎とのこと。

 私は午前中から恩師との靖国デートがあるので時間的に微妙なのですが、間に合うようなら駆けつけるつもりです。



 ■9・15「友邦・台湾を国連へ!」アピール行進

 ●日 時:9月15日(土)14時 出陣式 14時半 デモ行進出発

 ●集 合:大久保公園(新宿区歌舞伎町二丁目43番)
      ※ハローワーク(職安)裏、都立大久保病院前

      【交通】JR「新宿駅」東口から徒歩7分。歌舞伎町方面へ。
          西武「新宿駅」から徒歩3分。
          都営大江戸線「東新宿駅」から徒歩4分。

 ●コース:大久保公園→職安通り→明治通り→甲州街道(新宿駅南口前)→新宿中央公園(所要時間:約1時間)

     ※プラカード、横断幕、拡声器等の持参歓迎!

 ●主 催:台湾の国連加盟を支持する日本国民の会

 ●【加盟団体】台湾出身戦没者慰霊の会、台湾研究フォーラム、維新政党新風東京都本部、維新政党新風埼玉県本部、
        日本李登輝友の会、日台交流同友会、政経調査会、國民新聞社、栃木県日台親善協会、日本青年協議会、
        高座日台交流の会、李登輝学校日本校友会、日本世論の会(9月13日現在)
         
        ※加盟団体募集中

 ●問合せ:03-5211-8838(日本李登輝友の会)
      090-4138-6397(永山英樹)
      koe@formosa.ne.jp (台湾の声編集部)




 何年か前に、この種のデモで「中国人は日本から出て行け!」とかいう主題のものに参加したことがあります。私は日本でデモに参加した経験がなかったので趣旨に賛同しつつ話の種に、と思いまして(笑)。

 ところが実際に歩いてみると、シュプレヒコールに「台湾独立」とか「チベット独立」といった内容のものが混じっていて、そのひとつひとつには賛成なんだけどこのデモと関係ないじゃん、というひどく散漫な印象を受けました。

 それから私自身は奇人変人の類いに入るのかも知れませんが、ゲーム業界でいう「ライトユーザー」の視点は常に意識しています。

 この角度から眺めたとき、街宣車を先頭に立てた200人ばかりのデモ隊が新宿を練り歩くことに違和感とある種の「何だかなー」という恥ずかしさと嫌悪を感じまして、すっかり懲りてそれ以来こういう催しは一切スルーしてきました。

 ただ今回は「友邦・台湾」が文字通り危急存亡の秋を迎えている段階ですし、「加盟団体」をみても主題が散漫になることはなさそうです。……というより、散漫になるような余裕のある時期ではすでにない、というべきでしょう。

 ――――

 台湾問題について、「中国と台湾のことに日本が巻き込まれるのは嫌」という考え方をする人もいるようですが、地理的にみても、また特亜(中共政権&南鮮北鮮)に囲まれている中で唯一価値観を共有し得る国家という点でも、日本と台湾は一蓮托生のつながりといえるかと思います。また、その縁を大切にすることが国益にもつながります。

 以前、台湾で行われた中国の「反国家分裂法」制定を糾弾する大規模デモに、日本人留学生が台湾人学生と一緒にデモ隊を組んで参加し、

「護台湾,護日本,護亜洲!」(台湾を守れ、日本を守れ、アジアを守れ!)

 という粋なシュプレヒコールを叫びました。

 ●「三二六大遊行」雑感。(2005/03/28)

 さきの日印関係強化やインド洋での五カ国合同演習(日本、米国、豪州、インド、シンガポール)などに対する中国の過剰な反応は、このシュプレヒコールが事態の本質をついていることを示しているかと思います。

 まずは、自分にできることから。

 私にとっては当ブログとコソーリ活動(香港・台湾紙での文章発表)がそれに当たりますが、時勢の圧縮熱がいよいよ高まりつつある現在、今回のような機会も大切にしていきたいと考えています。




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 仕事でフラストレーションがたまっているので、ちょっと鬱屈を散じさせて頂きます。御迷惑でしょうがお付き合い下さい。

 今朝の香港各紙(2007/09/11)は、

「陳方安生が出馬表明へ」

 という話題で持ち切りでした。
陳方安生(アンソン・チャン)「香港の良心」と呼ばれるオバサンで、同じ香港人でも中国の後押しでWHOのトップになったオバサンが地元香港でも以前から評判が散々で、実務においても悪臭を振りまいているのとは大違いです。

 ちなみに「陳方」というのは複性ではなく、香港の場合は結婚している女性を漢字で表記する際、結婚後の姓の後ろに旧姓を置くのが一般的だからです。アンソン・チャンは旧姓が方で陳さんと結婚した女性ということになります。

 「香港の良心」とは、アンソン・チャンが英国統治時代から優秀な官僚として知られていること、そしてたぶん民主化に比較的寛容で北京(中国政府)が押しつけてくる政策に批判的なスタンスであったことから生まれた称号でしょう。中国返還後の第一次董建華内閣でもナンバー2の座に就いたものの、無能かつ一意専心中共追随の董建華・行政長官(香港のトップ)との確執で野に下りました。

 暫くは大人しくしていたのですが、一昨年冬の民主化デモに参加したことで再び脚光を浴びました。第二次董建華内閣の後を継いだ曽蔭権・行政長官がアンソン・チャンの元部下にあたることも存在感を漂わせる一因でしょう。

 ――――

 で、そのアンソン・チャンが立法会議員の補欠選挙に出馬することを今日、表明しました。立法会議員というのは普通選挙である直選議席が全議席数の半数に押さえられていて、残りは業界代表議員のような形で有権者が限定され、かつ親中派が当選しやすい仕組みになっています。こうすることで北京が目の敵にしている民主派が過半数を占めないようになっているのです。

 今回アンソン・チャンが出馬する補選は直選議席なのですが、これがちょっと因縁めいています。元々この席を占めていたのは親中派政党
「民主建港連盟」(民建聯)主席だった馬力というオサーンなのですが、この馬力が1989年の天安門事件について今年、

「虐殺なんか起きていない」
「戦車のキャタピラに潰されて人間がミンチになったといわれているが、ミンチになっているんだから人間か豚かわかりゃしないだろ」

 といった発言をして香港人の大多数を敵に回しました。非難囂々です。民建聯も直選枠で一定数の議席を常に確保していますから主席の妄言に大弱り。

 ところが因果応報とはよくいったもので、この馬力が非難の凄まじさに中国本土へと雲隠れしてほどなく、
あっという間に癌で死亡。溜飲を下げた香港人がたくさんいると思いますが、いちばんホッとしたのは民建聯ではないかと(笑)。

 そして、空席になったその議席をめぐって各政党が候補者を準備していたところ、アンソン・チャンが出馬する意向らしいというニュースが出現。これを受けて民主派系の政党は自らの候補者を引っ込めて
「みんなでアンソン・チャンを担ごう」という方針に急転換。そりゃもう「香港の良心」ですし現行政長官の元上司ですから格も評判も段違いなのです。

 注目の出馬表明はついさっき行われました。香港はしばらくこの話題で盛り上がることでしょう。香港各紙は「馬力の暴言~即死」以来の政治ネタとして張り切っているに違いありません。

 ――――

 でもねー、と思うのです。アンソン・チャンは存在感があるとしても、たかが補選への出馬でしょ?行政長官選挙でもあるまいし、当選したって立法会議員のひとりにすぎませんから、議会の勢力図が大きく変わることもないでしょう。別に劇的でも何でもありません。逆にその存在感とは裏腹に、単なる議員のひとりに収まってしまうアンソン・チャンが哀れになります。

 ま、香港の政界がネタ不足というマスコミ側の事情もあるかも知れませんけど、これで大騒ぎしているのをみると、香港の「民主化」への動きもずいぶん後退したものだなあ、というのが私の実感です。

 以下は香港大学が9月4日~7日に実施した世論調査結果(『蘋果日報』2007/09/11)。



 ●2012年に実施される行政長官選挙の直選化(普通選挙)に賛成しますか?

 

 ――――

 ●2012年に実施される立法会議員選挙について、半数の議席を直接選挙、残り半数を比例代表制にするとの意見に賛成ですか?


 



 普通選挙制導入に対する香港人の熱意は圧倒的かと思いきや、意外に高くないのです。はっきり「賛成」(支持)と答えたのは行政長官選挙で59%、立法会議員選挙で51%。「一半半」は「どっちでもいい」です。「唔知/難講」というのは「わからない・何ともいえない」てなところでしょうか。

 アジア金融危機の後遺症、ネットバブルの終焉、経済的環境の変化(中国経済の重心が広東省など華南地区から上海周辺へと移行)そして中国肺炎(SARS)といった数々の衝撃と、それに対する董建華政権の無為無策あるいは失政が2003年7月1日の伝説的な50万人デモを生みました。

 香港人はその勢いを駆って、民主派主導のもと
「全面的な普通選挙制導入」という目標に邁進し始めたかのように見えたのですが、経済状況が回復して董建華が胡錦涛にクビを飛ばされて現在の曽蔭権体制が成立したことで、また北京からパンダを贈られたりして、……要するに中国がアメとムチを併用する香港人の扱い方に習熟してきたことで、以前の熱気が色褪せつつあるかのようです。

 「反對/一半半」と回答した人の中には、「中国と事を構えると商売がうまくいかなくなるから困る」という思惑もあるでしょう。これに「唔知/難講」を含めると、

「どうせ最後は中共政権に隷従させられる訳だし」

 という諦めのようなものも含まれているのではないかと思うのです。そこは元来が植民地ですから、「どうせ無理なんだから」という気持ちがすぐ顔をのぞかせます。どうしても嫌になったら社会を変える運動をするより外国のパスポートをとる方が早いし楽だし。……という思考法が香港人らしくもあります。

 ――――

 これに加えて中共から押しつけられている香港型愛国主義教育「国情教育」「国民教育」などが普通話(北京語)の授業とともに若い世代には施されている訳で。中国における「民主化の孤塁」ではあるのですが、所詮はこんなもん。

 私にとっては本業及び副業のコラムとコソーリ活動(香港紙での文章発表)を展開できる程度の環境があれば香港なんかどうなってもいいです。

 ……そうだ、今回の一件について次の機会に配偶者の従妹で北京語を使う例の翠ちゃん(Midori)に尋ねてみましょう。

 そういえば翠ちゃんは先日改名して
葵ちゃん(Aoi)になったそうです。ミドリという名前は配偶者が適当につけたものなのですが、広東語を学んでいる生徒さんたちから、

「いまどきミドリ?」
「もうちょっと今風の名前をつけてあげなきゃ可哀想」

 という声が相次いだためアオイちゃんになったとのこと。全国のミドリさん申し訳ありません。という訳で不肖御家人ともどもアオイちゃんを今後とも宜しく御願いします。m(__)m

 ――――

 何やら鬱屈を散じたようにはみえませんが、

「お前らは終わりを約束された社会の住人なんだよ。元々海賊版こしらえたりパクリしかできない程度の、レベルの低いお前らにはそれがお似合い。これから中国並の民度にまで墜ちていくのを生暖かく見守ってやるからせいぜい感謝してもらおーか(笑)」

 というのが今回の主題なので、これでいいのです。




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 とんでもないニュースが飛び込んできました。大ネタです。しかも台湾問題という中国にとって最も敏感な部分に日本が大きく踏み込んだ、というものですから大変ですよこれは。

 ……ところが報道自体に誤認めいた部分があったりしてちょっと頼りなく、大ネタながらも号外号外と叫んで回るには確度に疑問符。

 ともあれまずその報道をどうぞ。



 ●日本政府、台湾の国連加盟申請不受理「解釈不適切」申し入れ(産経新聞 2007/09/07)

 【台北=長谷川周人】台湾が独自で行った初の「台湾」名義による国連加盟申請に対し、潘基文事務総長が国連は「一つの中国」政策を維持しているとして申請書を不受理としたことを受け、在国連日本代表部は国連事務局に対して先月、「台湾に関する地位認定の解釈が不適切だ」という異例の申し入れを行った。日本の在台代表機関に相当する交流協会が6日、明らかにした。

 1972年9月の日中共同声明で日本は、中国が主張する「一つの中国」を「理解し、尊重する」として、「同意を与えていない」というのが基本的な立場だ。これに対して国連が、事務総長見解として「一つの中国」政策を国連全体の解釈とするのは「不適切」という日本政府の認識を明確にした形だ。

 申し入れは米国に続いて約半月前に行ったもので、日本代表部は台湾の戦後の帰属問題に関しても、「サンフランシスコ講和条約で台湾を放棄したが、どこに帰属すべきかは言うべき立場でない」という日本政府の基本認識も伝えた。




 日本もやるときゃやるじゃん、GJ!……と言いたいところですが、この記事は何やら聞き書きに終始していて、「日中共同声明」を読んでいない気配すらあるので眉唾ものです。ただし日本政府がこの「申し入れ」を行ったことが事実ならば、この記事とは別の意味で重大ニュースということになります。

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 いうまでもないことかも知れませんが、中国にとって目下の対日関係における最大の懸案は「歴史問題」でも「自由と繁栄の弧」でもなく、「台湾問題」です。

「台湾は中国の一部であり、台湾の独立反対を支持すると明言してくれ」

 といった意味のことを、4月に来日した温家宝・首相が安倍晋三・首相に執拗に迫っています。さきごろ来日した曹剛川・国防部長も安倍首相、高村防衛相、町村外相との会見でそれぞれ同じことを持ちかけています。ところが日本側はこの問題ばかりは譲歩せず、

「日本は、台湾問題についての『日中共同声明』の立場を堅持する」

 と繰り返し、また米国同様に、

「台湾海峡の現状を改変するような一方的な言動は支持しない」

 として、中国にも自重するよう求めています。

「その『日中共同声明』の立場って具体的にどういうこと?」

 と中国側が反問しないのは、「日中共同声明」の台湾に関する部分について日本政府が真っ正面から解釈を披露すると、中国としては具合が悪いからです。

 ――――

 その「日中共同声明」の台湾に関する部分は、同声明における第三項にあたります。



 三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。




 「ポツダム宣言第八項……」から後の部分と組み打ちすると話が面倒になるのですが、要するにこの項目において中国政府は台湾を「中華人民共和国の領土」と主張しているのに対し,日本政府は中国側のその主張を「十分理解し,尊重する」としながらも、「支持する」とか「承認する」といった言葉が使われていません。

 つまりこの項目は両論併記。中国は「台湾は中国の一部」と主張し、一方の日本は「勝手に言ってろ。日本はそれに同意しかねる」と述べており、「台湾は中国の一部」と認めていません。「日中共同声明」の草案作成で一番もめたのがこの部分です。

 前掲『産経新聞』の記事では、

「1972年9月の日中共同声明で日本は、中国が主張する『一つの中国』を『理解し、尊重する』として、『同意を与えていない』というのが基本的な立場だ」

 としてまいすが、これは誤りです。日中共同声明の第二項が、



 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。




 となっていて、「一つの中国」は日本側も正式に承認しているのです。日本政府が正式に承認していないのは「一つの中国」ではなく、「台湾は中国の一部」ということ。……だと私は思うのですが、長谷川記者、そのあたりはどうなんでしょうか?ていうか記事書く前に「日中共同声明」を読みました?

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 中国は最近、「台湾」名義での国連加盟、という動きに対し、

「台湾は中国の一部」

 ということを国連の場で承認してもらおうと画策しており、米国及び日本の「申し入れ」はそれに対するものではないかと私は思います。日米両国とも「一つの中国」は正式に承認しているので、それに異を唱えることはない筈だからです。

 「台湾は中国の一部」ということに対する異議申し立てであるところが中国にとってはゆゆしき事態となります。今回の「申し入れ」が事実なのであれば、その意味で「重大ニュース」なのです。

「その『日中共同声明』の立場って具体的にどういうこと?」

 と中国側が反問していないのに、日本政府が自ら乗り出して「日中共同声明」について真っ正面から台湾問題に関する解釈を披露したことになるからです。

 中国側の反応が気になるところですが、香港の親中紙『大公報』の電子版が台湾・中央通信の記事をすぐさま転載しています。ただ中央通信の記事は上の『産経新聞』の報道をそのまま紹介したものなので、「一つの中国」がどうのこうの、という記者の誤認(と私はみています)もそっくりそのまま掲載されています(笑)。

 ●「大公網」(2007/09/07)
 http://www.takungpao.com/news/07/09/07/ZM-791957.htm

 中国にとっては薮蛇となってしまった格好です。もしかしたら軍部の反発があるかも知れません。

 台湾にしてみれば「日本が台湾の地位について一歩踏み込んでくれた」と好意的に捉えるべきニュースになるかと思います。日台関係という点からみても日本側による重大な挙措ということになるでしょう。

 とりあえずここまでです。あとは詳報待ちということで。


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 【追記】2007/09/08/00:27

 関連報道です。こちらの方が簡潔かつ正確でしかもわかりやすいですね。


 ●台湾の地位解釈は不適切=日本が国連に申し入れ(時事通信2007/09/07-08:14)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007090700137

 【台北7日時事】日本の対台湾窓口、交流協会台北事務所は7日までに、台湾の国連加盟問題をめぐり潘基文国連事務総長が「台湾は中国の一部」との見解を示したことについて、日本政府が8月に「この解釈は不適切と考えている」と申し入れていたことを明らかにした。



 ●「台湾、中国の一部」 潘総長見解に日本同意せず(東京新聞夕刊 2007/09/07)
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007090702047161.html

 【台北=野崎雅敏】日台交流の日本側窓口機関、日本交流協会台北事務所は七日、台湾の国連加盟問題で国連の潘基文(バン・キムン)事務総長が示した「台湾は中国の一部」との見解について、日本政府が国連事務局に「同意しない」と伝えていたことを明らかにした。台湾メディアによると、米国やカナダも事務総長の見解に同意しない旨を国連側に伝えているという。

 一九七二年の日中国交正常化の際の共同声明では、中国側の「台湾は不可分の領土」という主張に対し、日本側は「理解し、尊重する」とするにとどまっている。






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 最近忙しくて雑談に逃げてばかりおります。今回も余太話。でもワクテカの展開を呼ぶかも知れないネタではあります。

 その前に、できるだけニュース(古っ)。

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 山西省長としてその「鮮やかな手並み」が脚光を浴びた于幼軍が、先ごろ省長職を辞して同じ「団派」(胡錦涛直系の共青団出身人脈)に属する孟学農・元北京市長にポストを譲りました。

 ●閣僚人事で邪推あれこれ。(2007/08/31)

 その人事を伝える記事では于幼軍は「中央に異動」となっておりましたが、文化部の党書記に就任したことを香港の親中紙『大公報』(2007/09/05)が報じました。栄転ですね。

 しかも要職。「文藝」(芸術や映画も含む)が中共の定める枠の中限定で発展することを指揮する一方、従来型メディアに加えブログ、掲示板などインターネットにも枠をはめつつ、ACG(アニメ・コミック・ゲーム)の動向にまで目を光らせる部門です。

 とりあえず文化部党書記であって文化部長就任ではないのですが、一党独裁のお国柄、各部門のトップは文化部長や山西省長ではなく、文化部党書記や山西省党書記です。非共産党員が部長職に就任している特例は別として、文化部党書記となったのであれば文化部長を兼任することになるでしょう。上記『大公報』の報道によると、現職の孫家正・部長は年齢制限で転任ないしは引退となる模様。

 さてその文化部。「文藝」からネットひいてはACGに関わるだけではありません。新時代に則したイデオロギー構築やその宣伝の一翼を担う仕事もあり、その点ではたぶん5年後の党大会で出てくるであろう「胡錦涛理論」みたいなものの練り上げに参画することになります。

 実は于幼軍、山西省長になる以前はこの思想工作宣伝活動ではなかなかの業績を残しており、開明的かつ実務に強いという好印象が内外にはあるようです。「団派」でもあり胡錦涛の文化政策及び理論面での腹心ということになるでしょう。

 ポスト胡錦涛と噂される李克強・遼寧省党書記の補佐役ともなるでしょうね。山西省という地方政府で「治国」研修というテストをクリアして中央に戻って来た訳ですが、今度は党中央の党務を経験させるべく10月15日に開幕する第17回党大会で党中央政治局入りを果たせるかどうか注目したいところです。

 ●『大公報』(2007/09/05)
 http://www.takungpao.com/news/07/09/04/ZM-790032.htm

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 それから今回の本題と少しは関係があるかも知れないニュース。いや前回の方が関わりが深いかも知れません。



 ●ベンガル湾で海上共同訓練、日米印など5か国艦艇27隻(読売新聞 2007/09/04/19:16)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070904i211.htm

 【ニューデリー=永田和男】日本、米国、インド、オーストラリア、シンガポールの5か国が参加する海上共同訓練が4日、ベンガル湾のアンダマン諸島周辺海域で始まった。

 9日までの共同訓練には、海上自衛隊の護衛艦「おおなみ」、「ゆうだち」やP―3C哨戒機2機が派遣されているほか、米空母「キティホーク」「ニミッツ」、印空母「INSビラート」など5か国の艦艇計27隻が参加し、対空戦、対潜戦、対水上戦などの戦術訓練を行う。

 日米印3か国は4月にも房総半島沖の太平洋で共同訓練を行っているが、今回の訓練は、安倍首相が戦略的対話の枠組みとして提唱する日米豪印が勢ぞろいしたことで、「新たな対中戦略パートナーシップ」(英BBC放送)と、中国けん制の色彩が強いとの見方が各国メディアの間で頻繁に出ている。

 このため、関係国政府は「訓練の目的はシーレーン防衛の強化だ」(ラジュ印国防副大臣)などと打ち消しに努めている。




 中国はいよいよ理屈抜きで空母が欲しくなったことでしょう(笑)。ベンガル湾、つまり現在の中国海軍では未だ手の届かないインド洋方面で演習が実施されたことも刺激材料なのかも。

 実際、中共系メディアは敏感に反応しており、この演習を指して、

「アジア版NATOだ」

 という『北京日報』の脊髄反射的な論評記事が国営通信社・新華社の電子版たる「新華網」に転載されています。

 あと「日印関係の強化で対中牽制を狙うなんて考えるだけムダ」なんて評論も新華社のオリジナル記事として「新華網」に出ています。安倍晋三・首相の訪印というパンチがそこそこ効いているようです。戦略面においては首相の靖国神社参拝より痛いでしょうし。

 ●「新華網」(2007/09/04/09:09)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-09/04/content_6659168.htm

 ●「新華網」(2007/09/04/15:00)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-09/04/content_6661643.htm

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 あとは短信ながら写真つきでインパクトのある話題。河南省・鄭州市で先日、炭鉱事故で兄弟を失った女性2人が「不公正」「冤」と大書したシャツを着て、ビルから飛び降り自殺して抗議しようという騒ぎがありました。何が「不公正」で何が「冤」なのかは不明ですが、警官の説得により飛び降りは回避されたようです。

 ●『明報』(2007/09/05)
 http://www.mingpaonews.com/20070905/cci1.htm

 この記事を読んで思ったのですけど、例えばいま不思議に絶好調な株式市場が大暴落したら、攻撃的な「股民」(投機目的の個人投資家)は証券会社を焼き打ちしたりデモを行ったりして(デモは実例あり)、気弱な向きは今回のような挙に出ることになるかも知れません。

 その株の話。最近になって現地証券筋のあちこちから「そろそろ危ないんじゃねーか」との声が出て中国国内で記事になったりしていますが、今度は当の深セン証券取引所がレポートを発表。その中で、

「株価の上昇が業績の伸びをはるかに上回っている。バブル要因に要注意」

 との警報を発しています。

 ●「新華網」(2007/09/04/08:46)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-09/04/content_6658929.htm

 年初からの懸念材料である消費者物価指数も8月は前年同期比の上昇率が「十何年ぶりの上昇幅」と騒がれた7月よりもさらに高くなる見通しのようで。

 ●「新浪網」(2007/09/04/04:23)
 http://finance.sina.com.cn/china/dfjj/20070904/04233943471.shtml

 他にも台湾問題などがありますし、チベット族の不穏な動きに対処すると称して武装警察2000名を四川省に増派したという情報も。何より5年に1度の党大会を来月に控えており、来年夏の北京五輪に向けて中国は何やら香ばしさが増しつつあるといった印象です。……あ、あと山東省で回族と漢族の衝突事件があり死者が出たとの報道がありますが、これについては目下情報収集中。

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 さて本題。といってもごく短い余太話ですけど。

 先日、中国の曹剛川・国防相が来日したことは皆さん記憶に新しいかと思います。何かが劇的にどうなったということもないのですが、実務者レベル、つまり制服組同士の交流を強化しようということになりました。例えば中国の海軍艦艇が日本を親善訪問したりすることになるようです。

 ということは、海上自衛隊の艦艇も中国を親善訪問することになる訳で。

 それが実施の運びとなった際には胡錦涛政権が全力で「親善ムード」醸成に取り組むことになると思いますけど、庶民レベルでは「日本鬼子」の再来であります(笑)。本気でそう思い詰める馬鹿はそれほどいないでしょうけど、江沢民が丹精して磨き上げた反日風味満点の愛国主義教育を30歳から下の世代は全身に浴びて育っています。大義名分はあるということです。

 毎度毎度のことになりますけど、胡錦涛や温家宝が「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現を呼号しなければならないほど、現在の中国社会は激しく不調和。その表現として様々な格差の存在や都市暴動や農村暴動があります。

 そこへ「日本鬼子」の軍艦が艦首に日章旗・艦尾に軍艦旗(自衛艦旗)を翻して堂々と乗り込んで来るのです。フラストレーションがたまっているところで、これは恰好のはけ口になるかも知れません。やるなら北京五輪の開催前に是非。

 あながち余太話でないかも知れないのは、『大公報』電子版がそれを本気で懸念していることです。もっともそれは悪化した社会状況下における庶民の鬱憤晴らしの好機としてではなく、純粋に「歴史問題」フラグが立って荒れるのではないか、という心配ですけど。

 ●「大公網」(2007/09/05)
 http://www.takungpao.com/news/07/09/05/YM-790856.htm

 いずれにせよ入港期間中もラッパで奏でられる君が代とともに軍艦旗の掲揚・降下が行われるでしょう。楽しみですねー。私が上海に留学していたとき米国海軍の艦艇が上海を訪問し、乗組員は制服着用で上陸していましたけど、「日本海軍」となるとどうでしょう。

「不測の事態に遭遇する恐れがあるため上陸中の単独行動は禁止」

 とかの注意事項が乗員に出されたりして。何だか支那事変当時のようですけど(笑)。


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 【追記1】2007/09/06/03:19

 さっき記事漁りをしていたら中国国内でも似たような報道が行われていました。電波系基地外反日紙『環球時報』の論評記事です。

 しかもあの『環球時報』だというのに、「大公網」同様に「歴史問題」フラグが立つのを避けようと必死。ママン『環球時報』がいつもと違うよー(笑)。燃料投下じゃなくて火消しかいっ。orz

 ●日本の軍艦が中国の港湾へ入って来るのに際して(2007/09/05/09:21)
 http://news.sina.com.cn/pl/2007-09-05/092113821257.shtml

 この記事、胡錦涛の対日融和・現実外交路線が『環球時報』まで浸透していることを示すものなのでしょうか。

 むしろ、何やら2005年春の反日騒動のときに似ているようでもあります。

 全国各地で毎週末に反日デモが行われる事態にまで拡大したのにビビッたアンチ胡錦涛派が、「反日」を掲げて胡錦涛派に政争を挑むのを急遽とりやめて手打ちを行い、党上層部が一枚岩になって火消しに躍起になった、アレです。

 あまりの盛り上がりに反政府運動へと転化するのを恐れたのです。胡錦涛派もアンチ胡錦涛派も「中共人」ですから、色々な反目が存在していても、「中共人」の権益が脅かされては困るという点では全く一致します。

 党上層部になると「中共人」権益を保証する機関たる「政権」の運営当事者ですから、海自艦艇の中国訪問に際して考えていることはたぶん私と同じだと思います。でも余計なことは書けませんから「歴史問題」の一点張り。

 ちなみに作者は中国人民大学国際関係学院の東亜研究中心主任。以前は国際関係学院といえば国家安全部などに人材を供給する,要するに各種諜報員の養成機関だったのですが、いまはどうなのでしょう。

 この記事、付属掲示板では売国奴扱いされています(笑)。でも40近くしかレスがついていません。どうも喰い付きが悪いので党中央はこの種の記事をもう少しバラまいて事態を香ばしくする必要があります。

 どうした糞青ども(自称愛国者の反日信者)元気ないじゃねーか。ネトゲにハマっているから天下国家は二の次なんて冗談はなしだぞ(笑)。


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 【追記2】2007/09/07/14:45

 中国政府の発表によると于幼軍は文化部副部長に就任したとのことです。文化部長ではありませんでした。早トチリしてしまい申し訳ありません。

 ●「新華網」(2007/09/06/09:01)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-09/06/content_6669611.htm

 ただ文化部党書記には就いていますから、実質的に于幼軍が文化部のトップであることは確かです。




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 何やら私が更新を怠っている間に皆さん中国の空母保有問題で盛り上がっていたようで。

 ●空母空母の大連呼で国民に「建造宣言」、本気です。(2007/08/22) 

 ここのコメント欄ですね。レスが増えていくのを眺めながら、仕事にかまけて口をはさめない境遇を恨めしく思っておりました。

 てな訳で私にも口を出させて下さい。別に役に立つ話などはしませんけど(笑)。

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 まず、驚いています。このブログを始めてから3年ちょっとになりますけど、航空母艦(空母)に対する中共当局の姿勢が短期間でずいぶん変化したことに対してです。空母保有への野心を隠さなくなった、といったところでしょう。それから外洋への伸張姿勢。東アジア地域での覇権確立を秘めた野心ですね。

 一昨年かその前の年あたりだったと思いますが、劉華清という以前海軍を仕切っていた退役将軍の回顧録だか自伝のなかに、空母保有への意欲が明記されていて「ほほー」と思ったものです。

 それが前掲エントリーで紹介した通り、中国国内の外電紹介専門紙『参考消息』がやけに具体的なニュースを持ってきました。

 ●中国の空母プロジェクト始動、まずは2隻建造……『漢和』報じる(人民網 2007/08/20/10:04)
 http://military.people.com.cn/GB/8221/72028/76059/76404/6136290.html

 ●「千龍新聞網」(2007/08/20/14:16)
 http://mil.news.mop.com/jq/gn/p/2007/0820/141652257.shtml

 下の記事には勇ましい想像図?までついています。

 人工衛星破壊ミサイル実験なども行われましたね。PKO参加なども華々しく報道されるようになりました。3年前に立ち戻って眺めてみると、中国の軍拡路線が単に予算増額だけでなく、具体面で着実に歩みを重ねていることを実感できます。

 ――――

 ところで、中国の指導者は3代目の江沢民から軍籍も実戦経験もない者が軍権(中央軍事委員会主席)を握るようになりました。制服組から軽侮されないようにするにも張り合う材料がありませんから、もっぱら懐柔策ということになります。階級の昇進、ポストの昇格、予算増額などがそれに当たるでしょう。特に人事は「八一建軍節」(人民解放軍の成立記念日)の手前に行われるので「お中元」といってもいいでしょう。

 4代目である現在の胡錦涛政権でも同じことが行われていますが、空母建造も「お中元」に加わったのでしょうか。それとも10月15日から開催される中共の一大政治的イベント・第17回党大会で軍部からより強い支持を得たいがためのプレゼント?

 北京五輪を来年夏に控えているこの時期にわざわざ軍事的野心を露わにすることで、国際社会においてどれほどメリットがあるのでしょう。私にはわかりませんけど、

「たとえ北京五輪が流れても台湾併呑を断固優先させる」

 といった中共政権独特の価値観からすれば、オリンピックなどとは無関係に、単にそういう機が熟したから空母を建造する、ということなのかも知れません。本来なら外患よりも内憂なんですけど、中国は軍事にはカネを惜しみません。中国社会が貧富の格差や環境汚染をはじめ様々な問題を抱え込んでしまって、とうとう胡錦涛や温家宝が「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現を呼号するほどになってしまいましたが、それでも巨費を投じて有人宇宙船を打ち上げたりしているのもその一例です。

 「経済発展」なる言葉に幻惑されているようでもあります。技術・資本・市場ともに対外依存度の極めて高い中国経済は、現時点では砂上の楼閣といった危うさをはらんでいると私は思うのですが、「富国強兵」の「富国」が実現しつつあるから「強兵」にも力点を、という空気もあるのではないかと。

 ――――

 空母を持ちたい!という野心の来歴は様々でしょう。まずは子供が新しい玩具をほしがるような無邪気さで、空母を「大国としてのステータスシンボル」と考えている軍人がいるでしょうし、遠洋でも展開し得る海軍力を持つには空母戦闘群が不可欠、という考えもあるでしょう。

 一種のトラウマもあるのではないかと思います。これは冒頭に掲げたエントリーのコメント欄で「曙機関」さんが指摘しているように、



 96年の台湾総統選挙の時、李登輝の再選を阻止しようとして台湾沖にミサイルを打ち込む“演習”を行なっていた中国は、アメリカが第7艦隊の空母2隻を派遣した事によって慌てて“演習”を注視せざるを得ませんでした。

 「空母さえあれば」、「空母が無いから……」という感覚は、あの時に広く中国人に浸透したのじゃないかと思います。




 といった、面子丸潰れの苦い思い出によるものです。さらにさかのぼると、金門島と大陸の砲戦などが行われていた時期に、米空母部隊が近海に展開することで中国が引き下がらざるを得なかった、という故事もあります。

 実は中国はすでに空母を1隻保有していますね。「KWAT」さん御指摘のテーマパークの「空母」、あれは実物大模型といった純粋な建築物ですけど、ロシアから廃艦になった「ミンスク」を購入して深センだかあのあたりに置いてあります。これもテーマパーク化されているのでもちろん戦力ではありませんけど、正真正銘の元空母です。

 軍部は模型やテーマパークではその渇を癒し切れなくなった、ということもないでしょうが、ともあれこの「ミンスク」テーマパーク、当初は賑わったものの、熱が冷めると来場者が激減してとうとう破産してしまいました。哀れ「ミンスク」は競売にかけられ、幸い買い手がついて引き続きテーマパーク路線でいくことになったようです。

 ――――

 空母戦闘群を保有する上でのコストは莫大です。

 「作れ作れ~~~」さん、「90」さん、「通行人A」さん御指摘のように、空母や艦載機やその乗員養成に加え、戦闘群を形成する護衛艦艇まで揃えてやっと使いものになります。しかもメンテナンスも訓練もしなければなりません。

 一般的には空母3隻をローテーションさせなければ常時出撃可能状態は維持できないとされています。護衛艦や艦載機もそうでしょう。

 この点、『参考消息』の伝える「第一期建造計画で空母2隻」というのは、予算配分の関係もあるでしょうが、

「とりあえず2隻あれば、いざ有事というときに1隻は出せるだろう」

 という軍部の思惑もあるのではないかと思います。デジカメやパソコンやテレビゲーム機と同様、初期ロットに不具合はつきものです。「失敗作になる可能性があるからまず2隻で実験」という意味合いと、上述したように当初は常時遠洋に展開しているのではなく、「経験値を積みつつ有事に備えての一種の抑止力として空母戦闘群を持とう、だから2隻はないと」という考えではないかと思います。

 それでもカネ食い虫になることは必至。とはいえ国民に事実上空母建造を宣言してしまっているのですから、やるつもりなのでしょう。

 ――――

 ここで改めて覚えておきたいことがあります。日本にとって中国は価値観を共有することのできない、マトモな対話の成立しにくい相手だということです。要するに日本の「非常識」が中国では「常識」であるケースがままあります。

「そんな高い買い物なんて中国の現状に照らせばナンセンス」

 というのは、あくまでも日本側の価値観に拠った見方です。一党独裁制である中共政権は「ナンセンス」を断行できる体制であり、民生を犠牲にしても軍事にはカネを惜しみませんし、そういう無茶のできる国です。百万人死んだって総人口の1%にもならないのです。「民生を犠牲にしても」の実例は有人宇宙船プロジェクトがそうですし、毛沢東時代にも人民が飢餓でバタバタ死んでいる時期でさえ核開発やミサイル技術の向上には潤沢な予算を割り当てられたりしています。

 この点において私は「ZIR」さんと同様の危機感を持っています。



 「中国がまともに空母を運用できる訳がない」という意見は少々危険ではないかと思います。

 かつて日本は「イエロー・モンキーが白色人種に対抗できるわけがない」という常識を覆しました。あながち根拠がないともいえない常識です。



 西洋列強が東アジアにとりついた時点で、日本は近代化の波に乗れるだけの民度がありましたから幸い列強のひとつとなることができました。それと同時に、当時の欧米の常識ではちょっと考えられない「ナンセンス」を行い得る条件もあったため、白人世界を驚倒させることになりました。

 中国は当時の日本とはまた違う状況ながら、「ナンセンス」を断行できるだけの条件を持っています。もちろん、「ナンセンス」を強行することによって経済が疲弊し亡国への道を歩む可能性もありますけど、そのあたりからのしぶとさが中国の身上でもあります。

 ……もっともそれは「みんな貧乏」だった1980年代末までの話であって、物欲まみれの現在の中国人が耐乏に大人しくしていられるかどうかは疑問です。でも民族主義を煽り立てたり他国と一触即発の状況に瀕するなど「外敵」を作り上げておけば、愛国主義教育を受けて育った世代が社会の第一線にいるために、意外と以前より楽に国民を統御できて「欲しがりません勝つまでは」状態になるかも知れません。

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 とりあえず空母を2隻建造したとすれば、まずは東シナ海や南シナ海あたりが活動範囲ということになるでしょうけど、第二期、第三期と建艦計画が続けば「親善訪問」などと称して中国の空母戦闘群が佐世保や横須賀、あるいは太平洋を横断してサンフランシスコやロサンゼルスあたりに出現することもあるでしょう。目にしたくない光景です。

 個人的には中国とパキスタンの関係に興味があります。中国の資金援助で港湾建設が行われたりしていますが、パキスタンに軍港を建設してそれを租借すればインド洋での空母戦闘群展開も可能になるからです。

 ……と、素人の私にはこのあたりが限界です。また詳しい方々からのフォローをお待ちしております。


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