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日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 世界の亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル議長が昨日28日午後に亡命先の米国から来日しました。慶事であります。

 ラビアさんに対しては、中国当局が7月5日のウルムチ事件の黒幕だとかテロリストだとか懸命にレッテル貼りをしていたのと関係があるのかどうかはわかりませんが、日本のマスコミはラビアさんが来日したことに関しては大方スルーか短信で報じたのみでした。

 とはいえ、短いながらも味のあるニュースがなかった訳ではありません。『産経新聞』電子板が掲載した共同通信電などは簡潔ながらもポイントを押さえていて唸らされました。



 ●中国でNHK放送が中断 カーディルさん来日報道で(共同通信→MSN産経ニュース 2009/07/28/21:28)

 中国で28日、ウイグル人亡命組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席の訪日を報じていたNHKの海外放送が中断された。カーディルさんの訪日をめぐっては、中国外務省が27日、日本政府に対し「強い不満を表明する」との談話を発表していた。

 一方、中国政府は28日、カーディルさんの訪日に合わせ、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で5日に起きたウイグル族による大規模暴動を記録した日本語版のビデオ「7・5暴力事件とラビア氏」を日本メディアに配布。カーディルさんらによる「統制と画策」の下、暴動が発生したとあらためて非難した。



 ●ラビアさんが来日した。
 ●NHKの海外放送が中国国内ではそれを報じた部分のみ放送が中断された。
 ●中国はラビアさんの訪日に不満表明。
 ●だからかどうかは知らないが、来日に合わせてわざわざ日本語のプロパガンダビデオを日本メディアに配布。
 ●ビデオの内容に言及している部分で「統制と画策」とカッコ付きで報じたことで、中国当局の姑息さと愚昧さをさり気なくアピール。

 ……と、簡潔ながらも具沢山で要所を締めているあたり、プロの仕事だなあと感心せずにはおれませんでした。

 ――――

 中国はラビアさんを極悪人扱いしているだけでなく、上の記事にあるように今回の来日に対しても外交部が「強い不満」を表明しています。



 ●日本政府によるラビアの来日許可について(人民日報日本語版 2009/07/28/10:14)
 http://j.people.com.cn/94474/6711925.html


 外交部の秦剛報道官は27日、世界ウイグル会議のラビア・カーディル議長が日本を訪問して反中分裂活動を行うことを、日本政府が頑として許可した件についての記者の質問に答えた際、日本政府への強烈な不満を表明した。

 ――日本政府がこのほど、ラビア(ラビア・カーディル議長)の来日を許可し、ビザを発給したことについて、中国としてコメントは。

 私たちは日本政府が中国側の度重なる厳正な申し入れを顧みず、ラビアが日本を訪問して反中分裂活動を行うことを頑として許可したことに、強烈な不満を表明する。(編集NA)



「強烈な不満」
「度重なる厳正な申し入れ」

 などと、一見すると強腰のようでもありますが、私に言わせればこの程度ならソフトな御対応ということになります。敢えて下品に一発かますと、これは一見硬そうなようでいて実の伴っていない「フニャ××(ピー)声明」。

「強烈な不満」

 といっても抗議する根拠が中国ローカルで国際社会において通用するものではありませんし、

「度重なる厳正な申し入れ」

 を日本側のどの部門に対して行ったのかすら明記していません。大使や公使を呼びつけたとも書いていませんし、下っ端相手の抗議としても北京大使館の名前すら挙がっていないません。小泉純一郎・元首相が靖国神社を参拝する度に出していた抗議声明同様、国内向けのポーズという色彩が強いように思います。

 例えば、李登輝・元台湾総統の来日時(2004年)に出ていた抗議声明に比べれば反発度はずーっと低いレベルということができます。ついでにいうと、近年において中国の対日批判で最も反発度が高かったのは、意外かも知れませんが森喜朗・元首相が2003年12月に台湾を訪問した際に出た外交部声明。

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 というものでした。この「『中日共同声明』など」云々が出てくると、剣呑なものということができます。まあこれにしても、

「政治的文書の基本原則を遵守するよう求める」
「政治的文書の精神に反する……」
「政治的文書に違反する……」
「政治的文書を踏みにじる……」

 ……など、これはこれで色々なランク付けがあるのですけれど。

 ――――

 ところで、ラビアさんが来日した昨日28日は火曜日で、外交部報道官定例記者会見が開かれる日(毎週火曜・木曜)と重なることから、より踏み込んだ声明が出されるかも知れないと期待していたのですが、中国外交部のウェブサイトで調べたら21日(火)を最後に夏休みに入っており、会見もお休み。

 なるほど道理で秦剛が早手回しに談話を発表したのか、と合点した次第。ラビアさんは今日29日の午後に日本記者クラブで記者会見を開くことになっていますから、その内容次第で声明第二弾が出て来るのかも知れません。

 ともあれ、ラビアさんは来日した訳で、要するに日本政府が「中国側の度重なる厳正な申し入れを顧みず」ビザを発給したことになります。GJ!と言いたくなるところですが、有り体は法に則って粛々とビザを発行した、要するに当然の事務処理をこなしただけのことですから、ここはツンデレで「まずは及第点」くらいにしておくのがいいでしょう。

 あれこれ気兼ねして遠慮して、中国の反発に屈して筋を曲げていた時期もありましたから、改善されたということはできるかも知れませんけど。

 ただここで強調しておきたいのは、中国側の不満表明を顧みずに日本政府が筋を通したことに、……要するに単に日中間の腕相撲に勝った勝ったと捉えて快哉を叫ぶのは、些か浅薄ではないか、ということです。

 というのも少なくとも江沢民時代以来、中国当局による対日批判は往々にして、その折々における中国の国内向け政策や政争を色濃く反映したものだからです。

 前者(対内政策)の例では反日風味満点の愛国主義教育などがあり、後者のケースとしては、表向きは首相の靖国神社参拝や歴史教科書への内政干渉、また日本の常任理事国入り反対というお題目でありながら、実はアンチ胡錦涛諸派勢力がそのお題目を強く唱えることで、胡錦涛政権を揺さぶりひいては倒閣を狙ったのが本質、という事例を挙げられます。2005年春の反日騒動がその典型例ですね。

 ですから今回の反発度もラビアさんの日本における活動内容にもよりますが、基本的には中国の国内事情、具体的には胡錦涛政権の指導力によってレベルが決まることでしょう。中国がどこまで「萌え」てくれるかは、アンチ胡錦涛諸派の頑張り次第、ということになると思います。

 ――――

 で、そのアンチ組の蠢動や如何に、ということになるのですが、目下のところは『人民日報』系列の電波系基地外反日紙『環球時報』が独りで騒いでいる状態。

 その記事が「新浪網」など大手ポータルのニュースサイトに転載されたりはしていますが、国営の新華社通信や胡錦涛の広報紙『中国青年報』などは外交部声明を掲載した程度で基本的には抑制されており、ウェブ上で接する限り、一部メディアで報道されているほど「反日大合唱」という空気ではありません。

 「ネット世論に反日気運」という報道もありますが、基本的には『環球時報』電子板である「環球網」での「ラビア氏来日は中日関係を損なうと思うか?」というネット投票を土台にしたものです。

 現時点ではこのアンケート、「損なうと思う」が1万9249票で90.8%という圧倒的な勢いを示しているものの、電波系反日基地外紙サイトにわざわざ飛んできて投票するのですから、これはよほどのコアユーザー。しかも数日前から行われているネット投票なのに、投票総数が2万票をちょっと超える程度ですから、余り当てにはできません。

 むろん、2005年春の反日騒動のときのように、いきなり火の手が上がることもあるのですが、あれはあれでメラメラするまでにかなり入念な仕込みが行われていましたし、当時は新華社も煽る側に回っていました。

 そして「ネット署名→街頭署名→反日デモ→反日暴動」というプロセスで事態が拡大していきました。これは聖火リレーでのフリーチベットでメラメラした昨年春の対仏排撃運動もほぼ同じ手順を踏んでいますから、ひとつの目安として参考になると思います。

 要するに、ネット署名が始まるようだと背後にアンチ胡錦涛諸派の暗躍があり、表面的には反日気運の高まりではありながら、実質的には政争ムードが濃くなるということです。それゆえ「胡錦涛政権の指導力次第」ということになる訳で。

 ――――

 最後に御存知の方も多いでしょうが、ラビアさんの日本滞在が早めに切り上げられることになったため、講演会の内容に変更が生じています。念のために講演会実行委員会のプレスリリースを掲げておきます。



 ●講演会の内容変更のお知らせ - Tuesday, July 28, 2009
 http://www.uyghurcongress.org/jp/News.asp?ItemID=1248747152


 この度は「ラビア・カーディルさん講演会」へのご参加をお申し込みいただき、誠にありがとうございました。

 ところで、この講演会につき、やむを得ない事情が発生し、以下のような事態に立ち至りましたので、謹んでご連絡申し上げます。

 7月31日、米国議会・下院外交委員会が急遽、「ウルムチ事件」に関する非公開ミーティングを開催することになり、ラビア・カーディルさんの見解と証言を求めて参りました。この会議には、これまで下院に於いてウイグル問題を積極的に取り上げてきた民主党議員で「国際組織、人権及び監視委員会」のデラハント委員長や、共和党のローラバッカー氏が参加します。そして、ウルムチ事件について下院がどのような態度を示すか決める重要な席になるとのことです。

 彼女は当然、日本訪問を理由に断ることを考えましたが、米国議会開催期間の最終日を使って(アメリカ議会は8月1 日から暫く夏期休暇で開催されません)、「ウルムチ事件」を取り上げ、事件への米国の姿勢を明確に示して欲しいという考えは、多くの在米ウイグル人が抱いている「希望」でもあり、そこでの証言を断るということは実に重い結果を予想しなければならないことでもありました。

 そこで当実行委員会としては、誠に遺憾ではあるものの、このラビアさんの苦衷を察し、下院ミーティング出席のための30日朝の米国への帰国を認めることといたしました。

 ただし、30日夜の講演会は主催者としての責任も考え、以下のように内容を変更して開催することといたしました。

 �ラビアさんには予定していた講演の内容を、29日に長時間のメッセージビデオという形で収録してもらい、当日はそれを会場で流して講演に替える。

 �ラビアさんのご主人であるシディック・ハジさんには日本に残ってもらい、当日はラビアさんの代理として挨拶とお話をしてもらう。ちなみに、ご主人は学者であるとともに、かつて中国の監獄に政治犯として9年も収監された経験をもつ運動家でもあり、ご自身の体験とラビアさんについて、ウルムチ事件について、大変有意義なお話が伺えることと確信致します。

 以上、講演会主催者としてこのような事態に大変責任を感ずる次第ですが、何卒このような事情をご理解いただき、ご容赦たまわりたく、お詫び申し上げる次第です。

 なお、その上で、できることなら当日も何卒ご参集をたまわりたく、誠に厚かましいお願いとは存じますが、併せてお願い申し上げる次第です。


 ラビア・カーディルさん講演会実行委員会

 2009年7月28日



 講演会はいつでもできることですから、ここは米下院議会の案件を優先するのが妥当なところでしょう。今回は生の講演会にはならないのが残念ですが、長尺のビデオメッセージも準備されることですし、日本記者クラブでの会見もありますし、政治家と接触する予定もあるともいわれています。

「私の国の困難な思いと、今回の虐殺の詳細について、私は日本国民と日本政府に伝えたい」

 と日本メディアの取材で語ったラビアさん。短い日本滞在ながらも、内容の濃いスケジュールとなることを期待しています。





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 何やらウイグル三昧で食傷気味だ、というお叱りを受けそうですね。

 しかし、日本のメディアにかつてこれほどに「ウイグル」という単語があふれたことがあったでしょうか?

 この好機を逃すとまた忘れ去られてしまうことになるので、日本人のため(将来を考えると断じて他人事ではないのです)、ウイグル人のために、当ブログはできる限り、まあ私の士気と体力が保たれている間はこの問題を追いかけたいと考えています。もちろん、他の話題にも目配りしていくつもりですけど。

 騒乱の発生したウルムチ市は圧倒的な軍事力によって表面上は事件が沈静化した感があります。ところがそれに取って代わるかのように、今回の事件を政局にしようとする動きが出始めているようにみえます。「ウイグル三昧」とはいいながら、政争というか権力闘争というか、そういう動きが垣間みれるようになったことを無視する訳にはいきません。

 ひょっとすると、舞台はウルムチから北京(中国政界)に移りつつあるのかも知れません。

 前回紹介したように、事件に関する当局発表を覆すような動きが出始めていることは要注目です。当局が「死者は現時点で197名」と発表し、7月5日のデモ隊への発砲については一切言及していなかったのに対し、あろうことか中国国内メディアから、

「7月8日時点で死者は200名以上」

「散発的な銃声が聞こえた」

 という、ちゃぶ台を引っくり返すようなルポが飛び出しました。前回紹介した『中国新聞周刊』の報道がそれに当たります。

 ――――

 なぜ当局発表に敢えて異を唱える記事が差し止められずに活字になったのかは目下のところ不明です。しかし今回のような大事件の場合、中国国内メディアは国営新華社通信から配信される記事を引き写すのが、しきたりといえば、しきたり。当局発表についてはなおさらのことです。

 ところがそれがないがしろにされてしまったのですから、これは政治的意図を秘めた記事ということを考えざるを得ません。

 こうなると当局発表の信憑性がますます疑われることになるのは必定。政治的な側面でいえば、当局発表を出した政治勢力に対し、反対勢力がそれを突き崩すような動きに出ている、ということになります。

 仮に当局発表が限りなく頼りない最高指導者・胡錦涛サイドから出されたものだとすれば、『中国新聞周刊』による報道はアンチ胡錦涛諸派が足を引っ張ったもの、要するに胡錦涛イジメということになります。差し止められなかったのは、仕切り役である党中央宣伝部がゴーサインを出した、ということになるでしょう。

 で、中国国内で『中国新聞周刊』がいうなればスクープをモノにした、という異例の事態まで話が進んだ訳ですが、今度はこれに続いてまたまた新展開。

 当局がいままで沈黙していた7月5日のウイグル人によるデモ隊と治安部隊の衝突状況において、実は治安部隊が発砲していて死者が出た、ということが新たに地元当局者によって明らかにされたのです。



 ●暴動でウイグル族12人射殺 中国、自治区幹部が認める(共同通信 2009/07/19/00:32)

 【ウルムチ18日共同】ロイター通信によると、中国新疆ウイグル自治区のヌル・ベクリ主席は18日、ウルムチ市内で5日に起きた大規模暴動に参加したウイグル族のうち12人を警官が射殺したことを明らかにした。

 ウルムチでは13日に傷害事件を起こしたウイグル族2人が警官に射殺されているが、暴動参加者の射殺を当局者が認めたのは初めてとみられる。主席は空中に向けた威嚇射撃を無視してウイグル族が住民を襲うなどしたためで「当然の行為」だったと語った。

 12人のうち3人は現場で死亡、残りの9人は病院への搬送途中や搬送後に死亡したという。(後略)



 この報道、厳密にはロイター通信、シンガポールの親中系華字紙『聯合早報』、そしてトルコの通信社による共同取材によって明らかになったものです。

 ●『聯合早報』(2009/07/19)
 http://www.zaobao.com/special/china/cnpol/pages2/cnpol090719.shtml

 取材を受けたのが新疆ウイグル自治区のトップである王楽泉・同自治区党委書記ではなく、ナンバー2のヌル・ベクリ自治区主席というのも何となく気になります。これは邪推の極みというべきものですが、今後何日か様子をみて、王楽泉が公の場に出て来なくなったのであれば、またまた下衆の勘繰りに取りかからなければなりません。

 ともあれ、自治区政府主席が正式な取材の場で語ったことですから、これが現時点でのオフィシャルということになります。……とりあえず、

「7月8日時点で死者は200名以上」

「散発的な銃声が聞こえた」

 という『中国新聞周刊』の報道のうち、後者については「追認」という形で当局が情報を開示したことになります。この「当局」にしても、地元当局が先走りしているのか、あるいは党中央の支持に基づいて地元当局が新ネタを披露したのかも興味をそそられる部分です。

 現在、ウルムチ市は外地からどんどん増派された治安部隊によって実質的に戒厳令状態にあります。「実質的に」というのは正式な戒厳令が布告された訳ではないので、行政は治安部隊ではなく自治区政府によって従来通り行われているという意味です。

 ただし、それは形の上だけのことで、イニシアチブは治安部隊が握っているのかも知れません。……その治安部隊がどの政治勢力の影響下にあるか、ということも重要であるように思います。

 ――――

 いずれにせよ,一昨日の『中国新聞周刊』と昨日の「発砲した」発言で、ウイグル人云々とは別に、中国政治における何事かがにわかに剣呑さを増しているといった印象です。その感触に間違いがなければ、引き続き何らかのサプライズが飛び出してくる可能性があります。





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 さてさて。妙な二ユースが流れてきました。……しかも中国国内メディアから。

 共同通信がいち早く報道しています。



 ●「暴動3日後200遺体以上」 中国誌報道、発表数上回る(共同通信 2009/07/17/19:20)

 【北京17日共同】中国の時事週刊誌「中国新聞週刊」最新号(7月20日号)は、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で5日に起きた大規模暴動で、3日後の8日に葬儀所で200人以上の遺体を見たとする漢族住民の遺族の話を報じた。

 中国当局は6日、死者数を140人と発表。その後、度々修正し、中国メディアは17日、197人になったと伝えた。早い時期から200人以上の遺体が葬儀所にあったとすれば、当局が意図的に死者数を抑えて公表していたことになる。

 200人以上の遺体を見たと語ったのは、暴動で死亡した漢族の男性の母親。8日午後、遺体が安置された葬儀所に行き1体ずつチェックし、計200以上の遺体を見た後、自分の息子の遺体が見つかったとしている。

 これに対し、中国の通信社、中国新聞社は17日、暴動の死者数が同日、197人となり、暴動による直接的な経済損失が6895万元(約9億5千万円)に上ったと報じた。(後略)



 おおお!……という訳で武者震いしつつ調べてみたところ、該当記事にたどりつきました。



 ●死者楊全紅(中国新聞周刊 2009/07/15)
 http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/768/3/1/1200020/1.html

 極度不安的等待持續了60多個小時,7月8日下午4點,楊全紅的家人接到政府工作人員的電話,通知他們去認領尸體。

 因為不想讓欒興燕受到過于強烈的刺激,楊全紅的母親親自到殯儀館去辨認尸體。母親一個一個地翻看,
看了兩百多號,在一具面目模糊的尸體前停頓了下來。



 ……と、共同電の通り、死者の母親は200人以上の遺体をひとつひとつ確認していった挙げ句、ようやく息子の亡骸を見つけたということになっています。

 そしてやはり共同電の通り、現時点における中国当局が発表した死者数は197名ですから、国内メディアで足並みが揃っていないことになります。

 さらにさらに。同誌の別の記事の中にはもう一点、7月5日の騒乱に言及したもので見逃せない描写がありました。これです。



 ●風暴眼中二道橋(中国新聞周刊 2009/07/15)
 http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/768/3/1/1200017/1.html

 騷亂發生時,張紅梅把一大群避難的人拉進了自己的店鋪,有維族,也有漢族。卷簾門拉了下來,還是聽得到凌亂的脚歩聲和
零星的槍聲。



 ウイグル人向け紳士服を扱う漢人(漢族=中国人)女性商店主が、騒乱を避けて逃げ込んできた漢人とウイグル人を店に入れて慌ただしくシャッターを下ろして難を逃れた、というものです。ただし、シャッターの向こうからは乱れた足音と「零星的槍聲」が聞こえてきた、と。

 この「零星的槍聲」とは「散発的な銃声」という意味なのです。7月5日に発砲があった、というのは当局発表では全く言及していない、いわば「新事実」。

 しかもこの記事はその手前に執銃警官が付近を巡回しており、強い日差しを浴びて黒光りする銃身が異様な雰囲気を漂わせていた、との記述があります。描写からして、手にしていたのはピストルではなく、長めの銃身を持つ自動小銃か突撃銃の類でしょう。原文は以下の通り。



下午五六點鐘是新疆日照最強烈的時候,秦一岩偶爾探頭望出去,看到有警察在帶槍巡邏,烏黒的槍管折射著明亮的日光。這氣氛有點異樣,不過秦一岩沒想到事態有多嚴重。



 この記事だけを読むと、その後にすぐ「散発的な銃声」ですから、発砲したのが治安部隊という印象を読者に与えることになります。

 これではいよいよ足並みが乱れていることになるではありませんか。

 混乱している?……というより、何やら政争の気配を感じてしまったりするのですが。

 特にこれ、週刊誌ですから、送稿から活字になるまでの間に新聞よりも時間があり、関係部門から「待った」が入る余裕が十分あった筈です。

 ところが、差し止められずに記事になってしまっている。しかも一部の内容が上記の通り、当局発表と大きく食い違っている。

 こうなると、どうも何らかの政治的意図があるように思えてなりません。とりあえず当局発表に異を唱える内容、ということにはなりますから。……むろん、邪推ですけど。

 怪しいなあこれは怪しい。……と思いつつ、取り急ぎ速報まで。


 ――――


 最後に改めて、今回の事件に際しての必読の良書3冊を紹介しておきます。「民族差別」「経済格差」などで片付けている日本のマスコミ報道では知ることのできない、民族浄化ともいうべきウイグル人が受けてきた悲惨な境遇を知ることができます。

 この中で特に核実験問題は今回マスコミが全くふれていないものですが、中共政権はウイグル人の土地(ロプノル付近)で40回以上にも及ぶ核実験を1996年まで行っています。これによるウイグル人の被曝とその後遺症は言及するまでもないことですが、シルクロード観光で現地を訪れた日本人も被曝している可能性があることを指摘しておきます。

 それから、放射性物質が黄砂とともに風に乗って日本へ飛来してきていることも。


中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書)
水谷 尚子
文藝春秋

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中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕
高田 純
医療科学社

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 ウイグルをめぐる事態について、香港紙があまり紙幅を割かなくなりました。旬なネタではなくなった、ということでしょうか。ニュースひとつひとつの粒は小さくとも、まだ日本のマスコミ報道の方が飽くことなく事件を追いかけているように思います。

 ウイグル人への武力弾圧や漢人(漢族=中国人)との民族衝突もヤマを越え、落ち武者狩りは続いているものの、事態は「戦後処理」ともいうべき段階に入ったということなのでしょう。新華社電を眺めていても、復興を伝えるニュースが目立って増えてきています。むろん、意図的なものでしょう。事件を「世界ウイグル会議」など内外の反体制勢力による陰謀が原因、とする糾弾報道は相変わらずですが。

 7月10日23時現在で「死者184名」そのうち漢族137名と発表された数字は今後も動かすことがあるのか、どうか。「世界ウイグル会議」はこれに対し、

「現地からの複数の未確認情報によると、死者数は千人とも3千人ともいわれている」

「ウルムチだけでなく、自治区西部カシュガルなどほかの地域でも死者が出ている」

 と反駁していますが、ここから先は情報戦ということになるのでしょう。

 ●「新華網」(2009/07/11/14:23)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/11/content_11691499.htm

 ●「MSN産経ニュース」(2009/07/11/08:04)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/090711/chn0907110806005-n1.htm

 ●「共同通信」(2009/07/11/11:21)
 http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071101000314.html

 ――――

 ともあれ「戦後処理」モードに入ったというのは、要するに外地から治安部隊をどんどん抽出してはウルムチ市をはじめ新疆ウイグル自治区の要所要所へと駐屯させ、実質的な戒厳令状態という腕ずくの強引モードで全てを押さえ込める目処が立った、と党中央が判断したことによるものと思われます。兵力増派はいまなお続いているのかも知れません。

「武装警察、新疆ウイグル自治区に引き続き『落下傘降下』」

 というタイトルの記事が香港紙『明報』に出ました。むろんこれは空挺部隊の話ではなく、落下傘降下が行われたのでもなく、防弾チョッキに身を固めた武装警察が現地へ続々と空輸されている、という意味です。このために空の便には一時的に混乱が発生しているとか。

 ●『明報』(2009/07/11)
 http://hk.news.yahoo.com/article/090711/4/d4tk.html

 いま現在、そしてこれからも当分、こうした圧倒的な軍事力のもと、去年のチベットのような「六四モード」下の「人民戦争」路線を基本にして事後処理に当たっていくのだと思います。

 ……というより、一党独裁を堅持して現在の中華人民共和国の領土を維持・保全するという中共政権の大原則に照らせば、それ以外に選択肢がありません。あるとすれば、現地での締めつけを緩めるか強めるか、被害者などへの補助をより手厚くするかどうか、逮捕者への処罰のレベルを上げるか下げるか、といった程度でしょう。

 一方で、最高指導者に就任してから5年近くにもなるのに、未だに最高実力者としての風格が伴わない胡錦涛の、党中央及び軍部に対する掌握力・指導力の不十分さも選択の幅をいよいよ狭めている、といえるかも知れません。

 政治改革、いや「党内民主の強化」すらかけ声だけで手がつけられず、超格差社会の是正を目的とした「和諧社会の実現」というフレーズに至っては余りに高すぎるハードルということで(たぶん)NGになってしまい、改善されぬ様々な格差のため毎日全国のどこかで陳情・デモ・暴動・ストなどが発生している。……という状況に直面しているのがいまの胡錦涛政権。漢人に対しても打つ手がないのですから、ウイグル人の怒りを和らげるソフトな対応などはできない相談というものです。

 ――――

 実は中共政権、意外に結構ガタが来ているのかな。……と思わせる気配が、今回の事件で垣間見えたような気がしないでもありません。上述したように、党中央の事件へのスタンスは去年のチベットに対したような「六四モード」下の「人民戦争」とみていいでしょうが、細かいところで、しかし見逃せない差異も存在しているのです。

 まずは事件に対し党中央が下した「深刻度」の判断です。いわゆる「定性」というものですが、今回は「人民戦争」のような火を噴かんばかりの激語が並ぶことはなく、「深刻な暴力犯罪事件」で済ませました。その気になれば「動乱」さらに最高レベルの「暴乱」(1989年の天安門事件)という認定になっても不思議ではないのですが、これが意外に低いレベルで落ち着いたというのは注目していいところだと思います。

 ●共同通信(2009/07/13/09:11)
 http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071301000185.html

 「圧倒的な軍事力を背景とした」強硬路線で事後処理、という基本線は同じなのですが、「定性」だけをみると当局発表の「死者184名」にも釣り合わぬソフトさです。要するに気を遣っているのだと思いますが、問題は党中央が誰に遠慮しているのか、ということです。

 対象は、直接的には現地のウイグル人と漢人であり、しかしながら実は少数民族を含む全国民なのではないか、というのが私の考えです。民族衝突も怖いが官民衝突も怖い、だからそうしたことの火種になる要素はなるべく穏便にもみ消しておきたい。……というのが党中央の出した毅然としているようでどこか弱気な結論ではないかと。むろん、この認識が維持されるかどうかは胡錦涛の指導力にかかってくるものです。

 同じ視点から、続々と現地入りしている治安部隊が向き合う相手も、ウイグル人だけでなく、多数派を構成する漢人も含んでいることでしょう。ウルムチ市では実際に、棍棒や鉄パイプ、包丁などで武装した漢人「自警団」と治安部隊の間で小競り合いも発生しています。これは日常的に発生している官民衝突と同じ性質のものです。動機が民族対立としても、小競り合い自体は「民」の意向(ウイグル人への報復=漢人の認識)を汲んでくれない「官」との衝突ですから。

 ――――

 ところで今回の一件において、ニュースとして中国国内に報道されなかったものがいくつかあります。ウイグル人は未許可とはいえ当初は非暴力的な請願デモを行っていたこと、治安部隊がデモ隊に発砲して死傷者を出したこと、警察車両ないしは装甲車がデモ隊に突入して多くの轢死者を出したこと。……などがまず頭に浮かぶところですが、他にもまだあります。

 (1)デモを誘発したのは広東省韶関市の玩具工場で6月26日に起きたウイグル人vs漢人の民族衝突であること。

 (2)ウルムチ市の漢人が勝手に武装して「ウイグル人狩り」を行うなど暴力的行為に及んだこと。

 ……の2点が私の興味を魅くところです。(1)については、民族衝突の原因が漢人によって流されたデマであることはすでに確定しており13名の逮捕者(うちウイグル人3名)を出しています。要するにこの衝突事件については当局が幕引きを急いだ……とはいえこれがウルムチ市のデモの引き金になったということは黙して語らず、なのです。

 いや、実際には因果関係は報じられています。ただこの事件が呼び込んだのがウルムチ市のデモではなく「暴力犯罪事件」ということになっています。そしてもちろん、それはあくまでも「世界ウイグル会議」など内外の敵対勢力による陰謀が奏功したもの、ということにされています。

 ●「新華網」(2009/07/07/10:08)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2009-07/07/content_11666058.htm

 とはいえ広東省のこの事件、とりあえず、単純な民族衝突事件として扱っている訳でないことは確かです。……というのは、この記事の文末には、関係部門(たぶん党中央か国務院)が省・市の警察部門に対しこの事件への捜査をより一層強化するよう求めていることが明記されているからです。

 そしてさらに明記されているのは、捜査を強化することで、

「社会を安定させ、民心を慰撫する」

 という尋常ならぬ一節です。もちろんこれは、この民族衝突事件が「社会と民心の安定」を揺るがしかねないものだと当局(=中央)が認識していることの表れに他なりません。上述したように、幕引きを急いでいる様子でもあります。タイミング的には、ウルムチ市の事件に即応したものといえるでしょう。ビビッているのです。

 ――――

 (2)については全国で似たような異なる民族あるいは村落同士などの衝突に波及することを避けるべく当局は沈黙しているのでしょうが、実際に治安部隊と小競り合いになったウルムチ市の「自警団」への処罰が密かに行われるのかどうかが興味深い点です。黙しているとはいえ、当局は漢人のこの行為に批判的だからです。

 ……ということがなぜわかるかといえば、単独のニュースとしては扱われていないものの、当局が批判的であることが新華社電で中国国内にも配信されているからです。新疆ウイグル自治区のトップ・王楽泉・自治区党委書記が7月7日に行ったテレビ演説でこのことに言及してしまっています。

 王楽泉は「殴打・破壊・略奪・放火」といった行為が沈静化し、現地の社会秩序が安定を取り戻したことに触れたあと、

「こうした状況下にあって、区都(ウルムチ)は本来正常な社会秩序を取り戻す筈だった。しかし今日(7日)に入ってから、一部の職場の漢族従業員や民衆がそれぞれひとまとまりとなり、中には街頭に出て、本来すでに正常である筈の治安や秩序をゴタゴタに乱している。感情的になって、ウイグル族民衆と対立する者まで出ている」

「よく考えてみてほしい。もし漢族民衆がまとまって罪のないウイグル族民衆に手を出したら、これも(暴力犯罪事件と)同じように道理の通らないものであり、広範な各民族の党幹部や民衆の心を傷つけるものではないか?」

 ……と、はっきりと漢人「自警団」を批判し、ウイグル人に手を出したことも明言し、弾劾する一方で諄々と説諭を加えています。

 この記事は現在でも修正・削除されることなく普通に読むことができますから、「自警団」に対する批判もいまなお有効、ということになるのでしょう。では連中を逮捕するのか?逮捕するとすればどう裁くのか?といったあたりは、問題そのものは些末なことながら、党中央における意見対立のタネ、つまり政局になる可能性をはらんでいるといえるかも知れません。

 ●「新華網」(2009/07/07/18:23)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-07/07/content_11668718.htm

 しかしこの「自警団」跋扈の一件、テレビ演説の切れ端ではなく単体のニュースとして扱われていたら、いかに当局から糾弾されているとはいえ、全国各地で似たようなことが起こりかねません。武装した「民」のグループが無数に、わらわらと湧いて出るのです。……それ故に一種の報道規制のようなものが敷かれているのか、でもテレビ演説は後段で説諭しているからOKなのか、そのあたりはちょっとわかりません。

 ――――

 「戦後処理」という点では、治安部隊に対する論功行賞も密かな注目点といえるでしょう。あの天安門事件で旗下の野戦軍を北京に派兵して武力弾圧を断行し自ら血しぶきを浴びた楊尚昆・楊白冰兄弟は事件後、重用されました。似たようなことが今回も行われるのかどうか。

 胡錦涛の指導力が未だに不十分であることから、実質的な最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の間で意見対立が起きる可能性がありますし、8月1日の建軍節を前に制服組を手なずけるべく昇進や昇格といった「お中元」が胡錦涛から出される時期でもあります。

 報道からわかるのは、党中央から現地に派遣された高官はいずれも治安系統の人間である周永康(党中央政治局常務委員)と孟建柱(国務委員・公安部長兼同部党委書記・党中央国家反テロリズム協調小組組長)で、いずれも胡錦涛とは比較的疎遠、というより江沢民系に近い人選だったということのみです。

 胡錦涛ペースなら上記二人のうちひとりは職能上仕方ないとしても、もうひとりには「民心の安定のため」ということで温家宝・首相か胡錦涛の腹心である李克強・副首相が現地に向かっていたのではないかと思うのですが……。

 さらにキナ臭い話をするなら、今回の武力鎮圧は今年秋に開かれるであろう党中央委員会全体会議の議事にも影響することでしょう。現地の責任者である王楽泉がどう扱われるかという問題は小事としても、制服組に対する必要以上の抜擢(=発言力の強化)が行われる可能性があります。

 より重要案件として、李克強のライバルで次世代トップを争う出世レースでは一歩先を進んでいる感のある習近平・国家副主席が党中央軍事委員会の副主席あたりに就任することになるかも知れません。

 ……こうした処遇問題も、「戦後処理」の過程で新たに浮上する中国政界の変数となることでしょう。

 四川大地震に対する救済・復興と北京五輪で一応まとまることのできた昨年と比べ、リーマン・ショックを発端とする世界的な景気後退で膨大な失業者が創出され、社会不安がいよいよ高まっている今年は同列に論じられない部分があります。

 党中央はチベット問題に対したのと基本的には同じ姿勢でウイグル問題に臨むとみられるものの、「内憂度」がひときわレベルアップしているだけに、権力闘争を含め波乱含みの展開となる可能性もあるのです。





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 ウイグル人による抗議デモに対し治安部隊が武力鎮圧を断行したことで事態が死者156名・負傷者1080名を出す騒乱に発展した新疆ウイグル自治区・ウルムチ市での一件、日本のテレビでもニュースなどで取り上げられていますから、大略を御存知の方が大半かと思います。

 当局が大挙繰り出した治安部隊は、デモ隊に実弾射撃を行っただけでなく、警察車両(武警の装甲車?)をデモの隊列に突っ込ませて片っ端から轢き殺していったといわれています。デモ隊だけでなく近くにいた漢族(中国人)で巻き添えになった人も相当数いることでしょう。

 ただし、事件による死傷者数は死者156名・負傷者1080名という6日19時の時点の数字で止まっていますから、当局は騒乱自体の幕引きを急いでいるのだと思います。

 もっとも、デモに関与したと当局が認定したウイグル人を警官隊や武装警察が根こそぎ連行したままです。その数たるや約1500名というのですから、尋常ではありません。

 事件を受けてウルムチへと大挙屯集した海外の報道陣に対し、当局は鎮圧は一段落したとみたのか、7日に報道陣に対し恐らく強制的に「取材ツアー」のようなものを実施しました。「ツアー」なのは勝手に取材されては困るので当局にとって都合のいい場所だけを見せる、という含みがあります。

 ところが。焼き打ちされた車などが並んでいる場所を「ツアー」が撮影しているところに、噂を聞きつけたウイグル人女性約200名が集まって、連行した親族を返してほしいと涙ながらに陳情。当局もこれを持て余したのか、予定時間を切り上げて「ツアー」一行をバスに押し込み、他の場所へと移動させました。

 ――――

 もっとも、当局の頭をより悩ませたのは、地元の漢族住民がウイグル人に対抗して鉄パイプや棍棒、包丁などを手にして集まり、大通りを練り歩き始めたことかも知れません。

「やられたからやり返す。今度はおれたちが奴らをやっつける番だ」

 という剣呑な空気を漂わせての示威活動。ウイグル人が経営する商店を襲撃したという情報もありますが、ともあれ警官隊はこの連中に催涙弾を放って追い散らした模様です。ウルムチ市には万一に備えて夜間外出禁止令が出されました。

 ちなみに、「今度はおれたちがやる番だ」という空気で漢族が動き始めたということは、武力弾圧による死者の大半はやはりウイグル人、ということを感じさせます。

 ともあれ。もともとウイグル人の土地だった新疆ウイグル自治区の人口は、当局の積極的な植民政策により、いまでは漢族が過半数を占めています。手元に資料がないので確認できませんが、ウルムチ市も区都なだけに漢族人口の方が多いかも知れません。

 この漢族が動き出して治安部隊と本格的な衝突となれば、より大規模な騒乱に発展する可能性があります。日頃から虐げているウイグル人の異議申し立てに対しては叩きに叩いて根こそぎ連行すればOK。でもそういう民族衝突より「漢族vs漢族」の方が怖い、と当局は考えているかも知れません(治安部隊が全員漢族という訳ではありませんが)。

 もし漢族の不満分子が治安部隊と衝突して死者でも出ようものなら、これもこれで大変な騒ぎになりそうです。ウイグル人には虐げられてきた怒りがありますが、漢人にも当局によるウイグル人懐柔策のために我慢してきた部分があるでしょう。一端火がつけば、どういう騒ぎになるかわかったものではありません。

 ――――

 そんなことを考えていたら、今年が55周年であることを思い出しました。新疆生産建設兵団のことです。

 これはいわば植民政策の尖兵。この地域に駐屯していた人民解放軍から一部を抽出して一種の屯田兵に仕立て上げたものです。軍籍はありませんが、いざというときには軍事組織として機能するようになっています。

 その重要性から、指揮系統も国と地元当局の二元管理。「兵力」は現在約250万人です。

 この新疆生産建設兵団が今回の武力鎮圧に関与したかどうかは目下のところ不明ですが(たぶん当局は通常兵力を投入したと思われます)、実はこの組織自体が、

「こんな場所で埋もれ木になるのは御免だ」

「原籍地に帰してほしい」

 という鬱屈を日頃から抱え込んでいることは、ウイグル統治において党中央の懸念材料のひとつになっています。

 実際、その主張を行動に移して暴動が発生した、という伝聞が流れ、党中央からお偉方を派遣して慰撫に努めたこともあります。

 2005年のことですが、当時治安部隊の元締めだった羅幹と、中国における実質的な最高意思決定機関・党中央政治局常務委員のメンバーで当時は政治的にも健康的にもまだ「心電図ピー状態」ではなかった黄菊が相継いで視察に訪れています。よほど不穏な空気が新疆生産建設兵団を支配していたのでしょう。

 軍事組織としてすぐ動ける能力を持たされているだけに、漢族住民による官民衝突がこの新疆生産建設兵団に飛び火すれば、その鬱屈の鉾先がウイグル人に向けられるにせよ「官」に向けられるにせよ、党中央にとってはウイグル人の蹶起以上に恐ろしい事態となることでしょう。

 ――――

 ……で、「漢人vs漢人」という状況が現出してしまうと、前回指摘した「六四モード」下の「人民戦争」、つまり「異民族」ウイグル人(の中の敵対分子)に向け国民の怒りを募らせる、という当局の目論見がもろくも崩れ去ってしまうことにもなります。

 崩れてしまえば、そりゃもう「あらえっさっさー」であります。

 漢族住民の不満もウイグル人に対してだけではなく、例えば文化大革命期に「下放」されたまま戸籍を現地に移され、故郷に帰ることができずストレスを蓄積してきている元知識青年、それに当局の命令で強制的に植民させられた者など、「官」への恨みつらみもあって、なかなかに複雑です。

 新疆ウイグル自治区が中共政権による独裁統治にとっての火薬庫と表現されることがありますが、これは単に民族問題だけでなく、漢族住民が可燃度の高い鬱屈を抱えていることも含んでのことであるという点を、この機会に再認識しておくことは決して無駄ではないと愚考する次第。

 ●新疆はやはり不穏でした(2005/08/04)

 ●東突解放組織が中共に宣戦布告。(2005/10/01)

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 そういえば、サミットに出席すべくイタリア入りした中国の最高指導者・胡錦涛は、今回の事件を受けて予定を切り上げ、サミット開催を待たず帰国の途に就いたそうです。

 党中央が現状を非常事態と認識している表れといえますが、何を最も懸念しての急遽帰国か、また権力闘争の側面もあるのかなど、色々と邪推できそうですね。

 ●「明報即時新聞」(2009/07/08/07:12)
 http://inews.mingpao.com/htm/inews/20090708/ca30712k.htm

 余談ですが、こういうときはやはり人民解放軍機関紙の『解放軍報』だろうなあ、と記事を漁ってみたら、果たせるかな武力弾圧の翌々日である7月7日付紙面で、新疆ウイグル自治区駐屯の武装警察(新疆生産建設兵団?)が井戸を掘ったり品種改良技術を伝授したりして地元民である少数民族に感謝されている、という記事がありましたとさ。





http://www.chinamil.com.cn/site1/zbxl/2009-07/07/content_1826451.htm


 こういう「わかりやすさ」が官製報道の醍醐味。いやーたまりません(笑)。





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 現在まだ検査入院中ゆえ、諸事手許不如意となってしまい申し訳ありません。愛機マクブクを持ち込んではいるのですが、人目につくとマズいので、タイミングを測って非常階段で皆さんからのコメントを読んだりしています。レスすることができず申し訳ありません。

 ただし今回は特例。前回のエントリーにコメントを寄せて下さった、「香港人」さんへのレスです。



●Unknown(香港人) 2009-06-04 23:13:38


20年前はわたしちょうど高校生でした。

学校も天安門にデモや絶食している北京の大学生のことを全校の生徒を集まり、一緒に唱ったり、学生さんがどうしてこういうことしているのかを説明してくれました。

その後、同級生や兄弟にも一緒に香港で何回か、デモを参加しました。

もう忘れかけていましたが、御家人さんのブログにこの映像をみて、その時のことを思い出しました。

やっぱり悲しく涙もでました。

未だも学生さんたちが悪者にされて本当に可哀想です。

国を愛しているだけなのに。。。。

わたしはやっぱり中国ではなくて、香港で産まれてきて親に感謝しています。



「香港人」さん:

 初めまして、御家人です。m(__)m

 いま入院中でPCを自由に使えないので、こっそりと非常階段からレスします。

 私の配偶者(妻)も香港人で、あなたと同世代で、あなたと全く同じ体験をしました。

「中国ではなくて、香港で産まれてきて親に感謝しています」

 というのも、配偶者がときどき使う言葉です。

 六四事件当時、私は上海の大学に留学していました。当時交流のあった中国人大学生たちは、いまでも私のことを「戦友」と呼んでくれます。あなたも、私の「戦友」ですね!私と親しい当時の学生たちも、きっとあなたのことを「戦友」と呼んでくれることでしょう。

 ――――

 人間は、憤激が極点に達すると涙が出るということを、20年前のあの日、私は初めて知りました。

 私は前回掲載したYouTubeの動画を、一年に数回だけ観るようにしています。理由はあなたと同じです。この「血染的風采」を観てしまうと、悲しさと怒りと、そして当時の学生たちの「無奈」な気持ちが心いっぱいに湧き上がってきて、仕事ができなくなってしまうからです。

 いま、香港の政治状況も大きな変化を迎えています。あなたや私の配偶者のように、英国の植民地時代に教育を受け、六四事件に接し、「中国の植民地」になる前に成人した世代は、香港の政治的・社会的現状について「無奈」を感じることが以前より増えているかも知れませんね。

 一人ひとりがやれることは、ほんの少ししかありません。一人ひとりの行動による作用は、実に小さいものです。それでも私は、「香港人」さんが一人でも多くの若い香港人たちに、六四事件のころの思い出を話してくれればいいな、と考えています。

 香港の歴史に基づいていうなら、あなたたちの世代は、香港における最後の「良心ある世代」なのです。

 中国から強要された現在の教育を受けている香港の若い人たちは、すでにあなたたちとは少し違う価値観を教育によって身につけていますから、あなたたちの体験を消化するのは、難しいかも知れません。

 それでも、やはり一人でも多くの若い香港の人たちに、「香港人」さんが御自分の体験とそのときに感じたこと、考えたことを話をしてくれたらいいな、と私は考えています。





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★★★「血染的風采」by 梅艶芳★★★






平 反 六 四





あのときのこと。






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 例の中国がなりふり構わずの熱暴走に出た件です。


 


 1兆円の影響とはタダゴトではありませんね。実に剣呑。この「強制認証」というトンデモ制度について当ブログでは、

 ●マジっすか?中国でITの「技術盗用」を合法化する動きが!(2009/04/28)

 ……というエントリー&コメント欄で情報は出尽くした観があります。日中首脳会談で中国側は導入を1年先に延期したことを明らかにした、とのことですが、これって織り込み済みの予定調和では?と私などはつい勘繰ってしまいます。

 世界に例をみないトンデモ制度である「強制認証制度」をまずブチ上げて、諸外国の反応をみる。要するに今回は延期を前提に飛ばしてみた観測気球だったのではないかと。

 ……などと考えていたところ、高校時代のバンド仲間で、シンセを朝イチでレンタルするために一緒に大森のマンション駐車場で新聞紙をかぶって野宿した(コンセントがあったので打ち込みもやりました)S氏が理系で対中ビジネスに関わっていることを思い出しました。

 技術指導のために現地に駐在員を置いたりS氏自身が現地に出張したりしていると聞いていたので早速尋ねてみると、文系しかも落第生である私にもわかりやすいレスが返ってきました。上の動画もS氏に教えてもらったものです。



 ソースコードの開示なので弊社では理化学機器の制御ソフトに影響すると思われます。今回は特に家電関係は大きな影響を来たすと思われます。動画でも解説しておりましたが,ソースコード、いわゆる製品の肝心な機能や制御を命令するプログラムの中身です。

 実際に製品を機能させるためには,ソースコードをマシン語(懐かしいですね,よくFM8でやったじゃないですか)にアセンブラーで変換させるのですが,その変換する前の言語なので容易に解読できてパクれるというものです。

 中国自体,9兆円かけて技術を進歩させているようですが,思ったように進歩しておらず,手っ取り早く他国の進歩をパクろうとしているのだと思います。



 ……ええ、あのときNECを選ばずに富士通に走った私は負け組。MZ-80にすら負けているような。アイオーとかいう雑誌を毎号買って、機械語で打ち込んではギャラクシアンで遊んでいたものです。あとBASICを勉強してみたり。記憶媒体はカセットテープでしたからねえ。

 ともあれFM8は「ニセ漢方医」に次ぐ私の黒歴史のような気が。いままでずっと忘れていたのに。orz

 でも、高三の夏には楽器店で品切れ続出だったシンセ・DX-7を、広辞苑の綴本工場でバイトしてゲットしたのだけは誇っても良いのではないかと。……とかいう話ではありませんね。すみません。

 ――――

 閑話休題。

「中華復興のためなりふり構わずパクるアルヨ」

 というこのトンデモ制度、これはこれでナショナリズムの風が吹きかねないネタではあります。とはいえ「強制認証制度」を中国のネット世論が熱烈に支持したりするのを目にしたら、また愛想が尽きてブログを書く気力を失ってしまいそうです。そこまでムチムチ(無知無恥)なら、もう救いようがありませんから。

 この「強制認証制度」に対して、政府間レベルでは日米欧の協調が何よりも大切です。では企業単位では?……というのが私の知りたいところです。制度に関する内容は周知されているように思うのですが、各企業がそれぞれどういう対応策を練っているのかに興味津々。

 危機管理への本気度は各社まちまちでしょうから、その辺の様子がうかがえて面白いのではないかと思うのです。逆にフライングするところも出ることでしょう。でも気合いの入った贈賄めいたことをすれば免れられるものなんでしょうか。

 てな訳で社外秘情報求ム、なのであります。降って湧いたような「強制認証制度」について、関連部門や現地のリアクションなども知りたいところです。社外秘情報は無理でも、リアクション程度なら皆さん、教えてくれますよね?

 どのくらいの危機感で受け止めているのか。対中ビジネスマンの皆さん、どうか教えて下さいませ。m(__)m

 ――――

 それにしても中国当局のこの発想、日清戦争における北洋艦隊と全く同じですね。

 S氏が指摘しているように、カネをかけて産業構造のグレードアップには励んでいても、思うようにいかない。30年も改革開放政策をやってきたのに、技術の基盤がしっかりしていないから、公然とパクリ宣言をするなんて暴挙に出る。パクっても栽培過程を省いて果実だけをもぎ取っていくようなものですから、所詮は劣化コピー品しか作れないでしょうけど。

 なぜ技術の基盤がしっかりしていないのかといえば、まあ、これですね。

 ●雑談:愛国主義教育なるものについて。(2009/05/09)

 先進的なもの、ワールドクラスのものに対して国民レベルでの吸収力がない限り、技術立国は無理、というのが私の考えです。

 むろんだからといって捨て置く訳にはいきません。剣呑でトンデモであることには違いありませんから。私は当分記事漁りNGが続きそうなので、あと転居もあるのでこのネタにスッポンマークという訳にはいかないのですが、まずは皆さんの情報提供をお待ちしております。





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 どうしても看過できない蠢動というのはあるものです。それが日本に深く関係するものなら、なおさらのこと。

 という訳で今回は、いわば技術盗用を合法化せんとする件の話題について。まずは前回までのコメント欄に寄せられた、懇切この上ない「dongze」さんによる解説と、いつも現地から詳細なレポートを送って下さっている「シンセン在住」さんのルポ&ヲチ、それから「piyo」さんによる補足を以下に紹介します。

 いやー2005年春の反日騒動のときもそうでしたが、何か起きたときにこういう形での情報発信ができるというのは当ブログの醍醐味。皆さん本当にありがとうございます。m(__)m

 まずは今回の「非常事態」をすっぱ抜いた『読売新聞』の記事(GJ!)、その後に当ブログに寄せて頂いた関連コメントを並べます。



 ●中国、ITソースコード強制開示強行へ…国際問題化の懸念(YOMIURI ONLINE 2009/04/24/03:10)


 中国政府がデジタル家電などの中核情報をメーカーに強制開示させる制度を5月に発足させることが23日、明らかになった。

 中国政府は実施規則などを今月中にも公表する方針をすでに日米両政府に伝えた模様だ。当初の制度案を一部見直して適用まで一定の猶予期間を設けるものの、強制開示の根幹は変更しない。日米欧は企業の知的財産が流出する恐れがあるとして制度導入の撤回を強く求めてきたが、中国側の「強行突破」で国際問題に発展する懸念が強まってきた。

 制度は、中国で生産・販売する外国製の情報技術(IT)製品について、製品を制御するソフトウエアの設計図である「ソースコード」の開示をメーカーに強制するものだ。中国当局の職員が日本を訪れ製品をチェックする手続きも含まれる。拒否すれば、その製品の現地生産・販売や対中輸出ができなくなる。

 どの先進国も採用していない異例の制度で、非接触ICカードやデジタル複写機、金融機関向けの現金自動預け払い機(ATM)システムなど、日本企業が得意な製品も幅広く開示対象になる可能性がある。

 中国側は、ソフトの欠陥を狙ったコンピューターウイルスの侵入防止などを制度導入の目的に挙げる。しかし、ソースコードが分かればICカードやATMなどの暗号情報を解読するきっかけとなる。企業の損失につながるだけでなく、国家機密の漏洩(ろうえい)につながる可能性もあるため日米欧の政府が強く反発。日本の経済界も昨秋、中国側に強い懸念を伝えた。

 中国は当初、08年5月に実施規則を公表し、09年5月から適用する予定だった。各国からの反対で、中国当局が今年3月、制度実施の延期を表明したが、これは適用開始までの猶予期間を設けることを指していたと見られる。

 猶予期間はメーカー側が提出する書類を用意する時間に配慮したものだが、いつまで猶予するかは不明だ。日米欧の政府は詳細が分かり次第、中国側に問題点を指摘し、制度の見直しや撤廃を求めていくことになる。

 ◆ソースコード=コンピューター用の言語で書かれたソフトウエアの設計図。企業の重要な知的財産で、ソースコードが流出すれば開発成果を他社に利用される懸念がある。マイクロソフトは基本ソフト「ウィンドウズ」のソースコードを機密情報として扱い、巨額の利益につなげた。



 ここからは当ブログに寄せて頂いたコメントです。というより実質的には現地ルポ&ヲチを含めた貴重な「関連報道」。




 ●ITでの増長 (dongze) 2009-04-26 08:29:11


 ITでの増長は、まあ今回のは集大成のようなものかも、piyoさんのいうように「対中国輸出規制」を設けるのが一番手っ取りばやいですが、民生用のデジタル機器とかより、TCP-IP世界の暗号化関連が一番の狙いでは?と業界筋は古くから見ています。CCCの出来かけの頃からこの政策はいつも見え隠れしていて、とうに意図を見透かしている欧米&日本(+香港/シガポールあたりも反対していた)が政府筋でずっと監視&圧力かけ続けておりましたよ、この件は(ここいらへんはpiyoさんもご承知では?)

 シナからすれば(ダメリカが弱っている)この時期ようやく日の目を見たということですから、WTOやらなんやらで決定的なお達しを出すまで止めない(&それでもまた別の手を使う)でしょうなあ。→だから増長なのですが。

 世界の工場として中国を使うことを止めるのが一番ですね、エコな環境でない国(電力は石炭、水質は自国民どころかクラゲだの、畸形魚だので他国にも迷惑かける始末、知的財産はダブスタどころか強奪しか頭にない=単に人件費が安い:最近そうとも言えない)への投資は引き上げるとしましょうよ、もうすでに外貨準備見れば支払いは十分以上してあるし、、ね。


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 ●IT増長その2 (dongze) 2009-04-26 08:44:11


 ちょっと不正確な書き方ですが、一般向けではわかり易いかと例のお達しの適用範囲は以下のとおりになります。

 ファイヤーウォール、LANカードおよびスイッチングハブ、VPN、ルータ、インテリジェントカードおよびICチップ用OS、データバックアップおよびリストア用ソフトウエア、OS、データベースシステム、迷惑メール防止製品、不正アクセス侵入探知システム、ネットワーク監視システム、操作履歴やログの収集分析ツール、ファイル改ざん検知システム(引用ソース:http://www.nikkeibp.co.jp/news/china08q3/585650/

 後ヒントは「金橋」PJです(ねえpiyoさん)


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 ●振り返さないでちょ (piyo) 2009-04-26 11:16:32


 「金橋プロジェクト」とは、政府機関、50以上の主要都市、多数の研究機関、企業を結ぶ、公共情報ネットワーク構築プロジェクトである。プロジェクトは以下の段階からなる。(1)16都市を結ぶバックボーンの構築、(2)アップグレードと他の都市への拡大、(3)同期ディジタル・ハイアラーキ(SDH)技術の導入。「金関プロジェクト」とは、貿易業務用に特別に設計された情報ネットワークのプロジェクトである。税関と貿易部門の情報ネットワークを接続し、 EDIビジネスを促進し、磁気媒体の情報に代り情報をネットワーク上で交換されるようにする。「金カード・プロジェクト」は12のプロジェクトからなり、中国のバンキング・システムを、マルチ・バンク・ネットワークへのアクセス可能な、デビット・カード付きのバンキング・システムにするプロジェクトである。2000年までに2億枚の決済カード流通を目標とした。

 ……CCCやらRoHSやら出来もしないことを次々と、、。


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 ●もちょっと詳しいのが (dongze) 2009-04-28 06:28:04


 もうすこし詳細な対象製品リストPDF版(でもこれ日本人の翻訳じゃないな、、、)がありました。ご参考まで。

 http://www.csaj.jp/government/
 http://www.csaj.jp/government/other/2008/080627_list.pdf

 これ見方を変えると、逆キャッチオール規制なんですよね、チナ様に逆らう製品はダメという。


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 ●DVD!DVD! (シンセン在住) 2009-04-26 11:03:23


 今回の、ITソース強制開示の件、自分も気になっております。

 自分は、中国人ワーカー同様、ただただ作るのが担当なので、現在どんな製品を作っていても「IT」からは逃れられず、世界の工場たる中国としては、その呪縛をより強く感じているのだろうと感じます。

 今回の案、半年ほど前に見たときには、DVDプレイヤーの特許問題を思い出し、知材権という概念が乏しい中国人からすると、ああいうことは納得ができない、外国が因縁つけてきた、みたいな感じで、こういう無茶な案が出てきたのかなあと。

 “特許攻撃”で中国DVD産業が壊滅へ
 http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/china/comment/060526_dvd/index.html

 産業の高度化を謳う、シンセン市の今年の人民会議では山寨企業を合法化して育てていくような案が出ましたが、数日後には発言を撤回したという続報がありました。

 なんで取り消したのか?一次ソースが読めない自分の全くの推論ですが、現時点で合法化しても、DVDのように特許料を抜かれて損だ、というような計算もあるのではないかと邪推しています。

 下記記事によると、山寨の主力商品であるミニノートでは正規品との価格差は30~40%ということ。
例えば正規品のミニノートでは価格の半分がOS代といわれていますので、現時点で合法化してもコスト競争力が保てなさそうです。

 ●拡大を続けるクローンノート PC 市場、メーカー数は300~400社
 http://japan.internet.com/finanews/20090424/2.html

 現状、大手メーカー、販売店でも、リナックスOSで販売→海賊版Windowsはサービスします、みたいな売り方をしていますが、PCだからできることであって、電子家電の中に組み込まれたソフトはこういう売り方は出来ないわけで。

 世界の「組立」工場からの脱却が、現状のテーマ、そのためにソフト、知材の国産化が、一番の戦略的課題なのでしょうけれど、今回の泥棒の居直りのような法律に対しては、さすがに日本当局の反発も必至でしょうし、こういう案が出てくるだけでも失うものもあるだろうに(信用?何それ食えるの?という感じなのかなあ)。

 現状でも、華為のような昨年の特許世界出願数世界一の企業も出てきており、本件、全く譲歩できる余地はないと思いますが、この円高+不景気で、中国移管を検討されているお客様が増えているなあ、というのが当地での実感です。





 私は中国の民度の低さから、中国経済が当面はグレードアップできないと考えていたのですが、まさかこんなパワープレーに走るとは思いもしませんでした。余りに出来過ぎた話というか、そういう脚本書けって言われてもベタ過ぎてリアリティがありませんから。

 まず言えるのは、世界的な景気後退の影響を、対外依存度のバカ高い中国の経済・社会がもろに受けたのだろうということです。たぶん私たちの想像以上に。その深刻さは中国指導部の予想を遥かに超えていたのではないかと。

 もう一点は、こんなことをやっても無理、ということです。一党独裁体制の維持のため愚民化教育をやめない中国に、世界レベルのものを受け入れるだけのキャパシティがあるか、どうか。……とりあえずいえるのは、日本をはじめ海外の関連企業がとてつもない迷惑というより大損害を受けるのは必定、ということ。

 私は理系はてんでダメなのでわかりませんけど、何事も一般市民レベルの民度が全てだと思うのです。

 これをやって何が起こるかといえば、一時的にはともかく、結局今度は自国製品の海賊版が猖獗を極めるだけではないかと。パクリは結局のところパクリで、原版(オリジナル)を越えることはできません。越えるだけの技術が、中国にはまだ育っていないのではないかと。

 解答を見ながら算数のドリルを埋めていくような作業です。解答を見ながらだから全て正解なのですが、それによって設問を解くだけのスキルが身についたかといえば、それは無理でしょう。

 ――――

 重ねて申し上げますが、私は理系はてんでダメなのでわかりませんけど、技術の接ぎ木というのは、受け入れる側にそれを吸収し得るだけの素地がないと無理、というか長続きしないように思います。いわば、北洋艦隊アゲインです。

 改めていえば、解答を見ながら算数のドリルを埋めていくような作業です。これで学力がどれだけ伸びるかは甚だ疑問ではないかと。

 私はかねてから中国経済が次の段階に進むにはどうするべきかということに興味があって、兄貴分のカリスマ教授が来日するたびにそういう話題で意見交換をしたりしていたのですが、常に結論は「国民レベルでの教育水準の向上」でした。

 底辺=国民レベルという基礎が土台として確たるものでなければ、パクったものを越えることは難しいのではないか、というのが私の考えです。というより体験から得た私なりの見方というべきでしょうか。

 私が本籍を置いている香港の業界が十数年前から同じことをやっているのです。パクリ度が高まるばかりで、香港オリジナルというべき独特な要素が10年以上待っても出てきません。いつまでも「ファ×痛」の、サルマネ。

 むろん、「ファ×痛」が如何にイタい雑誌ということも理解できていません。「ファ×痛」がライトユーザーに広く受け入れられている雑誌、と信じている奴らがたくさんいます。

 それを一応業界のご意見番的な立場にいながら、放置しておく私も私ですけど。だってそのおかげで私は副業での引き合いが増えるのですから。ありがたやありがたや(笑)。

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 それにしても、WTO加盟国のすることではありませんね。私もまさかこんな挙に出るとは考えていませんでした。実力が実力ですから吸収力はなくても、海外の有力企業をM&Aで取り込むという方法でしのいでいくのかな、と思っていたのですが、正に予想の斜め上。

 異論はあるかも知れませんが、こんな方法で中国経済が「世界の工場」から次の段階に進めるとは、私にはとても信じられません。上述したように、ドリルは百点満点でも、解答を見ながら埋めていった結果でしかありませんから、そこに至る道筋はすっ飛ばしているのです。

 中国版新幹線のように、海外からの技術導入でようやく目処がたったものを「国産」と僭称する方が、まだ潔いではありませんか(笑)。

 とはいえ、世界同時不況の折も折ですから、「13億市場」のような幻覚に未だに捕らわれている企業がまだまだ多いということで、かようなまことに無理無体としか表現しようのないリーチが通ってしまう可能性も決して低くはないでしょうね。

 すでに中国へ進出している企業に対しても有形無形の圧力が加えられるかも知れません。話はややズレますが、撤退しようにも何からの因縁をつけられてそれができない企業も少なからずあるでしょう。

 ともあれ、私はこの事態にあんぐりです。これは盗人猛々しいというより、盗人そのものの行為ではありませんか。ああそうか、これが正に「中国の特色ある社会主義」の発露なんだな、と呆れています。

 しかし、軽く笑い飛ばせないところが深刻です。外資企業に門戸を開いて30年にもなるのに、技術の実が育たないという現状、それから世界的な景気後退がもたらした影響に中国指導部が頭を抱えてしまっているのだろうな、と感じるのみです。

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 以上、私が明らかに消化不良を起こしているのを承知で臆面もなく書いてみました。関連業界に広がっているであろう空気や「ここだけの話」、そして欧米の動き、また中国側の最新情報など、皆さんからの続報をお待ちしています。

 こういう事態に際しては、本当に皆さんが頼りなのです。m(__)m





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 昨日はたくさん書いたので今日は手短に済ませます。ていうかまた徹夜明けながら今度は仕事で一日都内を歩き回っていたので、またまた例のマクロ血尿。

 ……と書くと、何やら痩せ細り青白い顔をした私が地下鉄に乗ったり桜並木の街路をフラフラと歩きつつ、ときおり咳き込む口に思わず当てた掌をみると血が……てな悲壮感が漂いかねませんので申し上げておきますが、実際には薬害で海坊主と化した一見メタボちっくなオサーンがのっしのっしと徘徊しているのです(沖田総司ではなく原田左之助)。

 マクロ血尿にしても数日に一度はお目にかかることができるので、これはこれで常態。先日、ある親しい年長者から「あまり生き急ぐな」と有り難い御言葉を頂いたのですが、なーにそんな格好の良いものではありません。「明日やろうは馬鹿野郎」、一寸先は闇ですからこれを励行しているだけでして。

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 与太はさておき、「相変わらずな中国」の一例を今回は御紹介します。さる4月4日は「清明節」といって、中国ではお墓参りをする日。日本でいうお彼岸のようなものなのですが、最近それで話題になっているのは墓地の地価が高騰しているというニュース。庶民にはとても手が出ないレベルで、「死不起」(死ぬに死ねない)という言葉がにわかにもてはやされております。

 でもそれはあくまでも、庶民レベルでの話。権力者というか特権階級、要するに「中共人」たる党幹部たちは違います。それぞれの身分に応じた好き勝手なことをやりたい放題。お墓にしてもまた然りで、広東省汕頭市のある村に、下のような立派なお墓が出現したことがこのほど報じられました。




http://news.xinhuanet.com/politics/2009-04/06/content_11136847.htm


 まことに豪儀なものでありませんか。周囲に紋章のようなものを張り巡らしつつ水も引いたりしていて古墳のような立派なお墓ですが、これは風水鑑定に基づいて設計されたものだとか。作らせたのは「党村委員会書記」兼「村委員会主任」、つまり村の党組織のトップと村役場の長を兼任している事実上のボス・朱某とのこと。

 朱某はこの他にも似たようなお墓をいくつか持っているうえ、住まいは豪邸だとか。村落レベルでも「党幹部」となれば「中共人」として、分相応の特権を振るうことができるという証左であります。

 ともあれ無意味にだだっ広いこのお墓、面積は200ムー(1ムー=6.7アール)にも及び、元々は美田と肥沃な耕地、そして樹齢40年の森林が広がっていたのを、朱某がツルの一声でその全てを潰し、このように変えてしまったのです。田畑を潰された村民は泣き寝入り。敷地内に引かれている水も、村の貴重な水資源を浪費するという点で非常に深刻な問題なのだそうですが、もちろん特権階級には誰も文句は言えません。

 党中央でもって胡錦涛がやれ汚職摘発だの党幹部は行いを正せだの地方政府は人・モノ・カネの無駄遣いをするななどと呼号していますが、末端に来ると御覧の通り、やりたい放題。

 ただしこの朱某に関してはこうして晒しageられて日本の弱小ブログにまで取り上げられてしまっているのですから、上部機関による処罰は必至。はいはい朱某終了のお知らせ……となるかといえば、その上部機関にもちゃんと山吹色の菓子折りを送っておけば形だけのお叱りはあるものの、「人の噂も七十五日」ということで、うやむやにされる可能性が大というところが中国クオリティ。

 いまごろ、テレビ局の取材に応じた村民が雇われ暴徒にフルボッコにされているかも知れません。

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 という訳で、2年前のエントリーで使ったネタを再利用。国営の新華社通信が報じた地方政府のやりたい放題ぶり、具体的には分不相応な豪華庁舎の数々をお楽しみ下さい。

 ●御殿としか思えぬ鎮政府庁舎(重慶市)

 ●近づいてみると天安門もどきが出現(重慶市)

 ●区政府庁舎敷地内につくられた人造湖(河南省)

 ●区政府の会議場と、公園と見まごう緑地帯(河南省)

 ●職員10名の部門でこの庁舎(山西省)

 ●その部門の職員用住宅(山西省)

 ●県レベル政府でこの豪華庁舎(雲南省)

 ●その豪華庁舎の正門がこれ(雲南省)

 ●県政府庁舎の内部(浙江省)

 ●県レベル市政府の豪華庁舎(山東省)

 ●市政府庁舎はもはや宮殿というかホワイトハウス(安徽省)

 ●都市部の最末端機関である町会レベルの街道弁事処(重慶市)

 ●これまた立派すぎる県政府庁舎(河南省)

 ●「新華網」(2007/03/19/07:36)
 http://news.xinhuanet.com/lianzheng/2007-03/19/content_5864338.htm

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 金融危機への対策としてドーンと打ち出された巨額の財政出動も、末端レベルに行くと上のような庁舎や豪邸、そしてお墓を量産するばかりになりかねません。それでもGDP成長率は一応アップしますから、統計の上では帳尻が合います。ただこの機会によって超格差社会はいよいよ深刻化し、泣き寝入りする民草もまた大量生産。

 仮にそのエネルギーが怒りへと転化されても、村のボスは村のボスなりの武力を以て流血の弾圧を断行することでしょう。そしてなんというブラッディと化した農民は気息奄々とするなかで、

「もし温家宝首相がいまここにいてくれれば……」

 と血涙を流すどこまでも救いようのない展開。ところが肝心の温家宝も、その夫人(もう離婚した?)は「中共人」としての立場を大いに活用し、中国の貴金属業界において「女帝」として君臨しております。

 ……ってこれではオチにならいのですが、そういう底無し沼っぷりが「中国の特色ある社会主義」の一面なのですから仕方ありません。





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「上」の続き)


 こうした中で、またまた新たな抗議のカタチが出現しました。デモのようでデモではなく、陳情を目的に大挙北京を目指すという画期的なものです。その数なんと数千人!おおお、さすがは人海戦術のお国柄。

 この抗議活動は河北省保定市の老舗紡績メーカー・依綿グルーブの従業員によるもので、従業員が知らぬうちに企業が売却されていたという驚くべき事実が明らかになったのが、そもそもの発端。売却によって大規模なリストラが実施されることが判明したため、これに反対する従業員側が工場を包囲する形で売却される設備の持ち出しに抵抗していました。

 報道だけではちょっと確認できないのですが、たぶんこの依綿グルーブというのは50年の歴史を誇る伝統ある紡績企業とされているため、国有企業である線が濃厚。だとすれば、「揺りかごから墓場まで」と言われた通り、住宅、学校、文化・医療・娯楽施設などを企業自身で擁し,定年後は退職金が支給されて従業員はその枠内で人生を完結できる昔ながらのシステムだったと思われます。

 その企業が売却されるとなれば、リストラはもちろん、職場から住宅に至る従業員の生活環境全てがパッと消滅し、いきなり路頭に放り出されることに。問題はその売却が従業員には内緒で行われ、気付いたときには解雇されていたばかりか、養老年金などの積立金なども泡と消えてしまったことです。

 これに怒った従業員たちは売却の実務作業に抵抗する一方、保定市当局への陳情を繰り返していたようですが、効果はゼロ。……他の地区での類似例に照らせばそれは当然のことで、売却益の一部が市当局の党幹部の懐に入った可能性が強いのです。

「それならいっそ中央に」

 ということで、従業員たちは北京への陳情を決定。しかも代表者が赴くのではなく、包囲部隊を工場に残し、他の約3000人が一団となって北京への徒歩行軍(一部は銀輪部隊)を目指すという、恐らく前例のないであろう挙に打って出ました。陳情部隊が進発したのは4月3日のことです。







 米国系ラジオ局「亞洲自由電台」(RFA)の取材に対し、陳情組の一人は、陳情先を「党中央紀律検査委員会」だと表明。これは汚職摘発部門ですから、従業員たちは事態の本質を呑み込んでいるといっていいでしょう。

 北京の陳情受付部門、あるいは業界をまとめる省庁・紡績工業部ではなく、汚職を暴いてもらおうとストレートに党中央紀律検査委を目指したところに事態の深刻さがうかがえます。

 しかしながら、そんなことをされては地元当局である保定市の面子は丸潰れ。というより事態の展開次第では自分たちの進退に関わるということで、同市当局は警官隊など治安部隊を大挙繰り出して交通整理と秩序維持に当たる一方、副市長が現場に出向いて「まずは落ち着け」と必死の説得工作。従業員は丸一日粘ったものの、とうとう折れて警察の用意したバスに分乗して帰途に就くこととなりました。異例の抗議ながら官民衝突に発展することなく落着したことになりますが、これで全てが解決した訳でありませんし、従業員たちも闘争継続を誓い合っているようなので、やがて新たな展開が報じられることでしょう。

 ●RFA北京語版(2009/04/03)
 ●RFA広東語版(2009/04/03)
 ●大紀元中国語簡体字版(2004/04/05)

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 ところで、私はこの事件で頓悟したことがひとつあります。「官vs民」とはいえ、「民」の側からみた「官」は、あくまでも地元当局だということです。他の抗議活動にしてもそうですが、たとえ1万人集まっても所詮は地元限定の官民衝突。今回の不発に終わった「大挙上京陳情活動」にしても、市当局は頼りにならないけど、党中央の汚職摘発部門なら何とかしてくれるだろう、という一念があったからこその行動だと思われます。

 地元当局は腐っているけど、あの温家宝総理に話が通じれば何とかなる筈、という意識が民衆の間にはまだまだ強く根付いていて、問題の根っこは中国共産党による一党独裁制で、その統治体制を改めない限りいくら中央に陳情しても無駄だ。……という認識にまでは至っていないということです。このあたり、「中国の抱える諸問題の根源は一党独裁体制。その終結を実現しない限り何も解決はしない」と明快に訴えた知識人たちによる「08憲章」との距離感を痛感せざるを得ません。

「一党独裁体制の終結を」

 というのは、この状況でそんな悠長な、というべき民主化綱領「08憲章」の中でもポップな部分で大衆にも受け入れられやすく、それ故にその部分だけが広く支持され独り歩きして、「08憲章」が目指す「平和的な民主化」とは真逆のムーブメントを生むのではないか、と私はみていたのです。ところが、「08憲章」において最も晦渋でないこの部分すら民衆の大半を共鳴させられないとすると、中国当局からの報復を辞さない知識人をはじめとする「志士」たちの署名活動は、空振りあるいは一発の花火で終わってしまうのでしょうか。

 陳情・デモ・スト・暴動・爆弾テロといった抗議活動のニュースが全国各地から連日のように入ってきていますが、現段階ではいずれも地元限定の散発的なアクションがあちこちでパチパチいっているだけで、そこから先に進みそうな気配はまだ感じられません。もちろん、これだけでも十分に内政不安であり、人民元の信用度の低さを裏打ちするものではありますけど。

 ただし、ここにひとつだけ、地域限定の散発的な抗議活動を全国的な運動へと発展させる方法があります。ナショナリズムです。

 2005年春の反日騒動が当初のネット署名や日本製品不買運動から街頭署名・プチ暴動へと発展し,最後には仕事も学校も休みとなる毎週末に全国各地で反日デモが行われるという事態に立ち至ったとき、激しく動揺したのが党中央でした。もともとこの反日騒動は胡錦涛を嫌う諸派が「反日」を掲げて胡錦涛政権揺さぶりに動いたという政争が根底にあると私は考えているのですが、そうやって「反日」を煽り立てていた連中も、それを鎮静させようとした胡錦涛サイドも、ムーブメントが全国的規模で共通のテーマを掲げたものへと成長したのを目の当たりにして激しくビビッたのです。

 万一その鉾先が「反日」から「反中共」へと転じたら、「中共人」は一党独裁体制によって得ている様々な特権を失うことになります。……そこでメディアを舞台に水面下で綱引きをしていた両者は慌てて手打ちをして、一丸となって「反日」活動の押さえ込みを行いました。

 ――――

 いま、ネット世論を中心にその病的なナショナリズムが再び盛り上がりつつあります。反日騒動で発生したプチ暴動は、主として世相に鬱屈している連中が「反日」の名を借りて狼藉を行い、憂さを晴らしたという側面がありました。ところがいま再燃しつつある病的なナショナリズムは当時と等質のものだとしても、社会状況は4年を経て全く異なる様相を呈しています。前述したように対外依存度の高さが災いして数千万人が昨秋以来失業しているほか新卒者の超就職難、また階層間格差も「和諧社会」が現役バリバリの大看板だった当時より深刻なものとなっていることは上述した通りです。

 当初の鉾先だったフランスとは中国主導での手打ちが行われ、例の円明園銅像オークションの問題もフランス企業が買い取って中国に返還するという噂が流れており、昨年のような自称愛国者たち&野次馬が仏系スーパー・カルフールの営業を妨害するような事態が再燃する危険は去りました。南シナ海の領有権問題は未だくすぶったままですが、「話し合いでの解決を」という中国側専門家のメッセージが最近、国営の新華社通信から流されるなど、中国側からこれ以上武断的なアクションが行われるか、フィリピンやベトナムが予想外の大反発を示さない限り、火種になる可能性は低くなったとみるべきでしょう。

 ただし、真打ちの日本だけは別です。30歳から下は江沢民型愛国主義教育によって日本を憎悪すべく刷り込まれた世代ですから、連中にとって日本とは嫌悪&侮蔑すべき対象ひいては仇敵扱いなのです。武漢大学の桜並木の下で和服めいたものを着て記念写真を撮っていた中国人に罵詈雑言が浴びせられたというニュースを御記憶の方も多いでしょう。私はあの事件、「それは本当の愛国的行為とはいえない」という反論が相次ぐことを見越して、反日気運を抑えるために胡錦涛側が仕掛けたヤラセではないかと疑っているのですが。……それはともかく。

 「反日」という点においては、何といっても尖閣問題があり、この件についてだけは中国も強硬姿勢を崩していませんし、何やら軍部もヤル気満々です。2005年春の反日騒動と同様、この機を捉えて胡錦涛政権に圧力をかけようとする「抵抗勢力」の蠢動もあるでしょう。胡錦涛に強硬策を採るよう迫ったり、5月に魚釣島上陸を目指すべく準備している民間団体を密かに後援することも考えられます。また、海軍である東海艦隊は出さないものの、巡視船を同島海域に派遣する可能性は決して低くありません。そもそも先日ふれたように、東シナ海でのパトロール強化が打ち出されたばかりです。

 ●中国、東シナ海の巡視強化決定日本との緊張拡大も(共同通信 2009/03/31/21:13)

 日本の対応が大人しければ、中国の巡視船が定期的に尖閣諸島付近を領海侵犯するという事態にもなりかねません。言わずもがなではありますが、日本は毅然とした態度で、断固としてこうした動きを封殺するべきです。

 ちなみに、領有権争いである以上、胡錦涛も「あれは中国のものだ」という線で絶対に譲歩することはないでしょう。ただ日本に対する余りに硬質な反発は事態を悪化させるだけだと考えているかも知れません。特に民間の先走りを嫌う胡錦涛です。実は中国本土の尖閣問題活動家が武漢で拘束されたというニュースが出ています。政争は、すでに始まっているのかも知れません。

 ●「博訊網」(2009/03/30)

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 ともあれ、物情騒然たる現在の中国社会について。

 ●いま中国では全国各地で地元当局に対する抗議活動が展開されている。

 ●とはいえそれはあくまでも地元限定の散発的な花火に過ぎない。

 ●しかし、もし病的なナショナリズムが暴発すれば全国的なムーブメントに発展しかねない。

 ●その火種としては最大の存在である日本との間で、尖閣問題という可燃度の高い懸案が持ち上がるのは不可避か。

 ●対日外交のあり方を表看板に、アンチ胡錦涛諸派がこのタイミングで政争をしかける可能性も。

 ●「反日」が全国的なムーブメントとなった場合、「鬱憤晴らし」組の数は2005年春より比較にならないほど多いため、事態がより流動的になる確率が高くなる。

 ……といったことは現時点で指摘していいのではないかと愚考する次第。連中が国内問題で勝手に全国的に盛り上がって勝手に自爆してくれれば有り難いのですが。





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 さきごろ閉幕した第2回主要20カ国・地域(G20)金融サミット(首脳会合)において、「急速に台頭」という印象も含め、一種のふてぶてしさを伴って最も存在感を示したのは中国でした。

 G20開幕近くから様々な形で米ドルによる一極体制に異を唱え、新たな国際的通貨体制の枠組みを提唱し、自国の通貨である人民元のハードカレンシー化はもとより、米ドルと並ぶ基軸通貨に登り詰めるための道をつけようとの思惑が歴然。

 一方では特定の国との貿易決済に米ドルではなく人民元を使うような通貨交換(スワップ)協定を結ぶことに積極的です。すでに韓国、インドネシア、マレーシア、ベラルーシ、アルゼンチン、香港とはこの協定を成立しており、お次の狙いはどうやらブラジルのようで。

 ●<人民元の野望>密かに勢力を拡大、相次ぐ通貨スワップ締結で…豪紙(RecordChina 2009/04/04/00:30)
 ●貿易決済でドル外し ブラジルと中国首脳会談へ(共同通信→MSN産経ニュース 2009/04/04/09:12)

 しかしながら、おカネの世界は信用第一。GDPなどで示される経済の規模としては世界有数の存在となった中国ではありますが、では一人当たりGDPはといえば、ようやく3000ドルに乗ったところ。しかも大雑把にいえば「2割の金持ちと8割の貧乏人」で構成されている超格差社会です。

 この超格差社会を是正しよう、という「胡温体制」による当初の意気込みがすでに挫けてしまっているのは、「格差が許容できる範囲へと改善された社会」という意味で以前盛んに呼号されていた「和諧社会」(調和のとれた社会)という政治用語、これが近年、党中央や国務院(中央政府)の公文書から姿を消していることでわかります。

「現状を維持するのが精一杯。ていうかそれも無理ぽ」

 といったところでしょう。幸か不幸か、世界金融危機の突発による不況襲来で内需拡大や雇用機会の創出、またそのための財政出動といった非常事態となったおかげで、「格差改善」は最重要課題ではなくなりました。

 ――――

 なぜ超格差なのかといえば、利権の旨い汁を吸う者がいて、一方でそのためにより多くの者が泣くようになってきたからです。一党独裁体制でチェック機能がまことに不十分であるため、各ランクの党幹部がその分際に応じた汚職や特権ビジネスをやりまくる。それと癒着した特定企業なども旨い汁を吸う仲間となり、それで泣く者がまた増えて、……という形で格差が超格差へと成長していきます。

 こうした仕組みのもと外資導入がどんどん進み、しかもイケイケドンドン路線の江沢民型経済成長モデルが採られれば利権はいよいよ量産され、そのために泣く者の数も当然ながら増加の一途。このあたりを調節するための政治制度改革が1989年の民主化運動~天安門事件で事実上タブーとなったのは致命的でした。改革開放政策に伴う分権化と、利権獲得による体質強化で地方当局、つまり全国各地に存在する「諸侯」の発言力が強化され、中央政府の権威は失われていくばかり。

 胡錦涛や温家宝は構造改革の前段として中央の威厳を回復しようと努めているものの、「諸侯」をはじめとする抵抗勢力の反撃に遭って立ち往生している、というのがいま現在の状況です(景気刺激策である巨額の財政出動でこれから更に格差が広がる訳ですね。わかります)。

 ともあれ、利権をめぐる勝ち組と負け組の典型例は、都市再開発や農村での開発区設立などによる有無を言わせぬ土地強制収用と、それに対して当局から支払われる補償金や指定された移転先が、奪われたものと全く見合わないといった不公正でしょう。支給実績と受給実績に大きな差が出るという不思議な事例も多々あります。当局からは実際に十分な補償金が出ているものの、民の手にそれが渡るまでに通過する政府部門のあちこちで横領され、結果的に雀の涙となってしまうのです。

 これはもちろん汚職なのですが、一党独裁ですから党幹部の暴走を止める仕組みが整っていません。摘発されるのは大抵が運の悪い奴か,要路への贈賄に励まなかった奴。あるいは陳良宇・元上海市党委員会書記のように、政争の過程で生贄にされるケースもあります。

 十分な転業資金も与えられず、理不尽に追い立てられる住民や農民は哀れです。生計が立たないところまで追い詰められ、とうとう抗議活動に出れば当局は武装警察(内乱鎮圧用の準軍事組織)や雇い上げた暴徒を使って武力弾圧。そうした弱者保護に奔走していた人権派弁護士は軟禁・拘束ひいては投獄。そうした衝突がいま、全国各地で発生しています。昨秋から数千万人の規模で失業者が発生していることも物情騒然の度を高めていることは想像に難くありません。

 抗議活動は陳情、ストライキ,デモ、暴動、ひいては爆弾テロや自爆テロまで様々です。特に都市部では勝ち組の横暴を市民はごく日常的に見せつけられているため、いったん火がつくと瞬く間に群衆が出現し、当局の対応次第で暴動が始まってしまいます。火種の多くは弱者たる庶民が「官」の手先によって理由もなく虐げられ、そのことを抗議すると今度は暴力を振るわれたため、取り巻いていた野次馬が被害者の味方となり、さらにあちこちから新規野次馬がわらわらと湧いて出て官民衝突と相成るのです。




▲こんな感じで。


 失業者やニートは別として、他の連中はみんな仕事とか学業とかを放り出して駆けつけてくるのでしょうか。不思議です。ちなみにこの写真の事件は都市暴動にこそ至らなかったものの、発端はいつもの通りです。



 ●街頭で市民数千人が抗議―行政執行員、学生に暴力で(サーチナ 2009/04/01/17:13)

 四川省南充市で3月31日、行政執行員が学生ひとりに暴行したとして、市民数千人が街頭で抗議活動をした。人民日報社が4月1日に伝えた。

 市民は同市繁華街の五星花園地区で、大通りの車道部分を占拠した。道路の該当部分は交通が完全にストップ。現在、関係部門は、騒ぎの発端になったとされる行政執行員による暴行事件を調査しているという。人民日報社は写真を発表したが、市民による破壊行為は確認できない。

 学生に暴行したとされるのは、城市管理員(都市管理員)と呼ばれる職員。衛生、交通違反、露天などの出店などの違反行為を監視する。法律では違反を発見しても取り締まりの権限はなく、警告程度にとどめるか警察に通報するのが建て前だが、実際には高圧的または力づくで取り締まる場合が多く、各地で市民とのトラブルを起こしている。(後略)



 その前日にはやはり「城管」こと行政執行員による暴力で男性が死亡した、とのことで住民など約1万人が屯集する騒ぎが起きています。



 ●「治安員の暴行で死亡」と1万人デモ 中国江西省(共同通信→MSN産経ニュース 2009/04/01/18:53)

 中国江西省萍郷市で3月30日、「城管」と呼ばれる治安維持要員から暴行を受けて男性が死亡したとして住民ら約1万人が道路をふさいで抗議する騒ぎがあった。米政府系放送局、ラジオ自由アジアなどが1日までに報じた。

 男性は先月30日、違法建築の取り壊しに当たっていた治安維持要員らが自分の妹に暴力を振るったことから口論になった。その後、治安維持要員ら十数人の暴行で死亡したという。男性の家族らが遺体を見せて路上で抗議を始めたところ、多くの住民が集まり治安維持要員の車両をひっくり返すなどの騒ぎになった。(後略)



 民衆側に死者が出た場合、その遺体を活用するというのも暴動の型のひとつです。事態がさらに悪化すると、みんなで死体を担ぎつつ地元当局の政府庁舎前に押しかけて抗議し、警察車両や庁舎の焼き打ちが行われたりします。5000人や1万人が集まれば、そりゃ地元の治安部隊だけでは衆寡敵せずで、放火だ打ち壊しだとなるのですが、周辺からの増援治安部隊が駆けつけると群衆は散って……という形で事件が終息するのが専らです。

 むろん、デモや暴動ひいては自爆テロに発展した事件もあります。

 ●海南の暴動、背景に「腐った警察・無策の政府」…中国誌(サーチナ 2009/03/30/13:49)
 ●中国で回族が抗議デモ「交通事故処理不公平」(共同通信→iZaニュース 2009/04/02/20:56)
 ●賃金支払い求め、立てこもりの末に自爆 中国新疆ウイグル自治区(共同通信→MSN産経ニュース 2009/04/02/22:45)

 ストライキについては昨年末にタクシー運転手と教師の事例その他を当ブログでも紹介していますね。実行する過程である種の連携が成立して、声明文やら檄文めいたものを事前に準備しておくなど、かなり組織化されたケースもあったことは要注目です。

 ●スト&デモ三連発。(2008/12/19)
 ●各地で相次ぐ教師たちの「蹶起」。(2008/12/16)


「下」に続く)




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 やっぱり書きものは最後までちゃんと読まなければいけません。タイトルで判断して流してしまうのもいけません。……少なくとも、ヲチの材料として記事を読むにおいては。

 その好例が下の記事です。



 ●李登輝元台湾総統を表敬 日台交流スカラシップ(MSN産経ニュース 2009/03/25/19:19)


 【淡水(台北県)=長谷川周人】日本と台湾の若い世代による相互理解の促進を目的とする第6回「日台文化交流青少年スカラシップ」(主催・フジサンケイビジネスアイ、産経新聞、共催・台湾行政院新聞局)の台湾研修団は25日、台北郊外の淡水で李登輝元総統(86)を表敬訪問した。

 李氏は、中学生から大学生までの16人を前に流暢(りゅうちょう)な日本語で「野球の世界一を争うWBC決勝戦で、日本は苦戦を強いられながらも最後まで粘り、優勝を勝ち取った。これをきっかけに皆さんも日本も、精神的に磨かれた強い国になってほしい」と語りかけた。

 一方、李氏は5月31日から私的旅行のため、訪日する予定を明らかにした。李氏の訪日は今回で5回目となり、東京から日本入りして新潟、富山、石川、京都などを回り、松尾芭蕉の「奥の細道」の後半ルートをたどる計画という。



 これ、「李登輝元台湾総統を表敬」なんてタイトルで済ませていい内容の記事ではありません。御覧の通り、確かに記事は標題通り「表敬」「交流」を前面に押し出しているものの、最後の一段落が曲者。お終いまで読んだ人への最大の御褒美となっています。

 李登輝さんが、5月31日に、再来日!……おおお、てなもんじゃありませんか。

 ニュースとして一番価値のある部分を、強力な「つかみ」になる部分を、どうして押し立てないのか。そりゃ、「予定は未定」かも知れません。でも「来日の意向表明」なのですから、これは日中関係における重大ニュースに他なりません。

 過去の李登輝氏訪日に際して中共政権がその都度イラッと来る……どころではなく態度を硬化させたり恫喝したり、果ては糞青(自称愛国者の反日信者)を10名ばかり駆り集めて北京の日本大使館前で「なんちゃってデモ」をやらせたりしているのを、御記憶の方も多いのではないかと思います。

 その詳細や前回来日時における不肖御家人の取材活動などについては左サイド「CATEGORY」内の「李登輝氏訪日」を御覧あれ。中国政府の出した声明から判断するに、その激昂ぶりは小泉純一郎・首相(当時)による靖国神社参拝への対応を遥かに上回るトーンになっています。

 来日が本決まりとなれば、間違いなく今回も「中国の反発は必至だ!」てなことになるでしょう。

 それにしても、あえて地味に扱う、といった「らしくない」作業する必要が『産経新聞』にはあったのでしょうか?日本政府のゴーサインがまだ出ていないとか?政界を引退した一介の好々爺に政府の許諾が必要だというのも、おかしな話ですけど。もし許諾が必要なら、日本政府は誰に配慮してそんなことをするのか、理解に苦しむところですけど。

 ともあれ、台湾関連では久しぶりに心が晴れるようなニュースに浮き立つ気分です。

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 で、いくら地味に扱おうったって、中国当局も日本の新聞を舐めるようにチェックしていますから、無駄なことだと思うのですが。……思うのですが、私がみた限りでは現時点において、これを報じている中国国内のメディアを確認することはできませんでした。要するにスルーです。

 記事の出た翌日である26日は木曜日。ということで外交部報道官定例記者会見が開かれていますが、公開されている一問一答には、やはり李登輝氏のことが全く出てきません。当局としての「反発」は日本の出方次第で、ということなのでしょうか。ともあれメディアに対し党中央宣伝部による箝口令が敷かれているかのようです。

 ただし、ちょっと意味ありげな記事が1本。CRI(中国国際放送局)のウェブサイトにおける国内向けの記事を列べた「国際在線」が記事の出た当日の午後に、

「日本がまた台湾カードで中国を挑発」

 というタイトルのニュースを流し、これが「網易」をはじめ大手ポータルのニュースサイトに転載されています。

 ●「日本又打台灣牌挑釁中國」(国際在線 2009/03/25/14:42)
 http://gb.cri.cn/27824/2009/03/25/3245s2467151.htm

 李登輝氏訪日表明への脊髄反射?と思いきや、内容はさにあらず。現在の外国人登録証に代わって平成24年から導入される在留カードにおいて、これまで台湾人の国籍が「中国」とされていたのを「台湾」表記に改める、という出入国管理法改正案に噛み付いた内容となっています。

 この件そのものについては、当ブログと相互リンクしている「台湾は日本の生命線!」の永山英樹氏をはじめとする有志の皆さんによる地道な街頭署名活動が実を結んだものであることを、特にここに記しておきます。

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 さてその「国際在線」が叩いている在留カードでの国籍表記問題。その元ネタはやはり『産経新聞』なのですが、3月19日付の記事に拠っている模様。

 ●在留カード「台湾」表記 入管法改正案 中国政府の反発予想(MSN産経ニュース 2009/03/19/01:25)

 一週間近く経ってから騒ぎ始めるというのもおかしな話ですから、タイミングからみて李登輝訪日予定報道に対する脊髄反射であり、今後展開されるであろう猛反発の前触れではないかと思います。もし箝口令が敷かれているとすれば、それに対するささやかな抵抗という意味合いもあるかも知れません。

 なぜ箝口令かといえば、フランスとの一件やら南シナ海での領有権紛争などを受け、ネット世論の間で「愛国無罪」的気運が高まりつつある折も折、可燃度が最も高い「反日ネタ」はさすがに危ないという判断でしょうか。

 「反日」といえば尖閣諸島に船を出す民間有志の計画が準備されているところであり、実行予定は5月。これに「5.31李登輝訪日」がかぶることで生まれる素敵な相乗効果(笑)を当局は危惧し、適切な時機を待っているのか。待つといっても、現状に鑑みればさぞや苦慮することでしょうし、一方で対外強硬派の突き上げを抑えるのにも力を注がなければなりません。胡錦涛、涙目。

 どの時点で、また如何なる形で「5.31李登輝訪日」が中国国内で報じられるのかは要注目です。いつ出すか、反発度は整っているか、報道の足並みは揃っているか。……などは胡錦涛政権の統制力を如実に映し出すバロメーター。逆にもし一部メディア、例えば「反日ネタ」にはスッポンマークの『環球時報』や『国際先駆導報』といった電波君たちが隊列を乱す形で先走りするようであれば、アンチ胡錦涛諸派の拠点を探ることができます。

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 wktk?……そりゃもう断然ワクテカ。だってこれ、「何という極上燃料」なのですから。

 「愛国無罪」ムードを一気にヒートアップさせ得る真打ちニッポンの登場、それが焦点の尖閣問題だけでなく、「台独教父」と毒虫扱いされている李登輝氏の訪日まで重なる。……となれば、ネット世論どころか政争本格再燃の可能性も高まって、熱い5月となることは必定。むろん騒ぐなら尖閣上陸であれ李登輝氏の訪日であれ事前に大騒ぎすることになるでしょうから、4月からメラメラし始めるようであれば、なおよろし。

 ともあれ、台湾関連では久しぶりに胸のすくようなニュース。しかも花冷えすら吹っ飛ばす「中国の反発は必至だ!」属性なだけに、いよいよ心浮き立つ気分なのです。





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 最近、「誰がうまいことを(ry」的な、興味深いコラムを読みました。いやー面白かったです。

 以下に一部を抜粋します。



 ●日中勘違い:「原則」は「原則」にして「原則」にあらず(サーチナ 2009/03/16/16:10)


 ■日中で異なる「原則」の言葉の使い方

 日本人が「これは原則です」との説明を聞いた場合、どのようなイメージを持つでしょうか。「原則というからには、例外もあるのだろうな」と思うのが普通でしょう。けれども、この文句が中国人の口から出たとすれば、その解釈は勘違いの可能性大です。

 もちろん、中国人の発言でも「原則」と述べた後に「但是(ただし)」と続けば、「個別の件では、別途考慮してもよい」などと続くことが普通。また、「原則上同意」は「原則としては同意」。今後の話し合いで「若干の変更があるかもしれない」のニュアンスです。

 しかし多くの場合には、「原則なのだから、譲歩はできません」と言っているのと同じ。特に、政府や企業などの公式な発言で「これは原則」、「原則問題」、「原則に抵触する」などの文句が出てきた場合、「譲歩不能」のかなり強い意思表明になります。(後略)



 なるほど、うんわかるわかる……といった内容に頷かされました。このコラムの筆者は「原則」に伴う紛らわしさを整理するため、中国語の「譲歩不能」を意味する「原則」には頭に「大」をつけて、「大原則」と脳内翻訳するようにしたとのこと。

 さすがです。中国ビジネスの最前線で奮闘中の方も、「原則」に泣かされるケースがままあるのではないでしょうか。このコラムは一読の価値あり。オススメです。

 で、自分はどうかな。……と考えてみました。

 仕事でいうと、副業のコラムには私の意向と編集部からの制約という揺るがせない「大原則」があります。逆に本業は正反対で,建前はともかく、実際は様々な点において融通の利く「原則」というか「無原則」(笑)。そこは賎業ですから何でもあり的なユルい空気が支配しています。

 ただしこれは腐れ縁的な取引先と私との間での「無原則」、つまり日本人の感覚に基づくもので「何でもあり」とはいえ、越えてはいけない一線が自ずと存在しています。

 ところが香港本社(というのも恥ずかしい零細企業ですけど)の香港人どもの間では、連中の価値観での「無原則」、まあ「やったもん勝ち」的な行動原理がしばしば発動されます。それによってトラブルが発生するのを未然に防ぐのが私の役目のひとつ。

 遺憾ながらトラブルになってしまった場合、日本側に対し「陳弁7割謝罪3割」という火消しをするのは私が最も嫌う仕事のひとつです(笑)。いや笑い事でなく、いまその火消しの真っ最中で大変なのです。orz

 趣味というか余暇の娯楽の2本柱である当ブログと中国絡みのアマチュア活動については、もちろん「大原則」があります。

「中国様の喜ぶことを、真心込めて念入りに。(・∀・)」

 と、アマチュア活動についてはキャッチフレーズがそのまんま「大原則」(笑)。当ブログはそれとはスタンスが異なるのですが、まあ「大毒草」を自称しているので中国関連アマ活動との間に矛盾が生じることはまずありません。

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 さて今回のお題は「まずは編集後記」ということで、本来とっととここにupすべき先日のインタビュー、ダライ・ラマ法王の甥御で側近的存在であるケドゥープ・トゥンドゥップ殿下(チベット亡命政府議会議員)への取材についての閑話となります。

 言い訳をするとすれば、この取材内容について、まだ頭の中で整理できていないところが。……てな話になります。チベット問題について不勉強な私にとっては、ずっしりと重い内容と印象ゆえに、本業副業に追われつつさてどう踏み込むべきかと未だに考えています。昨日はとうとう夢の中で知らない人と、

「歴史上でチベット人に接触した最初の日本人て誰だろうね」

 なんて話題で二人で考え込んでいました。

 少し前に行ったチベット青年会議台湾支部のタシィ・ツゥリン主席へのインタビューでもずっしりした重さにとらわれてしまったのですが、今回のインタビューはタシィ・ツゥリン氏のときのように胸に迫る重さ、というよりは脳味噌を直撃する、うーんと考え込んでしまう性質のものです。

 内容でいえば、タシィ・ツゥリン氏へのインタビューとは次元が異なり、今回は政治色の強いものとなっています。私もその方面の話を聴きたく、敢えて突ついてみた、ということもあります。その一問一答や現場の空気で感じたことが今まで私にとっては未体験のものだっただけに、うーんと考え込んでしまっているのです。

 具体的にいうと、まず感じたのは「ひとつの信仰を核としてまとまっている民族」という日本人である私にとっての異質感。その当否ではなく、ああ違うんだな、日本人とは全く違うんだな、ということをある種の衝撃とともにナマの言葉でもって実感させられたのです。

 ビルマの少数民族で、軍事政権と60年に及ぶ内戦を展開しているカレン族に私は友人を持っていますが、カレン族はキリスト教徒や仏教徒その他様々な信仰があり、「ひとつの信仰を核としてまとまっている民族」ではありません。軍事政権がカレン族の分断を狙ってその仏教徒だけを籠絡して組織化・武装化し、内戦をカレン族同士で戦わせたりしているほどです。

 ウイグル人はどうなのか。私は世界ウイグル会議日本代表のイリハム・マハムティ氏と名刺交換したくらいで他に知り合いがいないので、これはちょっとわかりません。

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 チベット人については、上述したタシィ・ツゥリン氏とケドゥープ・トゥンドゥップ氏に加え、在日チベット人の中では抜群の見識の持ち主で、安倍晋三・元首相も一種のレクチャーを頼んだ桐蔭横浜大学大学院のペマ・ギャルボ教授、というこの上なく贅沢な方々と接することができました。

 その上で、「ひとつの信仰を核としてまとまっている民族」がチベット人たちなのだ、ということを、手触りで感じることができた次第。たぶんタシィ・ツゥリン氏と突っ込んだ話ができれば、やはり同じことを実感するのだろうと思います。

 「ひとつの信仰」というのはチベット仏教とそれに伴う伝統的な文化や風習であり、チベットの宗教的・精神的指導者であるダライ・ラマ法王でさえも、この「信仰」からは自由ではない、ということを今回のインタビューを通じて体感しました。

 ええ、ダライ・ラマ法王でさえも、この「信仰」による制約からは、決して自由ではないのです。

 要するに、チベット人には「信仰」という、譲歩不能な「大原則」が厳然として存在し、それが民族の核として屹立しているように思います。

 これに対する中共政権にも、中国共産党による一党独裁制という統治のカタチを死守するための「大原則」があります。こちらの「大原則」は、チベット人のそれに比べれば、硬度においてやや劣るといえるでしょう。「中共人」たちが地縁や利権によって致命的に割れてしまい、そのために一党独裁体制が崩れてもいい、という展開になる可能性もあるからです。

 「信仰」ではなく、イデオロギーでもなく、地元意識や利権という生臭いものが核となっているために、最後には分裂してしまいかねない弱さを内包しています。……ただし、現時点ではその「中共人」たちも、一党独裁制の維持という点においては一枚岩です。こちらにも「大原則」があるという訳で。

 チベット問題はつまるところ、この双方が掲げる異なる「大原則」が角を突き合わせ、両者とも「譲歩不能」という形で膠着している観があります。……いや、中共政権が様々な形でチベット統治の強化を進めているのですから、膠着ではありませんね。

 中共政権が自壊するなり、自壊危機の混乱のドサクサに紛れてチベットが独立する、ということにでもならなければ本質的な事態の進展はなさそうな印象を、少なくとも私個人は感じました。

 いずれにせよ、チベットは独立を勝ち取らない限り、その「大原則」の条件が満たされることはないように思います。……もちろん、「大原則」のいう「チベット」という地域は、いわゆるチベット自治区に限定されたものではありません。



 現在、一般にチベットと呼ばれているのは、中国が“チベット自治区”として認めている領域ですが、これはチベットの一部に過ぎません。なぜなら、中国はチベットを武力併合した際にチベットを分割統治したからです。

 本来のチベットとはウ・ツァン、カム、アムドの三つの地方(=チベット3州)から構成されています。このうちウ・ツァンとカムの一部が「チベット自治区」になり、ほかの領域は青海省、甘粛省、四川省、雲南省それぞれに編入されました。私の故郷、カム地方のニャロン(新龍)も、現在では四川省ということになっています。

 ――――『中国が隠し続けるチベットの真実』(ペマ・ギャルポ著、扶桑社新書)



 ……ということになります。1949年3月10日のチベット蹶起から今年で50年になります。昨年3月のラサ騒乱、そして北京五輪の聖火リレーにおいて一躍、国際社会の注目を集めるようになったチベット問題ですが、



 チベット独立支持派のケドゥープ氏は、今後の対応については「今、やみくもに動いても圧倒的戦力を誇る軍によって弾圧されるだけであり、機が熟すのをじっくり待つ」として「待ちの戦略」を説いた。

 ●対テロ部隊ら20万人追加配備―進む中国の抑圧体制と軍事基地化(世界日報 2009/03/14)



 と、ケドゥープ・トゥンドゥップ氏当人が表明しているように、「大原則」の下に団結しているチベット人たちにとっては、チベット問題を国際社会において積極的にアピールし続けていく一方、中共政権の「大原則」が崩れる時機をひたすらに待ち続けるという、息の長い闘争を強いられることになるでしょう。

 翻って考えれば。

 日本のチベット支持者たちは、一時の「フリーチベット」というブームが去ったことを再認識しつつ、自分たちは何をすべきかについて一人ひとりが自問自答するとともに、支援活動のゴール地点をどこに置くか、ということについて、自らの覚悟のほどを改めて顧みる必要があるのかも知れません。





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 今週はチベットネタが続きましたが、これで一段落となるでしょう。きのう3月14日、「チベット・ピースマーチ」に参加してきました。

 簡単にいうとフリーチベットのデモです。東トルキスタン組や南モンゴル組を含め、合計約300名で渋谷~表参道~渋谷を練り歩いてきました。

 昨年の「5.6代々木デモ」のように4000名以上が集まると一体何事かと街が騒然となりますが、如何せん300名ではそこまでいきません。悪天候の関係もあったのでしょうが、あと200名は欲しかったところです。

 ただし、この300名は雪山獅子旗やブラカードの所持率が高い精鋭部隊。フリチベの風物詩ともいえる鎧さんなどの参加もあって、曇天に鮮やかな旗指物を無数に翻しつつのシュプレヒコール。300名ながら存在感は示せた、アピールは十分できたといえるでしょう。……まあ正直なところ、500名も集まらなかったのが残念ではありましたけど。

 今回のデモで特筆すべきは、出発前の集会でダライ・ラマの甥御にして側近格でもある上、独立路線の有力者であるケドゥープ・トゥンドゥップ氏がメッセージを発し、またチベット青年会議の旗が日本でもデビューしたことです。

 いずれも日本のフリーチベットにおける歴史的な出来事といえます。特に3月14日という節目の日に行われたデモに、これまで中国側と何度も接触してきた経歴を持つケドゥープ・トゥンドゥップ氏が駆けつけてくれたことは、チベット青年会議旗のデビューと併せて、何やら日本のフリチベも一人前として認められたというか、質的なグレードアップが実現したという思いを持ちました。

 デモ自体は特別に変わったものではありませんでしたが、東トルキスタン組と南モンゴル組がそれぞれの旗を掲げつつ、自らを主張することなくフリーチベット専一のコールに唱和してくれたあたりにもある種の成熟が感じられました。

 ――――

 私自身は集合時間である14時近くに集合場所の宮下公園についたのですが、地下鉄を下りて地上に出てみると雨が本降り気味なのに閉口。降る訳ねーだろ!という信念一徹で雨具の用意をしていなかったので、仕方なくコンビニで傘を買う破目になりました。

 ところが。出発前の集会が始まると雨脚はみるみる弱まっていき、いざ出発というときには完全に止んでくれました。おお仏天感応。せっかく買った傘は10分くらいしか役に立ちませんでした。

 宮下公園に着いてから、まずケドゥープ・トゥンドゥップ氏に御挨拶。事前の写真で得た印象では温和な中に鋭さを蔵したかのような……と思っていたのですが、実際に会って話してみるとあくまでも温厚な紳士。

 チベット問題を語らせたらこの表情がどう変わるのだろう、と考えつつ自己紹介をして、チベット青年会議台湾支部のタシィ・ツゥリン主席に先日インタビューをしたことなどを話し、胸中の疑問を明らかにしたいので時間があれば是非取材させてほしい、と申し込むとそこは外交辞令。日本滞在中は分刻みのスケジュールでしょうから実現はまず無理だろうと思いつつ、とりあえず写真を撮らせてもらいました。

 いざ出発ということになり、私は最前列近くに並んだところ、

「御家人さんですか?」

 と後ろから声をかけられました。えっ?と振り向いたら「PIYO」さんです。もちろん初対面。どうして私のことがわかったのかと尋ねたら、

「何となく……」

 との答。それらしい怪しげな物腰というものでしょうか。オーラならぬ腐臭を放っていたということですね。わかります(笑)。でも声をかけてもらってとても嬉しかったです。「PIYO」さん、ありがとうございました。m(__)m

「今日は他にも『dongze』さんや『五香粉』さんが来ている筈なんですけど……」

 などと話しているうちに、デモ隊が動き出しました。私は写真撮影のため隊列から離れてカメラを構えているうちに「PIYO」さんとは分かれてしまい、結局は列の最後尾に。すると今度は以前、台湾関連の署名活動で御一緒させてもらったことがある「いいちこ」さんと邂逅(沿道にあった「自衛館」って場所、何なんでしょうねあれはw)。

 「いいちこ」さんには最近発売された良書を教えてもらいました。チベットのみならず、ウイグル、モンゴル、台湾にもたっぷりとページが割かれていて、値段も手頃。これは良い勉強になりそうです。

 
中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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 デモ隊は渋谷から表参道を通って再び宮下公園に戻り、解散式。「dongze」さんや「五香粉」さんにお会いできなかったことが心残りとなりましたが、さすがに大声を出すのは憚られたため、あるいは御家人フラグが立つのを忌避されているのかも(笑)……と思い、それでは海軍コーヒーでも飲みに……と考えたらもう遊就館は店仕舞する時間。仕方なく一人で大人しく帰宅しました。


    

    





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