さてさて。妙な二ユースが流れてきました。……しかも中国国内メディアから。
共同通信がいち早く報道しています。
●「暴動3日後200遺体以上」 中国誌報道、発表数上回る(共同通信 2009/07/17/19:20)
【北京17日共同】中国の時事週刊誌「中国新聞週刊」最新号(7月20日号)は、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で5日に起きた大規模暴動で、3日後の8日に葬儀所で200人以上の遺体を見たとする漢族住民の遺族の話を報じた。
中国当局は6日、死者数を140人と発表。その後、度々修正し、中国メディアは17日、197人になったと伝えた。早い時期から200人以上の遺体が葬儀所にあったとすれば、当局が意図的に死者数を抑えて公表していたことになる。
200人以上の遺体を見たと語ったのは、暴動で死亡した漢族の男性の母親。8日午後、遺体が安置された葬儀所に行き1体ずつチェックし、計200以上の遺体を見た後、自分の息子の遺体が見つかったとしている。
これに対し、中国の通信社、中国新聞社は17日、暴動の死者数が同日、197人となり、暴動による直接的な経済損失が6895万元(約9億5千万円)に上ったと報じた。(後略)
おおお!……という訳で武者震いしつつ調べてみたところ、該当記事にたどりつきました。
●死者楊全紅(中国新聞周刊 2009/07/15)
http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/768/3/1/1200020/1.html
極度不安的等待持續了60多個小時,7月8日下午4點,楊全紅的家人接到政府工作人員的電話,通知他們去認領尸體。
因為不想讓欒興燕受到過于強烈的刺激,楊全紅的母親親自到殯儀館去辨認尸體。母親一個一個地翻看,看了兩百多號,在一具面目模糊的尸體前停頓了下來。
……と、共同電の通り、死者の母親は200人以上の遺体をひとつひとつ確認していった挙げ句、ようやく息子の亡骸を見つけたということになっています。
そしてやはり共同電の通り、現時点における中国当局が発表した死者数は197名ですから、国内メディアで足並みが揃っていないことになります。
さらにさらに。同誌の別の記事の中にはもう一点、7月5日の騒乱に言及したもので見逃せない描写がありました。これです。
●風暴眼中二道橋(中国新聞周刊 2009/07/15)
http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/768/3/1/1200017/1.html
騷亂發生時,張紅梅把一大群避難的人拉進了自己的店鋪,有維族,也有漢族。卷簾門拉了下來,還是聽得到凌亂的脚歩聲和零星的槍聲。
ウイグル人向け紳士服を扱う漢人(漢族=中国人)女性商店主が、騒乱を避けて逃げ込んできた漢人とウイグル人を店に入れて慌ただしくシャッターを下ろして難を逃れた、というものです。ただし、シャッターの向こうからは乱れた足音と「零星的槍聲」が聞こえてきた、と。
この「零星的槍聲」とは「散発的な銃声」という意味なのです。7月5日に発砲があった、というのは当局発表では全く言及していない、いわば「新事実」。
しかもこの記事はその手前に執銃警官が付近を巡回しており、強い日差しを浴びて黒光りする銃身が異様な雰囲気を漂わせていた、との記述があります。描写からして、手にしていたのはピストルではなく、長めの銃身を持つ自動小銃か突撃銃の類でしょう。原文は以下の通り。
下午五六點鐘是新疆日照最強烈的時候,秦一岩偶爾探頭望出去,看到有警察在帶槍巡邏,烏黒的槍管折射著明亮的日光。這氣氛有點異樣,不過秦一岩沒想到事態有多嚴重。
この記事だけを読むと、その後にすぐ「散発的な銃声」ですから、発砲したのが治安部隊という印象を読者に与えることになります。
これではいよいよ足並みが乱れていることになるではありませんか。
混乱している?……というより、何やら政争の気配を感じてしまったりするのですが。
特にこれ、週刊誌ですから、送稿から活字になるまでの間に新聞よりも時間があり、関係部門から「待った」が入る余裕が十分あった筈です。
ところが、差し止められずに記事になってしまっている。しかも一部の内容が上記の通り、当局発表と大きく食い違っている。
こうなると、どうも何らかの政治的意図があるように思えてなりません。とりあえず当局発表に異を唱える内容、ということにはなりますから。……むろん、邪推ですけど。
怪しいなあこれは怪しい。……と思いつつ、取り急ぎ速報まで。
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最後に改めて、今回の事件に際しての必読の良書3冊を紹介しておきます。「民族差別」「経済格差」などで片付けている日本のマスコミ報道では知ることのできない、民族浄化ともいうべきウイグル人が受けてきた悲惨な境遇を知ることができます。
この中で特に核実験問題は今回マスコミが全くふれていないものですが、中共政権はウイグル人の土地(ロプノル付近)で40回以上にも及ぶ核実験を1996年まで行っています。これによるウイグル人の被曝とその後遺症は言及するまでもないことですが、シルクロード観光で現地を訪れた日本人も被曝している可能性があることを指摘しておきます。
それから、放射性物質が黄砂とともに風に乗って日本へ飛来してきていることも。
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 | 中国の核実験─シルクロードで発生した地表核爆発災害─〔高田 純の放射線防護学入門〕高田 純医療科学社このアイテムの詳細を見る |
RFAは、デモ隊に参加し、銃撃の霰の中を命からがら逃げ出したウイグル人男性の電話インタビューを放送していまして、その人物は「自分の目の前で、少なくとも200人ぐらいの人が倒れていた」というようなことを発言しています。話は合いますね。
御家人さん、ご活躍はうれしいんですが、休んでくださいね?
コメントのくせに長くなってしまいました。すいません。
日経の記事ですけど。
インド、中国を抜き初の首位 日本企業のアジア投資
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090718AT1C1700617072009.html
今回、数社共同でアジア各国と直接投資な話をしてきました。
インフラ整備は当然として、契約の履行、モラルの状況、そして政情というのが話として出たのですが、いまアジアは密かに不安定なことに驚いてます。日本でも報道されたようですが、インドネシア南部では、謎のテロが散発していますし、フィリピンも相変わらず。逆にスリランカはようやく落ち着いた(ことになってます)。
そんな状況でも各国は投資を求めていて、一昔前と比べても条件が格段によくなっています。
まあ、うちが直接工場作ったりするわけじゃないんですが、電力の安定供給が本当に実現されているなんて夢のよう…。
現在、支那本土への投資は一段落して、チャイナリスクも知れ渡っているため、新規投資組はあまり聞かなくなりました。現地で海千山千超えた強者たちが、戦力を充実させ、さらに効率化(首切りですよー)を計っているのだとか。すごいことです。
代わりに、マレー、インド、インドネシアあたりへの投資が積極的になってきて、シンガポールの架橋たちがウハウハでもあります。あっちはあっちで厄介なことありますけど、支那よりマシとは我が友人の弁。「だって、契約書にサインしたこと、守ってくれるんだぜ?」だそうなw
そういう国々が気にしてるのは、支那の軍事増強。海軍力アップは結構ぴりぴりしてましたね。東南アジア地域の制海権、支那に押さえられたら…なんて思うと、正直ぞっとします。
そんな巨大な軍事力を支える経済力が、どれだけ持つことやら。
今回のウィグル人弾圧で、改めて化けの皮がはがれたわけで、脅威の国であることを改めて感じてます。でも、支那投資はたぶん、これからも減少し続けると思います。素人の体感ですけどね。
こちらこそ御無沙汰しています。スティーヴ御家人です。m(__)m
RFAもそうですが、日本メディアの独自取材でも死者200名未満は少なすぎるという印象があったので、今回の記事は一応頷けるルポではあります。ただ当局発表をあざ笑うかのような内容のものが中国国内メディアから出たということには政治的に剣呑なものを感じずにはおれません。
こんな報道も飛び出しました。
●暴動でウイグル族12人射殺 中国、自治区幹部が認める(共同通信 2009/07/19/00:32)
http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071801000909.html
足並みの乱れというかボタンの掛け違いというか、とにかく妙な風が吹き始めたな、という印象です。
私自身は、治安部隊が初動でウイグル人約1500名を拘束したという当局発表がずっと気になっています。拘束された人の安否が案じられる一方で、その人数に驚かされます。これが事実だとすると、デモ隊が3000名でしたらその半数、参加者1万名でも拘束率15%。尋常な数字ではありません。治安部隊とデモ隊が衝突したとすれば、治安部隊が圧倒的優勢の中で事態が進んだとみるべきかと思います。当然のことながら、かような戦況下ではウイグル人の死者数も200名300名では済まないかと。衝突というより虐殺に近い状況を考えずにはおれません。
――
>>おむらさん
いつもお忙しそうでお疲れ様です。東南アジア・南アジア方面の投資環境が整備されつつあり、日本企業の中国離れが加速していくのは慶事であります。いまや、あのユニクロの無地Tシャツもベトナム製ですからね(笑)。
ちょうど中国は今年上半期のGDP成長率を発表したところですが、数字は帳尻合わせという印象を拭えません。工業生産が堅調、といってもその中身の少なからずは重複投資、重複建設。その必然的帰結として生産能力の過剰という問題がまた出てきています。どの地方も同じようなことに手を出していて、いわゆる経済的な割拠傾向が再燃、てなところでしょうか。この悪癖は20年経っても改まらないのですから、やはり中国はバラケるのが本然、という潜在的な本能のようなものがあるのかも知れません。
結局巨額の財政出動も既得権益層を潤すことで終わったのではないか、という印象ですし、相変わらず胡錦涛は頼り無さげですし……。
ロンドンでもウイグル支持デモがあったほか、多数のウイグル人を抱える中央アジアのカザフスタンでも5000人規模のデモがあったようです。カザフスタンは政府が許可しないとデモが事実上出来ないということなので、政府が暗黙の了解を与えた可能性があります。ただ、カザフスタン政府自体は中国と関係が深く、今回のデモはどちらかと言うと、国内のガス抜きに使われたのではないかと勘繰っています。
アルカイダ系のサイトがイスラム諸国に在住している中国人に対して警告を発したらしいですが、今のところ、イスラム諸国のウイグル騒動に対する反応は限定的なものにとどまっているようです。あまり書くと御家人さんにご迷惑が掛かるかもしれませんが、イスラム諸国はウイグルに対してもう少し同情心を示すべきではないかと思います。
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