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頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『破壊された男』アルフレッド・ベスター

2017-02-18 | books
1953年に原作は著された。

24世紀の未来。エスパーが大量に出現した。心の表層だけが分かる三級エスパーが十万人、意識の深層に潜む前意識まで読み取れる二級エスパーが一万人、無意識まで読み取れる一級エスパーは千人いた。そうしたエスパーによって、犯罪は捜査できるために、70年も殺人事件は起きていなかった。大金持ちのモナーク産業の社長、ベン・ライクはライバルのドコートニイ・カルテルの社長、クレイ・ドコートニイが憎い。こいつさえいなければ。殺したいが、エスパーの存在が邪魔だ。ベン・ライクは別のエスパーの助けを借りて、完全犯罪を思いつく。そして実行する・・・ そこに立ちはだかるのはニューヨーク市警心理捜査局総監のリンカーン・パウエル。ライクが打った手をことごとく見破る。しかしライクも黙ってはいない。様々な方法で捜査を妨害する。そして・・・

おお。これは面白い。60年も前に書かれたとは思えない。

SFとミステリーが激しく融合している。アイデアがすばらしく、キャラクター造形も見事だ。もし自分が犯罪を企てているとして、それをエスパーに読まれないようにするにはどうしたらいいか?ものすごくシンプルな答えなんだけれど、全く思いつかなかった。

台詞や言葉に含蓄がある。

「意味的な逃避だよ、バーナード。きみは、物自体ではなく、そのレッテルばかりに気をとられて生活している」

ネット上で読んだのだけれど、「お前は全く物を考えていない」と批判されて、「きぃー」っとキレている人がいた。そうレッテルを貼られて憤慨しているのだ。しかし肝心なことはどんなレッテルが貼られるかではなく、ちゃんと考えているかどうかだろう。考えているのなら、誰かに何と言われても関係ないし、もし考えていないのなら、そのレッテルは当たっているし、それ以前に考えていないのは問題だろう。ことの本質を見誤った人間というものの末路を、既にべスターは60年前から描写してくれていた。

SFは想像力、妄想力をものすごくかきたててくれる。何と言うか、自分の幅を広げてくれるような気がする。

どういうわけかファンタジーは私の体は受け付けない(先日のNHKのEテレのSWITCHでの「獣の奏者」の上橋菜穂子さんと獣医の先生の対談はものすごく良かった。上橋さんはおばさんだし見目麗しいというようなタイプではないのに、ニコニコした表情、あふれ出る知性、謙虚さ、そして絶妙な質問の仕方。こういう女性なら、何時間話していても楽しいだろうなと思った。見目麗しくても、話が続かないような人じゃしょうがない)(そんな上橋さんの書くファンタジー小説は残念ながら読めない。映像ならと思って、「精霊の守り人」は途中まで観たのだけれど、途中で脱落してしまった)(しかし、SWITCHを観て、また挑戦しようかと思っている)

今日の一曲

原題はThe Demolished Man 似たようなタイトル発見。The Policeで、"Demolition Man"


では、また。
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