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頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『科挙 中国の試験地獄』宮崎市定

2013-04-14 | books
587年から1904年まで1400年も続いた、歴史上類い稀な官吏登用試験、科挙。科挙がなぜ始まったのか、どのようなシステムで選考されるのか、具体的なエピソードを多く入れて解説してくれる本。

世界史をちょっとかじると分量の多さに圧倒されるのがヨーロッパ史と中国史。中国の歴史の裏にずっとあったのが科挙なんだから、これさえマスターすればもう安心。この本をいつ読むか?今しかないでしょう!@トヨタのCM

著者は科挙を詳しすぎるほど詳しく説明してくれる。そうなると学術的すぎて面白くなくなるはずなのに、ちっとも飽きさせないで読ませてくれる。あちこちに真面目なユーモアが散りばめられているからだろう。女性に手を出すと、彼女が亡霊になって受験生を悩ませたといういくつかのエピソードがあった。

いやいや。こんなに面白い学術書(?)は初めて読んだ。

科挙システムでは、受かりさえすれば終身の地位が保障されると同時に他の仕事に転じることが難しい。著者はこれは現在(1966年)の日本と同じだと嘆く。最終学校の卒業と就職が直結しているわけで、卒業の瞬間に一生が決まるのだ。だったら就職に一番都合のいい学校を選ぶべきで、だったらその大学入るのに一番都合のいい高校に、だったら中学に、だったら小学校に…となる。

著者は中国と日本には同じアジア的な共通点があるかも知れないとしているが、これについては私もまたいつか考えてみたい。(そう言って、たいていのことは忘れる)

しかし、50年も前に書かれたのに、その嘆きからはあまり状況には変わりはないという事に驚き、50年も前に書かれたのに、科挙についてこれ以上面白い本が出て来ないという事にも驚く。

世界で最も民主主義が進んだとされる英国で官吏登用に試験が採用されたのは1870年、米国では1887年。中国の科挙に影響を受けて採用されたというのが有力な見方らしい。そんな優れたシステムが崩壊していったのか、知るのは興味深い。

以上、今回、かなり真面目にお送りしてみた。

「科挙 中国の試験地獄」宮崎市定 中央公論社 1966年


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