頭の中は魑魅魍魎

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『鹿男あをによし』万城目学、ドラマ『鹿男あをによし』

2008-02-07 | books

ドラマの方の「鹿男あをによし」 これがなかなか面白い。今のクールでは一番の出来だ。先が読めない不可思議な展開。古いモノと近未来の融合。原作とは違う点が多々あると聞いたので、先も知りたかったし、つい原作を読んでしまった。





【結論】

上質の落語を聴いているようだった。サゲ(オチ)への展開もさすが。この辺のことはまた後で触れる。

さて、

この万城目学(まきめまなぶ)はいったい何者なんだろう?万城目は「まんじょうめ」と読むとばっかり思っていたが。あまりにも旨い小説を読むと、この人の頭の中はいったいどうなってるのだろうか?と思う。大阪生まれ、京都大卒とはプロフィールに書いてあったが・・・・・・

「鹿男あをによし」 つっこみポイント、笑いポイント、興奮ポイント多々あれど、圧巻は剣道の試合のシーンだろう。すりあげ、抜き、二段攻撃、上段の構え。嗚呼たまらん。だって、わし剣道やってたもの。え?得意技?そうだな。秘技「みそらーーー めん!」かな。

結論めいたことに行く前に、ドラマとは違う点を。

・綾瀬はるか演じる藤原先生は男性。バトミントン部顧問。妻子あり。
・下宿にはばあちゃんと玉木宏と福原先生が住む(美術部顧問。佐々木蔵之介が演じてる。佐々木の髪型は笑える)(福原先生とは違う呼び名あり)
・玉木宏演じる主人公は、ドラマほど情けないキャラじゃない、それほどアンラッキーな人生でもない、あれほどイケメンじゃない。
・ドラマ初回の冒頭のシーン、あれはない(首相らしき人物がいたシーン)
・剣道部顧問になる経緯もやや違う。

その他細かい所は色々違うだろう。しかしドラマが原作をズタズタにしてしまったということ(よくある)は全くない。原作のやや引き締まった感じを間延びさせたというか、一つのシーンを時間かけてカメラ回転させたりして「ドラマらしさ」を出せてると思う。つまり、原作を読んでから観てもよし、観てから読んでもよしだと思う。全394ページ中、前回の放送でだいたい190ページの所まで進んだぞ。


乗り心地のいい車、座り心地のいい椅子、抱き心地のいい○○ という言葉があるが、この「鹿男あをによし」を読んでいる途中で感じたのは、(冒頭の落語にもつながるが)

読み心地のいい本

だと思った。実はこの本は日本の古代史がひっくり返るようなすごい仮説(?)を披露してくれる。俺もひっくり返った。それで連想したのは、乱歩賞の長い歴史でもぶっち切りでトップクラスにランクすると俺が勝手に思う、井沢元彦の「猿丸幻視行」と、高橋克彦の「写楽殺人事件」 どちらも歴史にガツンと太い釘を打ち込んだ名作中の名作。しかし、「鹿男あをによし」と較べると、読み心地がいいのとは違う。自分で「読みに行く」というかなり前のめりな姿勢で行かないと読めない。しかし「鹿男」はまるで活字が勝手に眼に入ってくるよう。落語を聴いているかのよう。

非常に稀な体験をさせてもらった。この2作を連想した人、あるいは比較しようなどと思った書読屋はまずいないだろう。だって全然違うもの。だって私、普通に読めないんだもの。

おっと。おっとっと。

ストーリーを紹介するのをすっかり忘れていた。まあ、キーワードは

地震・古代史・神・近未来・動物・青春 としとこう。それと、日本の歴史の謎っていくつかあると思うけど、その謎(○○○○は△△にある、○○○は△△だった)について割と詳しく書かれている。そしてその謎がいまだに解けない原因は▲▲だからって所が妙に説得力があってうなってしまった(だからと言って、「歴史ミステリー」だと感じないのは、作者の軽妙な文章のせいかもしれない) 最後に印象的だった鹿の台詞を一つだけ。

糞をたれる鹿に対して、主人公が文句を言うと、

 「これだから人間は困る。いいか、この世に存在する種の中で、排泄と生殖を相手の面前で行うことを恥じらうのは人間だけだ。それなのに、自分たちだけの習慣を他者に平気で押しつけてくる。それが万能だと信じて疑わない。失礼だって?これぞ人間の勘違いの極みだな。だいたい人間は道端でものを食べるくせに、道端で排泄することはいけないと言う。生きるため、二つはまったく同価値の行為なのに。人間は食べる必要のないものまで食べる。だから、排泄を恥ずかしがる。それに人間はこの世で唯一、不必要な生殖行為をする生き物だ。我々はそれらを恥ずかしいとは思わない。なぜならそれらはすべて、生命の営みに必要な行為だからだ」(220ページより引用)



さてレビューはそろそろ終わりにしよう。

今後ドラマは観続けるのか? → 観る。映像でどう表現するのか楽しみだし。常に録画したものを観てるが。

なんだか奈良の観光ガイド的な小説のように思ったが、奈良に行きたくなったか? →

いや。鹿に話しかけられたらいやだし。














今日の教訓




馬鹿男あほにより、
馬鹿男あほやし、
って、
俺のことか。





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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは♪ (ミチ)
2008-02-13 17:07:02
ふるさん、明日はバレンタインですね~
チョコは何個ほどいただくご予定で?

冬クールのドラマは1個も見ていないのですが、【鹿男】面白いんですか?
題名に釣られて図書館に予約入れました。
ついでに「○○ホルモー」とかいう、これまたワケ分からんタイトルの作品も二冊。
実は“万城目”って読み方も知らなかったのです
返信する
ど~も~ (ふる)
2008-02-14 11:06:09
★ミチさん、

今日がバレンタインデーですね。
何個もらえるかって?
いや~ あげる方ですよ~40個ほど(笑)

鹿男のドラマなかなか面白いですよ。
原作もオススメです。
○○ホルモーは、積ん読山脈に埋もれてます。
近日中に(たぶん)レビューする予定です。
万城目の読み方は私も知りませんでした。でも、
「まきめ」と入力すると「万城目」と変換されてびっくりしました。
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