平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

レ・ミゼラブル~『民衆の歌』を高らかに歌え! 戦う者の歌が聞こえるか?

2021年06月02日 | 洋画
『レ・ミゼラブル』
 かつては『ああ無情』と翻訳されていたが、
『貧しき人々』『虐げられた人々』『悲惨な人々』と訳されるのが妥当だろう。

 さて19世紀のフランスで『虐げられた人々』はどう生きたか?

 主人公ジャン・バルジャンはお金を儲け、金持ちになり社会的な地位も得た。

 宿屋の主人でコゼットをこき使っていたティナルディエは強請、たかりで
 貧乏人はもちろん金持ちからカネをむしり取る。
 これもまた『虐げられた人々』のひとつの生き方だ。

 ジャン・バルジャンとティナルディエが信じているのは「お金」だ。
 バルジャンの場合は、これに
 ミリエル神父によって啓示された「神への愛」「信仰」「博愛」、
 コゼットによって呼び覚まされた「愛」が加わる。

 一方、ジャン・バルジャンの宿敵・ジャヴェール。
 彼が信じているのは「法」だ。
「法」によって「秩序」が保たれるのが絶対だと考えていて、
 そこには「人間愛」とか「人間の弱さ」とか「悲惨な社会状況」といった考察がない。

 そしてコゼットの恋人マリユス。
 彼は家から勘当されて貧乏生活を送っているが、ブルジョワ出身のインテリだ。
 悲惨な社会に憤っていて革命を夢想している。
 ブルジョワ出身のインテリが革命を夢想するのはめずらしいことではなくて、
 たとえばロベスピエールなど、フランス革命の指導者たちもそうだった。

 バルジャン、ティナルディエ、ジャヴェール、マリユス──見事な人物造詣ですね。
 その他にもコゼット、フォンテーヌ、ティナルディエの娘のエポニーヌなど魅力的な女性も登場する。
 こうした人物を配置しながら、作者ユゴーが描くのは──
「貧困」「お金」「法」「秩序」「神」「信仰」「親子愛」「男女の愛」「革命」「理想」など、
 さまざまなテーマだ。
 これらを描き切るユゴーの筆力は圧倒的で感嘆以外の何物でもない。
 原作で詳細に描かれた「ワーテルローの戦い」なども第一級の歴史資料だと思う。

 さて、ここで話を戻すと、
 ジャン・バルジャンはマリユスを知って「革命」という社会を変える手段を認知する。
 革命=民衆の連帯。
 それはこれまでバルジャンが信じてきた「お金」「信仰」「博愛」とは違う手段だ。
 バルジャンも悲惨で理不尽な社会を目にして何とか変えようと思ったが、「民衆の連帯」という発想はなかった。
 がく然とするバルジャン。

 そんなバルジャンの思いが描かれたのが、
 映画『レ・ミゼラブル』の『民衆の歌』のシーンだ。

 民衆を弾圧するために通り過ぎる軍隊。
 人々は『民衆の歌』を歌い始める。

 

 そんな人々を茫然と見ているジャン・バルジャン。

 

 映画『レ・ミゼラブル』の中でも圧巻の名シーンだ。

 それでは御覧下さい。

 映画『レ・ミゼラブル』民衆の歌(YouTube)


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