平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

必殺仕事人Ⅴ その3

2007年07月31日 | 大河ドラマ・時代劇
 「必殺仕事人Ⅴ」最終回。
 「主水ひとりぼっち」のタイトルどおり、仲間と別れる。

★事件
 横暴な大奥の支配者・吉野局がターゲット。
 子を産めない彼女は大奥での実験を握るため、他の局に子が生まれると殺す。

★面白ポイント1
 大奥の中での困難な仕事。
 主水も他の筋を当たってくれと最初はつっぱねるが何しろ千両の仕事料。
 この法外な報酬と「失敗すれば三尺高い所に首を据えられる。それでもよければ受けるぜ」の主水のせりふがその困難さを物語っている。
 さて、その殺しに至る方法だが、曲芸一座にまぎれ込み江戸城に入り込んだ。
 天井裏で機会を待つ主水とマサ。
 曲芸を演じる玉すだれを使う『陽炎の影太郎』。
 女中に入れ替わり、吉野局の履き物に印を付けるお玉。
 主水は「お供不要の場所(=トイレ)」に立った吉野局を殺す。
 逃げ道はおわい舟に乗って。

★面白ポイント2
 ふたつめのポイントは、追われる仕事人たちだ。
 仕事の最中に彼らは証拠を残していた。
 影太郎の玉すだれの竹。
 お玉の金粉。
 足跡は男3人、女3人。
 大奥の事件だけに奉行所も追及が厳しい。
 主水は「凶」の文字をふすまに書いて影太郎に危機を伝えるが、影太郎はお縄に。その関係でお玉、今回の手引きをした元締めも捕まってしまう。
 拷問で元締めがしゃべれば、主水も危ない。
 結果は、主水が「私が奉行所まで連れて行きます」と言ってお玉を逃がし、影太郎はマサによって助けられた。
 後は拷問を受ける元締めだが、主水のことをしゃべることなく死んだ。

★面白ポイント3
 そして別れ。
 行徳で待ち合わせをした主水たち。
 元締めが死んだため、仕事料の残金九百両は手に入れられず、主水は「九百両はあの世に行ってからの清算だ」と言う。(→名セリフ)
 そして「じゃあ散ろうぜ」と言う。 (→名セリフ)
 影太郎とお玉は途中までいっしょに行くがこんな会話を。
お玉「いっしょに行くかどうかはあなた次第」
影太郎「縁があったら、また逢いましょう」
お玉「そうか、そういうことか」
 ふたりの愛の行方はこうだった。
 さわやかでせつない。
 仕事人は地上での幸福など思ってはいけないという想いがふたりにはある。

★レビュー・感想
 「いかに殺すか?」
 「追われる主人公たち」
 「別れ」
 物語は三本立て。
 1時間に面白さが凝縮している。


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参議院選挙

2007年07月30日 | 事件・出来事
 自民党大敗。
 安倍首相続投。
 昨日の参議院選挙の敗因論が取り上げられている。

 ひとつは年金、失言、政治とお金の問題。
 ひとつは格差問題。

 格差問題については自民党はこう表現している。
 「成長を実感に」
 不況から脱し、経済は絶好調。
 しかし、それは大企業だけのもので庶民にはその実感はない。
 自民党の主張「成長を実感に」は「庶民の皆さん、あと少しすればみなさんもその実感が得られますよ」というものだろうが、われわれにはそれが信じられない。本当かよ?と思う。
 その理由は安倍内閣がウソとごまかしをしているからだ。
 年金問題は大きく指摘されるまで放置。
 赤城大臣などの政治と金の問題は不信を残したまま。
 そんな内閣を信じられるはずがない。
 だから彼らの言うマニフェストも信じられない。
 
 何事も信頼が大切なのだ。
 その人を信じられるか信じられないか。
 その点で安倍さんは一連の対応で信頼を失った。
 かと言って、民主党の晴れ舞台で花をつけていた鳩山さん、管さんが信頼できるかと言えば疑問なのだが。
 期待できるのは40代~50代前半の若手の皆さん。
 年金問題の長妻さん、原口さん。自民党では今回当選した山本さん。
 無所属では江田さんがいいことを言っている。
 田中康夫さんにも期待だ。

 また、今回の敗因のひとつには強行採決もあっただろう。
 数を武器に強行採決ばかりが行われていては、民主主義の根幹が揺らぐ。
 民主主義とは手間のかかる面倒なシステムなのだ。
 独裁主義は独裁者の即決だが、民主主義は違う。
 ああでもないこうでもないと議論を尽くして時間がかかる。
 それを数の論理で押し切られては。
 国民にはそんなバランス感覚がある。

 さて選挙特番では議席の行方と共に様々なドラマが描かれた。
 選挙をエンタテインメントにするあたり、さすがテレビ。貪欲だ。
 今回、描かれたドラマは
★丸川珠代さん~住民票事件(3年間選挙に言っていないことが発覚)
 赤い服から黒い服に着替えた。
★姫川さん~姫の虎退治。
★横峯さくらパパと丸山弁護士対決。
★後ろから弾丸が飛んできたという自分の政党に対して辛口の舛添要一さん、完全にキャラになっている黒川紀章さんもテレビ局にはおいしい存在だろう。
 その他に名優も登場させる。
 小泉元首相、田中真紀子さん、鈴木宗男さん。
 小泉さん、真紀子さんは面白いし、演説がうまいね。
 例えば、真紀子さん。
 憲法9条改正に関してこう演説する。
「9条を変えれば日本は戦争にいけるのです。(客観的事実)
 皆さんはそんな日本でいいんですか?  (疑問の投げかけ)
 わたしはいけないと思います。     (主観・意見)
 日本は外国で戦争してはいけないのです!(断定)」
 うまい論理の組み立てだ。

★追記
 それにしても丸川珠代さん、あんなに憔悴しきって大丈夫だろうか?
 同じ東京の保坂さんが落ちたこと、住民票問題があったにせよ、痛々しい。
 美人がうちひしがれる。
 テレビ的にはいいネタなのだろうが。


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風林火山 第29回 「逆襲!武田軍」

2007年07月29日 | 大河ドラマ・時代劇
 人の心が闇や迷いから解放される時、ドラマになる。
 戦いで劣勢から大逆転する時、ドラマになる。
 今回はこのふたつのドラマが爆発した。

★まずは晴信(市川亀治郎)。
 「連戦連勝のおごり」
 「負ける事への恐怖」
 「許しても反旗を翻してくる敵」
 これらから自分を見失っていた晴信。
 そして上田原の合戦で武田は板垣(千葉真一)、甘利(竜雷太)の両雄を失った。
 板垣と甘利は死をもって大事なことを伝える。
 自分たちは晴信を信じていること。
 晴信は決してひとりではないこと。
 ひとつに繋がった心こそ一番強いものであること。
 そこで晴信が得た詞とは……

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」

 人と人との心を繋ぐのは、情け。
 繋がった心は最強。
 裏切ることはない。信じた人のために懸命に闘う。
 現に諏訪衆は晴信を(晴信が掲げた諏訪神号旗を)信じて、先陣を希望してきた。

 迷っていた晴信は、敵に仇ばかりをなしていた。
 許しても再び裏切ってくる敵。
 二度と反旗を翻さないために晴信は見せしめの虐殺を行う。
 しかし、それは恐怖による一時的な服従でしかない。
 信頼で結ばれた関係こそ強いものなのに。
 晴信は「反旗を翻してくる者と自分は信頼を築けなかった」「情けの心が足りなかった」と思い至らない。
 恐怖による服従の道を選んだ。
 しかし板垣らの死によって気づく。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」

 「大望を持て」という言葉と共に素晴らしい言葉だ。
 こういうメッセージは大河ドラマでなければ描けない。
 闇から脱した晴信の心のドラマも素晴らしい。
 今後、晴信は信頼・情けを第一にして家臣や国の者たちと関係を結んでいく。
 これが武田軍団の強さになる。

★そしてもうひとつのドラマは信濃守護・小笠原長時(今井朋彦)とのいくさ。
 前回、村上義清(永島敏行)に負けているだけにこの勝利はカタルシスになる。
 小笠原長時が武田を舐めきって油断しているだけに、奇襲が成功した時、快哉を叫びたくなる。
 晴信の復活と共に描かれたため、さらにカタルシスが大きくなった。


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プリズンブレイク シーズン2 第9・10話

2007年07月28日 | テレビドラマ(海外)
 第9話「シークレット・ガーデン」

 「プリズンブレイク」はせりふのやりとりも魅力のひとつだ。
★マイケルとマホーンがこんな会話を。
 追いつめるマホーンにマイケルが反撃を行うのだ。
 反撃とはマホーンの過去。オスカー・シェールズを殺して埋めたこと。
 マイケルはマホーンの携帯に電話をかけ過去の秘密を公にしてほしくなければ、捜査から手を引けと脅迫する。
マイケル「アルカリ性の資材は死体の腐敗を早める様だな」
マホーン「ミステリー小説でも読んでろ」
マイケル「のしかかる不安、ぬぐえない恐怖。とても耐えられない。俺と兄貴から手を引け」
マホーン「死に際のあがきだな」
マイケル「自分の手に負えないことが起こる。これもそのひとつだ」

★ベリックに愛人の家で捕らえられたティバッグはこんな会話をする。
ティーバッグ「ママといっしょに暮らしている様なやつに愛の奥深さはわからない」
ベリック「おまえが送っていたラブレター。全部返送されてたんだ。刑務官のいい読み物だったぜ」
 ちなみに『ママといっしょに暮らしている』のはベリック。

 マイケル×マホーン、ティーバッグ×ベリック。
 両者とも会話で負けていない。
 これでエンタテインメントの楽しさとは派手なアクションだけでないことがわかる。

 第10話「めぐり逢い」はマイケルとタンクレディの話。

★暗号を解いてマイケルと再会したタンクレディ。
 パナマにいっしょに逃げようと言うマイケルにタンクレディは言う。
「これが答えなの。ちゃんとした答えがあると思ったから、ここに来た」
 タンクレディは葛藤している。
 自分を利用して脱走をしたマイケルを信じ切れていない。
 マイケルとリンカーンの脱走は正義だとしても、ティーバッグらが逃げたことは許せない。
 しかし、一方でマイケルを慕う気持ちはある。
 父親が殺され、「ひとりでいるのは嫌」という想いもある。
 折しもマホーンがやって来て。
 ふたりの逃避行はどうなるのか?
 マホーンの追跡の中で腕に傷を負ったマイケルはタンクレディの治療を受け、「サラ、来てくれて嬉しい」と言うが……。

★そして10話では相変わらずのティーバッグエピソード。
 500万ドルの入ったコインロッカーの鍵をのみ込み、ベリックたちは下剤を飲ませてクソの中から鍵を取り出す。
 いやはや凄まじい。
 それにしてもティーバッグの生命力って……!!
 こういう特異なキャラがいると作品にメリハリがつく。
 美しいヒロインとひとクセもふたクセもある脇役は作品に花を添える。

 その他ではリンカーンが父アルドに再会。
 敵の陰謀を明らかにする証拠を手に入れたらしいのだが、敵の手はアルドの仲間に及んでいる様だ。敵のボスはリンカーンたちの殺害を命じるが。


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パパとムスメの七日間 第4話

2007年07月27日 | ホームドラマ
 「パパとムスメの七日間」第4話に見るカタルシスの作り方。

 今回のカタルシスは、小梅(新垣結衣)の御前会議での爆弾発言。
 「こんなんじゃ売れませんから。絶対に売れませんから」
 「お客様のことを全然考えていませんから」

 社長の顔色と責任をとることを怖れた役員たちのゆる~い会議。
 問題先送り、持ち帰り。
 曖昧な結論。
 保身と言い訳(「ティーンズの商品に手をつけていなかったのではない。敢えて参入しなかったのだ)。
 「伝統」と「常識」からの脱却と言いながら、それにしがみついている体質。

 それらに小梅の想いが爆発する。
 この爆発が視聴者のカタルシスを生む。
 このカタルシスは、タメればタメるほど効果的だ。
 障害が大きければ大きいほど効果的だ。

 その障害とは
★「秘密基地」の様な大仰な会議室。
★光の中から現れる社長。
★かなり婉曲な言いまわしでも否定される会議の雰囲気。
 これらで発言することがどんなに大変かが視聴者に伝わる。
 また第三者の言葉が小梅に歯止めをかける。
★「根まわしは済んでいるから無駄なことは言うな」という会議前の部長の言葉。
★恭一郎(舘ひろし)の必死の叫び。

 また、タメはこうだ。
★ドラマでは会議と同時進行で、学校のシーンが挿入される。
 試験のことで教師に追いかけられる小梅。
 お泊まり旅行のことで友達につきまとわれる小梅。
 なくなりそうな携帯の電池。
 会議のシーンをそのまま描いてもいいのだが、学校のシーンを挿入することでさらにタメになる。視聴者は早く会議のシーンを見たいのにと思ってやきもきする。
 なお、この学校のシーンの挿入は同時に『時間経過』の効果を果たしている。
 会議のシーンだけを延々と描いたのでは内容が持たない。だから別の場所を描いて時間を経過させた。小梅のシーンを挿入しておけば、次のシーンで会議が終わり近くになっていてもおかしくないわけだ。
★発言をもとめられる小梅。
 会議が終わり近くになり、小梅は何とかやり過ごせたと安心する。
 ここで視聴者は、このまま会議が終わって小梅の発言はないのかとがっかりする。
 これがタメだ。
 小梅はリーダーとして最後に発言を求められるが、最初からはっきりとした反対意見を言わない。
 これもタメだ。
 はっきりした意見を言わない小梅に視聴者はやきもきする。

 今回はカタルシスの作り方の見本のようなお話だった。
 会議をひっくり返して落ち込む小梅に「リーダーの言っていることは正しい」「がんばりましょうよ」と言ってくれるプロジェクトチームの仲間たちもいい。


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花ざかりの君たちへ 第4話

2007年07月26日 | 学園・青春ドラマ
 笑う佐野(小栗旬)、中津(生田斗真)、瑞稀(堀北真希)。
 秘密でハイジャンの練習をする佐野。
 そのことがバレた時のグラウンドでのワンシーン。
 青春してますなぁ。

 共感し合って無邪気に笑える。
 「おまえ、バカだなぁ」と言って笑える。
 これって青春の特権。

 さわやかで感動的なシーンだ。
 それまでに瑞希の佐野に対して奮闘するシーンやくじけるシーンがあるから、「瑞希、よかったな」とも言いたくなる。
 その前に「いつまでも世界中の不幸を背負っている顔してんじゃねえよ!」「瑞希の気持ち、考えろよ」という中津の叫びがあるから、伝わってくる。
 出来れば、青春ドラマはこういったぶつかり合いの中で描かれて欲しい。
 だから「山田太郎ものがたり」は少し不満なんだよね。

 さて、毎回、佐野と瑞希の物語とは別に展開される寮どうしの闘い。
 今回は合コン。
 これはサブ・エピソードで物語にギャグ要素・イベント要素を持たせるためのもの。
 これがどう佐野と瑞希のメインストーリーと絡むかは毎回楽しみなところだ。
 そして今回は「佐野にがんばらせるためには彼女が必要」と考えた瑞希が佐野を合コンに参加させることで繋がった。
 この辺の瑞希の心理は面白い。
 瑞希が佐野に感じているのは『恋愛』ではない様だ。
 あくまで応援団長、友情。
 この裏にはおそらく恋愛感情があるのだろうけど、それに瑞希は気がつかない。
 オトコの格好をしているから、自分がオンナであることを忘れていっているのかもしれない。
 この辺のフクザツな感情の襞はこの作品ならでは。
 「瑞希がオンナだったらこんなに悩まなくてもいいのに」と語る中津の感情と併せてこの作品の味を作っている。

 物語の内容・特徴は『設定』で決まる。
 最初にどんな『設定』を作り出すか?
 現在はそれが突飛であればあるほどいい様だ。
 例えば「パパとムスメの七日間」の設定もそう。
 タイムスリップという「プロポーズ大作戦」もそう。
 魅力的な設定とキャラを作り出せば、物語はどんどん勝手に進行していってくれるのだ。

★追記
 中津とお好み焼き屋へ行った瑞希。
 両手にコテを持ってシャキーン!
 これは「鉄板少女アカネ」!!
 

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キル・ビル

2007年07月22日 | 洋画
 タランティーノの作品ってイメージの世界。POPな世界。
 ストーリーやドラマより、映像を楽しめばいい。
 目のぜいたく。
 目の保養。

★展開されるイメージは
 「金髪の美女に日本刀」~主人公(ユマ・サーマン)
 「着物に小刀」    ~オーレン・イシイ(ルーシー・リュー)
 「制服に分銅つき鎖」 ~ゴーゴー・夕張(栗山千明)

 確かに今までに見たことがない女性キャラクター。
 「着物に小刀」は日本人には見慣れたものだけど。

 既存のものに何を掛け合わせるか?
 それでキャラクターメイキングが出来る。
 「金髪の美女×日本刀=ユマ・サーマンの主人公」だ。
 日本に例をとれば
 「女子高生×ヨーヨー=スケバン刑事」。

★あと展開されるのは「飛び散る血しぶき」
 腕が斬られ首が飛び、血が噴き出す。
 それが決して陰惨でない。
 様式化された一場の舞台を見ている様。
 これを不謹慎、不道徳と言ってはいけない。
 映画とはもともとイメージの遊び。
 ドラマやテーマ、ストーリーに縛られないで映像の中で遊ぶのも映画の見方だ。

★登場人物の名前も変。
 主人公のコードネームは「ブラック・マンバ」。
 名前はなぜか×××で伏せ字にされる。
 オーレン・イシイのコードネームは「コットン・マウス」。
 イシイの娘は「ゴーゴー夕張」。
 イシイを補佐する謎のフランス人は「ソフィ・フェタール」。
 主人公の闘う組織の名は「毒へび暗殺団」。
 主人公が乗る車は「プッシーワゴン」。
 なんだか頭がくらくらしてくる。

★描かれた日本的なるものに関しては違和感を感じることも多いだろう。
 ユマ・サーマンやルーシー・リューのたどたどしい日本語。
 劇中の演歌。
 ふすまや木造の日本家屋。
 タランティーノはこうした日本的なものに新鮮さを感じたのだろうが、日本人には違和感。

★その他
 主人公は銃弾を頭に受け目を覚ますことなく4年間寝ていた。その間、病院で彼女は75ドルで買われる性の人形に。4年後、彼女は目を覚ますが4年間筋肉を使わなかったため、立つことが出来ない。そのハンデを背負っての闘いは見どころがある。
 しかし、その後彼女がどんな訓練をしてあれほど闘える戦士になったかは描写されない(精神力で親指が動かせるようになる描写はあるが)。
 主人公がいかにしてあれほどの復讐心を持つに至ったかも描写されていない。
 通常の作家なら丹念に描くべきところを省略してしまうところがタランティーノタッチ。
 時間が前に行ったり後ろに行ったりというのも、タランティーノタッチだ。

★追記
・主人公のエンドタイトル名は「ザ・ブライド」~花嫁が復讐を行っていくという設定は、コーネル・ウールリッチの「黒衣の花嫁」を意識しているのか?
・イシイの過去を描くシーンでは日本のアニメスタジオ・プロダクションIGが手掛けたアニメーションが使われている。
・冒頭「故・深作欽二監督へのオマージュ」がテロップされる。


コメント (4)
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山田太郎ものがたり 第3話

2007年07月21日 | 学園・青春ドラマ
 ちょっとマンネリかな?

★山田太郎(二宮和也)は2kg98円の松阪牛ゲットのために懸命の努力。
 第1話でやったコロッケ争奪戦を広げた内容。二番煎じ。
 池上隆子(多部未華子)の母(柴田理恵)に弟子入りして綿密な計画を立てたのは面白いが、主人公が闘う目的としてはバカバカしい。
 この二度目のバカバカしさ、ナンセンスについていけるかどうかで、今回を楽しめるかどうかが決まる。

★池上隆子(多部未華子)は相変わらずの勘違いと勝手な妄想。
 勘違いもここまで繰り返されると飽きてしまう。
 キャラクターはおバカなだけじゃ感情移入できない。
 そこで感情移入させるために作者は『畑仕事に戻ってくるという太郎を信じて待つ隆子』を描いたが、太郎の貧乏を知り、隆子は別の男・太郎の父和夫(松岡充)に走りそう。
 あれれ?ヒロインならここは太郎でなくちゃ。
 「貧乏だとわかっても太郎が好き」
 これがヒロイン。
 いずれは太郎の所に戻ってくるのかもしれないが、隆子の迷走は続きそう。

★御村託也(櫻井翔)は大きな変化なし。
 「おまえ、面白いなぁ」のスタンス。松阪牛争奪戦に興味本位で参加するが、彼の本質は変わっていない。太郎との距離がさらに近くなった程度か。

 この様にドラマはキャラが変化しないとマンネリになる。
 事件は毎回違うが、主人公たちのやっていることの本質は同じ。
 これではイマイチ。
 同じ食べ物争奪戦の「マイ★ボス マイ★ヒーロー」で比べてしまうが、真喜男は「恋」に苦しみ、「やくざ」であることに苦しむ。
 恋に走りやくざをやめようと思う。
 これがドラマだ。
 太郎が変化しないというスタンスは作劇としてありだと思うが、だったら御村たちが変わらないと。
 「水戸黄門」のご隠居様は変わらないが、悪やそのまわりの人たちは変わる。
 光圀公が迷ったり恋に落ちたりしたら変だしね。
 「サザエさん」がマンネリと言われるのはキャラが変化しないせいだ。
 カツオいいかげん大人になれ。

 なお次回以降は展開がありそう。
 隆子は太郎の貧乏を知ってしまったし、太郎の父親も帰ってきた。
 今後はもう少し掘り下げた深いドラマを見たいな。


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山おんな壁おんな 第3話

2007年07月20日 | 職業ドラマ
 「山おんな壁おんな」第3話。
 この作品は「人間って愚かだけど可愛い」って視点で見ると楽しい。
 僕も含めて、人間って青柳恵美(伊東美咲)の様につまらないことにこだわってふりまわされて生きている。
 恵美の場合は胸。
★第3話では『ミルフィーユ・カップ』なるものが登場。
 2サイズアップということに乗せられて買ってしまう。
 それが田村部長(谷原章介)に見られて。
★バッグの品評会にいった時は、毬谷まりえ(深田恭子)と比較。
 同じバッグを肩にかけてまりえは見えないのに、恵美ははっきりバッグが見える。
 それで一喜一憂。
★恵美が毎回見せるバストアップ体操も可愛い。
 人間ひとりでいる時って、結構バカなことやっている。

 SMAPの「世界にひとつだけの花」じゃないが、人間って他人と比較して一喜一憂。
 でもそれが人間らしくて可愛くもある。

★胸の話ではないが、今回はこんなエピソードも。
 ITセレブに食事に誘われて告白されるかと変な期待。
 なかなか言い出せないセレブに心の中で「がんばって!」。
 テーブルの下ではガッツポーズ。
 しかし彼はまりえが好きで。

 期待して裏切られる恵美はおバカさんなんだけど可愛い。
 人間ってどこか満たされないものを持っていて、愛を求めていて。
 そんなことをこのエピソードから感じる。

★風水のエピソードもそう。
 ピンクのブタに行動の理由を求め、ふりまわされている。

 この作品は、こんな人間の可愛らしい愚かさを描いた作品だ。
 毎回描かれる仕事のエピソードは、ダメダメな恵美を凛としたキャラに見せる仕掛け。
 恵美をかっこいい女性に見せるための仕掛け。
 恋やコンプレックスにふりまわされているだけの女性じゃ魅力がないからね。(ドラマ「だめんずウォーカー」が失敗したのはそのため)
 今回の仕事エピソードの教訓は「自分はキリギリスで、アリの地道な努力に負けた」。
 壁おんな=キリギリスとかけたオチでもあるが、これで恵美が仕事の出来る凛とした女性に見えたかどうかは疑問。
 この辺がこの作品の弱いところ。
 職業人・恵美がもっと立ってくるといいのだが。
 

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推定無罪

2007年07月19日 | 洋画
 映画「推定無罪」で主人公・ラスティ(ハリソン・フォード)が直面した現実。
 その現実は偶然と様々な意思が錯綜して作り上げられていて、実にリアリティがある。

 有能な検事ラスティが部下である美人検事補キャロリン(グレタ・スカッキ)殺人事件の犯人にされたのはこんな理由からだ。
★彼がキャロリンと不倫関係にあったこと。
★新しい恋人が出来、キャロリンから別れようと言われていたこと。
★事件当日、別れ話を白紙にするためにラスティが彼女の家の前で待っていたこと。
★殺害現場にラスティの指紋のついたグラスがあったこと。
★殺人が変質者による暴行によって行われたと見せかけるための偽装がなされていたこと。(=犯罪に精通した者の犯行)
★ラスティが事件の捜査を性犯罪者だけに絞らせたこと。

 果たしてラスティは検挙され、裁判が始まる。
 ラスティと弁護士は、殺されたキャロリンが収賄事件を追っていて、そのせいで殺されたと主張するが、判事はその立証には懐疑的で却下する。
 そうこうしていく内に有力な証拠である指紋のグラスが紛失。
 またキャロリンは避妊手術を受け子供を産めない体であることがわかり、検察が立証したかったラスティによる偽装が根拠のないものであることが判明する。

 この過程が実に混沌としている。
★まず収賄事件は、ラスティの上司で地方検事レイモンドやこの裁判の判事が関わっていたものだったこと→それゆれ裁判で却下された。
★次になくなった指紋グラスだが、これはラスティの無罪を信じる刑事が保管庫から盗み出したためであること。
 様々な意思が錯綜して、事件を複雑にしている。
 そう、現実はひとつの意思で作られているのではなく、様々な人の思惑、意思が絡み合って作られているのだ。
 そのことをこの作品は観客に教えてくれる。
 今までのエンタテインメントは単純すぎた。
 また当初、観客は検察による「でっち上げ」「冤罪」だろうと思って見ているが、それはミスリード。観客は裏切られ複雑な現実を目の当たりにするわけだ。
 この辺の裏切り方もいい。

 そして推定無罪、情況証拠だけのラスティは無罪を勝ち取る。
 めでたし、めでたし。
 しかし、ここで観客はさらに驚くべき事実を知ることになる。
 まずラスティの冤罪が晴れたのはいいが、一体真犯人は誰なのか?
 収賄事件に関わった上司なのか?
 それがはっきりしない。
 そして明らかになる真犯人。


 以下、ネタバレ。
 衝撃の事実!
 果たして真犯人はラスティの妻バーバラだった。
 動機は嫉妬。
 指紋のついたグラスはラスティが自宅で飲んだグラスを犯行現場に置いてきた。
 キャロリンが引っ越してきた時に同じ種類のグラスをお祝いでプレゼントしたのだ。キャロリンの体に残された精液は夫とのセックスで得たものを冷凍保存したものを使用した。
 真相はこうである。
 それまでが混沌としている分、犯人ひとりの意思で貫かれているクリアな真実を見せられるとスッキリする。
 これがエンタテインメントの構成だ。
 物語の仕掛けとしては、上司、判事による収賄などの余分な要素を取り去った後に明らかにある真実という形式をとっている。

 真相を複雑にして覆い隠す「偶然」や「様々な人の思惑」「関係のない別の事件」。
 これをミステリーの作劇として覚えておきたい。


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