Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2014年11月29日 | 音楽
 カンブルラン/読響の名曲シリーズ。定期以外のコンサートに行くのは稀だが、これは聴いてみたかった。お目当てはシューマンだった。

 1曲目はモーツァルトの「魔笛」序曲。ピリオド様式ではないのだが、それを意識した演奏であることは覗える。インテンポでひたむきに進む。冒頭および中間部の3つの和音も勿体ぶらない。ティンパニの硬めの音が快い。

 2曲目はシューマンの交響曲第3番「ライン」。前述したように、これがお目当てだった。なぜかというと、カンブルランがシューマンを振ると、どう鳴るのだろうと思ったからだ。楽器を重ね過ぎるといわれるシューマンのオーケストレーションだが、カンブルランの耳はそれをどう捉えるか。

 結論からいえば、モヤモヤしたところがまったくない演奏だった。重ねられた楽器のそれぞれの音が明瞭に聴こえた。メロディーラインを受け持つ楽器を浮き上がらせるのではなく、重ねられた楽器を――その重ねられた状態を示すように――均等なバランスで鳴らす演奏だった。

 結果が灰色のモノトーンに収斂しないのは、カンブルランの耳のよさであるわけだが、より具体的にいえば、厳密なピッチのためだ。ピッチがこれだけ合っていれば、シューマンであってもけっして混濁しないといっているような演奏だ。逆にいうと、往々にしてモヤモヤした演奏があるのは、ピッチの甘さに一因があるのではないかと、そんな気がした。

 個々の楽章では、第3楽章が面白かった。全曲の中でこの楽章は一番地味かもしれないが、音楽の進行に関係ない細かい動きが随所にあり(たとえていえば、藪の中に隠れているようなものだ)、それらが生かされた演奏だった。

 第4楽章は、一切のロマンを排して、シューマンが音を積み重ねたその手つきを見せるような演奏だった。音楽は動きが止まり、第5楽章で再び動き出した。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。上記2曲と同様、インテンポで邁進する演奏だ。‘サクサク’した演奏ではなく、音の角をきっちり揃えて、そこにガッツを込めた演奏だ。カンブルランの頭の中で鳴っている音楽はこういう音楽なのかと、わたしは畏敬の念を抱いた。けっして強面ではないが、厳しい音楽だ。明るく、ニュアンスも豊かだけれど(とくに第2楽章はそうだった)、自己にたいして厳しい音楽だ。聴き手のわたしも、日頃弛んでいる精神を引き締めた。
(2014.11.28.サントリーホール)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする