Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パリ日記3:雨

2014年11月07日 | 音楽
 翌日はガルニエでコンテンポラリー・ダンスの「雨」を観た。じつは最初この公演予定を見たときは、ほとんど関心を持たなかったが、何気なく使用する音楽を見たら、スティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」とあったので驚いた。えっ、あの「18人の……」か。でも、テープ録音ではないだろうな――。いや、ちゃんと演奏者名が書いてある。では、生演奏でやるのか――。で、今回の旅をパリに決めた次第だ。

 「18人の音楽家のための音楽」はスティーヴ・ライヒの作品の中では最大規模だ(もっとも、他にオペラがあるが、あれはどういう編成なのだろう)。CDは持っているが、生で聴く機会が訪れるとは、あまり想像していなかった。

 演奏はアンサンブル・イクトゥスEnsemble Ictus。ブリュッセルの現代音楽アンサンブルだ。指揮はジョルジュ・エリ・オクトルGeorges-Elie Octorsというこのアンサンブルの指揮者だ。指揮?「18人の……」に指揮者を置くのか――。でも、たしかにピットの中の指揮者の位置にオクトルが座っていた。文字通り指揮をしていたかどうかは、わたしの席からは目視できなかったが。

 演奏がいいか、わるいかというふうには聴かなかったが、ともかく面白かった。CD(スティーヴ・ライヒのアンサンブルの演奏)で聴いていたイメージ通りなのだが、音の精密さよりも、ライヴ感が先行する演奏だった。

 本音をいえば、ピットの中での演奏よりも、ステージ上での演奏を聴きたい(見たい)気がした。たとえばこの曲の‘セクション’から‘セクション’への移行の際の演奏者間のコンタクトの取り方はどうか、とか。でも、今回は仕方がない。

 振付はAnne Teresa de Keersmaekerという人。10人のダンサー(男性3人、女性7人)が一瞬の休みもなく動き回る。予想がつかず、ランダムな動きだ。それが地面に落ちた雨粒のように感じられる。もっとも、床には多数の線や点が記されていたので、ダンサーの動きは厳密に規定されているわけだ。

 こういう作品を(別にこの作品でなくてもいいが)日本で観ることができる日は、いつ来るのだろう。そんなに遠くないかもしれない。でも、ダンサーはいざ知らず、演奏にかんしては、この種の曲を演奏する常設のアンサンブルが、今は見当たらないことが、ネックになるかもしれない。
(2014.10.31.パリ国立歌劇場ガルニエ)
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする