京都童心の会

ほっこりあそぼ 京都洛西の俳句の会
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読書録2 『羊と鋼の森』宮下奈津著

2019-06-06 12:54:35 | 日記
読書録 2  『羊と鋼の森』 宮下奈津著  文藝春秋社
                    金澤 ひろあき
 スポットが当たらないが、絶対に必要という存在があります。この本で取り上げられているピアノの調律師もそうでしょう。コンサートでは、ピアニストとその音に視線が注がれます。しかし、そのすばらしい音を裏で支えている存在は、無くてはならないものです。
 考えてみれば、調律師こそピアノに一番接していて、ピアノのことを深く知っている人達なのですね。
  『羊と鋼の森』 の主人公、外村君は、北海道の山奥出身。高校時代、偶然に天才的な調律師板鳥さんに出会ったことで、全く知らなかった世界―調律師を目指します。専門学校へ行き、卒業後、板鳥さんと同じ江藤楽器店に勤めるようになります。そこで出会った調律師の先輩達、顧客との出会いを通して成長して行く姿が描かれます。
だから、主人公外村君の成長物語なのですが、実は外村君だけでなく、多くの人が成長したり乗り越えて行く姿が描かれています。外村君の面倒を見ている先輩柳さんも、仕事は一流ながら、外村君の関わりの中で自身も成長して行きます。たぶん、将来は板鳥さんのような存在になるのではと予感されます。ふたごのピアニストの由仁と和音。一人はプロのピアニストをめざし、一人はそれを支えるための調律師を目指すことになります。
 一人の人間が成長する姿を見て、感動するのはなぜなのでしょうか。根底に、人間に対する信頼があるのですね。

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