午後一時半、リージェンツ・パークの南側から路地一つ隔てたメリルボーン・ロードの街路樹わきに埃だらけのBMWを止めて、M・Gは飄々と飛ぶように王立音楽院の正面玄関をくぐっていった。・・・冬のリージェンツ・パークは、一面の灰色の中に植え込みのくすんだ緑が散っていた。王立音楽院から楽器の音が漏れてくる南側の端は、わずかに水仙の緑が濃く、咲き始めた花が黄色いシミのように見えた。その水仙の散歩道を横切って、セーター一枚にジャケットを着ただけの質素なシンクレアの姿が動いていた。待ち合わせの場所の池まで来るのに、慎重に見えない目を気づかい、方向を逸らせて遠回りしてくるつもりだろう。・・・池の端に立って、近づいてくる足音を確かめながら、M・Gは振り向いた。シンクレアが近づいてくる。・・・
M・Gとシンクレアは池を半周した。・・・二人が別れると、どこからか戻ってきた水鳥が羽音をたて、テニスコートを走るボールの音などが響いた。
(高村薫 『リヴィエラを撃て』)
メリルボーン・ロード。
左奥の赤レンガの建物が王立音楽院。
王立音楽院の正面。
リージェンツ・パーク。
池へ向かう場合の、「遠回りの道」
王立音楽院を望む。
「黄色いシミ」(笑)といわれた、水仙の花。
実際はとっても可憐でかわいらしいですよ~。
水仙とスノードロップ。
ロンドンの公園には基本的に柵がないので、こうやって花の間を歩くことができます。
気をつけないと踏みそうになります。
池。リージェンツパークには池がもう一つありますが、小説の文章からすると、このQueen's Mary's gardensにある池の方でしょう。
池と水鳥。
池の隣のテニスコート。もう桜が満開です(2月上旬)。
ここも小説のまんまの位置配置ですが、私の訪れた日が良かったのか悪かったのか、小説とは異なり、とってもなごやな雰囲気の公園でした。
この日以来すっかりお気に入りの公園となり、もう3回も行っちゃいました。
他の公園に比べて花が多いんですよ~。
これからの季節が楽しみ♪
★リージェンツ・パーク&王立音楽院:地下鉄Baker Street駅又はRegent's Park駅下車すぐ。王立音楽院の左側に、パークに続く道があります。
音楽院のショップ(正面向かって左手のmuseumの中)についてはこちらもご覧ください。